万葉集 枕詞における用字研究「ひさかたの」  2008年7月19日掲載  当サイト管理人 植芝 宏

「ひさかた」の表記
 「ひさかた」は天、雨、月にかかる枕詞で、全部で50首に詠まれている。
なかに「都」にかかるケースが一首あり、都は遥か彼方に・・・というイメージで使われている。
ひさかたの 都を置きて 草枕・・・(巻13 3252)

一字一音 首数 訓読み 首数
比佐可多 2 久堅 29
比左可多 2
比佐迦多 1 久方 15
比左加多 1



「比佐可多」は Fitsakata と発音
 「ひさかた」は古事記に1首、日本書紀に1首ある。

古事記歌謡番号 枕詞 掛かる詞 作者 原文と読み
28
(12代景行天皇)
比佐迦多能 阿米能迦具夜麻
(天)
倭建命 比佐迦多能 阿米能迦具夜麻 斗迦麻邇
ひさかたの あめのかぐやま   とがまに
佐和多流久毘 比波煩曾 多和夜賀比那袁・・・
さわたるくひ   ひはばそ  たわやかひなを
         
日本書紀歌謡番号 枕詞 掛かる詞 作者 原文と読み
59
(仁徳40年2月の条)
比佐箇多能 阿梅箇難麼多
(天)
(女人等) 比佐箇多能 阿梅箇難麼多 謎廼利餓
ひさかたの  あめかなばた  めとりが
於瑠箇儺麼多 波椰歩佐和氣能 瀰於須譬餓泥
おるかなばた  はやぶさわけの みおすひがね


 岩波書店 日本文学大系『万葉集一』の解説 「奈良時代の音節及び万葉仮名一覧」から抜粋。
 ■・・・私の使用するパソコンで変換できない漢字。
音節 推古朝 古事記・万葉集 日本書紀
ひ Fi
(甲)
比、必、卑、賓、嬪、臂 比、■、必、卑、避、臂、譬
訓仮名・・・日、氷、負、飯、檜
さ tsa 佐、作、沙 左、佐、作、酢、沙、紗、草、散、者、柴、積 左、佐、作、沙、婆、舍、差、瑳、磋
訓仮名・・・狹
か ka 加、架、迦、賀、嘉、可、哥、珂、訶、甲、汗、香、箇、閑、何 加、伽、迦、煤A可、河、柯、歌、訶、■、軻、介、箇
訓仮名・・・蚊、鹿
た ta 多、侈 多、他、丹、駄、當 多、■、大、駄、■、■、黨
訓仮名・・・田、立



「ひさかた」とは?
 用字をみると、訓読みは「久堅」と「久方」の二つある。
「久方」は現在も「久方振りで故郷へ帰る」などと使われ「ひさしぶり」という意味で使われていて、遥か彼方に はてしなく長く続いている意。
もうひとつは「久堅」、天が久しく堅いと表記している。
どうして天が久しく堅いのか。
人麻呂の歌に、


 日並皇子尊殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首 并短歌
 ひなみしのみこのみことの あらきのみやのとき かきのもとのあそみひとまろの つくるうたいっしゅ ならびにたんか

  天地の 初の時の ひさかたの 天の河原に
  あめつちの はじめのときの ひさかたの あまのかはらに

  八百萬 千萬神の 神集ひ 集ひ座して
  やほよろづ ちよろづかみの かむつどひ つどひいまして

  神分り 分りし時に 天照らす 日女の命
  かむはかり はかりしときに あまてらす ひるめのみこと

  天をば 知らしめせと 葦原の 水穂の國を
  あめをば しらしめせと あしはらの みづほのくにを

  天地の 依り相ひの極 知らしめす 神の命と
  あめつちの よりあひのきはみ しらしめす かみのみことと

  八重かき別きて 神下し
  やへかきわきて かむくだし

  座せまつりし 高照らす 日の皇子は ・・・・
  いませまつりし たかてらす ひのみこは
                             柿本人麻呂
                              巻2 167

