奈良県 奈良交通自動車教習所での受験記


奈良の特急やまと号さん(46才)から受験記を送って頂きました。取得年月日:平成17年6月7日

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免許を取得しようと思った理由

私は46歳になっても、運転免許は「普通」一種の免許のみしかありませんでした。今先行きの不透明なこの時代に免許証が殆ど誰もがもっている「普通」免許のみでは何とも心細く、2月に思い切って「普通二種」免許取得のため、27年ぶりに自動車学校の門をくぐりました。その時は私の自宅からも程近い「奈良自動車学校」へ入校し、学科19時間、技能21時間所定の教習と検定を終了し、奈良県運転免許センター(新ノ口試験場)にて3月に学科試験合格、念願の「普通二種」免許を取得しました。

ところが、その後「折角普通二種まで取ったのだから、じぁ今度は思い切って大型二種にチャレンジしてみよう!それに普通二種があるので公安委員会指定の教習所に通えば、技能のみ29時間(場内15時間、路上14時間)で取得できるのだから」と思い、5月の連休明けより奈良県では唯一の大型二種の公認校である地元バス会社の経営する「奈良交通自動車教習所」に入校することにしました。

入 校

技能予約をした5月7日教習所に早めに行き、コースの様子などを見て見ました。教習に使用するバスは全部で4台あり、うち3台は最近路線バスの使命を終えて教習車に改造されたいすゞのP−LT312J(大型短尺:全長9メートル35、全幅2メートル49、高さ3メートル44)のエアブレーキ装着車で、残りの1台は運転免許試験場受験者の練習に主に使用される車暦23年のEDM430(大型短尺9メートル15)の油圧ブレーキで旧塗装車でした。

路線バスの中古車と言うことで77万キロや97万キロ走行の凄い車で、しかも塗装は路線バスと同じで「鹿」のマークが描かれています。違いは教習所名が入っているのと白の8ナンバーであることくらいでした。 

場内練習

学科教習が免除されているので、早速技能が始まりました。ここは大型教習が出来る割にはコースが狭く大型バスの取り回しは結構大変だろうな?と思って心配していました。(普通二種の奈良自動車学校はとてもコースが広かったので)。まず最初に教官より修検のコース図やバスの諸元表そして「大型二種教習の確認と歓呼」などを書いた紙をもらいました。その中でも驚いたのは、各操作時に「歓呼」が義務づけられていることです。最初に発進する際には「車内後方ヨシ、左後方ヨシ、右後方ヨシ、発進ヨシ、左振り出し注意」信号待ちから左折時は「車内後方ヨシ、信号ヨシ、発進ヨシ、右ヨシ、左ヨシ、巻き込み注意、右振り出し注意、横断歩道ヨシ」こんなに言いながら操作は出来るか、頭が痛くなりそうで「さすがバス会社!」などど考えているうちに、バスの点検など教えて頂き、まず教官が運転の見本を見せてくれました。

そして、交代してバッテリースイッチやエンジンスタート方法を教えて頂き、場内を外周。「左ミラー気をつけて」と注意を受けながら早速、踏み切り通過です。停止の際には「後方注意」の歓呼。踏み切り発進は窓を開けて「車内後方ヨシ、右ヨシ、左ヨシ、右ヨシ、音ヨシ、発進ヨシ」となります。もう歓呼だけで疲れが出てしまいます。そして坂道発進です。エアブレーキなので、サイドを引いてすぐブレーキペダルを放すと、ショックが車内にかかるので旅客を輸送するバスと言うことからゆっくりとペダルから足を離して、そしてローで発進します。これは殆ど問題なくこなすことが出来ました。

エアブレーキに関してですが、普通車の感覚でブレーキをかけると「急ブレーキ」状態になってしまいます。かけはじめは強く踏ままない事です。でもゆるいとバスは重いので停止できません。特に場内ではそんなに速度が出ないので慣れるまでは少し時間が必要です。路上に出ますと普通車よりはかなり早めに、最初は強く踏み少し力を弱めながらブレーキを効かせて行くのがコツと思います。

