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気に入らない症状
怪しいところ
対策(1)
対策(2)
対策(3)
複合型への展開
対策アダプター
測定結果一覧測定に伴う変更箇所を青い文字で書いています。
できてしまった八角堂ことBH-888VS。BHは言わずと知れたバックロードの略。
VSは縦巻きスパイラルにちなんでvertical spiralの略です。88ESの8ふたつと、八角形の8を合わせて888としました。
なかなか元気の良い音を聞かせてくれますが、癖のきついところは、作りたてで思うように鳴らないという次元を明らかに超えています。
なんとかしたいのですが、、、、、。(調教といっても鞭は使わない。)
気に入らない症状
サイン波スイープで確認してみると、100Hz、160Hz、240Hz付近にピークがあるように聞こえます。
これらのうち240Hzと160Hzはホーンとユニット前面のクロスオーバー周波数と上昇したF0の重なる帯域に近く、上昇したQ0の影響を受けている可能性があります。
長岡氏設計のスーパーフラミンゴや、他のFE88ESを使ったバックロードで現われている症状です。
よくよく聴いてみると、ぐわんぐわんと膨らんで低音域の解像度を落としているのは、100Hz付近のピークのように思えてきました。
この帯域の共鳴音の質が大変悪いので、オーディオプロセッサSH-D1000で100Hz付近を下げる補正をしても、思ったほどの改善効果にはなりませんでした。
2000年夏からは簡易測定環境ができたので測ってみました。リスニングポジション、左右両チャンネル同時測定、また、後で出てくるキャンセルマグネット対策済みです。
右肩下がりの直線が元信号ですので、これを基準に比較してください。
マイクアンプの特性を補ってやるためには、40Hzで+2dB、32Hzで+3dB、20Hzで+6dB補正して見ます。
240Hzのピークと思っていたのはその手前が凹んでいるため感じただけのようです。
それにしても100Hzと180Hz付近のピーク、その間のディップは予想以上に凄まじいものがあります。
その他マイナーですが、45Hzと70Hzが小さな山になっているのはBH-1108ESでも見られた特性であり、部屋の特性と言えます。この部屋の特性は、全体としては好ましい方向に働いているようです。
さてさて、100Hzというとどこで共鳴しているのかというと、、、
怪しいところ
ホーンは共鳴管に他ならないですし、内部で定在波が立つ可能性も十分あります。
定在波とすると、1波長が340m/100なので、半波長になる長さ170cmの区間が怪しいということになります。
両端開口の共鳴管でも同様です
片面開口の共鳴管だと、1/4波長に一致する区間になりますので、出口から340m/100/4=85cmの部分までが対象になります。
下の図は、八角堂の音道のつながりを簡素化したものです。途中で2分岐してそのまま別の出口に開口するのが特徴です。
片面開口の85cmに相当する部分は、当てはまる区間がありません。
定在波になりそうな、ホーンの折れ目と折れ目の間で170cmになるようなところもありません。
もったいぶった順番で書きましたが、両端開口部を結ぶ分岐後の後半部分どおしを繋ぐと、ちょうど170cmになります。
しかも、この後半部分の付け根を見ると、直管としてつながっているのと同然であり、折り曲げも90度しかありませんので、共鳴しても不思議ではありません。きっと、これです。
対策(1)
とりあえずはQ0の上昇を少しでも食い止めようと、キャンセルマグネットでユニットの磁気回路強化に臨みました。
準備したのは、Φ80(外径)×Φ40(内径)×10(厚さ)mmのドーナッツ形磁石と、Φ50mm×10mm(厚さ)の円盤型の磁石です。
磁束を磁気回路に押し込むには、円盤形の方が好ましいらしいですが、径が小さいのでどちらが効果的かやってみないとわかりません。
サイン波スイープ
‥‥‥‥、違いが分かりません。きちんと測定すれば変わっているのかもしれませんが。
音楽ソース
音を出した瞬間、あれっと思うくらい違いますが、なにがどうとは表現できません。
活きは良くなったようです。ボーカルは若干すっきりしたようですが、一番気になる100Hzの共鳴音には、当然のごとく全く効きません。
考察
100Hz以下はすでにF0より低い周波数なので、Q0を下げたからといって低音不足になるようなことはない気がします(本当か?)。
今回の変化が磁束強化の効果なのか、磁石の体積分空気室の容量が変わったせいなのかわかりませんが、箱の側の最終的な対策後、好みの方向になるような組み合わせにしたいと思います。
対策(2)
簡単なことから順番に。バスレフのチューニングでも良くやる穴塞ぎ。
2手に別れたホーンが怪しいので、TAOCの鉄製のスピーカー台で片方の出口を塞いでしまいます。
サイン波スイープ
30Hzと35Hzの間から低いレベルですがレスポンスがあります。
リスニングポジションでそのまま周波数を上げていくと、上げていくと、、、凹凸がない。全然ない。
作りっぱなしのように200Hz付近で段差がつく感触もなく、周波数が上がるにつれてずるずるとレベルが上がっていく、なんとも不思議な感覚です。
160Hzのピークも消えてしまいました。全く意外な展開です。
これが1kHz以下だら下がりと表現されるの音なのか?
