スピッツ   のんびりとした芸術家達

<注意>かなり昔のものです!私は一切修正はしていません。後半'99.2.4更新


●インタビュー● 福島愛子
スピッツはいいです。シミジミといいです。ほんとうにいいです。どんなふうにいいのか、と説明しようとすると、
ちょっとくすぐったい言葉ばかり思いついてしまうんだけど、どうやら魅力の秘密は、彼らの人間性にあるらしい。
そういうインタビューです、今月は。
 スピッツって才能のバンドだよなあ、と近頃つくづく思う。
 もちろん、楽曲においては、そのほぼすべてを手がけるマサムネくんの才能によるところが大きいんだろう、と思う。 先月のインタビューでも触れたけれど、難しい言葉は使ってないのに、新鮮な組み合わせで聴き手のイマジネーションをかきたてる歌詞。 けして明るくはなりきれない、せつなげなメロディー。マサムネくんの世界は借り物でなく、とても独特だ。
 だけど、その独特さを最大限にいかそう、というメンバーの功績も、構築されたアレンジを聴けばわかるはずだ。よりよいものを生み出そう、という姿勢。 それはアルバムからライブからヒシヒシと伝わってくる。
 バンド全体で芸術家タイプなんだ、スピッツは。
そう考えると・・・要なしの危なっかしさとか、人の心にズケズケと踏みこんでくるようなずうずうしさはないけれども、聴き手に「大好き!」と言わしめるだけの強引さはちゃんと備えている・・・ そんな、何年たっても色あせそうにない作品群にも納得がいく。
 でも、ついでに言わせてもらうならば、スピッツはバンド活動のペースについても、芸術家を思わせるそれがある。つまり、めちゃくちゃマイペースなのだ(笑)。
 というワケで、今回は、そのマイペースぶりについて焦点を当ててみた。それに応えるメンバーの発言は、どれも「人間、余裕がだいじだよなあ」と思わせてくれるものばかりである。

●スピッツの91年1年間のスケジュールってどんな感じでした?
<マサムネ>そうですね、マイペースでした(笑)。ライブとレコーディングをやるほかには、リハーサルを週3〜4回やるって感じで。

●ライブは年間通して何本ぐらいやったんでしたっけ?
<テツヤ>10本ぐらいじゃない?すくないよね。

●確かに(笑)。そのライブの本数の少なさっていうのはメンバー側の希望っていうのもあるんですか?
<マサムネ>うん。っていうか、うちらのバンド性や音楽性を考えても今はそんなにバンバンとライブをやるべき状況じゃないと思うんですよ。
<テツヤ>好きだけどね、ライブは。

●このPULMが出る頃には終わってますけど、12月17日には日本青年館ワンマン・ライブも敢行、と。
<テツヤ>ああ、青年館は気合い入ってますよ。(取材は12月17日以前でした)
<崎山>一生懸命やりつつ楽しめればた、と。
<マサムネ>心がまえとしては、いつもどおりのライブをステップ・アップしたものができればいいなってところです。まあ、けっきょくは自分たちが気持ちよくやれれば、いちばんいいんだけど。

●でも、それだけ本数が少なかったりすると、1本1本のライブがすごく新鮮に感じられたりするワケですか?緊張がものすごい、とか。
<マサムネ>緊張はしますね、すごく。

●逆に、このペースに慣れてしまっているから、年間何10本ものライブはこなせそうにないかも(笑)、なんて思ったりします?
<田村>いや、そういうのはないですね。
<崎山>ライブ自体、好きでやってるんだから、つらいと思うことはない。

<マサムネ>・・・それにオレ、ライブに限らず、取材でもラジオでもなんでも仕事だとは思ってないから。っていうか、思えないから。 仕事っていうと、なんだかしかたなくやってるみたいでしょ?だけど、オレはけっこう好きでやってることだから、仕事っていう意識はあまりない。
<テツヤ>みんなそうだよね、仕事だと思ってない。
<田村>毎日、幸せだなあ、と思いながらやってます(笑)。

●まさにマイペースだなあ(笑)。じゃあ、そんなマイペースなバンド生活にどっぷりつかっているこの4人は、もともとマイペースな資質を持っている人たちなのか、というところを探っていきたいと思うんですけど。 どうでしょう、まずテツヤさん。見るからにマイペースって感じがしますけど(笑)、昔からそうでした?
<テツヤ>そのまんま。マイペース。

●(笑)。まわりの人間と自分は違うなって感じたこととか・・。
<マサムネ>協調性はあったでしょう、テツヤは。
<田村>生徒会長だったもんなあ。

●ええっ!!
<テツヤ>オレカメレオンだからね。転校も多かったし、誰とでも仲良くできるってことが、知らず知らずのうちにやれてたんだよ。 まあ、最近はそれもヘタになってきたような気がしてるけど。

