FE108ES2用バックロード「八角獣」



FE-88ESで作った八角堂ことBH-888VSが拡張アダプターを使った状態で、FE-108ESを使ったトールボーイを一蹴する出来に大変身したのに気を良くして、FE-108ES2では八角堂の10cmバージョンを作ることにしました。

デザインはイカツくて音も獰猛な感じになりそうなので、10cmの十を引っかけて「八角獣」と呼びます。


最初っから名前まで決めて入れ込んでる時ほど失敗するんですよねぇ、、、。

アプローチ、方針、能書き
音道設計
板取
組み立て
おまけのパーツ
拡張アダプターの調整
測定と試聴
測定(2)近接測定結果New !

使用した金属部品

アプローチ、方針、能書き

基本的な構造は8cmバージョンと同じですが、木でできる範囲での徹底補強と制振でユニットに負けない丈夫な箱を目指します。

ユニットに近いところから能書きを書いてみます。

ユニット ユニット後ろ側からマグネットに砂を押し付けてダンプします。
悪い振動は元から絶たなきゃダメッ!

そのために、空気室内にそれ用の構造材を入れますが、同時に補強材となるように工夫します。

空気室内の砂が悪影響(音を吸ってしまうとか)が出た時に、砂を取り出してもメリットが残るような構造とします。

サブバッフル 流行に乗って金属サブバッフルを使います。
丈夫にすることはもちろんですが、ユニットの付け外しを頻繁にしてもネジ山が安心なのがうれしい。

7-8mm厚にして、本体のバッフルに5mm程度埋め込みます。
サブバッフルと言うよりも、本体と合わせた複合バッフルか。

本体バッフル ユニットはサブバッフルにしっかりと取り付けられるので、本体のバッフル抜き穴はΦ120mmとして、気道を十分に確保します。

隙間が狭くても影響は小さいという報告もありますが、それは既存のシステムにサブバッフルを後付けした場合だから出てくる話です。
今回は新設計ですから最初から音の抜け道に配慮します。

強度さえ確保されていれば、抜き穴の抵抗は小さい方が良いというのが信念です。

今回も重くて固くて割れにくい桜無垢材を使用します。ここまでくるとコスト度外視です。

空気室 正面からの断面は八角形、天板を取り外しできるようにするために天板のみ金属板を使います。
もちろん、これは砂を出し入れするため。

砂の量による容積変化に対応するために大き目の空気室容積として、端材等で調整可能なようにします。

スロート スワンに代表される点音源の最大の弱点(点音源実現の観点では長所)は細いスロートです。

音場感を損なわないために幅を広げるのは避けたいので、背中側を二重にして背板2枚の間に間隙を設け、砂を入れてダンプできるようにします。(詳細は音道設計参照)

また、ボディの上に乗っけるだけでは不安なので、ボディとスロートを繋げる橋渡しの板を使います。

ボディ 組み立てた後に外側から補強できない部分は2枚重ね、または2枚の板の間に隙間を設けて砂を入れる構造として強度確保とダンプを狙います。

スーパースワンが良い音なのは確かなのですが、見た目のバランスは悪いと思います。
そこで幅を330mmに抑えてスリム化し、ボディ高さも465mmとすれば黄金長方形のできあがり。
正面から見る限り、均整の取れたスタイルになると思います。

また、作り難さもスワン型の欠点。
八角堂型は細いCW型を3つ並べた構造なので製作は比較的容易、この構造は引き継ぐこととします。

やはり、スーパースワンは大きな目標になります。

さて、能書き通りにうまくいけばすばらしいのは当たり前ですが、どこまでいけますやら。


音道設計
8cmバージョン(八角堂)がうまくいったので、これを拡大した音道構造とします。

前半の内周と左右に分かれた後半の外周は、8cmバージョンでは幅が異なりましたが、今回は作りやすさとミス防止を兼ねて、同じ9cmの等幅とします。

その他に、どうしても未練が残るので、直管ではなくきれいに広がるコニカルホーンで作ることにしました。
広がりをきれいにし過ぎると、まさに途中でちょん切ったホーンそのものになる恐れ大ですが、そのあたりのマッチングを拡張アダプタでの調整に期待します。




