3 女子シングルショート 12月25日(土) Tちゃん宅の最寄駅の近くに素敵な花屋さんがあるので、そこで都築さんへの花を買うことにする。試合で花束を買うのは久しぶり♪昨日Pさんにオリジナルダンスの写真を見せてもらったので(ありがとうございます)、ほしい花束のイメージはもうできている。黄色と黒のモダンガール、イメージを描きやすい衣装で助かった。 花屋にクリーム色、黄色、紫、黒紫のカラーがあったので、全種類買ってグラデーション風にしようかと考えついたところで開場時間と試合開始時間を間違えていたことに気がついた。クリスマスのかき入れ時で店員さんは他の花束を作っていて、次の順番を待つ時間がない。赤い花と赤い実を組み合わせた素敵な花束があったので、それを買うことにする。 パートナーは賢ちゃんなので、むしろこっちの花束の方がいいかもしれない。 荷物が多い上に花束が加わり、急いで移動するには結構なハンデ。それでも抱えるような大きさの花束を持つのが嬉しい。 スケーターに花束を買うのは02年京都NHK杯以来なのだ。 会場に入って驚いた。リンクに対面した時にあの冷気がやってこないのだ。 そして昨日より照明が明るいせいか、目の前の光景が昨日とまったく違うものに見える。 新横浜ってこんなリンクだった?少し手を加えただけでこれほど変わるものなのか。 昨日とはうって変わって満員の会場。第1グループのウォームアップで美栄ちゃんが跳んだルッツにものすごい歓声が起きる。いや確かに彼女のジャンプはダイナミックですごいが、ルッツのソロジャンプだよ?何か違和感を感じる。 全日本女子ショートのウォームアップでの単独ジャンプに起こるような歓声ではなく、むしろフリーの最終グループで3連続ジャンプやトリプルアクセルがきまった時に起こるクラスの歓声なのだ。それからもジャンプがきまる度に大きな歓声が起こる。成功したという拍手でなく、むしろ驚きの色が濃い拍手。 何かが違う。 第一滑走の鈴木明子ちゃんはブランクがあったとのことで、少しふっくらした印象。ソロジャンプで転倒してしまったが、ボレロの単調なリズムを演じる表現力は健在。もう少し。 美栄ちゃんは女子十二楽坊のおなじみのメロディーに乗せてジャンプをきめていく。コンビネーション、フリップ、よしノーミスペース! と、思いきや。 いい時の彼女はジャンプを二つきめたぐらいからノッてくるのだが、今日は表情が安定していないような気がする。笑顔で演じている瞬間もあるのだが、すぐにスッと険しい表情に戻ってしまうのだ。 それも彼女特有の集中したいい表情でなく、何か溜め込んでいて伸びきれないような。スパイラルでがくっとスピードが落ちるし…美栄ちゃん、大丈夫か? 結果としてはジャンプがノーミスの演技で会場は大盛り上がり。一部でスタンディングオベーションが出ていて、美栄ちゃんもガッツポーズ。 しかし私はこの空気にシンクロすることができない。むしろガッツポーズが出るところにマイナスの印象が大きくなったのに…。 どうしたのだろう。会場の反応と自分の印象がこれだけ食い違うのは初めてだ。私、目がおかしくなったのだろうか!? 違う。この盛り上がり方が、いつもの全日本とは違うのだ。 これは全日本ではない。全日本の空気ではない。 選手と一部の観客にある種の絆があるあの全日本ではない。 ジャンプが成功した時に拍手をすると逆に選手の集中力を乱す心配をするような、歓声をあげることがはばかられるような冷気と緊張感が漂うあの全日本ではない! これまで全日本はTBSが放映権を持っていたが、どれだけ放映が派手になっても会場の空気に影響を及ぼすことはなかった。テレビ画面からは知ることのない、熱心なファンが長年かけて造り上げた世界が全日本の会場にはあった。 それが変わってしまっている。 明るい会場、暖かい空気、垢抜けた格好の花拾いの子供達。 TBSは手を抜いていただけだったのか。 数多くのトレンディドラマを生み出し、視聴率のトップを誇るフジテレビ。メディアが少し力を入れれば、少数のファンが長年かけて造り上げてきた空間などあっという間に消し飛んでしまうのだ。 巨大メディアが示す力の末端に背筋が寒くなる。 飲み込まれてしまうのではないだろうか。 それとも、会場の空気を変えてしまうほど本当に女子シングルが注目の的になり、新しいファンが入ってきているのだろうか。 変わることは必ずしも悪いことではないが……。 