『スペース・プレイヤーズ』:2021、アメリカ
1998年、オハイオ州アクロン。13歳のレブロン・ジェームズはバスケットボールの試合に出るため、仕事で観戦できない母のシャニースに会場まで送ってもらった。試合前、レブロンは友人のマリクから「お古だけど、やるよ」とゲームボーイをプレゼントされた。彼はゲームで遊んでいる間に夢中になってしまい、コーチから「早くコートに入れ」と叱責された。慌てて試合に出場したレブロンは大事なシュートを外し、チームは試合に敗れた。
レブロンはコーチから「お前には優れた才能がある。バスケットに集中しろ。人生を変えたいだろ」と諭され、ゲームボーイを捨てた。彼は2003年のドラフトでクリーブランド・キャバリアーズから全体1位で指名され、2年連続でシーズンMVPを受賞した。マイアミ・ヒートに移籍するとチームの連覇に貢献し、2シーズン連続でファイナルMVPに選ばれた。その後、彼はキャバリアーズに復帰し、ロサンゼルス・レイカーズに移籍し、いずれのチームでも華々しい活躍を続けた。
現在、レブロンはロサンゼルスに豪華な邸宅を構え、妻のカマイヤ、息子のダリウス&ドムと暮らしている。彼は息子たちにバスケットを教えており、週末のバスケ合宿に参加させようとしている。ドムは12歳でゲームを自作しており、ゲーム合宿への参加を決めているが、父には言い出せずにいた。カリフォルニア州バーバンクにあるワーナー・ブラザーズのサーバーバンク。アルゴリズムのアル・G・リズムは計画にレブロンを引き入れ、彼の名誉と自分の技術を合わせることで認知されて尊敬を集めようと考えた。
レブロンはカミヤから「ドムに厳しすぎる。必要なのは父親よ」と言われ、息子が開発中のバスケゲームを見せてもらった。ドムは彼に、「世界中に生配信される。技を決めて上達すれば視聴者も増える」と説明した。実際のバスケとはルールが異なり、大幅にアレンジされている。レブロンが遊んでいるとエラーが出て、システムがクラッシュした。彼は映画の打ち合わせをするため、マリクとドムを連れてワーナー・ブラザーズのスタジオへ赴いた。幹部たちが同席する中、アルは「スパコンのワーナー3000でレブロンをスキャンし、アニメ映画に出演してもらう」と説明した。
ドムはアルの計画に高い評価を与えるが、レブロンは「アスリートの演技は必ず失敗する」と言う。彼が「俺はバスケに専念する」と映画出演を断ると、アルは激怒した。レブロンは帰りのエレベーターでドムからゲーム合宿に参加することを聞かされ、「バスケ合宿は?」と尋ねる。ドムは「バスケは嫌いだ」と告白し、「全て押し付ける。僕らしい生き方を否定する」とレブロンに反発した。アルはレブロンとドムをサーバーバースに取り込み、デジタル化した。彼はドムの姿を消滅させて人質に取り、レブロンに協力を要求した。
アルは「バスケで勝負だ。史上最多の囚われた観客の前で試合をする。注目が集まり、全世界が私を知ることになる」と語り、チーム編成をレブロンに命じてルーニー・テューンズ・ワールドに送り込んだ。アニメ化したレブロンはバッグス・バニーと出会い、アルの計画について語った。するとバッグスは、「あの悪党のせいで仲間が消えた。古臭いアニメ界は捨てろ、サーバーバースが似合うと吹き込まれ、全員が出て行った」と語った。
バッグスはバスケチームへの参加を求められ、マービン・ザ・マーシャンをおびき寄せて宇宙船を盗んだ。アルはドムに、「パパはバスケで対戦するチーム作りに出掛けた」と話す。彼はドムの才能を称賛し、バグで消えたキャラクターを一緒に作り直そうと提案した。バッグスは散り散りになった仲間を集めるつもりだったが、スーパーマンやアイアン・ジャイアントなど強力なメンバーを勧誘しようと考えているレブロンには内緒にした。
バッグスとレブロンはDCワールドに降り立ち、ダフィー・ダックとポーキー・ピッグを仲間に加えた。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ではロードランナーとワイリー・コヨーテ、『オースティン・パワーズ』の世界でシルベスター・キャットとエルマー・ファッド、『カサブランカ』の世界でヨセミテ・サムが加わった。タズマニアン・デビルとフォグホーン・レグホーンも加わり、『マトリックス』からグラニーが参加した。他にもトゥイーティーやスピーディー・ゴンザレス、ゴッサマーがチームに加わった。
レブロンが「冗談だろ、これが俺のチームか?」と漏らすと、バッグスは「サイバーバースで最強のメンバーだ」と言う。「せめてマトモな選手を1人くれ」と要求すると、バッグスは『ワンダーウーマン』の世界へ赴いてローラ・バニーを仲間に引き入れた。ドムはアルに、レブロンの紹介でデイミアン・リラードやダイアナ・トーラジらプロ選手のデータをスキャンしたことを話す。ドムのアプリを使えば誰のデータでもスキャンできると知ったアルは、助手のピートにコードを盗めと指示した。