その後は「S字」に入ります。ここのS字は右折で進入して右方向に旋回して行く所謂「逆S字」になっています。そして大変なのはこのS字が障害物通過と兼ねていることです。つまり通常のコースならクランクでミラーすれすれに通して行く業を、ここではS字で行わなければなりません。そこでローギアーで進入と同時に左サイドミラーをポールすれすれの約10センチの間隔に保ちながら、ハンドルを右に切って行きます。右サイドミラーで後輪を確認するとダブルタイヤの外側が半脱輪状態になりますが、このコースではそれは物理的な理由からOKだそうです。それだけにスリル満点です。通常の教習所なら車体の前方がコースから出ても、前輪が充分通過出来るのでS字ではあまり苦労ししないようですが、ここでは右後輪脱輪と左ミラー接触を同時に注意する必要があるのでS字には苦労しました。

その分「クランク」は2〜3度通過の練習はしましたが、これはクランク進入時にほぼ決まっています。如何にうまく車体の「寄せ」が出来るかどうか、と言うことでしょう。私の場合は幸い「寄せ」が出来たので案外簡単に通過出来ました。クランクもここでは所謂「逆クランク」となります。障害物通過はS字で行う為、この教習所では修検の課題にクランクは含まれていません。S字にしてもクランクにしても車体間隔を掴むには良い練習になりました。

方向変換について

方向転換については、普通車と殆ど同じ間隔でやれば良いと思います。ただ、ここの教習所の方向転換は、右折進入を行い左前輪の真ん中が転換口の縁石にきたら、ハンドルを半回転させほんの少し前進します。そこですぐハンドルを戻して車体後方が進入口を過ぎたあたりで停止します。やや右斜め進入の形を作る訳です。そして「車内後方ヨシ」窓から顔を出して「後退ヨシ」と歓呼。ハンドルを左一杯に切りながら進入して、車体がまっすぐになるまで切りつづけます。まっすぐになったらハンドルを戻して、後ろの窓から後方障害物を確認しながら停止します。

ここで気をつけなければならないのは、大型二種は後方障害物まで50センチ以内に着けなければならないことです。停止したらハンドブレーキをかけ、ギアはニュートラルにして「方向転換及び後方間隔終わりました」と言わなければいけません。その後前扉を開けて教官が外に出てメジャーで計り確認します。最初のころは教習生も降りて教官と一緒に確認して感覚を掴むようにします。

縦列駐車については、目標物(ポール)をどの位置に見えたら、どうハンドルを切るというここの教習所でしか使えないので、ここでは省略しますが、完了した際にはやはり「縦列駐車及び後方間隔終わりました」と言わなければいけません。後方障害物50センチ以内は縦列駐車でも同じです。 

鋭角について 

鋭角通過の課題は、「右折れコース」「左折れコース」と練習します。卒業検定では「左折れコース」となりますので、主に「左折れ」で練習しました。通過方法ですが、@鋭角コースに進入したらできるだけ右端に寄せる(車体ギリギリくらいがいいかも知れません)A左前輪が鋭角の頂点の延長線上とクロスしたところ(自分の背中を越えたところ)くらいで左後輪に注意してハンドルを左いっぱい切ってゆっくり進み、アンダーミラーを見ながら縁石とバンパーが平行になって重なったらハンドルを戻して停止。(この際に決して停止した状態でハンドルを戻す、所謂末切りは絶対に行ってはいけません)しかし、この方法はこの教習所独自のポイントかも知れません。Bミラーで確認「車内後方ヨシ」窓から顔を出して「後退ヨシ」の歓呼の後、ここの教習所のコースではまっすぐにバックします。(他の学校や試験場ではハンドルを右にいっぱい切ってバックします)この方法はあくまでここ独自の方法なので参考に留めて下さい。C右前輪の脱輪と左後輪の接触に気をつけて、左いっぱいにハンドルを切って離脱します。鋭角通過ではAで早くハンドルを切ったりBの際にも早切りをすると必ず前や後輪がつまってしまいますので、出来るだけ前の余地をうまく使うことがコツです。少し切るのが遅れ気味でも二回目の切り替えしで離脱できます。早切りで失敗すると離脱不能になります。なお検定の際には切り替えしは3回まで認めれていますので、落ち着いて操作をしするように心がけて下さい。

修了検定

場内の検定(修了検定)は5月21日でした。検定は10時からと言うことでしたが、9時には教習所に行き、教習生ホールにて待機しました。本日は卒検の方が6人、修検は私1人でした。修検と言うことで時間前でしたが早速視力検査があり、三桿法での深視力検査もう慣れになってしまいました。その後検定のコースがAコースと言われ「比較的走りやすいAで良かった」とホッとしました。

