埋もれていた四冊の本


 久しぶりに書棚を整理していると、埃をかぶった四冊の本を見つける。
「燃ゆる韓三国と飛鳥」上下卷と「燃ゆる飛鳥と韓三国」上下卷が目にとまった。
著者 李 南教さんから戴いたサイン本だ。
急に懐かしさが込み上げ彼を思い出しながら再び読み始める。


 1987年頃にさかのぼるが、李 南教さんに会ったのは大阪梅田地下街の一杯飲み屋だった。
 友人から紹介され名刺の交換をする。 「駐韓国領事館 副領事  李 南教」
年齢は定かではないが40才くらいの落ち着いた紳士。
 酒も入って初対面から話しが弾む。
 私が奈良に住んでいる事で親しみを持たれたのかも知れないが、
彼は古都奈良に大変興味を持っている様だった。
 「韓国と日本は昔から兄弟の様な関係です」
 「韓国の古代歴史資料や日本の歴史資料を読めば史実である事がよく解ります」
  「今、私は飛鳥時代の歴史を調べています」
と、やさしい親しみのある日本語が帰ってきた。
 彼は飛鳥時代を舞台にした歴史小説を書いている事を話してくれた。
 その後、何度か一緒に飲む機会を得たが、益々彼のやさしい人柄に惹かれた。


 それから一年後、彼の著書「燃ゆる韓三国と飛鳥」上下卷が角川書店より出版された。
 飛鳥と百済の交流を通じて登場する主人公「藤原鎌足」の物語である。
 作品からは韓国人としての民族愛と隣人愛が一貫して流れた物語で、
興奮して一気に読み通した事を思い出す。

 彼はその年、韓国に帰任しソウル大学教授を経て文教部(文部省)に席を置いていたが、1990年再び
神戸総合教育院院長として就任してきた。
 懐かしさの余り神戸の彼を訪ねた。
 「来年、KBS-TVの大河ドラマで一年間「燃ゆる飛鳥と韓三国」が放映される事が決まりました」
と、大変な喜び様だった。
 放映に合わせて新版「燃ゆる飛鳥と韓三国」が出版される。




 初版「燃ゆる韓三国と飛鳥」が新版「燃ゆる飛鳥と韓三国」に題字が変わった訳は知らないが、
今、 彼は韓国文教部(文部省)で政務に就いている。
 もう50数才の歳になっているだろう。
 近く訪韓して彼に再会したい。