『フリー・ファイヤー』:2016、イギリス

マサチューセッツ州ボストン。バーニーは目に痣を作った相棒のスティーヴォを助手席に乗せて、車を運転していた。彼らが向かっている場所では、ジャスティンとクリスとフランクが銃の取引のために待っていた。クリスはジャスティンに「フランクの仕事は?」と問われ、「取引に邪魔が入るのを防ぐこと。俺はフランクが馬鹿をやらないように見張る」と答えた。フランクはスティーヴォの妻の兄であり、義弟が到着すると「俺に恥をかかせるなよ。お前を仲間に入れてチャンスを与えたんだ」と釘を刺した。
取引相手であるオードが現場に来ると、ジャスティンがクリスとフランクに紹介した。オードは盗聴器が無いか全員の身体検査を行ってから、廃工場へ案内した。売り手のヴァーノンと相棒のマーティンが現れ、引き渡すライフルの一丁を見せた。クリスは注文した銃と違うことを指摘するが、ヴァーノンは「ジャスティンはライフルと言った」と反論する。マーティンは「今回ほどの量は滅多に入手できない」と言い、ジャスティンは「一理ある」と同調した。
クリスが銃の出所を尋ねると、マーティンは「工場で余った銃だ。問題は無い」と述べた。クリスは試射を要求し、ヴァーノンは苛立ちを見せつつも承諾した。クリスが試写で満足すると、フランクが札束の入ったスーツケースをヴァーノンたちに渡した。マーティンは機械を使い、紙幣を数え始めた。工場の外では、ヴァーノンの仲間であるハリーとゴードンが待機していた。ハリーが「ヴァーノンに仕事ぶりを認めてもらいたい」と語ると、ゴードンは「お前なんて眼中に入ってない」と冷たく言い放った。
マーティンが金の確認を終えると、オードは「銃の入った箱を仲間が運び込む。君たちは車に積んで立ち去れ」と説明した。ハリーたちが車で建物に入って来ると、スティーヴォは「マズい」と焦りの色を見せた。彼はバーニーに、「昨夜、バーで俺を殴った男だ」と話した。スティーヴォは隠れようとするが、フランクから仕事をするよう叱責された。ハリーはスティーヴォに気付き、激怒して殴り掛かった。ハリーもスティーヴォも他の面々に取り押さえられるが、互いに罵り合った。
ハリーは「昨夜、俺の従妹をナンパした。断られたら酒瓶で顔を殴った。従妹の顔には傷が残った。17歳なんだぞ」と怒鳴り、ゴードンは「本当だ。バーも破壊された」と証言した。フランクはスティーヴォを説教し、謝罪するよう要求した。しかしスティーヴォは全く反省の色を見せず、ハリーを罵倒した。憤慨したハリーは、スティーヴォに発砲した。スティーヴォは怒って反撃し、銃弾がヴァーノンの左肩に命中した。ハりーは撃ち続け、応戦したフランクの跳弾がゴードンの右耳に当たった。
争いを止めるよう訴えるジャスティンと傍観を決め込むオード以外の全員が、激しく撃ち合った。マーティンは深手を負い、金を取りに行こうとしたヴァーノンも撃たれた。隠れていた狙撃手のジミーとハワードは、困惑しながら発砲を始めた。バーニーはヴァーノンの銃弾を浴び、命を落とした。ジャスティンはハリーに足を撃たれ、腹を立てて反撃した。ヴァーノンはオードから「狙撃手を雇ったのは誰なんだ」と問われ、何も答えなかった。
ジャスティンはクリスに「ヴァーノンが狙撃手を雇ったのか」と問われ、「違うと思う。取引を知った誰かの仕業よ」と述べた。フランクが「手ぶらじゃ帰れない」と言うと、スティーヴォは「リアリーはまだか?」と口にした。オードは重傷を負ったハワードの声で相手の正体を知り、「もう引退しろよ」と呼び掛けた。ハワードは旧知のオードに対して、「金が必要だ。リタに逃げられ、アジア女に騙されて全財産を失った」と語った。
オードが「誰に雇われたのか言え」と要求すると、死を覚悟したハワードは「教えてやろう」と告げる。その直後、彼は背後から撃たれて死亡した。クリスはオードに、「俺たちは銃が欲しい。お前たちは金だろ。ジャスティンを逃がせ。双方の仲間を呼んで来て暮れる」と持ち掛けた。オードが承諾すると、ジャスティンは「ヴァーノンが撃たないと約束するなら行く」と告げた。ヴァーノンは撃たないと約束するが、オードに「彼女は信用できない」と撃つよう命じた。しかしオードは従わず、ヴァーノンは苛立ちを示した。建物の2階にある事務所で電話が鳴り、ヴァーノンは「電話で外に連絡できる」と言ってジャスティンを撃った。
激怒したジャスティンがヴァーノンに反撃し、また撃ち合いが始まった。ハリーは間違ってオードを撃つが、悪びれる様子は乏しかった。オードとクリスが揉み合いになる中、スティーヴォがボンベを撃ったので爆発が起きた。ジャスティンは地面を這いながら2階へ向かい、ゴードンが後を追った。ハリーは車のキーを手に入れるため、マーティンの元へ向かった。するとマーティンは生きており、立ち上がって発砲した。マーティンはハワードの遺体を見つけ、「簡単な計画だったのにヘマしやがって」と悪態をついた。ヴァーノンとフランクは電話を掛けようと事務所へ向かい、撃ち合いになった…。