ドムが「パパは僕のゲーム作りを認めない」と漏らすと、アルは「パパを君と向き合わせよう」と双方のチームを対戦させることにした。レブロンは集めたメンバーに練習させるが、まるで言うことを聞かなかった。アルは巧みな弁舌で、ドムを選手としてアップグレートした。ドムはアルの言葉に乗り、スキャンした選手たちをカスタマイズした。アルはレブロンたちの前に現れて「アップグレートしよう」と言い、バッグスたちを3Dアニメ化した。アルは配信を見ている人々をサーバーバースに引き入れ、レブロンの家族も移動させた。彼は観客に対し、「レブロンが勝てば元に戻れるが、私のチームが勝ったら永遠にサーバーバースからは出られない」と説明した…。監督はマルコム・D・リー、『スペース・ジャム』脚本はレオ・ベンヴェヌーティー&スティーヴ・ルドニック&ティモシー・ハリス&ハーシャル・ウェイングロッド、原案はジュエル・テイラー&トニー・レッテンマイヤー&キーナン・クーグラー&テレンス・ナンス、脚本はジュエル・テイラー&トニー・レッテンマイヤー&キーナン・クーグラー&テレンス・ナンス&ジェシー・ゴードン&セレステ・バラード、製作はライアン・クーグラー&レブロン・ジェームズ&マーベリック・カーター&ダンカン・ヘンダーソン、製作総指揮はセヴ・オハニアン&ジンジ・クーグラー&アリソン・アバーテ&ジェシー・アーマン&ジャマール・ヘンダーソン&スペンサー・ベイリー&ジャスティン・リン&テレンス・ナンス&アイヴァン・ライトマン、共同製作はキンバリー・ネルソン・ロカシオ&R・J・ミノ&キーナン・クーグラー&ケリー・ロビンス・ヒックス、撮影はサルヴァトーレ・トティーノ、美術はクリント・ウォレス&エイキン・マッケンジー、編集はボブ・ダックセイ、衣装はメリッサ・ブルニング、アニメーション・プロデューサーはトロイ・ネザーコット、デジタル・アニメーション・スーパーバイザーはケヴィン・マーテル、視覚効果監修はグレイディー・コーファー、音楽はクリス・バワーズ、音楽監修はキア・リーマン&モーガン・ローズ。
出演はレブロン・ジェームズ、ドン・チードル、クリス・デイヴィス、ソネクア・マーティン=グリーン、セドリック・ジョー、シーエア・J・ライト、ハーパー・リー・アレクサンダー、ショーシャ・ロケモア、スティーヴン・カンコール、ジャリン・ホール、ウッド・ハリス、ジョーダン・トーマス他。
声の出演はゼンデイヤ、ジェフ・バーグマン、エリック・バウザ、ガブリエル・イグレシアス、キャンディー・ミロ、ボブ・バーゲン、フレッド・タタショア、ロザリオ・ドーソン、ジャスティン・ロイランド、キンバリー・D・ブルックス他。
1996年の映画『スペース・ジャム』の続編。
『スペース・ジャム』と同様にルーニー・テューンズのキャラクターが登場し、実写とアニメを組み合わせている。
監督は『ガールズ・トリップ』『ナイトスクール』のマルコム・D・リー。
『スペース・ジャム』ではマイケル・ジョーダンが本人役で主演を務めていたが、そのポジションを今回はレブロン・ジェームズが担当する。アルをドン・チードル、マリクをクリス・デイヴィス、カマイヤをソネクア・マーティン=グリーン、ドムをセドリック・ジョーが演じている。
ローラの声をゼンデイヤが担当しており、ワーナーの女性幹部役でサラ・シルヴァーマンが出演している。
プロバスケ選手のスー・バード、アンソニー・デイヴィス、ドレイモンド・グリーン、デイミアン・リラード、クレイ・トンプソン、ネカ・オグミケ、ダイアナ・トーラジ、エイジャ・ウィルソンが本人役で出演している。
俳優のマイケル・B・ジョーダンが本人役で出演しているが、これは前作に絡めた「あのマイケル・ジョーダンが助っ人で参加するのかと思いきや、俳優のマイケル・B・ジョーダン」というネタ。「バスケットボールの大人気選手であるレブロン・ジェームズが、本人の役でルーニー・テューンズの人気キャラクターたちと共演する」という仕掛けが、この映画の最大の売りだ。
いや、もはや「唯一の売り」と言ってもいいかもしれない。
しかし説明不要だろうが、この映画に登場するレブロン・ジェームズは実際のレブロン・ジェームズとは別人の設定だ。
当然っちゃあ当然だが、劇中に登場するレブロンの家族は本物の家族ではない。それに本物のレブロンは3人の子持ちで、ダリウスやドムという息子はいない。ここで嘘をついていることが、本作品においては大きなマイナスだ。企画の根幹が崩れている。
本人役でも嘘の設定を用意して何の支障も無いケース、むしろ面白さに繋がるケースもある。この映画にしても、何から何まで「本物のレブロンと全て合致する設定」である必要は無い。
