−パソコン通信「教養部フォーラム」だより−

学生の皆さん、これでいいの?・・・・天大の授業、試験のあり方を再考する
(1994年10月号)

                  教養部社会科学研究室 伊藤 義之

 今、教養部のパソコン通信ネット「教養部フォーラム」では定期試験の問題に端を発して、学生にとって公正な授業とは何か、試験はどう行なわれるべきか、それに対して教官はどうあるべきか、といった問題が語り合われています。
 これらのことがらは教養部内にとどまっているだけでなく、いずれ全学的な議論に発展すべき性質を帯びていますので、ちょっとここでその一部をご紹介し、語らいを広げていければと思います。基になる発言は数人の教員によってなされていますが、直接の引用ではありませんので文責はすべて私にあります。

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◎定期試験返却週の導入

 定期試験の返却や解説は現在、教員の裁量に任されており、それを全く行なわない教員もいることから、学生の知る権利、「インフォームド・コンセント」(出された評価に対する十分な説明に基づく合意)は必ずしも守られていない。定期試験週後に正式な試験返却週を設け、試験の返却と解説を制度的に義務づけ、そのうえで試験結果について異議申し立て権や訂正する権利をきちんと認める必要があるのではないか。

◎「学生による授業評価」制度の導入

 すでに教務委員会作業部会でも話題に出ているかなり関心が高いことがらで、学生からもそのような声は出ている(TULIPS7月号「切実な学生の声を聞いてください」参照)。ただし、評価の制度が出来ても、学生のチェックだけでは放置される可能性があるので、学生からのチェックとそれをさらにチェックする機関(「自己評価・自己点検委員会」など・・・・)によるダブルチェック・システムの導入が望ましい。

◎教員の休講過多に対する措置

 先日、後援会からも「休講が多い、それに対する補償=補講をきちんとするように」との要望があった。教務課に資料のあるもの以外、無届け休講も多いらしく、学生から苦情、不平を耳にすることもある。
 大学によっては休講回数が全体の一定の割合を超えると、必ず決まった回数の補講を実施しなければならない、場合によっては休講回数分だけ補講しなければならない、しかも同一週において補講しなければならない、といった措置を講じている所もある。無断休講については、学生から教務課に連絡してもらい、チェックしていくということも考えられるのではないか。

◎オフィスアワーの制度化

 オフィスアワーとは教員が必ず個人研究室に詰めておく時間帯のことで、これは1科目につき、あるいは1教員につき週当たり何時間と、教員に教室外指導を義務づけるためのもの。現在は何名かの教員によって自発的に行なわれているだけで、制度化がされている訳ではない。
「いつ訪ねても先生がつかまえられない」という学生にとってのみならず、のべつまくなし、こちらのスケジュールにかかわりなく学生の都合だけで研究室に来られては困る教員にも、きちんと何曜日の何時から何時まで、といふうにはっきり面談時間を設定したほうが好ましいはずだ。「どうしてもそんな時間は作りたくないという人」がいるとも聞くが、むしろなぜそんな時間を作りたくないのか、その点を問題視すべきであろう。


 上に上げたことは学生の立場に立てば、どれも当然に思われる事柄ばかりで、むしろ教員の自己裁量権なるものを盾にそれがなかったのが不思議なくらいである。教員に無限定なまでに「自己裁量権」を与えては、公正な授業や公正な学生評価が行われないかもしれない、という恐れはないのだろうか。教員と学生の上下関係の意識が強い日本社会であればこそ、制度としてチェックにチェックを重ねるシステムが余計に望まれる。