『スフィンクス』:1981、イギリス
紀元前1301年、エジプトのラーベ。青年を含む4人の男たちが、王家の谷へ墓荒らしに入った。青年は「霊が一杯だ」と不安を見せ、仲間が財宝を盗み始めると「やめてくれ」と制止する。仲間は彼を殴り倒して墓を出るが、工事責任者のメネフタが兵士たちと共に待ち伏せていた。4人は拘束され、メネフタは青年に「私が造るセティ殿下の墓もツタンカーメンの墓のように破られるか?」と質問した。青年は「どんな墓も造れば、すぐ破られる」と答えた。青年はメネフタに、「ただ両親の葬儀代が欲しかっただけだ。皆を止めたが、財宝に目がくらんだ」と釈明した。彼はメネフタを睨み付け、「お前らと墓に入る全ての者を呪ってやる」と言い放った。メネフタは側近に、「彼の言葉で盗掘を防ぐ方法を思い付いた」と述べた。
現代。ボストン博物館でラリー博士の助手を務める考古学者のエリカ・バロンは、メネフタを研究していた。彼女はエジプトの博物館を訪れ、カーターとカーナーヴォンがツタンカーメンの墓で発見した財宝を見せてもらう。カーナーヴォンは古文書を見たと話しているが、カーターは何も見ていないと言っている。人夫頭のラマンは、何も証言していない。カーナーヴォンを始めとする発掘関係者21人が謎の死を遂げたため、「ファラオの呪い」の伝説が広まっていた。
町に出たエリカは、事前に手紙で連絡していた古美術商のアブドゥー・ハムディーを訪れた。彼はステファノス・マコリスという男と口論していたが、「客が来た」と帰るよう要求する。マコリスは「時間切れだぞ」と言い、店を去った。アブドゥーは2階の部屋へエリカを案内し、クローゼットに隠してあるセティ一世の黄金像を見せた。彼は銘刻を見せ、そこに「ツタンカーメン」「メネフタ」という名前があることを教えた。
アブドゥーは助手のアリから「店に誰か来た」と知らされ、床の穴を覗いた。彼は店にマコリスの手下たちが来ていると知り、ルクソールへ行く予定のあるエリカにメモを挟んだ本を託して「息子に渡してほしい」と頼んだ。アブドゥーが店に向かうと、エリカはクローゼットを再び開けて勝手に黄金像の写真を撮った。床の穴を覗いた彼女は、アブドゥーが男たちに惨殺される様子を目撃した。エリカが外へ逃げ出して身を潜めていると、男たちは黄金像を盗んで立ち去った。
鞄を取りに部屋へ戻ったエリカは、一味の1人が戻って来たので慌てて隠れた。そこへイヴォン・マルジェという男が来て、犯人と格闘になった。犯人が逃亡した後、イヴォンはエリカに雑誌記者だと自己紹介した。エリカは周囲の人々に「警察に連絡して」と訴えるが、誰も相手にしてくれなかった。イヴォンはアブドゥーに呼ばれたのだと言い、「像を盗んだくせに、出所の情報を売ろうとした」と説明した。警察に知らせるべきだとエリカが言うと、イヴォンは「やめておけ。君が留置される」と告げた。
エリカがホテルに戻ると、アーメッド・ハサンという男が部屋で待ち受けていた。彼は事務所への同行を要求し、古美術管理局の局長だと自己紹介した。イヴォンとの関係を訊かれたエリカは、反発心を覚えて「信頼関係よ」と答えた。イヴォンが来ると、ハサンはエリカに「帰っていい」と告げた。イヴォンが「君の仕事は立派だ。僕も協力者だよ」と言うと、ハサンは「人殺しは信用できない」と述べた。エリカがイヴォンに連れられて去ると、ハサンは助手のガマルに「彼女を尾行してくれ」と指示した。
