Okasha's Introduction


オカーシャ『科学哲学』(原著 Philosophy of Science: A very short introduction, 2002)、岩波から出た翻訳だが、短いけれどもかなりレベルの高い教科書だ。ただし、そのレベルの高さが日本の読者にわかるかどうかはまったく別問題で、おそらくわかる人は少ない。

どのようにレベルが高いのか。それは、いわゆる「ハードコア科学哲学」(といっても、これがわかる人が少ないのが日本の情けない実情なのだ)の成果をきちんとふまえて、簡潔に書かれているからなのだ。そのことは、直江清隆による解説「科学哲学によって<つながる>こと」というなくもがなの論説と比べてみればよくわかる(その意味では、この解説は脇役というか引き立て役をこなしている!)。たとえば、本体第6章で「物理学・生物学・心理学における哲学的問題」を論じて、著者はバランスのとれた力量を示している。これに対して、解説者は、いまだに「サイエンス・ウォーズ」から話を起こし、社会構成主義にふれて、おそらく自分の専門領域にはいる「実験の哲学」に我田引水して、「科学哲学によってつながる」というショーもない落ちで終わるのだ。何と何をどうつなげて、どうなのだ?そこのところをきちんと示してくれなければ、ただのお題目にすぎん。

岩波さんよ、「解説」はいらんから、その分を減らして、本の値段を下げてくれ!本体1500円は、チト高いデ!


Last modified Apr. 20, 2008. (c) Soshichi Uchii

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