事故状況報告書

◆事故の状況

自車が制限速度内で徐行しながら(推定速度30km/h以下)、こちら側優先の道路を走っていたところ、直交する道路右前方より相手車が猛スピード(推定速度70km/h)で交差点に進入してきた。そのため、相手車を右前に確認したときすでに自車は交差点にさしかかる寸前で(図参照)、そこでブレーキを踏んだが、相手車は全く徐行する気配なしに交差点を通過しようとし、結果として自車が相手車の左後輪付近に接触した。ちなみに現場は住宅地内の道路であり、両方向の道路とも制限速度は30km/hである。

 

◆双方の車の速度を上記とする根拠

1.認知から接触までの走行距離(図参照

右前方に見えた相手車は、こちらがブレーキをかけたときにはすでに交差点を半分以上通過していた。相手車が交差点にさしかかろうとしているのを認めたときから、衝突までの間、自車はおよそ5mしか進んでいない。しかし、相手車は12mほど進んでいる。こちらの速度を30km/hとしてそれをもとに計算すると、

 

相手の速度=30(こちらの速度)×12(相手が進んだ距離)÷5(こちらの距離)

 

となり、およそ72km/hとなる。

 

2.衝突後の双方の車両が受けたダメージの程度

衝突後、衝撃は主にこちらの車にのみ影響を与えている。普通こちらが「ぶつけた」のであれば相手車の方が大きくダメージを受けるはずだが、衝突による相手車の損傷は左後部タイヤのバースト程度でそれを交換するだけで走行にも影響は出ていない。しかるに、自車は衝突の衝撃によって大きくダメージを受け、自力走行不能となった。これは形態としてはこちらが相手車にぶつかった格好だが、実際はゆっくり走っている自車を猛スピードの相手車が横からはじき飛ばしたようなものである。

 

3.衝突後の双方の車両位置

それを証明するのが衝突後の、両方の車の走行方向と距離である。自車は元々の走行方向から7080度ほどの角度で相手車の走行方向に近くなって、左前の家の外壁に右側ライトをぶつけるようにゆっくりと停止した(壁の損傷はほとんどない)。もしそこに壁がなければさらに角度が付き、相手車の後ろを追いかけるような角度で並ぶように止まったものと思われる。現場の検証に来た警察官も事故に至るまでの自車の走行方向が分からず、方向を尋ねていた。それに対して相手車は、こちらの車とぶつかった衝撃で後部を振られはしたが、なおも同じ方向に走行し、やや右前方に進行して、15mほど先のガレージの左外枠に前面から突っ込んでいる。かなりの衝撃があったことはガレージ外枠(コンクリート製)の損傷の程度に表れている。この方向で突っ込んだのは急ハンドルを切った結果であろうと思われる。

もしも相手車が70km/h以上という猛スピードで交差点を通過せず、きちんと減速しており、それでも衝突していたとすると、相手車は事故後、自車の走行方向にひきずられる角度になっており、同方向への走行継続は不可能だったはずである。

 

4.自車は事故現場にさしかかる前に加速出来るほどの距離を走っていない

事故現場は、こちらの進行方向に沿って言うと、信号機のある交差点の次の交差点である。しかも信号機が赤だったので一旦停止し、その後信号が青に変わってから出発した。事故現場は一旦停止、再始動後、30m弱ほどのところである。しかも私は、信号機が青でも信号無視の車が突っ込んでこないかと、常に左右を確認しながら進むのを習慣としている。

 

5.自車は急いでいなかった

このときの走行理由は753分に最寄り駅【※ 状況報告書は駅の実名】に到着する電車から降りる息子を迎えに行くことであった。実際は家から駅までの所要時間は7分程度であるが余裕をもって10分前の743分過ぎに家を出発したのでスピードを出す必要がなかった。なぜ正確な時間が言えるかというと、毎日子どもから下車時刻のメールが入るとそれに合わせて携帯電話のアラームをセットしているからである。実際、その日もアラームが鳴ったので7:43過ぎに家を出発し、事故現場にさしかかったのが745分頃であった。これは家から事故現場までの通常の所要時間であり、とくにスピードを出していなかった状況証拠である。

 

6.毎日通い慣れた道であり、見通しの悪さは熟知している

現場は住宅地の中の道路であり見通しは悪く、子どもや自転車の飛び出しも考えられるので、常にセンターラインよりを走行し、必要以上の速度は出さないようにしている。

 

7.実験結果

事故現場は家の近所であり、今も毎日何度も通っているので、実際に同じ条件で走行実験を繰り返してみた結果、事故現場にさしかかったときのスピードは278km/h程度である。

 

8.相手は道路を勘違いしていたのではないか

おそらく相手車の運転手は道を勘違いしていたのではないか。そう考える理由は、猛スピードを出していた相手車が走行していた道はその先60mで右に向かって鋭角に45度に折れているということである。にも拘わらずそれだけのスピードを出すことに何の意味があるのか。おそらく相手車の運転手は交差点に進入するまで自車はもとより、自車が走行している直交優先道路の存在にも気づかなかったのだろう。全く減速せず交差点に進入してはじめてこちらの存在に気づいた様子だった。自分が優先道路に一時停止も徐行もせずに突っ込んだ意識が無く、警察官やその他の人に「ぶつけられた」と主張していたことがそれを物語る。それを聞いて最初は虚偽の言い訳をしているのかと思ったのだが、これは本心から言っていたのかも知れないと思い直した。つまり、道路やこちらの車の存在に無知であることから出た発言なのである、と。これは推測だが、相手車の運転手は自分の走行していた道路を阪奈道路に続く道路(本当は一本西側の道路)と考えていたのではないか。ただし、相手車運転手が現場で警察官に言っていた「徐行していた」というのは明らかな虚偽発言である。

 

9.相手の車は無灯火だったのではないか

私は27年間無事故のゴールドドライバーである。それはとくに事故の起こりやすい交差点において細心の注意を怠らなかったからである。たとえば夜、住宅地の交差点にさしかかる際、先行車と対向車がない限り寸時ハイビームにしてこちらの居場所を知らせることにしている。また交差点での直交車の車のライトにも注意を払っている。にも拘わらず、今回は直接車体を視認出来る位置に相手車が来るまで相手車を全く認知できなかった。その理由を考えるとき相手車が無灯火であった可能性があると思われる。そう考えるもう一つの理由は、上記8に記したとおり、相手車の走行道路がまもなく鋭角に折れているのに相手が気づいていなかったと思われることである。ライトを点けていれば、まもなく行き止まりになっているようにさえ見える、道路の様態に気づいているはずである。

もしライトを点けていたとすれば、あまりのハイスピードのゆえに私の反射神経が働くよりも早く相手車が交差点を通過しようとしたとしか考えられない。

 

 

(意見)

自車のスピードは一般的には急な事態には十分に停止できる「徐行」スピードであった。相手車も徐行をしていれば、普通は互いに停止し事故になる寸前で事なきを得るものである。しかし、相手車が全く徐行せず、かつ猛スピードであったために、自車は対応が不可能だったと考えるべきである。たとえば「飛び込み自殺」志願者は死を確実にするために出来るだけぎりぎりになってから電車や自動車に飛び込む。今回のケースはもちろん、自殺志願ではなかっただろうが、「自殺的」スピードを出していたことが事故の唯一、でなければ最大、の原因であったと考えられる。形態は自車がぶつかったようになっているが、実際は自車がはじきとばされた「もらい事故」、相手の道路交通法違反という「犯罪」に巻き込まれたものと言えるものであったと考える。