美栄ちゃんの次の選手の演技が始まってしばらくしてテレビ撮影用の大きなカメラを持った一団が私の席の横の階段をどかどか下りていき、一瞬の間演技が完全に見えなくなってしまう。演技直後のコメント撮りか。お仕事お疲れ様ですねえ(皮肉)。スタッフでなかったらブチ切れているところだ。 滑走順を見ると、番組的に単独の映像を撮っておいた方がよさそうな選手が前半のグループにずらりと並んでいる。彼らは当分行きっぱなしになるだろう。行ったりきたりどたばたされるよりは行きっぱなしの方がまだましか。そういうことを考えるとうまくできている滑走順かもしれない。 ということは、第3グループまででめぼしいところを全部撮ったところで編集かけてナレーション入れれば夕方のニュースには間に合うな。亜紀ちゃんが上位にきたらえらいことだが…逆を言えばフジテレビは亜紀ちゃんをマークしていないということか。 第二グループに見所が集中した(本田君、クーリック、キャンデローロ、エルドリッジ)長野オリンピックの男子ショートの滑走順。当時はゴールデンタイムに映像を流したいのだろうと思っていたのだが、むしろ夜のニュース番組に映像を間に合わせたい思惑があったのかもしれない。ちなみにこの時一人だけグループが離れていた上位候補はエルビスだ。 ……だからそういうことを 変わることが間違っているわけではない。 どんなにビジネスがからんでも、どんなにメディアの操作が入っても、変わらないものがあることは知っている。 でもね。 いかん、憂鬱になってきた。試合に集中しないと。 ウォームアップできっちりジャンプを跳んではいたが、目が少しつり上がっていたすぐりん。彼女は目つきと本番の出来がわりと一致するので気にしながら見ていたら、ノーミス! 絶好調で弾けていたというわけではないが、やることをきっちりやってしかも粋に見せてくれた。いやーすごいわ。 貫禄。伊達に最年長やっていない。 思わずスタンディングオベーション。 美姫ちゃんはきっちり3ルッツ+3ループをきめてノーミスの演技。急に体が大きくなったので心配しているのだが、その辺りはやっぱり強いなあ。 一見地味だがじっくり見ると味のあるプログラム。ポンポン跳ぶジャンプの印象からは意外にまったりした動きの彼女にうまく一味添えているのではないだろうか。 ピシッとした手の使い方が音楽によく合っていて好きだったりする。 舞ちゃん、競技の演技にまでベテランシニアの落ち着きが…(^^;)彼女らしい美しいポーズは見られたが、動きに何かしっくりこない印象があった。ジャンプ自体はノーミス。 しかしセカンドのトウジャンプ、何か変じゃなかった? 製氷をはさんでの第3グループ。 リンクサイドで友加里ちゃんと笑顔で話をしているしーちゃんの髪形が変わっている。かっこいい!そういえばこれくらいの長さの髪型は見たことがなかった。 今シーズンはずっと疲れ気味の彼女、心機一転だろうか。いい切り替えになるといいのだが。 そのしーちゃんのウォームアップ、スケーティングが群を抜いているのは間違いないが、動きのテンションが明らかに低い。見ているうちにルッツが嫌な感じですっぽ抜ける。しーちゃん、大丈夫か!! 真央ちゃんの演技は密度的にジュニアといえばジュニア。だが放っていたら本当に虹の彼方まで滑っていきそうなスケーティングは、シニアの全日本でもひときわ目立つ。 ダブルアクセルが少し引っかかっただろうか?舞ちゃんとの勝負と思っていたら、美栄ちゃんを抜いたのには驚いた。 思わず叫んでしまったしーちゃんのウォームアップ。しかしウォームアップと本番でスイッチが切り替わったような演技だった。今まで彼女のプラスからマイナスへの変化は何度か見ているが、マイナスからプラスへの切り替えは初めて見たように思う。 3ルッツ+2ループ、スパイラルからのフリップ、イーグルからのダブルアクセルとこれでもかと凝ったジャンプ。最後のストレートラインステップにほれぼれ。滑り終わった後には国際試合にも似た華やかな空気があった。 それに違和感を感じなかったのは、時間を経て会場の空気になじんできたからだけではないだろう。 さすが世界チャンピオン。 なるほど世界チャンピオン。 だから世界チャンピオンになったのか。そういう器を持っている人なのだ。 会場の飾りつけはある意味器。器が会場の空気をセッティングするだろうが、選手がセッティングの意図を越えることもあるのか。