翌日、エリカは観光局ガイドのサリムと共に、遺跡を見に出掛けた。エリカがラムセス二世の墓で観光ツアーに参加していると、男が銃を構えた。男はエリカを守ろうとしたガマルを射殺し、その場から逃走した。警察署に連行されたエリカは、さんざん待たされた挙句に警官から身体検査を名目に体を触られた。そこへハサンが現れ、警官を引き離した。エリカが「早く帰りたいわ」と漏らすと、ハサンは「それがいい」と没収していた旅券を返却した。
エリカはホテルに戻り、アブドゥーの本に挟んであったメモに気付いた。彼女は現像した黄金像の写真を持って来たベルボーイに翻訳してもらい、メモに「テフィークへ。見つかった。お前も気を付けろ。やはり像だけの問題ではなかった」と記されていることを知った。翌朝、彼女はイヴォンと博物館を訪れ、メネフタが黄金像に刻んだ銘の内容を教えた。「ルクソールへ行くべきだと思うの」と語った彼女は、マコリスが見ていることに気付いてイヴォンに知らせた。
イヴォンは逃げ出したマコリスを追い掛け、その間にエリカは博物館の事務所へ避難しようとする。しかしマコリスに捕まってナイフを突き付けられ、「犯人を見たな。マルジェに聞いたぞ」と脅される。そこへカリファという男が現れ、マコリスの顔に斬り付けた。彼がマコリスを追い掛けている間に、エリカは逃亡した。エリカはハサンに連絡し、ルクソールへ向かうことを伝えた。彼女はテフィークの店を訪れ、アブドゥーから預かった本とメモを渡した。テフィークが冷たい態度で追い払おうとするので、エリカはドア越しに「私はホテルにいるわ」と告げて去った。
エリかが王家の谷へ向かうとハサンが待っており、「ここで育ったんだ」と案内役を買って出た。エリカはセティ一世やツタンカーメンの墓をハサンに案内してもらい、一緒に夕食を取った。ハサンは危険だから帰った方がいいと忠告し、エリカにキスをした。エリカが留まるとハサンは受け入れ、一夜を共にした。翌朝、エリカはラマンを捜しに行くが、既に亡くなっていた。未亡人のアイダと会ったエリカは、カーターの話を聞いた。メネフタの名を出した途端、アイダは険しい表情に変化してエリカを帰らせた。
アイダは隠しておいた古文書を取り出し、燃やそうとする。戻って来たエリカが制止すると、アイダは「夫は呪いを恐れて隠した」と言う。エリカは古文書を写真に収め、アイダに非難された。エリカがホテルへ戻ろうとすると少年が現れ、「テフィークが像のことを話す。今夜8時、モスクに1人で来て」と告げた。エリカは古文書を翻訳し、メネフタがセティ一世の財宝を守るために用いた方法に気付いた。彼女はハサンに電話するが不在で、応対した使用人に「テフィークと会うと伝えて」と頼んだ。
エリカはホテルを出ようとするが、ロビーにカリファがいたので慌てて隠れた。そこへイヴォンが来て「何か発見した?」と訊くので、彼女は「あの像の出所と、そこに置かれた理由」と答えた。「なぜ教える?」というイヴォンの質問に、エリカは「尾行されてるから連れ出して。独占記事をあげるわ」と言う。彼女はイヴォンにカリファを捕まえてもらい、モスクへ向かう。すると仮面の男が現れ、案内すると告げて墓に向かう。一方、ハサンはテフィークの店を訪れ、惨殺された遺体を発見した…。監督はフランクリン・J・シャフナー、原作はロビン・クック、脚本はジョン・バイラム、製作はスタンリー・オトゥール、製作総指揮はフランクリン・J・シャフナー、撮影はアーネスト・デイ、美術はテレンス・マーシュ、編集はロバート・E・スウィンク&マイケル・F・アンダーソン、衣装はジュディー・ムーンクロフト、音楽はマイケル・J・ルイス。