音楽ソース
音楽ソースを聴いても癖がなく、量は減りますが、低音まで非常にクリアな音。
量が減って全然駄目かといえばそんな事もなく、ソースによっては、ローエンドが伸びた効果が効いて、好ましい場合もあります。
開口が半分になったにも関わらず、これだけイケるとは、丁寧に広がりを計算したあの設計は何だったのでしょうか?
家内が言うには、
「ぼわんと余韻があったのがなくなって、音がはっきり聞こえるようになった。」とのことです。
考察
ゴタクをならべても証明できるものはありませんが、とりあえず、元々の共鳴音が両端開口で100Hzにピークの出ていたものであれば、片方を行き止まりにして片側開口としたことで共鳴周波数は50Hzになり、ピークの効果がわかりにくい帯域に落ち着いた、と言うことがあるかもしれません。
ローエンドが伸びたように聞こえるのも、このためかもしれません。
では、耳障りな強調感が50Hzに出たのか、というと、そんな事はありません。
後で出てきますが、左右の開口部の位相差が悪さしている可能性があります。
ホーンとしては、広がった音道が一旦狭くなってまた広がるという効率の悪いものであるにも関わらず、何も知らずに聴いたら結構聴けるものになるのが不思議です。
測定
聴感による印象を先に公開してしまってますので、耳の悪さがバレやしないかと恐る恐るの測定です。
前のグラフ同様、右肩下がりの直線が元信号ですので、これを基準に比較してください。
確かに耳障りなピークはすっかりなくなりました。
そのかわり100Hzから200Hzが薄くなり、あっさり味の音もなんとなく納得できます。
測定でもローエンドは片方を塞ぐ前よりも伸びています。
なぜそうなるのかはわかりませんが、中低域が薄くても、元のような凸凹特性よりもはるかに良い結果が得られました。
対策(3)
T分岐ホーンの後半部分でパイプ共鳴しているなら、両端開口の出口は逆相のはず。
2手に別れているから気になるけれど、これを一つにまとめてしまえば打ち消しあってピークが消えるのではないかという目論見から、かずさんの小鳥ちゃん方式、音道の追加テストをやってみました。
八角堂のお尻の部分に、上から見てコの字形に1本の音道を付け加えて、出口を1個にまとめました。
本格的に追加音道を製作するのでなく、端材をツイタテのように立てて、倒れないように抑えておくという、積木みたいな対策です。
しかも、そう都合の良い端材がある訳もなく、開口面積もでたらめ、左右でも開口が違うし、接着さえしていないので音漏れ放題、振動しまくりの悪条件です。
開口面積は、オリジナルの約1.5倍程度でのテストです。
サイン波スイープ
低い方は、レベルは低いものの30Hzからレスポンスあり。高調波ではなく確かに30Hzの音です。
100Hzのピークは残っています。きれいにキャンセルはできていないようです。
160Hz, 240Hzのピークも同様です。
音楽ソース
気になっていたピークの癖が気にならなくなりました。全く、全然、これっぽっちも。
当たり前のように低域の量感が豊かになり、108ES機のバランスに近づきました。何とも素直な変化です。
低音のゴツッとし感じは後退したように感じられますが、このゴツッというのが曲者で、ピークの癖、強調感と微妙にリンクしているようです。
考察
ローエンドが伸びたのは、ホーン長が伸びたので当たり前。こんないい加減な端材のツイタテでも効果はあるものです。
100Hzのピークのレベルが高いだけでなく、妙に耳障りなことは、前から気になっていましたが、これはすっかりなくなりました。
ピークの量も変わったかもしれませんが、逆相の100Hzが放射されていたために違和感が生じ、低域全体の解像度を落としていたのかもしれません。
わずか20cm離れた所から出る逆位相の100Hzが、違和感と強調感、解像度低下の原因だったのか?
測定
再び測定です。
未対策と同条件ですが、わずかにボリューム位置が変わっていたかもしれません。サイン波の元信号を基準に比較すれば問題ないでしょう。
前のグラフ同様、右肩下がりの直線が元信号ですので、これを基準に比較してください。
(JavaScriptを「ON」にしておけば、マウスカーソルをグラフの上に持っていくと未対策のグラフとスイッチします。)
驚きました。激変とはこのこと。
100Hzから200Hzの凸凹がきれいに平らにならされ、80Hzの落ち込みも小さく、40Hzまでフラットと言っても何の差し障りもないくらいになりました。
しかも中低域の落ち込みもありません。スペアナで見たら一直線ではないでしょうか?(言い過ぎか、、、)
それにしても、これは、ちゃんと対策を実行せよということか?
複合型への展開
開口部の一方を塞いだのが結構イケる音だったので、ひょっとして共鳴管とバックロードの複合型が設計できるかもしれません。
つまり、2手に別れた一方だけでも十分滑らかな広がりを持つように主音道を構成し、出口を同じくする共鳴管を形成しておくのです。
言い換えると、T分岐ホーンの一方を塞ぐ形としますが、片方だけでも十分な広がりを持つようにするというものです。(下図参照)