ソルトレークシティーオリンピック見聞記
5 |
2月14日(金)
オリンピックの街(男子フリーの前) このホテルでの朝ごはんはこじんまりとした食堂でセルフサービス。B&Bよりレパートリーが少ないが、台の端にどろどろとした液体が入った小さな紙コップが並んでいる。ワッフルメーカーに自分で生地を流し込んでワッフルを自分で焼くようになっているのだ。おもしろーい♪ 練習が見られないのでまたもや試合まで時間がある。スケート観戦でこれだけ時間に余裕があるというのは初めてで、本当に感覚が狂う。頭の中を試合で占める事ができず、何か芯が抜けているというか…緊張感ゼロののほほん状態。観光ができるからそれはそれでいいか。 ユタ州議事堂を見に行こうということになり、ダウンタウンを歩いて行くとTemple’s Squareの殿堂のバックに映るビルのそばを通った。あのスパイラルの絵はビル一面を布で覆ってその上に書いているのか。 ここでHさんがビルの絵をバックにスパイラルのポーズ!大笑いしながら交替でスパイラルの記念写真を撮る。体が冷えたまま強引に足をつかんで上げたので腰が痛い。ストレッチしてからやればよかった。こんな体勢を重いスケート靴をはいた状態で不安定な氷の上でやってしまうスケーターの肉体はやはりすごい。 私達が写真を撮り終わった後に近くにいた人も同じ事をやっている。ウケてしまった(笑)。 しかしこのスパイラルの絵はどこかが不自然に見える。 ソルトレークシティーはユタ州の州都、州議事堂は官公庁というよりは文化財に指定されそうな石造りの建物だった。ここも入る時に軽く荷物チェックが入る。 一階は広い空間になっていて、オリンピックに合わせたのかいろいろな展示物がある。目を惹いたのが小学生によるパッチワーク。「自由」というテーマで各自絵を描いて貼り合わせた物なのだが、よく見ていくと白いワシや星条旗が入った絵が多い。 自由と平等の国、アメリカってか。 議事堂を出てダウンタウンへの坂を降りていく途中でクラクションが鳴り、車が私達の横に止まる。「ダウンタウンまで行くの?乗せていってあげるよ。」 なんでも仕事でダウンタウンに荷物を運び込む途中で、ついでに観光客を拾って乗せて行くというボランティア活動をオリンピック期間の間しているそう。天気がいいのでのんびり歩いてもよかったのだが、そういうことなら便乗しましょう。 しかし本当にここのボランティア体制はすごい。長野駅前のデパートに納品するバンが善光寺通りで観光客をピックアップして長野駅まで乗せて行くようなものなのだから。(まあ善光寺通りはバスがあるのだが) 今日はバレンタインデーということで、街のあちこちで赤いバラが売られている。エルビスが出ている試合を観戦している間に赤いバラを見せられると〜〜ってあんた闘牛かい(笑)。しかし今回ほしいのは白いバラ、その前に花束を投げられる席にいない。 昼ごはんを食べた後にショッピングセンターをうろついていると日本語の展示物があった。NHK主催の福祉活動で障害者が作った詩に有名人が挿絵的なアートを添えるというもののようだ。きつい口調で有名なベテラン女優がやわらかい色調の作品を提供したりと意外な面も、というより海外でまともな日本語を見るというのが一番のフェイント。これだけ大量の日本語を見るのが久しぶりな気がして、なぜか目がチカチカした。 その横に100円ショップならぬ1ドルショップ♪サスカトゥーンにもあったなあ。 100円ショップで買い物をすることはないが、おもしろいネタは結構ある。お菓子のコーナーへ行くと、1ドル札の模様の包み紙や紫の頭蓋骨の形をしたものなど一筋縄ではいかない妙なキャンディーばかりがあるコーナーがあった。 ニヤリ☆ 会社のお土産に4ドル分購入。棒つきキャンディーが40本あるとなかなか壮観である。 会場の中を色々見て回りたかったので、早めに行くことにする。 今日の会場入り口には荷物チェックのおばさん二人以外に軍人がついている。何かあったのだろうか?しかし荷物チェックはいつものほんわかムード、ビニール袋を開けると棒つきキャンディーが40本入っているのにはウケられてしまった。(飲食物持ち込み禁止でなくてよかった…^^;)kさんはカイロを入れていたのだが、金属検査に引っかかってしまい、軍人のボディーチェックを受けるはめになってしまう。 それにしても「警備五輪」を象徴するようなこの念入りで、でもほのぼのとした荷物チェックの様子はつくづく写真に撮ってネタにしたかった。 メインストリートに公式マークを模した氷の像があった。その像専属についているボランティアの方にカメラを預けて記念写真。 敷地内に色々ある建物はスポンサーのものらしい。のぞきたいのだがどの建物にも人が結構並んでいる。自動車会社の小さな建物にはエルドリッジのポスターが貼ってあり、ミシェルが出演しているコマーシャルの映像が流れている。(あまりいい作品ではない^^;)「アンケートに答えて○○をゲットしよう!」と陽気に宣伝していたが、外国から来ている私達は無関係。 並んで待たないと何も見られないと割り切り、とりあえず一つ入ってみるとネットができる所だった。日本語のフォントは入っていなかったが、見たいサイトをチェック。その時に「Stumble slams door on Stojko」という記事を見つけた。