2 男子シングル ショート 12月24日(金) 照明の落ちていない新横浜スケートリンクでスケートを見るのは初めてなのだが、思っていたより明るい。それにフェンスがきれいになっているような気がする。放映に合わせて改装したのだろう。気合入ってるなあ。 そして男子ショートが始める前にリンクサイドに花集めの子供達が入ってきた。衣装が可愛い!よくみられる個人の練習着やおそろいのスケート用衣装と違い、真っ白のタートルネックのセーターに黒いパンツで、頭に小さなサンタの帽子をつけている。胸にリースをつけている子供もいる。 フジテレビ、グッジョブ。早く誰かの花を拾いにリンクに出てくれないかなー♪ 男子シングルが始まるので本格的に報道態勢に入るかと思いきや、逆に中央付近の固定カメラにカバーをつけだした。どうやら今日の競技は存在しないものらしい。ふん。 おもしろくないという気持ちとテレビ放映の演出に汚されずにすんでよかったのだという気持ちが半分ずつ。どうせ明日からはテレビ局の本格始動で色々おもしろくない思いをするのはわかりきっているのだから、今日は純粋に観戦を楽しむことにしよう。 第1グループは本田君と岸本君といきなり上位候補メンバーが複数入っている。本田君はNHK杯と同様、他の選手達よりワンランク低いテンションで淡々とジャンプを確認している様子。だがその動きはNHK杯からあっさりワンランクアップしている。 どうだろうか。 「調整試合第二弾」のように行ってほしいと思う。 だが求められるものがある試合でもある。 表情のある手の動きと憂い顔で独自の世界を持っている渡辺君のショートの曲はノクターン。曲名を見て期待をし、期待通りやってくれた。 哀愁を帯びた旋律と風にたなびく衣装が動きに映える。しかもジャンプの成功率の低い彼がノーミス(3ルッツ+2トウ、3フリップ、ダブルアクセル)!やっとほころびのない彼の世界を見ることができた。 本人の達成感が感じられる演技は会場の空気を変える力をもつ。早い滑走順でのいい演技にお礼を言いたい気分。 エンジンがかかり始めたところで本田君が登場する。 会場全体での拍手は全日本離れした盛り上がり。復帰を迎える意味あいも入っているのだろうか。やはり本田君は全日本で特別な存在なのだ。 彼が誰なのかは報道関係の人間よりこの会場にいる人間の方がよっぽどよく知っている。この場所に何が存在するのか、新規参入の放送局ではわかりはしまい。まあ知る気もないようだが。 クリーグのピアノコンチェルトのなじみのある出だしに観客の手拍子がすぐにシンクロし、始めのジャンプへの助走に入る。この質感、スピード、間違いなく本田武史のスケーティングが戻ってきている。 クワド、きまった!?しかし次がつけられない。かろうじて1トウ?どう表記されるのだろう。 あとの2つのジャンプはきめたものの、演技のトーンダウンは否めない。ジャンプを最優先にし、観客の手拍子も音楽の盛り上がりも自分の周りから完全にシャットアウトしたような印象だった。 転ばなかった。転ばなかった。 転びはしなかった。 さて、どうだろうか。 岸本君の座頭市はストイックな出だしから徐々に盛り上がっていく流れが本気でかっこいい。アクセルをこらえて2トウをつけたが、次のルッツで転倒。もったいない。 ただエレメンツとエレメンツ、動きと動きの間に「よっこいしょ」というような切り替えがあるのも目についた。間というべきだろうか。PCSが伸びないのはこのあたりなのだろうか? 99年名古屋NHK杯のエキシビションで滑っていた小塚君が、ついに全日本にやってきた。実は密かに楽しみにしていたのだ。大きくなったとはいえ、シニアに混ざるとやはり子供。雰囲気がランビエールに似ていないだろうか? ルッツ+3トウをきれいにきめ、ステップをしながら短い助走であっさりトリプルアクセルをきめたのにはびっくりした。ジャンプが苦手なタイプと思っていたのに!キャラクターを押し出すのではなく、流れで魅せる演技。流れを追っていくうちに気がつけばノーミスの演技、本人もガッツポーズ。 初めて小塚君を見た時に「将来本田君を倒すのは今(99年当時)のジュニアでなくて、案外この子かもしれないな…」と思ったが、今リードするなんて誰が思いますか! いいフェイントでもある。 中田君のショートはパイレーツオブカリビアンということで、納得の行く衣装。