@ 選定理由 |
海原(うなはら)の「な」は格助詞「の」と同じ格助詞か、それとも海の読み「うみ」が「うな」に変化した読みかを確かめる。 |
A 原因 |
海原(うなはら)の「な」は格助詞「の」と同じ格助詞である場合、「な」が格助詞であることを示す「海な原」の表記が無い事が混乱の原因である。 |
たとえば「蘇我馬子」は「そがのうまこ」と読み、口を付いて自然と格助詞「の」が入る。ネットで見る限り「蘇我馬子」の表記は「蘇我馬子」であり、「蘇我の馬子」という表記は見たことがない。 |
これと全く同じではなかろうか。 |
|
B 対策 |
訓読文の表記を「海原」から「海な原」に変更する。 |
「蘇我馬子」もまた「蘇我の馬子」に変更する(自分の研究用基本データのみで、ネットにアップする時は「蘇我馬子」に換える)。 |
一例 |
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
174 |
万葉集巻第一 |
舒明天皇 |
1_長歌/◎_2 |
_9/13 |
海原波 |
うなはらは |
海な原は |
海 |
う |
|
な |
原 |
はら |
波 |
は |
|
|
9331 |
万葉集巻第五 |
作者未詳 |
5_短歌_874 |
_1/5 |
宇奈波良能 |
うなはらの |
海な原の |
宇 |
う |
奈 |
な |
波 |
は |
良 |
ら |
能 |
の |
|
C 現状の把握 |
古事記 |
通し番号 |
巻 |
見出し |
見出し |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
941 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と伊邪那美命 |
三貴子の分治 |
所知海原矣 |
うなはらをしらせ |
海原を知らせ」と |
1141 |
古事記上卷 |
天照大神と須佐之男命 |
天の安の河の誓約 |
上菟上國造 |
かみつうなかみのくにのみやつこ |
上つ菟上の国の造 |
1142 |
古事記上卷 |
天照大神と須佐之男命 |
天の安の河の誓約 |
下菟上國造 |
しもつうなかみのくにのみやつこ |
下つ菟上の国の造 |
3359 |
古事記上卷 |
火遠理命 |
鵜葺草不合命 |
不可生海原 |
うなはらにうむべからず |
海原に生むべからず |
3393 |
古事記上卷 |
火遠理命 |
鵜葺草不合命 |
■1塞海坂而返入 |
すなはちうなさかをふさきてかへりいりましき |
即ち海坂を塞へて返り入りましき |
3443 |
古事記上卷 |
火遠理命 |
鵜葺草不合命 |
入■2海原也 |
うなはらにいりましき |
海原に入り坐しき |
4406 |
古事記中卷 |
開化天皇 |
|
次菟上王 |
つぎにうなかみのみこ |
次に菟上の王 |
4411 |
古事記中卷 |
開化天皇 |
|
次菟上王■3 |
つぎにうなかみのみこは |
次に菟上の王は |
5136 |
古事記中卷 |
垂仁天皇 |
本牟智和気王 |
菟上王 |
うなかみのみこの |
菟上の王 |
5181 |
古事記中卷 |
垂仁天皇 |
本牟智和気王 |
光海原自舩追來 |
うなはらをてらしてふねよりおひきたりき |
海原を光らして舩より追ひ来りき |
5197 |
古事記中卷 |
垂仁天皇 |
本牟智和気王 |
■1返菟上王 |
すなはちうなかみのみこをかへして |
即ち菟上の王を返して |
6180 |
古事記中卷 |
仲哀天皇 |
神功皇后の新羅征討 |
海原之魚 |
うなはらのうを |
海原の魚 |
■1…即の旧字体。 ■2…坐の左側の人を口に換える。 ■3…者の旧字体。 |
|
日本書紀 |
通し番号 |
巻 |
見出し |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
88 |
日本書紀巻第一 |
神代上第一段一書第五 |
譬猶海上浮雪無所根係 |
たとへばうなはらのうへにうかべるゆきの
ねかかるところなきがごとし |
譬へば海の上に浮べる雪の
根係る所無きが猶し |
258 |
日本書紀巻第一 |
神代上第四段一書第一 |
因畫滄海而引擧之 |
よりてあをうなはらを
かきなしてひきあぐるときに |
因りて滄海を画して引き挙ぐるときに |
433 |
