KIzUNa



第二話










少女は意識を取り戻した。
辺りは真っ暗な闇の中。
そして、何もない空間。
目を凝らしても何も見えない。
立っているのだろうか。
それとも浮いているのだろうか。
足元がふらふらした。

















『私・・・死んだのかな・・・』


















少女はふと思った。
これが死の世界??
自分が想像していた世界とは全く異なる世界。
もしかして、これが地獄???
少女は少し不安になった。

























「・・・くすっ」




























笑い声が聞こえた。
嘲笑するような笑い声。
そして、女性の声。
誰かいる。
自分以外の誰かが・・・
あたりを見回す。
でも、見えるのは暗闇だけだった。




















「・・・うふふ、人間って脆いわね」






















そう、脆いの。
私は耐えられなかった。
だから、死を選んだ。
でも、後悔してない。
これで楽になれたから・・・























「人間は脆いから、我々に助けを求める」






















我々??
誰のことだろう??
どこにいるの??
姿を見せて。

























「・・・姿???私の姿が見たいの???
 見ない方がいいわ。怯えるだけだから」


























怯える???
人間じゃないの???
じゃあ、一体誰なの???
























「私は人間の世界にいてはならない者。
 人間の負の感情を糧にする者。
 脆き人間の手助けをする者。
 そして、人間の生命を食らう者」





















わからない・・・
誰なの???
教えて。
姿を見せて。






















「うふふ・・・怖いもの知らずなのね。
 いいわ、見せてあげる。
 私の姿を・・・」



























目の前の暗闇が少しだけ明るくなる。
そこには女性の後ろ姿が見えた。
自分よりもはるかに大人っぽい。
綺麗なボディライン。
だが、何かが違う。
女性にしては肩幅がおかしい。
そのおかしい肩が動いた。






















『・・・ばさっ!!!』






















羽ばたき音。
そして、少女は声を失った。
その女性には翼があった。
4枚の羽。
黒い翼だった。
翼を広げたまま、女性がこちらに振り返る。
綺麗な顔立ち。
長い髪。
瞳は血のように紅く不気味に輝き、
唇には不気味な笑みを浮かべていた。
























少女は後ずさりした。
震えが止まらない。
声が漏れないよう両手で口をふさぐ。
見てはいけないものを見てしまった。
言いようのない恐怖。
頭が混乱し、何がなんだかわからなかった。
























『はじめまして、脆き人間よ。
 私はルキア。
 ご覧の通り、悪魔よ。
 お前と血の契約を交すために参りました。』





















少女に向け、ルキアは軽くお辞儀をする。
より一層、不気味な笑みを浮かべながら・・・
少女は腰を落とし、震えながら目の前の現実を必死に受け入れようとしていた・・・




















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