●あ、それはどうしてだろう。
<テツヤ>わかんないけど・・・人見知りするようになったんだよね。オレの第一印象も悪いのかな。 うちの事務所の社長、オレのこと紹介するとき、絶対言うことが「見た目の印象は悪いけど、話すといいヤツです」。(一同爆笑)「わかってくれてるんだあ」って、目頭熱くなったよ(笑)。


お待たせしましたここから'99.2.4更新

●話がそれてる気もしますが(笑)、じゃあ、田村さんのこれまでのマイペース人生は?
<テツヤ>田村は最近、社交的になったよね。
<マサムネ>田村って、人に対して冷たいところがあったから(笑)。
<田村>まあ(笑)、どうでもいい人に対しては、適当にねえ。
<マサムネ>どうでもいい人?(笑)

●それは誰でしょう(笑)。田村さんにとって対人関係よりも重んじたいのは、どんなことですか?
<田村>いや、自分がいちばんだいじだっていう・・・そうでしょう?誰でも。だから、苦しむくらいだったら、 その程度の人間関係とどめておいたほうがいいかな、と思うんですよ。最近は、この考え方も変わってきてるんですけどね。

●振り返ると、結構自分の好きなことをやり通してきた感じですか?
<田村>そうですね。オレはズルイというか計画的だから、考えてみると、今までにイヤなことはやったことはないかもしれない。 イヤになればすぐやめてたし、やめてもほかに好きなことがすぐできたし。運も良かったと思う。
<テツヤ>甘ったれ。ボンボン。

●(笑)。崎山さんは、どうですか?
<テツヤ>崎ちゃん、アツイよ。
<崎山>小さい頃からスポーツとかやってきてるんで、アツイところはあるかもしれませんね(笑)。 でも、やりたいことはちゃんとやり通してきてます。

●ちなみに小さい頃に思った、将来の夢ってなんでした?
<崎山>えーと、一時期、強く思ったのが警察犬の訓練士。
<マサムネ>あー、いいね。
<崎山>中学の頃、本買って読んだりして、ちょっと勉強しました。
<田村>あれって、訓練学校のビデオとか見ると泣けるよね。訓練士と犬の別れのシーンとか。

<崎山>(笑)。そういうの見るとヨワイです。

●あと、ほかに夢は?
<崎山>あとはもう、高校の時からドラマーになりたいと強く思い続けて、今、現実になってますよね。 ドラムの面で、あせりを感じたりすることが、たまにありますけど、それもバネにしつつ。

●ドラムに関しては完璧主義だったりするんですか?
<崎山>そんなにはでないですけど、なるようになるっていうより、なるようにするって感じですね。

●なるほど。では、マサムネくん。
<マサムネ>オレらって、30くらいで死ぬワケじゃないでしょ?寿命としては、80くらいまであるだろうから。

●いきなり、そう来ますか(笑)。
<マサムネ>だから、あせってもしかたないし、それだったら、やりたいことを納得いくまで時間をかけて、やったほうがいいと思うんですよ。 そういう考え方できてるから、マイペースなんでしょうね。

●学生時代から、自分はふつうのサラリーマンにはなれないだろうな、って感じていたとか?
<マサムネ>まあ、なったらなったでやれてただろうけど、みんなと同じことをただ繰り返すっていうのはイヤですね。

●そのへん、ほかの方はどうですか?
<テツヤ>音楽やってない自分は、考えられない。

●じゃあ、いるべくしてここにいるって感じですかね、みなさん。
<テツヤ>うん。そう言うと、ちょっとカッコいいけどね。
<マサムネ>これはもう、必然でしょう。

●トートツですけど、芸術家の反対語ってなんでしょうね?
<マサムネ>芸術家ですか?・・・合理主義者とか、そんな感じじゃないかな。芸術家はムダなことをやってる人だと、オレは定義してるから。

●ムダなことっていうか、それがなくとも生きてはいける、と。なら、スピッツがどっちに属するかというと・・・
<マサムネ>芸術家。すならしいね(笑)。自分で自分のことを芸術家って言うのも、カッコ悪すぎるよな(笑)。
<テツヤ>まあ、アーティストです。

●好きなペースで、好きな作品を作り続けるアーティスト。今後もそのマイペースぶりは保たれそうですか? 忙しさやプレッシャーがドッと来たとしても。
<マサムネ>うん。忙しさやプレッシャーは必要なこととも思うし、それがあってもオレら常に、マイペースでいられると思いますよ。

●聴き手から求められるものがあったとしたら?
<マサムネ>いや、求められるものに応えるよりも、自分たちがいかに納得できる演奏や楽曲を作り出すかっていうのが、だいじだと思ってますから。

キラリ☆の一言
ほぼ一年ぶりに更新しました。 途中マサムネさんの発言で「30くらいで死ぬワケないでしょう?」って出てくるけど、
この頃は30才のことなんて予想できなかったでしょうね。
こんなに人気になっていることも、時代に流されないように岩にしがみついているなんてことも・・・。

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