板取

フィンランドバーチ(1220mm×2440mm)15mm厚を2枚使いきりとなるようにします。ほとんど余りは出ないので、3×6合板であれば3.6枚分相当になります。

まさかいらっしゃらないと思いますが、真似したいと言う方がいらっしゃいましたらメールにて対応します。



組み立て

バッフル取り付けのアダプターリング(SUS304製)ができてきました。
厚さ7mm、5mm埋め込み、出っ張った2mm分だけテーパーをつけています。



おまけのパーツ

考えてみればダイキャストフレームにステンレスのリング。
普通、隙間ありますよね〜、ミクロにみれば点接触ですから。しかも、フレーム裏面にはいろんな凹凸や刻印があったりして、結構接触面積は小さく見えます。
といって、付属のパッキンはヘナヘナで、使う気になりません。

結局作ってしまいました。1mm厚コルクシート製。
良いか悪いかは、、、さあねぇ、気になりませんが、結構しっかり止まって精神衛生上の効果はありました。^/.^



拡張アダプターの調整

必要になればね〜。と思ったんですが、一発勝負で音を聞く前からくっつけてしまいました。
写真は塗装前。



測定と試聴

砂なし(デッドスペースは空洞)、空気室に洗車スポンジを10×13×4cm、自作パッキン使用。この状態での重量36kg。

8cmバージョンの八角堂に比べてローエンドが伸びているのは一聴して伸びてますが、伸びたところの解像度はいまいちに聴こえます。
ボーカルがきつく、よりソフトを選ぶ方向。
エージングと砂でかなりの部分の不満は解消しそうな感じです。

そして、今ごろ気づく設計ミス。
ヘッドの天板が小さすぎて、ツィーターが乗りません。(涙;)八角ヘッドの宿命。

で、測定。
f-response lr

8cm版を部屋の隅へ追いやり、正規の位置へセッティングして取り直しました。
中低域の暴れはセッティングでいくらでも変わるようです。
200〜300Hzの谷間は8cm版の八角堂でも確認していますが、共通の原因だとすれば、ホーン出口のデッドスペースに砂を詰めれば目立たなくなると思います。
ピークは出口に詰める予定の吸音材を調整で何とかなれば良いな、と期待。

ローエンド(部屋の特性込み)は40Hzまで中域と同等、30Hz-12dB、21Hz-20dB(8cm版はそれぞれ-19dB、-34dB)と、8cmと比べると肺活量の違いを見せます。
数字で見るとこの程度ですが、音楽を聴くとこれ以上出てもらってはバランスが壊れてしまうと言う程度のレベルに聴こえます。あるいは、中途半端に出ているものだから解像度不足に聴こえるのか‥‥。

フロアノイズと比較するためにレンジを変えてホワイトノイズで測ると1-5kHzが10dB近く盛り上がっており、108ESのキャラクターを匂わせます。

そして、雑誌記事やユーザーによる測定でも見られていた注目の1kHz付近の谷間は全くありません
今回のと同じ測定系を持ち込んでスーパースワン(108ES2使用)を測った時には、雑誌等と同じ1kHzの谷間がはっきり現れましたから、あの108ES2機に共通して見られた1kHzの谷間は箱とのマッチングによるものであると断言できます。

そちらの方も、確認のための改造をできる構造にしてありますから、そのうち追加測定ではっきりさせたいと考えております。

さて、ボーカル等で88ES機にも得意分野があるとはいえ、この調子なら思惑通り本機をメインに使えそうな雰囲気。
八角堂はどこへ行く‥‥。

測定(2)

スピーカーの設置場所がPCから遠いのでなかなかできなかった近接測定。
当然耳に聴こえるのとは違いますが、ホーンがどのくらい効いているのか、ホーンからの中高域の漏れはどの程度かというのを確認するのには、なかなか使える方法です。

さっそく、測定結果。
f-response lr

赤色がホーン出口青色がコーンの直前5cmです。
借り物のノートPC内蔵のサウンドカードで、ハウリング気味。あくまで参考データですが、ホーンからの最低域の出力は意外とフラットでした。
適当に作ったデスクトップバックロードの特性とは、さすがに違いを見せます。

一方で、中域の漏れが結構あります
200Hz〜500Hzは何とかして落としたいところです。
このあたりに不満の原因があるのかもしれません。

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