Iseda's New Book on Demarcation


教科書ではほんの少ししかふれなかった科学と非科学の間の「境界設定」問題、あるいは「線引き問題」については、伊勢田哲治氏のかなり包括的な本が出たので、それを参照されたい。

伊勢田哲治『疑似科学と科学哲学』名古屋大学出版会、2003年

か つては、線引き問題といえば、論理実証主義の「意味の検証理論」(検証にかからないものは、無意味な形而上学、したがって非科学である、という適用の仕 方)とポパーの反証主義を中心に論じられた。しかし、クーン(パラダイムに従ったパズル解きが通常科学ゆえ、事実上、この条件を満たすか満たさないかで 「科学」が拾い出される、てなこと)や新科学哲学による基準、さらには科学知識の社会学などのもっと新しい動きなども見渡した議論は参考になる。みずから 「奇を衒った」アプローチと断って、主として「疑似科学」(筆者のような世代では、この字は抵抗を覚えるので、「擬似科学」と書きたいが)を題材に取り上 げているが、ヤバイ題材もしっかり調べて書かれているので、学生諸君はウェッブ掲示板上での、それこそ「ヤバイ、無責任なおしゃべり」を追いかける前に、 著者のような調べ方を見習ってもらいたい。

ただし、ホンモノの科学、例えば一般相対性理論に関する事柄などについては、著者の記述には少々 ヤバイところが散見するので気をつけてもらいたい。著者のような力量のある人が「疑似科学」を題材として追いかけるのは問題ないのだが、キミたちのように 科学の素養に乏しい人たちが、ホンモノの科学を調べることをないがしろにして「疑似科学」ばかり面白がって追いかけるのは「要注意」やゾ!


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