監督はベン・ウィートリー、脚本はエイミー・ジャンプ&ベン・ウィートリー、製作はアンディー・スターク、製作総指揮はマーティン・スコセッシ&エマ・ティリンジャー・コスコフ&レノ・アントニアデス&デヴィッド・コス&サム・ラヴェンダー&ベン・ロバーツ&リジー・フランク&ダニー・パーキンス&ダン・マクレイ、撮影はローリー・ローズ、美術はパキ・スミス、編集はエイミー・ジャンプ&ベン・ウィートリー、衣装はエマ・フライヤー、音楽はベン・ソールズベリー&ジェフ・バーロウ。
出演はシャールト・コプリー、アーミー・ハマー、ブリー・ラーソン、キリアン・マーフィー、ジャック・レイナー、バボー・シーセイ、エンゾ・シレンティー、サム・ライリー、マイケル・スマイリー、ノア・テイラー、トム・デイヴィス、マーク・モネロ、パトリック・バーギン他。


『キル・リスト』『ハイ・ライズ』のベン・ウィートリーが監督を務めた作品。
脚本は同じく『キル・リスト』『ハイ・ライズ』のエイミー・ジャンプと、ベン・ウィートリーによる共同。
ヴァーノンをシャールト・コプリー、オードをアーミー・ハマー、ジャスティンをブリー・ラーソン、クリスをキリアン・マーフィー、ハリーをジャック・レイナー、マーティンをバボー・シーセイ、バーニーをエンゾ・シレンティー、スティーヴォをサム・ライリー、フランクをマイケル・スマイリー、ゴードンをノア・テイラー、リアリーをトム・デイヴィス、ジミーをマーク・モネロ、ハウイーをパトリック・バーギンが演じている。

登場人物が何者かってのが、かなりフワッとしている。
銃の取引に集まった面々であることは分かるし、買い手と売り手の関係性は分かる。だが、それぞれが何の仕事をしているのか、何のために銃を必要としているのか、どういう商売だから銃を調達したのか、そういうことは全く分からないままで話が進んでいく。
それが分からなくても取引は成立するし、ストーリー進行に大きな支障が出るわけではない。
でもキャラ紹介が曖昧なままで話を進めると、没入する上では意外と障害になっちゃうのよね。