出演はレスリー=アン・ダウン、フランク・ランジェラ、モーリス・ロネ、サー・ジョン・ギールグッド、マーティン・ベンソン、ジョン・リス=デイヴィス、サイード・ジャフリー、ナディム・サワラ、アイリーン・ウェイ、ヴィク・タブリアン、ベヘロウズ・ヴォスーギ、アーメッド・サレム・モハメッド、イスマット・ラファット、トゥッテ・レムコウ、ケヴォーク・マリキアン、ヤシャール・アダム、アブドゥラー・マームード、ウィリアム・フットキンス、マーク・キングストン、ジェームズ・コシンズ、ヴィクトリア・テナント、ジェンギズ・サネール、アーメッド・アブドゥル・ワレス他。
ロビン・クックの同名小説を基にした作品。
監督は『パピヨン』『ブラジルから来た少年』のフランクリン・J・シャフナー。
脚本は『マホガニー物語』『ニューヨーク一攫千金』のジョン・バイラム。
エリカをレスリー=アン・ダウン、ハサンをフランク・ランジェラ、イヴォンをモーリス・ロネ、アブドゥーをサー・ジョン・ギールグッド、マコリスをジョン・リス=デイヴィス、サリムをサイード・ジャフリー、ガマルをナディム・サワラが演じている。冒頭で墓荒らしをする青年の描写が、どうにも定まらない状態となっている。仲間に比べて彼だけが若いので、立場としては下っ端だろう。だったら見張りでもいいのに、リーダーは他の男に命じており、青年は隣に立っている。
しかし青年がいないと墓に侵入できないという技術を持っているとか、墓の重要な情報を握っているというわけでもない。
そして青年は急に「やめてくれ」と言い出すのだが、墓に侵入した時点で目的は財宝を盗み出すことだと分かっていたはずで。
そこで「やめてくれ」と言い出すのは罪悪感を抱いたんじゃなくて、ただ霊にビビっただけにしか思えない。メネフタに捕まった青年は、「両親の葬儀代が欲しかっただけで。皆を止めたが欲に目がくらんだ」と釈明する。
その辺りまでは、「本当は善人で、盗みを働くつもりなんて無かったんです」という感じで描かれている。
ところが、その直後にメネフタを睨んで「お前らと墓に入る全ての者を呪ってやる」と言い放つので、ただの逆ギレ野郎にしか見えない。
あと、メネフタと手下を呪うのはともかく、墓に入る全員を呪うってのは「なんでだよ」と言いたくなる。エリカが手紙を書いてアブドゥーに会おうとした理由が全く分からない。最初から黄金像があると目星を付けていたわけでもないし。
一方、アブドゥーがエリカに盗んだ黄金像を見せる理由もサッパリ分からない。彼は金儲けの道具として像を盗んだわけで、エリカに見せても何の儲けにも繋がらないでしょ。
あと自宅のクローゼットに入れてるだけってのは、本気で隠す気が無いだろうと言いたくなる。マコリスと商売でトラブルになっていることもあるのに、管理が甘すぎる。
実際、簡単に見つけられて盗み出されているし。エリカがホテルに戻るとハサンが部屋に侵入して待ち伏せているのだが、アホすぎる行動だ。
そんなことをしたらエリカに怪しまれ、警戒されるのは分かり切っている。
だけど彼の目的は尋問にあるわけで、むしろ信頼してもらった方が本当のことを言ってもらいやすいだろ。部屋に入らなくても、外で待っていればいいだろ。
あと、エリカを事務所に連れて行く行動は必要性がゼロなんだよね。ホテルで自己紹介して尋問すれば、それで済むわけだから。エリカはラムセス二世の墓で刺客に狙われるけど、これは奇妙だ。
一味が本気でエリカを始末したいのなら、そのチャンスは幾らでもあるはずなのよ。ラムセス二世の墓のツアーに参加するまで、待つ必要なんて無い。