という歌がある。
「 天地の 初の時の 」というのは、

  『日本書紀』 巻第一 神代上 第一段 本文
古に天地(あめつち)未(いま)だ剖(わか)れず、陰陽(めを)分(わか)れざりしとき、渾沌(まろか)れたること鶏子(とりのこ)の如くして、溟■(ほのか)にして牙(きざし)を含(ふふ)めり。
其(そ)れ清陽(すみあきらか)なるものは、薄靡(たなび)きて天と爲り、重濁(おもくにごれる)ものは、淹滯(つつ)ゐて地(つち)爲るに及びて、精妙(くはしたへ)なるが合へるは搏(むらが)り易(やす)く、重濁(おもくにご)れるが凝(こ)りたるはかたまり難(がた)し。故(かれ)、天(あめ)先(ま)づ成りて地(ち)後に定る。
然(しかう)して後に、神聖(かみ)、其の中に生(あ)れます。・・・

 昔、天地も未だ分れず陰陽の対立も未だ生じなかったとき、混沌として形定まらず、ほの暗い中に、まず、もののきざしが現れた。
その清く明るいものは高く揚って天となり、重く濁ったものは凝って地となった。
しかし、清くこまかなものは集り易く、重く濁ったものは容易に固まらなかった。
だから天が先ず出来上がって、後れて大地が定まり、その後に至って神がその中に誕生した。

 すなわち、清くこまかなものは薄靡(たなび)き、堅まって天となり、後れて重く濁ったものが固まって大地が定まった。
枕詞「久堅(ひさかた)」の語源は、上記の『日本書紀』巻第一 神代上 第一段本文による「天が久しく堅まった」と私は考えている。
日射す方の音のつまったものという説があるが、「日射」にかかわる表記がなく、かかる詞にも日射にかかわる表記が全く見あたらないから、この説はにわかに信じがたい。



■かかる詞、巻2と巻3の「天つ宮に」とか「天知らしぬる」・・・とは?
 前出の人麻呂の歌、

  ・・・天照らす 日女の命
  あまてらす ひるめのみこと

  天をば 知らしめせと 葦原の 水穂の國を
  あめをば しらしめせと あしはらの みづほのくにを

  天地の 依り相ひの極 知らしめす 神の命と
  あめつちの よりあひのきはみ しらしめす かみのみことと

  八重かき別きて 神下し
  やへかきわきて かむくだし

  座せまつりし 高照らす 日の皇子は ・・・・
  いませまつりし たかてらす ひのみこは

歌中、

  ・・・日女の命 天をば 知らしめせと・・・

とは、「三神の分治」のことである。
「日女の命」とは天照大神のこと。

『日本書紀』巻第一 神代上 第五段 一書第六 (三神の分治)
已(すで)にして伊弉諾尊(いざなきのみこと)、三の子(みつはしらのみこ)に勅任(ことよさ)して曰(のたま)はく、「天照大神(あまてらすおほみかみ)は、以(も)て高天原(たかまのはら)を治(しら)すべし。
月讀尊(つくよみのみこと)は、以て滄海原(あをうなはら)の潮(しほ)の八百重(やほへ)を治すべし。
素戔鳴尊(すさのをのみこと)は、以て天下(あめのした)を治すべし。
是(こ)の時(とき)に、素戔鳴尊、年已(としすで)に長(お)いたり。復(また)八握鬚髯(やつかひげ)生(お)ひたり。
然(しか)れども天下を治さずして、常(つね)に啼(な)き泣(いさ)ち恚恨(ふつく)む。・・・

伊弉諾尊は、天照大神は高天原を治め、月讀尊は滄海原を治め、素戔鳴尊は天下を治めるべしと命じたが、素戔鳴尊は天下を治めなかった。

『日本書紀』卷第二 神代下 第九段本文
天照太神(あまてらすおほみかみ)の子(みこ) 正哉吾勝勝速日天忍穗耳尊(まさか あかつ かちはやひ あまのおしほみみのみこと)、高皇産靈尊(たかみむすひのみこと)の女(みむすめ)栲幡千千姫(たくはたちぢひめ)を娶(ま)きたまひて、天津彦彦火瓊瓊杵尊(あまつひこひこほのににぎのみこと)を生(あ)れます。
故(かれ)、皇祖(みおや)高皇産靈尊、特(おぎろ)に、憐愛(めぐしとおもほす みこころ)を鍾(あつ)めて、崇(かた)て養(ひだ)したまふ。
遂(つひ)に皇孫天津彦彦火瓊瓊杵尊を立(た)てて、葦原中國(あしはらのなかつくに)の主(きみ)とせむと欲(おもほ)す。