しーちゃんの演技に引っぱられて国際試合の空気になったような気がする。 まあメディアの介入だけでなく、選手達もここ数年で変わってきたということなのだろう。もはや全日本上位クラスの選手達がGPシリーズで演技が小さくなって崩れてしまう時代ではない。 アメリカやカナダの国内戦も、これだけ華やかな空気なのだろうか。 友加里ちゃんはトリプルアクセルに挑戦し、転倒してしまう。 もともとやわらかい動きがきれいな彼女、より洗練されて新しいコーチの元で変わっていきそうな兆しは見える。ドーナツスピンのあの速さは何!?と驚きもするが、寒々しい思いを消すことができない。 女子シングルにおけるトリプルアクセルは、一つの技という面を越えてしまっているようだ。日本だけかもしれないが。 たまたまジャンプが超人的な選手が現れただけである。 そんな選手が少しでも難しいジャンプを目指した結果である。 誰が悪いのでも、何が悪いのでもない。 なのに存在しているだけで負の面を残すということもあるらしい。 友加里ちゃんの演技を見る度に、一人のスケーター、ファンやメディア、そして日本スケート界が10年以上前の幻影に振り回されているようで、それがもったいなくて、何か悔しくてたまらない。 曽根美樹ちゃんはパンツルックにミシェル張りのメーク。エキゾチックな振り付けをしている時の動きのテンションがただ事ではない。 確か彼女は去年の全日本でも見ているのだが、大柄でダイナミックな動きをする選手という印象しかなかった。こんな選手だったの!? 見た目の華やかさで男子シングルを上回るが、きれい、優雅な演技のオンパレードでバリエーションが今一つ少ない女子シングル。その中でここまではっちゃけられる人は貴重だと思う。ずっと維持してほしい。 椎名千里ちゃんは3トウ+2トウのコンビネーションでセカンドジャンプをなんとか降りる。大丈夫だろうか…と思っていたら、3サルコウでやはり転倒。 99年に全日本チャンピオンになったものの、足の手術をし、ブランクもあったという。だが一つ一つの振り付けをいとおしんでいるような動きは健在。むしろそれに自分の解釈が加わってより自然になったような…。 大人になったなあ…そういえばそろそろ大学卒業の年齢かもしれない。 澤田亜紀ちゃんはばっちりノーミス。ジャンプや全ての動きが弾むような印象の彼女だが、"Caravan"のしっとりセクシー系な音楽と振り付けで新しい一面を見せてくれた。 順位の表示に思わずにやり。実は近畿ブロックでの彼女の演技を見て全日本フリー最終グループ入りを予想していたのだ。 長谷部さん(長谷部 文、東洋大学)は全日本ですっかりおなじみの感がある八木節。爽快にかっ飛ばして3トウ!のはずが転倒してしまう。勢い余っただろうか?続く3サルコウも転倒。嘘でしょう!?こうなると一番の見せ場、ジャッジ前での歌舞伎調の見得も冴えない。 ダブルアクセルもシングルに。こんな展開になるなんて……。 女子ショートも第6グループに入るとさすがに疲れてくる。石田さやかさん(慶応大)の演技でファインダー越しに見た彼女の目線に思わずたじろぎ、シャッターチャンスを逃してしまった。 ガン飛ばされた。 …いやもとい。 ガンを飛ばす…もとい、ジャッジ前で演技をしている時に挑みかかる勢いでジャッジを見据える選手は何人も見ているが、本格的に滑り出すと素の表情に戻ってしまうことが多い。あのテンションをジャッジと反対側を向いて滑っている時まで維持している選手は初めて見た。 ただダブルジャンプのみ?だったのでフリー進出がちょっと厳しいかもしれない。残念。 (と思っていたら、19位でのフリー進出だった) すぐりんの妹、千香ちゃん。すぐりんが言う通りパンフレットでの顔写真はあまり似ていないのに、滑らせると身のこなしやちょっとした癖がそっくりという不思議な姉妹である。 すぐりんの先シーズンのフリーと「浜辺の歌」の衣装をミックスして色を変えたような衣装は東洋チックに蝶々婦人。 ジャンプをきめるごとに調子が上がり、ダブルアクセルをきめてからは曲にぴったりの歓喜の表情。こちらの蝶々婦人は歓喜の後の暗転で自ら命を絶つというオーソドックスな解釈。 それにしても…… 千香ちゃん、お姉ちゃん大好きなんだね(^^;) ここ1、2年で急にうまくなったと思っていたら、第3グループ入りだよ!トリプルが2種類の選手の中ではトップにたった。 (戻る) (続く) |