彼の衣装の凝りっぷりは全日本では目を惹く。 ルッツをこらえ、続く3トウもこらえる。ソロジャンプの入り方がものすごく凝っていたのだが、ダブルになったのが惜しかった(ループ)。アクセルはダブル。去年の全日本フリーは第一グループの中でエレメンツ、身のこなし共に浮いていたので、今年はやっと本領発揮といったところなのかもしれない。 いわゆるラテン系の明るさも入った振り付け。振付師の姿が浮かんでくるようである。 田村君(田村 拓、立命大学)は近畿ブロックでおなじみの選手だが、前半のスピードが半端でないのに驚いた。こんなにスピードある選手だったっけ?飛ばしすぎではないかと心配になったのだが、3トウ+3トウ、3ループを成功。ダブルアクセルをミスしたのがもったいない。 碓田さん(なぜかさん付けで呼んでしまう)は蛍光色の衣装を大胆に使う所と、転倒しない限りジャンプをミスしてもきっちりランディングのポーズをとろうとする両方の面をもっている選手。(手の構えが密かにツボだったりする) プログラムに訂正の紙が入っていた「情熱大陸」は、割に静かな出だしで始まる。3トウ+2トウ、3サルコウとジャンプを成功させ、観客の盛り上がりにおなじみのフレーズが重なってさらに雰囲気を盛り上げる。 演技の途中から表情が変わり、ダブルアクセルとノーミス、新境地開拓!個人的にはスタンディングオベーションに近い盛り上がりがあった。 しかしそれでもというかやはりというか、サッシュに蛍光色が入っている……(^^;)これだけ自分で動ける選手なのですから、ご本人の好みなのでしょう……。 南里君が出だしの一瞬ニヤリというような不敵な笑顔。いいかも!期待したのだが、アクセルのランディングにターンが入ってしまい、ルッツをすっぽ抜け。あああああ…。 ジュニア選手はショートのソロジャンプの種類が決まっているらしく、今年の課題はループ。他のジュニア勢は全日本に合わせてジャンプの構成を変えてきたが、織田君はそのままの構成で勝負してきた。 スーパーマリオブラザーズのジャズアレンジということで比較的静かな前半だったが、ただ滑っているだけのパートがほとんどなくて、何かしら振り付けが入っていておもしろい。ジャズのアレンジが消えてオリジナルのテクノサウンドになるあたりから、コミカルな振り付けも入ってくる。本当におもしろい。 イーグルをしながらハンドルを回して金貨を出すあたりでつい大爆笑。おもしろすぎる!これ本当に競技用プログラム!?David Wilsonってすごい人だったのね!と思っていたらダブルアクセルでミス。おいおい。 本田君と込みでマリポサブラザーズと呼んでいるが、演技はむしろジェフリーに似ている。まあ振付師が同じだから当然の成り行きなのだろう。ジェフリーはさしずめ従兄弟といったところだろうか。 応援に押されるように出てきた選手は新横浜スケートクラブの選手なのだろう。 パンフレットを見てみると、佐藤信夫コーチに教えを受けている中井君(中井 駿、早稲田大学)。 地元リンクの選手が滑る時に子供達の声援が飛ぶのは全日本おなじみの光景だが、この声援は半端ではない。曲が聞こえにくくなったり、ジャンプを転倒した時に子供特有の「ギャー!」という悲鳴が響くなんて初めてだ。 あまりの歓声に度肝を抜かれて出来を覚えていない……そしてまともな写真も撮れていない……。 第4グループにアンソニー・リウが約一名。 ……冗談です、すみません。 中庭君はタートルネックの衣装がよく似合っている。日本男子に久しぶりの貴公子出現、こういう衣装を着られる人は限られていると思う。(ちなみに先代貴公子は重松コーチ) 4+2がきまった!今日初めてのクリーンなクワド、しかもコンビネーション。しかし次のアクセルをミスしたのがもったいない。「四季」のおなじみのパートに合わせたパッションは本物、ルッツをきめて1ミスに抑えた。 織田君を見た後だったせいか、「競技」を見たという印象が強く残った。ショートでクワドのコンビネーションを見たのがすごく久しぶりなような気がする。順位はどうなるだろう。わくわくしながら点数を待つのも久しぶりの感覚。 結局織田君の上、本田君の下の3位。 大ちゃんはクワドをミスし、アクセルをシングルに。このままずるずる行くんじゃないかと思ったが、ルッツはきめてスピードも落ちてはいなかった。 