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★★★ 年末年始@アリエス宮 ★★★
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1.現在準備中@13時
12月31日。
言うまでもなく一年の締め括りの日。
どちらかと言うと新年よりも冬至祭の方が数段重要とされる文化圏においても、やっぱり重要な区切りの日である。
勿論、ここ、ブリタニアという国においても、やっぱり重要で。
例え、その祝い方が、カウントダウンイベントなど、区切りを祝うと言うより馬鹿騒ぎの方に比重が傾いていないか? という感じであろうとも。
重要なんだったら重要なんである。
特に。
皇宮の一角――加えて言うなら本宮においては、めちゃめちゃ重要視されている日、だったりするのだ。
何故か、と言うと。
現在本宮の主である今上帝の特殊な生活環境が原因だったりする。
何しろ今上帝は、『冬至祭? 何それ。年末年始の方がはるかに重要でしょ?』と言う国民性を持つ、日本と言う国で長年暮らしてきた為だ。
――え? 何を言ってる、今は冬至祭も重要でしょ? と?
あ、いや、勿論、冬至祭も、日本で今では国民行事の一環として定着しているイベントである事は、間違いない。
うん。間違ってないったら間違ってない。
が。
今上帝が『日本』に暮らすようになった環境が、ちょっと世間一般とはかけ離れていたのが、原因と言えば原因である。
何しろ彼が日本に訪れて最初に暮らしたのは、枢木『神社』――たとえ実際の住居がその奥の方にあった土蔵だったとしても――なのだ。
一応は由緒正しい神社であるからして……年末年始の参拝者はかなり多く、勿論神社における行事や何やもしっかりあるわけで…。
日本に置ける年越しイベントが、異文化圏から訪れた少年に強烈なインパクトを与えたのは、仕方が無いことだろう。
しかも、当時彼の唯一に近い身近な人物が、日本文化保持協会とも言える、京都六家出身者であり、日本人でも、最近そこまでやらないよなぁ?
と言うぐらい色々徹底した環境で育ってきた人物であって…。
卵から孵った雛の如く、日本における年越しイベントが刷り込まれたのは…宜なる哉。
閑話休題はなしをもどして。
皇宮のはずれに在りながら本宮と言う、『聊か設定間違ってないか?』と言うアリエス宮。
現在、新年を迎える為の準備が急ピッチで進んでいる。
――え? 何で今頃なんだ、ですと?
それは勿論、陣頭指揮を執る人物が、前日まで公務の〆作業に追われていた為である。
で。
今現在、使用人たちを『真っ白☆』にするような事態が現在進行形で発生中。
例えば。
黒髪の皇帝陛下が、割烹着で厨房を占拠。
大量の食材相手に獅子奮迅の活躍中。
あまりの手際の良さに、使用人たち誰一人として手出しできず、止めもできず。
陛下の指示に、『いえっさー!』と従うしかなかったり。
緑髪の皇妃殿下がその横で、同じく割烹着に三角巾で、作業中。
黒塗りの四角い木箱――重箱と言うものらしい――に、てきぱきてきぱき、料理済み食材を詰めて行く。
その手際のよさと盛り付けの美しさたるや、『どこの老舗料理店?』と言うほどだったり。
勿論、朱焔の騎士殿や蓮花の騎士殿も、やたらイキイキと作業中である。
完成した重箱を運搬したり――崩すべからず!――、足りない食材を運搬したり……まぁ、要は雑用であるが。
これが騎士の仕事なのかと言う疑問は、口に出してはいけない。うん、きっとそう。
正直、耐性があっても無理!!