皇孫天津彦彦火瓊瓊杵尊(すめみま あまつひこ ひこほのににぎのみこと)を立てて、葦原中國(あしはらのなかつくに)(日本)の主とする。


  ・・・葦原の 水穂の國を 天地の 依り相ひの極

  知らしめす 神の命と
 八重かき別きて 神下し・・・

『日本書紀』卷第二 神代下 第九段本文 (天孫降臨説話)
時に、高皇産靈尊(たかみむすひのみこと)、眞床追衾(まとこおふふすま)を以て、皇孫天津彦彦火瓊瓊杵尊(すめみまあまつひこほのににぎのみこと)に覆(おほ)ひて、降(あまくだ)りまさしむ。
皇孫、乃(すなは)ち天磐座(あまのいはくら)〈天磐座、此をば阿麻能以簸矩羅(あまのいはくら)と云ふ。〉を離(おしはな)ち、且(また)天八重雲(あめのやへたなぐも)を排分(おしわ)けて、稜威(いつ)の道別(ちわき)に道別(ちわ)きて、日向(ひむか)の襲(そ)の高千穗峯(たかちほのたけ)天降(あまくだ)ります。・・・



■天孫降臨
 皇孫、天磐座を離ち、天八重雲を排分けて・・・
                           2007年12月30日
          皇孫天津彦彦火瓊瓊杵尊(宮崎県高千穂町)




 日向風土記逸文(ひゆがふどきいつぶん)
日向の風土記に曰(い)はく 臼杵(うすき)の郡(こおり)の内(うち) 知鋪(ちほ)の郷(さと)天津彦々火瓊瓊杵尊(あまつひこ ひこほのににぎのみこと) 天(あめ)の磐座(いはくら)を離れ 天(あめ)の八重雲(やえぐも)を排(おしわ)けて 稜威(いす)の道別(ちわ)きに道別(ちわ)きて 日向の高千穂の二上(ふたがみ)の峯(たけ)に天降(あも)りましき。
時に天暗冥(そらくら)く晝夜(ひるよる)別かず 人物(ひと)道を失ひ 物の色別き難(がた)かりき
ここに土蜘蛛(つちぐも)あり名を大鉗(おおくは)小鉗(おくは)と曰ふ二人ありて奏言(もう)しけらく
「 皇孫(すめみま)の尊(みこと) 尊の御手(おんて)を以(も)ちて稲千穂(いねちほ)を抜きて籾(もみ)となし 四方(よも)に投げ散らしたまはば必ず開晴(あか)りなむ」とまおしき 時に大鉗等(ら)の奏(もう)ししが如(ごと)く千穂の稲を搓(ても)みて籾と為(な)して投げ散らしたまいければ 即ち 天開晴(そらあか)り 日月(にちげつ)照(て)り光(かがや)きき
因(よ)りて 高千穂の二上の峯と曰ひき 後(のち)の人改めて 智鋪と號(なず)く
風土記ー古事記撰上の翌年(713年)元明天皇の命により日向国司の撰上せるもの


■高千穗の峰々
 日向の襲の高千穗峯に天降ります・・・
                           2007年12月30日
                     国見ヶ丘(宮崎県高千穂町)



   王は 神にし座せば 天雲の 五百重が下に 隠り給ひぬ
   おほきみは かみにしませば あまくもの いほへがしたに かくりたまひぬ

                                          置始東人
                                   おきそめのあづまひと
                                         巻2 205


 皇子は神でいらせられるので、薨去された今は、幾重にも重なった天の雲のうちにお隠れになってしまった。
当時、国を統治する神は、天上から、神木や森や山に、天降りますものと信じられていたので、逝去されると、天皇や皇子は、再び天に上って行くと考えられた。
だから、「天つ宮に」とか「天知らしぬる」とかいう表現がなされたわけである。



枕詞「ひさかた」の分布
 枕詞「ひさかた」の分布を見れば、かかる詞「天見るごとく」とか「天知らしぬる」とかいう表現は巻2と巻3をもって途絶えてしまったことがわかる。
代わりに、夜渡る月やアメと同じ発音の雨が加わってくる。
さらに、七夕伝説が加わり、おそらくは奈良時代初期に広がったと考えられが、
当時の日本人にとっては、この舶来の七夕伝説に強い関心を持ち、宮中では盛んに七夕行事がおこなわれたことが
うかがえる。