やっぱりこのプログラム作った人、鬼だ。 鬼だ。 絶―――っ対鬼だ―――!!! これでクワドもやれと言うか!?ぎゃあぎゃあ言っているうちに彼の将来まで心配になってきたのだが、「でもあのスピードであのステップを踏めている」とはEさん。確かに。 なんだかんだいってマスターしているということなのだろう。やはりそれだけの力があるということなのだ。できない難度のプログラムは始めから作らないのだろうから。 小林君はその長身とヘアスタイルのおかげでブルシェンコとかぶって見えるのは私だけだろうか?去年から外見的にそう変わっていないと思うのだが、NHK杯から急にそういう印象を持っている。 ボレロをどう料理するか楽しみにしていたたら、淡々としたリズムのボレロを始めからテンションが高めのパートを使って滑る珍しいアプローチ。ルッツ+3トウ、ダブルアクセルはきめたのだが最後のフリップでミス。 あこがれの選手が誰なのか、一度訊いてみたい。 今年の全日本男子はおもしろい。 上位陣は小塚君以外軒並み1ミスしているが、全体的に見ると総じて出来がいいのだ。全日本で複数回見て存在を覚えている選手達が生き生きして見える。 会場全体の空気が変わるほどの盛り上がりはないが、力を出しきったというプラス方向の空気はわかる人にはわかるもの。夜行バス明けでの長時間観戦なのに、おかげで全然疲れていない。 ……みんなできがよすぎて碓田さんショート落ちしたりしないよね!? という話を周りの席の人に聞いてもらった直後に滑った選手がジャンプをかなりミスしてしまった。 私、呪いかけたんじゃないわよー(泣)!! 第5グループは近畿ブロックなのだろうか(笑)。福井君、神崎君、吉田君と近畿ブロックで見たメンバーが見事に入っている。近畿ブロックはフリーしか見ていないので、ショートを見られるのはずいぶん得をした気分。 近畿ブロックでは独特のジャンプフォームで胸騒ぎをさせてくれた福井君(福井雄一、京都産業大学)は振付師の欄に自分の名前を載せているというユニークな存在。3トウ+2トウをこらえてダブルアクセル。一瞬ノーミスを期待したのだが、サルコウはきまらなかった。彼のショートの曲は1492。フリー(GETTYSBURG)に続いて心臓に悪いというか…(笑) エルビスが使った曲を使っていたりどこかしら似ている選手の演技を見るとどうしても胸騒ぎがしてしまうのだが、彼の場合はトリビュートという言葉を思い起こさせてつい微笑んでしまう。競技を離れた部分で本当にフィギュアスケートが好きな人なのではないだろうか。 今年大学4年生、社会人として滑っている姿を来年も見たいのだが…。 神崎君、トリプルアクセルがきまった!ルッツで手をつきながらも2トウをつけたが、フリップで両足。途中からピアソラが入る、シックな印象でまとめたタンゴ。 ネーベルホントロフィーの観戦レポートを書いた奴、この会場に来い! こんなにノーブルでいい雰囲気のタンゴなのに、「典型的なアジア男子、No expression.」という意味合いの記述。いったい何を見ていたのだろう?中国男子2軍勢との区別がついていないんじゃないだろうか。国際試合で萎縮していたのかもしれないが、全く演技のタイプが違うのに同じカテゴリーに入れてほしくはない。 演技が終わった後でまくしたてる私に「ラテン的なパッションはないかもしれない」と言うEさん。それを求めていたのなら、その評価もありか。 吉田君はトリプルアクセルが両足になったものの、ルッツ+2トウ、フリップをきめてまずまずの出来。 しかし何も神崎君と二人でラスト2つをとらなくてもねえ…そしてまた順位もかぶっているし(笑) ワイルドで思いきりのいい演技の吉田君と端正できっちりした印象の神崎君。対照的なようでどこまでも近い位置関係にある近畿ブロックの雄(ゆう)二人である。 競技が終わって順位と得点がアナウンスされるのだが、今回は全員分をアナウンスしてくれた。ありがとう!福井君のフリー進出を期待したのだが、25位。惜しかった!(フリー進出は24人) 会場を出てから某コーヒーショップで一息ついて今日の結果についてひとしきり話し合い、本日の宿、Tちゃんご夫妻の家へKと向かう。イブなのに泊めてくれてありがとう(泣)。 今回の (戻る) (続く) |