教養部発行の機関誌Tulipsを終えるにあたって

社会科学研究室 伊藤義之

 

Tulipsは今回の号が第8巻第5号、通巻62号です。1994年に教養部の機関誌として創刊されて以来、途中開店休業状態のようなときもありましたが、62回の長い間にわたって発行が続けられたのは原稿を執筆してくださった人々そして飽きもせずに読み続けてくださった読者のみなさんがいればこそです。あらためて感謝します。

 正確に数えたわけではありませんが、一回のTulipsに4、5本の原稿が載っているとすると全体では300本前後の記事数となります。原稿は教員、学生から卒業生、そして図書館員などからもいただきました。ときには天理大学とは縁もゆかりもないはずの人からも感想や意見を投稿していただきました。思い返してみると、何と多くの人に支えられてきたのかと驚きます。

 いくつか印象に残ったものを上げますと、まず思い浮かぶのは今はおやめになられた生物学の菅沼先生がシリーズで書いていた「天理大学キャンパス植物誌」。私たちが普段目にしているはずなのに気がつかずに通り過ぎているたくさんの花や木々を菅沼先生はご専門の植物学の面からまた、社会とその植物との関わりなどを通してわかりやすい筆致で解説してくださいました。毎回その植物のシルエットもつけてくれ、とても親しみやすかったのを覚えています。私個人としては小学校のプールの近くにある「モミジバフウ」をなぜかしっかりと覚えています。このほかにも教員からはそれこそ千差万別の視点から、多様な原稿をいただきました。

 学生の投稿の中にも面白いものがいくつもありました。ブラジルに留学していたある学生が日本では考えられないような体験談を披露してくれるかと思えば、中国人留学生が日本の社会構造を寮生活の体験をもとに立派な日本語でつづってくれたり。就職活動を行った卒業生が後輩たちへのメッセージを書いてくれることもありましたし、ワーキングホリデーや在外公館での活動にいざなう諸先輩たちの記事が載ることもありました。学生は普段の授業だけでは見えないたくさんの可能性を持って生きています。彼らはこれからの大学をどうやって活性化できるだろうかと考えています。ささやかですが、彼らが意見を表明する場を与えることができたのもうれしいことでした。

 台湾学会やアメリカス学会など学内の研究活動の広報、クラブ活動や同好会活動の参加者募集や発表会の案内の場に、ボランティア団体の寄付募集にとミニコミ誌的な利用をいただくこともありました。私ごとで恐縮ですが、自分が部長をしているアメリカンフットボール部の連中をけしかけて、どんどん誌上で部員募集などの宣伝もさせました。

 今年3月末の教養部の解消とともにTulipsという名前の機関誌はなくなります。しかし、上に述べたような使命がキャンパスにある限り何らかの形でTulipsのスピリットは継承していきたいと思っています。


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