  首数 表記 かかる詞 番号 作者
巻1 1 久堅 天のしぐれ(時雨) 82 長田王(古歌?)
巻2 5 久堅 天の河原に(天の安の河(あまのやすのかはら)) 167 柿本人麻呂
天見るごとく 168 柿本人麻呂
天つ御門(みかど)を 199 柿本人麻呂
天知らしぬる 200 柿本人麻呂
天つ宮に 204 置始東人
巻3 5 久堅 天見るごとく 239 柿本人麻呂
天ゆく月を 240 柿本人麻呂
天の原より 379 大伴坂上郎女
天の川原に 420 丹生王
天知らしぬれ 475 大伴家持
2 久方 天傳(つた)ひ来る 白雪(ゆき)じもの 261 柿本人麻呂
天の探女(あまのさぐめ)が
天探女・・『日本書紀』神代下第9段一書第一
292 角麿
巻4 4 久堅 昨夜(きぞのよ)の雨に 519 大伴女郎
雨も降らぬか 520 (後の人)
天の露霜 おきにけり 651 大伴坂上郎女
雨の降る日を 769 大伴家持
巻5 2 比佐迦多 天路(あまぢ)は遠し 801 山上憶良
比佐可多 天より雪の 流れ来るかも 822 大伴旅人
1 久堅 天の御空(みそら)ゆ 天翔(あまがけ)り 894 山上憶良
巻6 1 久堅 雨は降りしく 1040 大伴家持
巻7 3 久堅 夜渡る月の 1083 作者未詳
雨には着ぬを 1371 作者未詳
久方 天照る月は 神代にか 1080 作者未詳
巻8 5 久堅 雨間もおかず 1566 大伴家持
久方 雨うち降らば 1485 大伴家持
天の河に 船浮けて
枕詞「ひさかた」が七夕の歌に初めて詠われた
1519 山上憶良
天の河原に(七夕) 1520 山上憶良
月夜(つくよ)を清(きよ)み 1661 紀少鹿女郎
巻9 1 久堅 天の河に(七夕) 1764 作者未詳(藤原房前?)
巻10 7 久堅 天の河津(かはつ)に(七夕) 2070 作者未詳
清き月夜に 2325 作者未詳
久方 天の香具山 1812 柿本人麻呂歌集
天の河原に(七夕) 1997 柿本人麻呂歌集
天つ印と(七夕) 2007 柿本人麻呂歌集
天つしるしと(七夕) 2092 作者未詳
天の河原に(七夕) 2093 作者未詳
巻11 4 久堅 天飛ぶ雲に 2676 作者未詳
久方 天の露霜に 2395 柿本人麻呂歌集
天光(あまて)る月の 2463 柿本人麻呂歌集
雨も降らぬか 2685 作者未詳
巻12 3 久堅 天つみ空に 照る月の 3004 作者未詳
雨の降る日を 3125 作者未詳
清き月夜(つくよ)も 3208 作者未詳
巻13 1 久堅 都を置きて 3252 作者未詳
巻14 0        
巻15 2 比左可多 天照る月は 3650 作者未詳
月は照りたり 3672 作者未詳
巻16 1 久堅 雨も降らぬか 3837 右兵衛
巻17 0        
巻18 0        
巻19 0        
巻20 2 比佐可多 雨は降りしく 4443 大伴家持
比左加多 天の戸開き 4465 大伴家持