修検は私1人のため後ろの席には、卒検の方が乗られ早速スタートしましたが、ギャラリーから一斉に視線が集まり、検定員(教官)から停止指示。何かやってしまったのか?とドキッとしましたが何とバスの前面方向幕が「回送」となっていました。検定前に教官が教習所の近くにあるバスの基地に給油に持って行った際の「回送」表示のままだったのです(笑い)。(普段教習の時は方向幕は「仮免許 教習中」となっています)

方向幕を私が操作して「運転免許 検定中」に変更、再スタートです。この一件ですっかり肩の力が抜けのびのびと走ることが出来ました。途中一箇所左折で少し外にふくらんだ以外上手く走れました。検定後教習簿には95点となっていて「合格」しました。場内検定の後は今度は私が後ろに座り、卒検の方の運転を見ることが出来ました。お陰で検定コースや停止ポイント等大変勉強になりました。仮免許発行は5月24日になるとの事でしたので、5月25日より第二段階の路上教習の卒検までの全予定の予約確定をして帰りました。

路上教習

いよいよ路上教習です。基本的には検定となるコースからはじめ、その後幅の広い道に出て行きました。実際の路上では、教習所を出て大型にとっては少し狭い2車線を走るので大型同士の対向のタイミングの合わせ方や、普通車・原付・自転車・歩行者などと如何に共存していくか?考えながらの運転になります。特に大型同士の対向が不可能な場合は、必ず停止して待つように指導を受けました。また少しでも危険を感じたら、ハンドルで回避することは事故に繋がるのでまずブレーキをかけ回避する、そしてハンドルでの回避は最後の手段であることも徹底的に指導を受けました。

路上教習中は、先に書きましたように教習車が路線バスの中古で同じ塗装のため、何度か路線バスと間違われ後ろからバスが来たのと勘違いしたお客さんが懸命に手を上げて止まるようにされていたり、バス停に向かって全力で走るお客さんを見ました。そのたびに教官の方が手をバツに交差して頭を下げていました。バス会社の看板を背負って走行しているので教官がいろいろと気を使う部分があるようでこれも普通の自動車学校の大型二種の教習とは異なる部分でした。

またバス会社直営の教習所のため、教官は皆バスの運転のプロがそろっており指導方法も抜群です。経歴は様々で高速の夜行特急を運転されていた方、観光バスの経験の方、奈良北部のベッドタウンで分刻みのダイヤで走っていた方、近畿の秘境と呼ばれる十津川地区で厳しい自然と道路状況の中で運転をされていた方等等、ベテラン揃いでした。

路上教習は、私の場合は「普通二種」所持のため14時間と「普通一種」の方よりも5時間も短くなっています。その関係で所謂慣らしの運転の期間は短く、4時間程度で早々と「旅客輸送を想定した運転」に入ります。その中でも指定場所停止の練習が多かったです。これは他の方も書かれていますので、重複するので詳細はそちらの方をお読み頂ければ良いかと思います。ただこの目標物停止の際には路側帯から30センチ以内に寄せて停止するように指導されました。これはヒールを履いた女性が一歩で乗車できる幅が30センチ以内つまりだいたい25センチくらいが丁度なんだそうで、アンダーミラーで確認しながら路側へ寄せて行くのばベターなんです。

停車の際は、この季節なので街路樹が結構茂っていたりで寄せにくい場所もありました。また電柱や木に左サイドミラーが接触しないようにそして25センチくらいにつけて行くのが難しい部分だったと思います。

このほかは1時間シュミレーターがあって先急ぎの体験でした。2度ほど事故を起こしていまいましたが、タイムは設定されたタイムよりは13秒遅れくらいでした。(「普通二種」では教習所のコースが広かったので実車で体験しました)シュミレーターは勿論普通車用のものでした。ただ終了前に教官が観光バスに乗務していたころ、修学旅行の生徒さんの乗車遅れで駅までの予定時間が少なくなることによる心理的先急ぎの経験談をお聞きすることが出来、自家用なら自分の都合のみで起きる先急ぎも二種なら旅客の都合から起こると言う現実の厳しさも実感しました。これもバス会社ならではの経験談なのでしょう。

私の場合は、コメンタリー運転や学科とのセット教習などは免除のため、「みきわめ」までがとても早く過ぎていきました。そして無事「みきわめ」も通過していよいよ卒業検定を申し込んで帰りました。

