Recursive Definition
The recursive definition of truth
第36節、モデルの定義における式の真理条件の設定は、原子式の真理条件から始め、だんだんと長い式の真理条件を決めていく形になっている。このような形の定義を、一般にrecursive definition (帰納的定義)という。したがって、モデル理論において妥当性やその他の性質が成り立つことを証明する場合、この帰納的定義の構造を生かすような証明を心がけることが大切である。要するに、「妥当性を証明せよ」 という問題は、recursive definition から生じる性質だけを使って解ける。
そ のことがわかってない学生のうちには、集合論の定理などを援用した証明を与えようとする博学なアホ(としか言いようがない人)もいるが、真理条件の定義に は、集合論の道具立ては使っていても、集合論の定理などは使っていないことに注意されたい。(こんな証明は、たとえて言うならば、捕まえたノミを爪でひね りつぶして殺せるのに、機関銃で銃殺しようとするようなもの!)これまでも何度も注意したように、論理学や数学基礎論においては、「とにかく証明すればよ い」のではなく、「どういう方法で証明するか」が重要である。これに鈍感では、後に出てくる「ヒルベルトのプログラム」の意義などわかりようがないし、ブ ラウワーの直観主義の「迫力」もわからないことになる。
後に自然数論(算術)の公理化のところでも出てくるが、たし算やかけ算の性質も帰納的定義を使って規定される。ある自然数aの後者(a+1のことだが、たし算を使わずに定義される)をa'と表すことにすれば、たし算については
a + 0 = a
a + b' = (a + b)' 、
かけ算については、
a×0 = 0
a×b' = (a×b) + a
という帰納的定義を与えることができる。「後者」の関数を使ってたし算、さらにたし算の関数を使ってかけ算が定義できるというわけである。数学的帰納法とのつながりが明白であろう。