関係。







 疑問は突然やってくる。




「二人ってさ〜、どんな関係なの?」




 街中でたまたま知り合った女の子に、二人のことを聞かれた。


答えようとして、そこでふと考える。


 ・・・・・・そういや俺とカルノって、どういう関係なんだろう、と。




  友人関係




というのも、どこかサムい気がする。というか、サムい。そんな錆付いた鉄みたいな、いつでも壊れそうな関係なのだろうか。


 ・・・そんなことはない、と思う。第一、自分がそんなことにはさせない。




  親友




 では、あまりに空々しい。友人の延長。近いようで、随分遠い位置だ。これも、ない。


 でも、




  他人




というには、色んな事を知り過ぎている気がする。



  色々な事件


  色々な秘密


  沢山の時間を


  共有しすぎている。




  一緒にいるだけで、落ち着く存在。




 一番当て嵌まるけど、何かが違う。何かが足りない。


 だって・・・今隣に立つ彼は・・・どう言って良いか解らないくらい、大切だから。大切なんだけど、それだけじゃ足りないくらい、大切だから。





 ――どういう関係なんだと思う?


 ・・・カルノ。





















「どんな関係なの?」




 街中で偶然少しだけ話した女が、そんなうぜぇことを聞いてきた。俺と勇吹の事を言っているらしい。



 ―どんな関係?



 そんなくだらないこと、聞かれたって解らない。自分はこうだと思っていても、勇吹はどう思ってるのか知らないし。


 その、当の勇吹は今の質問に深く考え込んでしまった。




  友人以上、恋人未満。




 それで良いのではないだろうか。何故、そんなにグズグズ考え込むことができるんだろう。・・・こんなに、単純な質問なのに。


 自分の答えは、もう出ている。


 でも、言わない。


 勇吹の答えが聞きたいというのもあったが、自分が答えるのが面倒なのだ。


 だから、だまって勇吹が答えを出すのを待つ。























 ・・・・・・・・・女の子が焦れてさっさと帰ってしまった後も、何で自分はこんな喫茶店で考え込んでいるんだろう。




『どういう関係?』




 小さな、でもどうしても気になるしこりが、腹の中で溜まっている。



 カルノは・・・カルノは・・・・・・























 さっきの女が帰っても、目の前にはまだ悩んでいる勇吹がいる。コーヒーをすすりながら、時々こっちを見て、う〜んと唸っていたりもする。


 助け船は出さない。これは、自分で答えをださなければ意味はないのだ。


 勇吹の一言で、きっと自分の今の気分が変わるんだろうな、とつくづく思う。・・・もう自分はちゃんと自覚しているのだから。























 ・・・・・・・・・まだ、やっぱり悩んでしまう。カルノはさっき三杯目のコーヒーを注文した。


 カフェインの取り過ぎは体によくないよ、といいたくても、ここに留めてしまっている自分が言える台詞じゃない。


 ・・・一応、考えはまとまっている。でも、こんなに安っぽい言葉でいいんだろうか?




「・・・・・・・・・・・かけがえのない人ってどうだろう?」




 だから、聞いてみるんだ。














「・・・悪くないんじゃねぇ?」



 まぁ、こんなモノだろう、と考える。かけがえのない人・・・自分はこの前その人を死なせてしまった。・・・死んでしまった。


 ・・・・・・彼女は、やはり大人だったから、あっという間にいってしまっただろうが。でも、多分こいつは違うから。俺と一緒にいてくれそうだから。



 ・・・少しだけ、不満ではあったけれど。



 それでもいいかと、俺はちょっと上目遣いにこっちを見る勇吹に、そう言って少しだけ笑った。





 ―――その先に望むものは・・・?


end




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