枕詞「ひさかた」の抽出データ
 ■は私のパソコンで変換できない漢字
国歌大観番号 枕詞 掛かる詞 作者 原文と読み
1 82 久堅乃 天之四具礼能
(天)
長田王
(古歌?)
(和銅五年壬子夏四月遣長田王于伊勢齊宮時
山邊御井<作>歌)
浦佐夫流  情佐麻祢之  久堅乃
うらさぶる  こころさまねし  ひさかたの
天之四具礼能  流相見者  
あめのしぐれの  ながらふみれば  
2 167(長歌) 久堅之 天河原尓
(天)
柿本人麻呂
日並皇子尊殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首
天地之  初時之  久堅之
あめつちの  はじめのときの  ひさかたの
天河原尓  八百萬  千萬神之・・・
あまのかはらに  やほよろづ  ちよろづかみの
168 久堅乃 天見如久
(天)
柿本人麻呂
長歌167の反歌
久堅乃  天見如久  仰見之
ひさかたの  あめみるごとく  あふぎみし
皇子乃御門之  荒巻惜毛  
みこのみかどの  あれまくをしも  
199(長歌) 久堅能 天都御門乎
(天)
柿本人麻呂
高市皇子尊城上殯宮之時柿本朝臣人麻呂作歌一首
・・・明日香乃  真神之原尓  久堅能
   あすかの  まかみがはらに  ひさかたの
天都御門乎  懼母  定賜而・・・
あまつみかどを  かしこくも  さだめたまひて
200 久堅之 天所知流
(天)
柿本人麻呂
長歌199の反歌
久堅之  天所知流 君故尓
ひさかたの  あめしらしぬる きみゆゑに
日月毛不知  戀渡鴨  
ひつきもしらず  こひわたるかも  
204(長歌) 久堅乃 天宮尓
(天)
置始東人
弓削皇子薨時置始東人作歌一首
高光  日之皇子  久堅乃
たかひかる  ひのみこ  ひさかたの
天宮尓  神随  神等座者・・・
あまつみやに  かむながら  かみといませば
3 239(長歌) 久堅乃 天見如久
(天)
柿本人麻呂
長皇子遊■路池之時柿本朝臣人麻呂作歌一首
・・・恐等  仕奉而  久堅乃
  かしこみと  つかへまつりて  ひさかたの
天見如久  真十鏡  仰而雖見・・・
あめみるごとく  まそかがみ  あふぎてみれど
240 久堅乃 天歸月乎
(天)
柿本人麻呂
久堅乃  天歸月乎  網尓刺
ひさかたの  あまゆくつきを  あみにさし
我大王者  盖尓為有
わごおほきみは  きぬがさにせり
261 久方 天傳来
(天)
柿本人麻呂
柿本朝臣人麻呂獻新田部皇子歌一首
・・・茂座  大殿於  久方
しきいます  おほとののうへに  ひさかたの
天傳来  白雪仕物  徃来乍・・・
あまづたひくる  ゆきじもの  ゆきかよひつつ
292 久方乃 天之探女之
(天)
角麿
久方乃  天之探女之  石船乃
ひさかたの  あまのさぐめが  いはふねの
泊師高津者  淺尓家留香裳  
はてしたかつは  あせにけるかも  
379(長歌) 久堅之 天原従
(天)
大伴坂上郎女
大伴坂上郎女祭神歌一首
久堅之  天原従  生来
ひさかたの  あまのはらより  あれきたる
神之命  奥山乃  賢木之枝尓・・・
かみのみこと  おくやまの  さかきのえだに
420(長歌) 久堅乃 天川原尓
(天)
丹生王
石田王卒之時丹生王作歌一首
・・・七相菅  手取持而  久堅乃
  ななふすげ  てにとりもちて  ひさかたの
天川原尓  出立而  潔身而麻之乎・・・
あまのかはらに  いでたちて  みそぎてましを
475(長歌) 久堅乃 天所知奴礼
(天)
大伴家持
十六年甲申春二月安積皇子薨之時
内舎人大伴宿祢家持作歌六首
・・・和豆香山  御輿立之而  久堅乃
わづかやま  みこしたたして  ひさかたの
天所知奴礼  展轉  ■打雖泣・・・
あめしらしぬれ  こいまろび  ひづちなけども
4 519 久堅乃 昨夜雨尓
(雨)
大伴女郎
雨障  常為公者  久堅乃
あまつつみ  つねするきみは  ひさかたの
昨夜雨尓  将懲鴨  
きぞのよのあめに  こりにけむかも  
520 久堅乃 雨毛落粳
(雨)
(後の人)
久堅乃  雨毛落粳  雨乍見
ひさかたの  あめもふらぬか  あまつつみ
於君副而  此日令晩  
きみにたぐひて  このひくらさむ  