(Canada.comのオリンピック特集の中にあったものなのだが、今はもう見ることができない) 「Elvis Stojkoは3才児レベルのジャッジのスキャンダルの遥か先を見ている」という内容の文で始まる。ショートを終えてのコメント、そして。 「個人的にはジェイミー達の方がややよかったと思う。でも両方のいい演技を見られた感動を大事にしようと思う」 やっぱり。 何が楽しくて自分の競技の最中に他の選手達のフォローをしなければならないのか……。 カナダフィギュアスケート選手の実質的なチームリーダーであるエルビス。カナダ選手に何かトラブルが起こったら真っ先にとばっちりを受けるという心配はしていたが、ここまでダイレクトに来るとは…少しは外してくれ。 もしサレー組とエルビスの立場が入れ替わっていたらサレー達はこんな質問を振られていただろうか。ロシア側は…ヤグディンやプルシェンコにはこんなことは起こらないだろうに……。 大体ノーコメントでかわすこともできるだろうに……。 だからこそカナダであれほどのヒーローにもなったのだろうが、どこまでこの人は強いのか、正面を向いたヒーローでい続けるのか……。 事を荒立てないコメントにいろいろな事が封じ込められているような気がして、パソコンの前でボロボロ泣いた。 「フィギュアスケートは生き延びると信じている」 本当に? ファンは失望して遠ざかることができるが、人生の大部分をかけてきた選手はたとえその絶望が大きくてもそう簡単に離れられるものではない……。 もうあまり余計な事は考えないでおこう。最後なのだから。 Delta Centerの裏側は少し高くなっていて、敷地全体を見下ろせるようになっていた。TRAXの終着駅があり、街の一角を区切っているのがよくわかる。フェンスを取り去って、この建物を取り去った普段のこの近辺は……。去年の四大陸の時はどんな風になっていたのだろう。 本当に博覧会だな。 天気はいいが寒いのでDelta Centerに入る。 Delta Centerの中もゆっくり見て回る。常設の店以外にお弁当のようなものやグッズを売っている店もあった。遺失物預かり所を見つけたので、だめで元々でペアフリーの時になくしたフィルムを探しに行くことにする。 フィルムの預かり物はなかったのであきらめて帰ろうとすると、いつ落としたのか、その時どの辺にいたのかを訊いてくれた。チケットの座席番号を見せると「great! これがあったら完璧ね!」 そのうち専用の紙を取り出して落とした日、座席番号、名前、住所、メールアドレスまで控えてくれた。これだけていねいな対応をしてくれるのなら見つからなくても惜しくないという気になる。写真と引き換えに暖かい対応を手に入れたようなもの。 世界最大のお祭りのオリンピック、おもしろい観客の存在を期待はしていたが… 君ら何なんですかっ(笑)!! 写真を撮らせてもらう私も私ってか。 席の少し後ろにエルビスの写真をプリントしたTシャツを着ている女性がいた。無性にエルビスの話がしたかったので、即行話しかけに行く。 ふと思いついてエルビスのショートの衣装の感想を訊くと「I like it, it's nice!」とのこと。確かに文字を除けばniceなんだけどね。何か文字が描かれているということは知っていたが、日本語ということは知らなかったらしい。 ショートの曲は和太鼓を使った「Lion」という曲で衣装も着物を少し取り入れたもので、あの文字は日本語であること、日本を意識してくれるのは日本人として嬉しいが、綴りが違っているのが残念。誰か日本語を知っている人が指摘してくれたらいいのに…というあたりのことを宣伝しておく。日本人のファンしかできないことだから。 「Takeshiが言ってくれるわよ」と相手。ああっ本田君本当に指摘してやって〜〜〜! そういえば私、長野オリンピックの時も「カナダ人ナンパする!」と突進したんだった。四年たってもやることは変わってないな(^^;) 気がつけばコンサートの舞台の上にいるサレーの映像がモニターに映っている。昨夜少しだけ見たっけ。 ボーカル兼ギタリストといった感じの男性がサレーと話をしている。彼に促されておそるおそるギターを鳴らすサレー。ギタリスト的にはちょっと違っていたよう。もう一度お手本でジャカジャカ♪と鳴らし、サレーはもう一度トライして合格。 「じゃあ今度は続けてやってみて」という流れで同じフレーズを連続してかき鳴らす。ジャカジャカ♪、ジャ、ジャカジャカ♪、そのうちドラムが加わってリズムがわかってきた。このリズムとギターは聞き覚えがある。何だっけ?頭の中で答えが出かけた時に、 「Girl, you’ve really got me now」 ………きっつ〜〜〜〜〜。 フリーが始まる1時間前の会場にショート7位のエキシビナンバーを流すか………! ショート7位はエキシビに出られる4位へのぎりぎり射程圏内。引きつり笑いで顔の筋肉が固まる。このバンドの持ち歌なのか主催者側がリクエストした歌なのか真相はわからないが、今の私にはこの選曲が偶然のものと喜ぶことができない。ショート5位と6位の選手のファンの方におわびしたい気分だ。 まあそれは横において、へっぴり腰で人が下げているギターを弾き続けなければいけないサレーはちょっとかわいそうな役かもしれない。それにしてもペルティエはどこにいるのだろう?と思っていたら、曲が終わるところで横でタンバリンを鳴らしながらノリノリでスライディングしている姿が映った。ペルティエ、おもしろすぎる(笑)。 (続く) (戻る) |