むしろ大勢の客が一緒にいるから、射殺するには邪魔になるし。しかも、実行犯は大勢の観光客に顔を見られることになるし。
あと、ここでエリカを殺さずにガマルだけ殺して逃げるのも奇妙だ。
ガマルは刺客に気付いてエリカの元へ走るけど、全く間に合って無いのよ。だから、その気になれば刺客は確実にエリカを射殺できたはず。それなのに、ガマルだけ撃って逃げるってのは意味不明。マコリスは手下がいるはずなのに、なぜか博物館でエリカがイヴォンと歩きながら話している時には、自ら張り込みに来ている。しかも真正面から見ているので、簡単にバレている。
なのでマコリスはボンクラなのだが、イヴォンも負けていない。
何しろ、マコリスに余計なことを喋ったせいで、エリカに「犯人を見たな。マルジェに聞いたぞ」とバラされているし。
ところがエリカもボンクラなので、そこでイヴォンは信用できない裏切り者(っていうか最初から味方じゃないんだけど)と分かったはずなのに、情報を提供してホテルから逃げるための手伝いを頼んでいる。そもそも、ロビーでカリファを見つけた時、エリカがイヴォンに協力してもらって逃げ出そうとするのも変に感じるんだよね。
だってさ、カリファは自分を脅したマコリスに斬り付けて追い掛けた男なのよ。
そこだけ見れば助けてくれた形になるわけで、「もしかして味方になってくれる存在かも」とは思わないのか。少なくとも自分の情報をマコリスに流したイヴォンよりは信用できそうだと、そういう感覚にはならないのか。
ただしカリファも、ロビーでエリカに気付かれても知らないフリをするのはアホすぎるけど。ハサンはエリカを厳しい態度で尋問し、早く帰らせようとしていた。そんなハサンに、エリカは嫌悪感を抱いていた。
そんな感じで話を進めていたはずなのに、カイロを離れた途端に、なぜか両方とも態度がコロッと変わる。そして、あっという間に深い仲になる。
一度はハサンが帰るよう言うとエリカは従う素振りを見せるが、すぐに引き返して留まる態度を示す。するとハサンも受け入れ、そのまま一夜を共にする。
そのロマンスは無理があり過ぎるし、「軽い連中だな」と感じる。ここからは終盤のネタバレを書く。
エリカは仮面の男に騙され、墓の地下に閉じ込められる。脱出した彼女は、ツタンカーメンの墓の下にセティ一世の宝物室を発見する。ホテルに戻ったエリカはマコリスに襲われるが、イヴォンとカリファに救われる。イヴォンは記者ではなく財宝の密輸を企んでいる悪党で、カリファは手下だった。
これが明らかになった時点で、「ダメな脚本だな」と感じる。
イヴォンが悪党なのは構わないんだけど、だったらマコリスとはグルにしておけばいいのよ。
「終盤になって仲間割れする」ぐらいの展開なら別にいいけど、最初から悪党を2つのグループに分けているのはマイナスにしかなっていない。おまけに、こいつらだけが悪党ではないんだよね。仮面の男は、それとは別の勢力なのだ。
こいつの正体は、ハサンの叔父のムハメッド。ハサンの一族は昔から盗掘を繰り返し、それて生計を立てていた。そこでムハメッドは秘密を守るため、エリカを殺そうとするのだ。
ここに第三の敵を用意するのも、面倒なだけ。だったら最初から「ムハメッドが黒幕で、人を雇ってエリカを妨害したり消そうとしたりする」というシンプルな善悪の構図にしておけば良かったのよ。
ハサンに関しては、終盤まで叔父の企みを知らなかった設定でも、最初は協力していたけどエリカに惚れて寝返る設定でも、どっちでも構わない。
とにかく、変に込み入った相関図を作っているけど、それが何の得にもなっていない。(観賞日:2025年8月10日)