651 久堅乃 天露霜
(天)
大伴坂上郎女
久堅乃  天露霜  置二家里
ひさかたの  あめのつゆしも  おきにけり
宅有人毛  待戀奴濫  
いへなるひとも  まちこひぬらむ  
769 久堅之 雨之落日乎
(雨)
大伴家持
大伴宿祢家持報贈紀女郎歌一首
久堅之  雨之落日乎  直獨
ひさかたの  あめのふるひを  ただひとり
山邊尓居者  欝有来  
やまへにをれば  いぶせくありけり  
5 801 比佐迦多能 阿麻遅波等保斯
(天)
山上憶良
神龜五年七月廿一日 筑前國守山上憶良上
比佐迦多能  阿麻遅波等保斯  奈保〃〃尓
ひさかたの  あまぢはとほし  なほなほに
伊弊尓可弊利提  奈利乎斯麻佐尓  
いへにかへりて  なりをしまさに  
822 比佐可多能 阿米欲里由吉能
(天)
大伴旅人
和何則能尓  宇米能波奈知流  比佐可多能
わがそのに  うめのはなちる  ひさかたの
阿米欲里由吉能  那何列久流加母  
あめよりゆきの  ながれくるかも  
894(長歌) 久堅能 阿麻能見虚喩
(天)
山上憶良
好去好来歌一首反歌二首
・・・倭  大國霊  久堅能
  やまとの  おほくにみたま  ひさかたの
阿麻能見虚喩  阿麻賀氣利  見渡多麻比・・・
あまのみそらゆ  あまがけり  みわたしたまひ
6 1040 久堅乃 雨者零敷
(雨)
大伴家持
安積親王宴左少辨藤原八束朝臣家之日
内舎人大伴宿祢家持作歌一首
久堅乃  雨者零敷  念子之
ひさかたの  あめはふりしけ  おもふこが
屋戸尓今夜者  明而将去  
やどにこよひは  あかしてゆかむ  
7 1080 久方乃 天照月者
(雨)
作者未詳
久方乃  天照月者  神代尓加
ひさかたの  あまてるつきは  かむよにか
出反等六  年者経去乍  
いでかへるらむ  としはへにつつ  
1083 久堅之 夜渡月乃
(天)
作者未詳
霜雲入  為登尓可将有  久堅之
しもぐもり  すとにかあるらむ  ひさかたの
夜渡月乃  不見念者  
よわたるつきの  みえなくもへば  
1371 久堅之 雨尓波不著乎
(雨)
作者未詳
久堅之  雨尓波不著乎  恠毛
ひさかたの  あめにはきぬを  あやしくも
吾袖者  干時無香  
わがころもでは  ふるときなきか  
8 1485 久方乃 雨打零者
(雨)
大伴家持
大伴家持唐棣花歌一首
夏儲而  開有波祢受  久方乃
なつまけて  さきたるはねず  ひさかたの
雨打零者  将移香  
あめうちふらば  うつろひなむか  
1519 久方之 漢瀬尓
(漢)
山上憶良
久方之  漢瀬尓  船泛而
ひさかたの  あまのかはせに  ふねうけて
今夜可君之  我許来益武  
こよひかきみが  わがりきまさむ  
右神龜元年七月七日夜左大臣宅
1520(長歌) 久方之 天河原尓
(天)
山上憶良
・・・夕塩尓  伊許藝渡  久方之
  ゆふしほに  いこぎわたり  ひさかたの
天河原尓  天飛也  領巾可多思吉・・・
あまのかはらに  あまとぶや  ひれかたしき
1566 久堅之 雨間毛不置
(雨)
大伴家持
久堅之  雨間毛不置  雲隠
ひさかたの  あままもおかず  くもがくり
鳴曽去奈流  早田鴈之哭  
なきぞゆくなる  わさだかりがね  
1661 久方乃 月夜乎清美
(月)
紀少鹿女郎
久方乃  月夜乎清美  梅花
ひさかたの  つくよをきよみ  うめのはな
心開而  吾念有公  
こころひらけて  あがもへるきみ  
9 1764(長歌) 久堅乃 天漢尓
(天)
作者未詳
(藤原房前?)
久堅乃  天漢尓  上瀬尓
ひさかたの  あまのがはに  かみつせに
珠橋渡之  下湍尓  船浮居・・・
たまはしわたし  しもつせに  ふねをうけすゑ
10 1812 久方之 天芳山
(天)
柿本人麻呂歌集
久方之  天芳山  此夕
ひさかたの  あめのかぐやま  このゆふべ
霞霏■  春立下  
かすみたなびく  はるたつらしも  
1997 久方之 天漢原丹
(天)
柿本人麻呂歌集
久方之  天漢原丹  奴延鳥之
ひさかたの  あまのかはらに  ぬえとりの
裏歎座都  乏諸手丹  
うらなげましつ  すべなきまでに  
2007 久方 天印等
(天)
柿本人麻呂歌集
