隣に立つ者は誰か
共に歩む者は誰か
生死さえ儘ならぬ戦場に立ち
其の答えを育みながら
只々現実を生きるのみ
一番大切なものは
序章
月も見えない晩だった。
薄く雲に覆われ、僅かな星明りさえ差さぬ漆黒。
熱く乾いた砂混じりの風が吹き付ける荒野。
空気が、揺れる。
気配が、疾駆る。
視覚は闇を塗り込められ、主に他の感覚がその場の状況を鋭敏に察知する。
視覚に捉えるものといえば、闇より深い夜を魅せる影。
そして、時折鈍色に瞬き、揺らめくものが舞の様相を呈していた。
キィン、刃が触れ合い、擦れ合う音。
何か、重い塊が地に落ちる音。
小さく、風に紛れる微かさで毀れる―――断末魔。
昼に生きる者ならば、きっとその場で何が起こっているかも理解出来ないだろう。
ドサッ。何かが倒れる音と共に、彼らの舞は終局を迎える。
荒野に立つのは、ただ二人。
地に放たれた青白い炎が、黒い影を照らし出す。
炎は爆ぜる音もせず、空気を揺らす気配すら示さずに、物と化した死者と役目を終えた凶器を呑み込み消えた。
ふと、一つの影が黒面を取り、ゆらり、荒野の向こうを見据える。
くん、と小さく空気を嗅いで息をつき、もう一度面を被り直す。
もう一つの影は印を組んで握った手を開き空に向かって突き出す。
すると、二羽の鳥がその手から飛び出し、静かに別の方向へ羽ばたいていった。
無言で行われる一連の動作の後、二人は微かに頷き合い、音も無くその場から消えた。
月の見えない晩である。
雲が流されて、無数の星々が柔らかな光源となって瞬いている。
熱く乾いた砂混じりの風が吹き付ける荒野。
夜目が利く者ならば、白い砂の中で僅かな水を得て生き忍ぶ草花の存在も見て取れたろう。
先程起っていた事の痕跡は無く、いっそ不自然なまでに自然な風景がそこにはあった。
鈍色と共に影が舞い
先駆けよりも早く影が葬り
温度の無い炎で以って闇が呑み込む
闇夜に還ること。闇に還るまでのこと。
全てを知るものは、風と草木の他に、ここにはいない。
潔癖に尽く異物を抹殺した荒野。
風の呻りとカサカサと乾いた葉のこすれる音が、そこでは頼りなげに空気を震わせていた。
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