やたらと無駄話が多いのは、たぶんクエンティン・タランティーノの影響を強く受けた結果なんだろう。
かつては彼の影響を感じさせる映画が、世界中で何本も作られていた。ただ、タランティーノ病の感染時期はとっくに過ぎたと思っていたんだけど、まだ続いていたのね。どストレートなタランティーノ・チルドレンって、まだ存在していたのね。
しかし残念ながら、そんな無駄話の連続が作品を面白くすることなど皆無だ。
シンプルに作品のリズムやテンポを悪くさせているだけだ。

どうせなら、そんなトークの中でハリーとスティーヴォの関わった昨夜の出来事に触れておけばいいんじゃないかと思うのよね。
そして、工場で2人が遭遇した時、すぐに観客が「さっき喋ってた相手は、こいつなのね」と気付くように作っておけば良かったと思うのよ。
でも実際は、スティーヴォがバーニーに「酷く頭が痛いんだ」とか「次に会ったら殺す」と言うだけ。
ハリーがゴードンから、「手に怪我をしてるな。喧嘩でもしたのか」と訊かれるだけなのだ。

ヴァーノンが用意したライフルについて説明した後、クリスが不満を漏らしたり、出所を訪ねたり、試写を要求したり、マーティンが金を数えたりという手順を経ている。
この辺りも、無駄話の連続ではないけど、ただモタモタしているだけにしか感じない。
ハリーが工場に入ってから、スティーヴォに気付いて殴り掛かるまでの手順も、これまた同様だ。
隠れようとするスティーヴォの動きも笑いに繋がることは無いし、もっとサクサク進められないかと感じてしまう。

ハリーが発砲した途端にスローモーション映像に切り替わるのも、「やっちまったなあ」と言いたくなるぐらいカッコ悪いことになっている。
もっと誇張してギャグにまで昇華していれば何とかなったかもしれないけど、そこまで振り切っているわけでもないし。
無駄話が多いからって、必ずしもダメというわけではない。もっと上手く作れば、そこで退屈を感じさせることは無かったはずだ。
たぶん、それはセンスの問題なんだろう。無駄話の中身だけでなく、間の取り方とか、カットの切り替えとか、映像表現なんかも含めてね。

撃ち合いが始まっても全く盛り上がらないし、スタイリッシュでもなければ、キレや重厚さも無い。爽快感も緊迫感も乏しく、ただ適当に撃ち合っているだけだ。
どっちも腕が立つわけじゃないので、トーシロたちの雑な撃ち合いにしか見えない。相変わらずテンポは悪いし、やたらと絵がゴチャゴチャしている。
表面的にはアクションシーンに突入しているはずだが、ダラダラしている印象が強い。
撃つ必要など無いはずの奴が、撃たなくてもいい相手に発砲したりするので、「バカばっかりだな」と呆れ果てる。

「キチガイに刃物」ならぬ「バカに銃」が笑いに繋がっていればいいけど、ホントに知能レベルが低い争いでしかない。
狙撃手の存在が明らかになり、物語が新たな展開に入るのか、大きな変化が生じるのかと思いきや、相変わらずゴチャゴチャな状態が続くだけ。
いつまで経ってもハラハラドキドキする展開は訪れないのだが、それも当然だ。何しろ、誰が窮地に陥ろうと、誰が死のうと、「どうでもいい」としか思えないからだ。
くだらない連中が、くだらない理由で、くだらない争いを延々と続けているだけの物語なのだ。
なので、「勝手にやってれば」という冷めた気持ちしか湧かないのだ。

キャラクターの強さで牽引できるわけでもなくて、何だか良く分からないペラッペラな連中を揃えているだけ。
紅一点としてジャスティンが配置されているので、そこに何か意味があるのかと思ったが、特に何も無い。
ぶっちゃけ、話の大枠部分だけを見ると、アイデアにこれといった面白さがあるわけじゃないんだよね。
その上、映像方面でケレン味を付けるような方向性も無いんだから、後はクセの強いキャラで勝負するしか手が無かったんじゃないのかと。

(観賞日:2025年2月15日)

 

*ポンコツ映画愛護協会