久方  天印等  水無川
ひさかたの  あまつしるしと  みなしがは
隔而置之  神世之恨  
へだてておきし  かむよしうらめし  
2070 久堅之 天河津尓
(天)
作者未詳
久堅之  天河津尓  舟泛而
ひさかたの  あまのかはづに  ふねうけて
君待夜等者  不明毛有寐鹿  
きみまつよらは  あけずもあらぬか  
2092(長歌) 久方乃 天驗常
(天)
作者未詳
天地跡  別之時従  久方乃
あめつちと  わかれしときゆ  ひさかたの
天驗常  定大王  天之河原尓・・・
あまつしるしと  さだめてし  あまのかはらに
2093 久方乃 天之漢原尓
(天)
作者未詳
妹尓相  時片待跡  久方乃
いもにあふ  ときかたまつと  ひさかたの
天之漢原尓  月叙経来  
あまのかはらに  つきぞへにける  
2325 久堅之 清月夜尓
(月)
作者未詳
誰苑之  梅花毛  久堅之
たがそのの  うめのはなぞも  ひさかたの
清月夜尓  幾許散来  
きよきつくよに  ここだちりくる  
11 2395 久方 天露霜
(天)
柿本人麻呂歌集
行〃  不相妹故  久方
ゆきゆきて  あはぬいもゆゑ  ひさかたの
天露霜  沾在哉  
あめのつゆしも  ぬれにけるかも  
2463 久方 天光月
(天)
柿本人麻呂歌集
久方  天光月  隠去
ひさかたの  あまてるつきの  かくりなば
何名副  妹偲  
なにになそへて  いもをしのはむ  
2676 久堅之 天飛雲尓
(天)
作者未詳
久堅之  天飛雲尓  在而然
ひさかたの  あまとぶくもに  ありてしか
君相見  落日莫死  
きみをあひみむ  おつるひなしに  
2685 久方乃 雨毛零奴可
(雨)
作者未詳
妹門  去過不勝都  久方乃
いもがかど  ゆきすぎかねつ  ひさかたの
雨毛零奴可  其乎因将為  
あめもふらぬか  そをよしにせむ  
12 3004 久堅之 天水虚尓
(天)
作者未詳
久堅之  天水虚尓  照月之
ひさかたの  あまつみそらに  てるつきの
将失日社  吾戀止目  
うせなむひこそ  あがこひやまめ  
3125 久堅乃 雨零日乎
(雨)
作者未詳
久堅乃  雨零日乎  我門尓
ひさかたの  あめのふるひを  わがかどに
■笠不蒙而  来有人哉誰  
みのかさきずて  けるひとやたれ  
3208 久堅乃 清月夜毛
(月)
作者未詳
久将在  君念尓  久堅乃
ひさにあらむ  きみをおもふに  ひさかたの
清月夜毛  闇夜耳見  
きよきつくよも  やみのみにみゆ  
13 3252 久堅之 王都乎置而
(都)
作者未詳
久堅之  王都乎置而  草枕
ひさかたの  みやこをおきて  くさまくら
羈徃君乎  何時可将待  
たびゆくきみを  いつとかまたむ  
15 3650 比左可多能 安麻弖流月波
(天)
作者未詳
比左可多能  安麻弖流月波  見都礼杼母
ひさかたの  あまてるつきは  みつれども
安我母布伊毛尓  安波奴許呂可毛  
あがもふいもに  あはぬころかも  
3672 比左可多能 月者弖利多里
(月)
作者未詳
比左可多能  月者弖利多里  伊刀麻奈久
ひさかたの  つきはてりたり  いとまなく
安麻能伊射里波  等毛之安敝里見由  
あまのいざりは  ともしあへりみゆ  
16 3837 久堅之 雨毛落奴可
(雨)
右兵衛
久堅之  雨毛落奴可  蓮荷尓
ひさかたの  あめもふらぬか  はちすばに
渟在水乃  玉似有将見  
たまれるみづの  たまににたるみむ  
20 4443 比佐可多能 安米波布里之久
(雨)
大伴家持
比佐可多能  安米波布里之久  奈弖之故我
ひさかたの  あめはふりしく  なでしこが
伊夜波都波奈尓  故非之伎和我勢  
いやはつはなに  こひしきわがせ  
4465(長歌) 比左加多能 安麻能刀比良伎
(天)
大伴家持
族に諭す歌一首
比左加多能  安麻能刀比良伎  多可知保乃
ひさかたの  あまのとひらき  たかちほの
多氣尓阿毛理之  須賣呂伎能  可未能御代欲利・・・
たけにあもりし  すめろきの  かみのみよより



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