卒業検定

卒業検定は月が変わり、6月4日でした。大型二種は私を含めて3人、修了検定の方が1人でした。

教習生ホールに集合して、検定コース並びに諸注意事項の説明がありました。本日の検定コースは3コース4コース。つまり教習所を出て天理市街地へ向かう往路の3コースと天理市内で運転交代をして教習所にもどる復路の4コースでした。私は4コース復路と言うことで市街地から大和郡山の郊外にある教習所に戻るこのコースの方が気も楽でした。また往路でもう一人の運転を観察して心構えも出来るのでラッキーでした。

早速検定が始まりました。ここでは、まず路上にいきなり出て行きます。往路無事終了して有名な天理教本部のすぐ側の路上で交代して復路4コースに挑みました、交代早々復路は目標物停止は2箇所連続であります。更に左折可の交差点を左折してしばらくして3回目の停止指示。ここは街路樹が少しこちらに寄っているので、慎重に寄せて停止しました。3回ともクリアー。天理よろず相談所病院(憩いの家)の横を通過して、天理街道に入り法定速度50キロ区間ですが交通量も多く、なかなか50キロまで出せません。いよいよ車も流れ出し交差点信号も青、でもその脇に小学3年くらいの女子児童3名が自転車で横断待ちをしていましたが、ナント自転車の前輪が3台ともまるまる車道に出ているではありませんか!そこでセオリー通りブレーキをかけ減速。対向に貨物車が来ていたため、こちらが停止。貨物車が通過後、後方を確認して発進しました。ヤレヤレ本当に路上は何があるか分かりませんね。

子供たちの前を通過する際、検定員(教官)が手で思いっきり「下がれ、下がれ」としていたのが印象に残りました。しかしただ怒るのではなくその「下がれ」には悲惨な交通事故に子供たちがこれから遇わないよう願う心と教官のやさしさが込められていたように思いました。

兎に角、教官にブレーキを踏まれずに無事教習所に帰還。発着点で往路の受験者と交代。鋭角、縦列駐車。その後私も同じように場内課題を終了して検定は終わりました。3人とも無事に合格でた。

1時間ほどで卒業証明が発行され、私は後は新ノ口の試験場で適正試験のみで免許証が書き換えられることになりました。 

奈良県運転免許試験場(新ノ口試験場)

奈良県の場合、二種の試験日が火曜日と木曜日のみのため、6月7日に試験場へ赴きました。大型二種の教習を開始して丁度1ヶ月目でした。そこには同じ日に大型二種の卒検の合格をされたKさんも来られていて、学科試験の受験手続きをされていました。私は手続き後、適正試験のみで視力検査が終わって「はい、大型二種合格です」と言われ、何だか運転免許の最高峰「大型二種」があっけなく交付されることに拍子抜けしたような感じでした。それにしても学科試験もないのに2,100円は高かったです。 

免許取得にかかった費用

教習料                           259,880円 (普通二種所持者)
修了検定料                          9,550円 (大型仮免許交付手数料を含む)
卒業検定料                          8,400円  
適正試験申請料+ 免許交付手数料     2,100円+1,690円(奈良県運転免許試験場)

合計 約281,620円 です。

感想

現在の二種の制度のもと、普通免許(二種も含む)から大型二種への試験場での飛び込み受験は、路上試験があるために不可能のなっております。方法としてどうしても飛び込み試験にこだわる方は、大型一種の飛び込みで合格して大型免許を取得してから大型二種の試験場受験をするか、大型仮免の飛び込み試験を受け仮免を受けてから5時間以上路上で練習して指導を受けた証明を持って本試験に臨むしか道はありません。私自身の私見としては「試験場受験」の醍醐味は理解出来ますが、その後の取得時講習も考えると「普通」免許の方はやはり時間と費用が許すなら公認教習所へ行かれることをお勧めしたいです。

よく教習所の検定は試験場より甘いと聞きますが、教習所はそれだけ時間をかけて丁寧に一人一人を大型二種にふさわしいドライバーに仕上げて行くのだと思います。検定の時にたまたま軽くミスをしても普段から教官として受験生を見ているのでそういったことも考慮して観ているのではないか?と思います。いろいろと教習所には批判もありまた学校によってはひどいところがあるのも事実ですが、私は教習所を卒業して良かったと思っています。今後もバス会社へは就職は年齢的にも就職しないでしょうが、年に2回くらいは教習所に戻り、大型バスで「自由練習」を行うことにしております。

以上で大型二種取得体験記を終わります。