使用人たちが絶句して、或いは魂を明後日に飛ばして固まっているのは、仕方ないことだろう…。
2.開幕待ち@18時
大晦日の夜。
アリエス宮の、さらに別館の一角に集まったのは、そりゃもう凄まじいとしか言いようが無い、豪華な顔ぶれだった。
本宮居住の皇帝皇妃に加えて。
基本別館で起居している副宰相オデュッセウス、皇姉ギネヴィア、皇妹カリーヌと言った、皇族の面々。
更に加えて。
朱焔の騎士ジェレミア、蓮花の騎士アーニャ、蒼氷の騎士ロイド、紺碧の技師セシルと言った、皇帝直属の面々。
ある意味、ブリタニアの中核揃い踏みだ。
オデュッセウス&ギネヴィアが湯飲みで日本茶を飲んでいたり。
お茶とお茶請けを用意したのが、言うまでも無く黒髪の陛下だったり。
無くなるとすぐ気付き、甲斐甲斐しく追加を入れてくれたりもする。
勿論、それに恐縮して、と言うか断ることが出来ず、ジェレミアが通算4杯目を飲んでいたり(いい加減、飲みすぎかもしれない)。
女性陣が、お茶請けの和菓子を話題に盛り上がってたり。
そこに、『やっぱりお菓子はプリン、陛下お手製の☆』だとロイドが割り込み。
思わず一同が首肯したり。
和気藹藹。
その言葉が相応しい賑わいである。
が、ハッキリ言って、カオスだ。
忘れる無かれ、一応此処は、皇宮である。
まぁ、誰も気にしてはいないが。
こんこん。
小さなノックの音が聞こえて。
「お客様がご到着なさいました」
と、黒曜の髪と紅珊瑚の瞳の女性を先導に、金髪に星青玉の瞳の女性と、紺青の髪に軟玉の瞳の少年が入ってくる。
「「お邪魔しまーす!」」
『いらっしゃい!』
3.準備進行中@18:30
「お二人とも、どうぞ」
茶器とお茶請けを運んできたのは、皇妃さまで。
「あまり食べ過ぎるなよ」
と言いながらお茶を注ぐのは、皇帝陛下。
「わかってるわよぉ」
「そうそう!」
にっこり笑って、打てば響くように言葉が返る。
「るるーしゅの手料理が食べられるんだからな!!」
「るるちゃんの手料理が食べられるんですもの!!」
「……一応、お茶請け(コレ)も俺が作ったんだが…」
『えええええ!!?』
大合唱はお約束。
※※※※※※※※※※
「さて、準備をしてくる」
と、大合唱が終わったのを見計らい、黒髪の少年が立ち上がる。
「お前も手伝え」
「でぇぇぇ。俺ぇぇ?!」
「運ぶぐらいできるだろう?」
「ううぅぅ〜、わかりましたぁ〜」
到着したばかりの紺青の少年を引き摺って部屋を出る。
じゃれあいにしか見えないのは、ご愛嬌。
厨房に入った後。
「準備は?」
「ばっちり♪ 話も通してあるよ」
「そうか、助かる」
「何の何の〜♪
……で、そっちの首尾は?」
「聞く必要があるのか?」
「いえいえ〜、滅相もございませんです、はい」
と会話があったのは、二人だけの内緒ごと。
4.開始@20時
いい香りの透明なお出汁。
つやつやとした細い蕎麦。
見た目からしてサクサクな大きなかき揚げ。
言わずもがな、年越し蕎麦である。
とっても美味しそうな。
「どうぞ、召し上がれ」
『頂きます!』
とっても平和な、年越しの風景である。
――が、それがブリタニア皇宮の居間に繰り広げられているのは、ひっじょーーに違和感があるような…気が……。
と思うが、言ったら負け、である。うん。誰も何も言ってませんよ?
「不思議な味だねぇ」
「本当に」
「でも」
「美味しいねぇ」
「美味しいわぁ」
何故か器用にお箸を使う年長組。
一体どこで身に付けたのやら……。
一方、年少組は、上手く箸を使えず、四苦八苦。
細くてツルツルした蕎麦は、丸箸では慣れないと掴めない。
かき揚げなら、と挑戦するも、こちらはこちらで、油で滑ってつるん、と逃げる。
「「うぅぅ〜」」
「ほらほら、無理しないで、フォークを使えばいいだろう?」
「「うぅ〜」」
顔を赤らめる妹達に、優しく慣れた食器――ちゃんと最初から卓上に出ていたが、取り敢えず挑戦してみた模様――を渡してやる。
「熱いから、気をつけろよ?」
「「はぁーい…」」
「……美味しい」
「うん、美味しいね」
顔を見合わせて、くすっと笑いあう。
「う〜ん。やっぱり、るるちゃんの料理は美味しい〜」
「ホントだよなぁ〜。って、もしかしてこの麺…蕎麦だっけ、これも作ったのか?」
「? ああ、そうだが。……やっぱり素人が打ったから、美味しくなかったか?」
驚きに凝固した面々を思わず心配そうに見やる。
「んな訳ないっしょ!」
「ってか、なんで蕎麦なんて打てるの!?」
「流石に本国だと麺そのものの入手が難しくてな。
保存が可能な粉を取り寄せて作ったんだ。な?」
「はい」
とっても麗しい1対の微笑みに。
(((((((…………)))))))
一同が絶句したのは――まぁ、お約束である。
ちょっとした(ちょっとか?)驚愕を持って、お食事会は終了。
5.ご挨拶
「……3…、2…、1……!」
「「「Hppy New Year!!」」」
「「「今年もよろしく!!」」」
軽いシャンパンの音――が響いて。
「こんな辺境サイトにわざわざ来てくれて感謝する」
「「「「ありがとうございます」」」」
「ほぉーんと、感謝してまっすぅ〜♪」
「来年も、よろしくお願いしますねぇ〜」
「それでは」
皆様、良いお年を!
みずき様の「死者の国に咲く花」から、年末年始のフリー小説頂きました〜!
管理人が大ッ好きな抹消シリーズからのひとこま。
割烹着着て使用人達の度肝を抜きまくりながらてきぱき御節作りに励む皇帝夫婦がものっそ素敵ですvv
なんでもない顔をして蕎麦まで打っちゃうブリタニア皇帝がvvv
きっと美味しいんだろうなぁ・・・是非とも食べてみたいです!
みずき様、ありがとうございましたー!!
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