しかし息子の設定で嘘をつくと、全てが台無しになる。
「ファミリー映画だから主要キャストに子供が必要」ってことなら、それは構わない。
だけど、それならレブロンの実子じゃなくて「熱烈なファン」とか「友人や知人の息子」にしておけばいい。前述したように「レブロンとルーニー・テューンズのキャラクターの共演」が売りなのだが、その前にコンピュータのアルゴリズムを人間の姿で登場させている。
これは世界観をボヤけさせることに繋がっており、大きな失敗だと言わざるを得ない。
この映画ではカートゥーンのキャラクター以外に、非現実のキャラクターを登場させるべきではない。
ヴィランが必要なら、普通に人間のキャラを配置すればいい。もしくは、カートゥーンのキャラクターを悪役にしてもいいし。「コンピュータの世界にアルゴリズムが人間の姿で存在している」ってのは、全体を俯瞰で見た時に「余計な情報が多い」ということになっている。
そんなキャラを序盤で登場させてしまうと、「だったら、その世界観だけで物語を作ればいいじゃねえか」と感じるのだ。
そこから「レブロンがカートゥーンの世界に迷い込む」という展開に突入した時、「こっちの要素が欲張り過ぎで散らかっている」ということになってしまうのだ。アルは当初、レブロンのキャラクターを様々なアニメ映画に出演させる計画を立てている。
ところが、それを断られた途端、今度はバスケの試合に出場することを要求する。
いやいや、なんでだよ。ドムを人質に取ったのなら、「返してほしければ映画の話を引き受けろ」と要求すればいいはずだろ。
それなのに「アニメのキャラを集めてチームを編成し、バスケの試合に出ろ」という要求になっているのは、なんて適当なシナリオなのかと。レブロンと共演するアニメのキャラクターはルーニー・テューンズ限定なのかと思いきや、スーパーマンやワンダーウーマンなど他の作品からも登場する。ではレブロンのチームに加わるのかというと、そこはルーニー・テューンズに限定されている。
その程度で済ませるなら、他の作品のキャラは「ただ散らかしているだけ」になってしまうので要らないわ。
あと、粗筋でも書いたように、実写映画の世界に入るパートもあるんだよね。レブロンをアニメ化させておいて、その一方で実写映画のキャラクターを登場させるとか、本末転倒じゃないのか。実写映画の世界だとレブロンも実写に戻るけど、そういうことじゃねえから。
だったら「レブロンとバッグスたちの共演」じゃなくて、「レブロンが色んな実写映画の世界に入り込む」という話にすりゃいいだろ。
まあ、それたとレブロンを主演に起用している意味は皆無になっちゃうだろうけど。レブロンがルーニー・テューンズ・ワールドに送り込まれるとアニメキャラの姿に変身するが、「そういうことじゃないだろ」と言いたくなる。
普通に人間の姿でルーニー・テューンズのキャラと同居させないと、「夢の共演」を仕掛けた意味が無いだろ。
途中で3DCG化するのも違うなあ。ようやくレブロンが元の姿に戻ったのに、バッグスたちが3DCG化したら意味が無いでしょ。
「レブロンとバッグスたちの共演」という趣向が台無しになるでしょ。レブロンたちが対戦するチームのメンバーは、ドム以外は有名なプロバスケ選手ばかりだ。ところが全員がモンスター化されており、これも「バッグスたちの3DCG化」と同じく、せっかくの「有名選手たちの出演」という趣向を台無しにしている。
さらに、対決する方法は純然たるバスケじゃなくて、似て非なるゲームなんだよね。これもやはり、せっかく「レブロンとバッグスたちがバスケでチームを組んで戦う」という趣向を台無しにしている。
ルールはバスケのままにして、メンバーの能力や動きだけを特殊なモノにすれば良かったんじゃないかと。
しかも、ゲームとしても色んな飾り付けをしているせいで絵がガチャガチャしており、「バスケ対決」としての面白味は全く感じられないし。アルの口車に乗せられた形ではあるものの、ドムが大勢の人々を「サーバーバースに飛び込められて出られなくなるかもしれない」という危険に晒したことは紛れも無い事実だ。
しかしドムは悪党の片棒を担いだにも関わらず、そのことで何の反省もしないまま終わっている。
幾らドムが幼い男の子であっても、それは甘やかしすぎじゃないかと。
そりゃあレブロンの理解が足りなかったのは事実だけど、そういう親子関係の問題は置いておくとして、とりあえず迷惑を掛けた配信の視聴者には詫びるべきじゃないかと。(観賞日:2024年9月22日)
第42回ゴールデン・ラズベリー賞(2021年)
受賞:最低主演男優賞[レブロン・ジェームズ]
ノミネート:最低作品賞
受賞:最低スクリーン・コンボ賞[レブロン・ジェームズ&任意のワーナー製アニメキャラクター(あるいはタイム・ワーナー製品)]
受賞:最低序章&リメイク&盗作&続編賞