いよいよ気になっていたFE-108ES2の1kHz付近のディップについての確認をしてみます。
八角獣で実験をしやすいように謀略をめぐらせたのですが、確認するだけのためなら平面バッフルでもできるし、むしろ、箱の影響を排除できることに今更気づきいたことを白状し、内容に移ります。
もともとの疑惑は、バッフル抜き穴とマグネットとの間隙が狭すぎるために生じる、テーパーをつけて抜けを良くすれば1kHz付近のディップは解消する、というものです。
これは、雑誌等でf特とともに公表された箱の仕様と、1kHzのディップが出なかった私の箱との違いから推定したものですが、具体的な物理現象をモデル立てた疑惑ではありません。
というわけで、簡単な実験をして確認してみました。
準備したものは、指定穴を空けた15mm厚600mm×600mmのMDF2枚。
リング装着や厚い板材を使う等により間隙がさらに狭くなる場合は2枚重ねで模擬します。
どーでも良いことですが、MDF材の切削のしやすさには驚きました。
こんな風にセット
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裏面のテーパー処理
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条件は以下のとおり
- サイン波スイープ(5秒/oct)
- Sound Level Meterの出力をPCサウンドカードライン入力へ接続
- FFTツールWaveSpecrtaでキャプチャー
- サンプルデータ数=32768点
- 窓関数:ハニング
テーパーなしのバッフルでは、見事に900Hz-1kHzのディップが観察されます。
ちょうど1kHzを境に上側での凹みは小さくなったので凹みが細くなり、全体にやや改善されているようにも見えます。
しかし差はわずかで、前の時の結果の凹みの痕跡もない特性から期待したのとは違います。
次に、2枚重ねにしてみました。間隙はほとんどなくなります。
最初、1kHzの凹みが逆に小さくなってしまったのかと思いました。
よくよく見ると、500-800Hzのレベルが下がったことで、もともとの凹みを目立たなくしているようです。
この解釈は難しいですが、少なくとも500-800Hzが下がったということは、これだけ窮屈にしてやれば影響はあるということです。
あまりにも当てが外れたので、平面バッフルの裏側に吸音材をいっぱいかぶせてみました。
吸音材の有無も、雑誌等での条件と比較的たっぷり使う私の方式との違いといえます。
凹みが目立たなくなったようにも見えますが、実は窪みの深さはそれほど変わってません。
どちらかというと、2枚重ねにして窮屈にしたときの変化に似ているようです。
くやしいですが、テーパーだけでは中域の凹みの解決は難しいことがわかりました。
ただ、以下のことは言えるのではないでしょうか。
高域と低域に影響がないのは、分割振動域すると背圧の影響も緩和されそうであること、低域は狭い間隙でも抜けやすいからではないかと思います。
- テーパーによるわずかながらの改善は見られること、
- より窮屈にすると、下の帯域のレベルが下がったことから、やはり間隙が狭いことはいくらか影響はあると思われること、
- テーパーの有無(間隙の大小)による影響はボーカル帯域に現れる可能性があり、高域、低域にはf特上の影響はないこと、
マグネットと抜き穴の間隙を狭くしたら凹みが出るのなら、FE-108Σでも裏側をわざと塞いでやれば凹みになるのではないかと思い準備していたのですが、108ES2で差が小さかったので、やめにしました。
気が向いたらやってみようか、、、。