日本書紀巻第一 |
神代上第五段本文 |
次生海 |
つぎにうなはらをうむ |
次に海を生む |
840 |
日本書紀巻第一 |
神代上第五段一書第六 |
可以治滄海原潮之
八百重也 |
もてあをうなはらのしほの
やほへをしらすべし |
以て滄海原の潮の八百重を治らすべし |
1061 |
日本書紀巻第一 |
神代上第五段一書第十 |
吹生大地海原之ゥ~矣 |
おほつちうなはらの
もろもろのかみたちをふきなす |
大地海原の諸の神を吹き生す |
1072 |
日本書紀巻第一 |
神代上第五段一書第十一 |
可以御滄海之原也 |
あをうなはらをしらすべし |
滄海原を御らすべし」とのたまふ |
2249 |
日本書紀巻第一 |
神代上第八段一書第六 |
~光照海 |
あやしきひかりうなにてらして |
神しき光海に照して |
4329 |
日本書紀巻第二 |
神代下第十段一書第四 |
久居海原 |
ひさしくうなはらにましき |
久しく海原に居しき |
9699 |
日本書紀巻第八 |
仲哀天皇八年春正月己卯朔壬午 |
分明看行山川海原 |
あきらかにやまかはうなはらをみそなはせ |
分明らかに山川海原を看そなは行せ |
10003 |
日本書紀巻第九 |
神功皇后摂政前紀
仲哀天皇九年夏四月壬寅朔甲辰 |
浮渉滄海 |
あをきうなはらをうきわたりて |
滄き海を浮き渉りて |
10425 |
日本書紀巻第九 |
神功皇后摂政元年春二月 |
因以海上五十狹茅令祭 |
よりてうなかみのいさちをもていははしむ |
因りて海上の五十狭茅を以て祭はしむ |
12457 |
日本書紀巻第十一 |
仁徳天皇十一年夏四月戊寅朔甲午 |
決源而通海 |
よこしまなるうなかみを
さくりてうみにかよはせて |
横しまなる源を決りて海に通せて |
26726 |
日本書紀巻第二十三 |
舒明天皇九年 |
渡蒼海 |
あをうなはらをわたり |
蒼海を渡り |
30721 |
日本書紀巻第二十六 |
斉明天皇四年冬十月庚戌朔甲子 |
于那倶娜梨 |
うなくだり |
海くだり |
30942 |
日本書紀巻第二十六 |
斉明天皇五年秋七月丙子朔戊寅 |
放出大海 |
おほうなはらにはなれいづ |
大海に放れい出 |
31481 |
日本書紀巻第二十六 |
斉明天皇七年五月(乙未朔)丁巳 |
放船大海 |
ふねをおほうなはらにはなつ |
船を大海に放つ |
|
萬葉集 |
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
174 |
万葉集巻第一 |
舒明天皇 |
1_長歌/◎_2 |
_9/13 |
海原波 |
うなはらは |
海原は |
5958 |
万葉集巻第四 |
|
4_目録_530 |
P232_1 |
賜海上女王御歌一首 |
うなかみのおほきみにたまふみうたいちしゆ |
賜ふ海上の女王御歌一首 |
5960 |
万葉集巻第四 |
|
4_目録_531 |
P232_2 |
海上女王奉和謌一首 |
うなかみのおほきみのこたへまつるうたいちしゆ |
海上の女王の和へ奉る歌一首 |
6551 |
万葉集巻第四 |
|
4_題詞_530 |
|
賜海上女王御歌一首 |
うなかみのおほきみにたまふみうたいちしゆ |
賜ふ海上の女王御歌一首 |
6563 |
万葉集巻第四 |
|
4_題詞_531 |
|
海上王(?)奉和謌一首 |
うなかみのおほきみのこたへまつるうたいちしゆ |
海上の王の和へ奉る歌一首 |
8821 |
万葉集巻第五 |
山上憶良 |
5_長歌_813 |
_19/27 |
宇奈可美乃 |
うなかみの |
海上の |
9331 |
万葉集巻第五 |
作者未詳 |
5_短歌_874 |
_1/5 |
宇奈波良能 |
うなはらの |
海原の |
9623 |
万葉集巻第五 |
山上憶良 |
5_長歌_894 |
_31/63 |
宇奈原能 |
うなはらの |
海原の |
11509 |
万葉集巻第六 |
作者未詳 |
6_短歌_1016 |
_1/5 |
海原之 |
うなはらの |
海原の |
12207 |
万葉集巻第七 |
作者未詳 |
7_短歌/◎_1075 |
_1/5 |
海原之 |
うなはらの |
海原の |
12282 |
万葉集巻第七 |
作者未詳 |
7_短歌/◎_1089 |
_3/5 |
海原 |
うなはらの |
海原の |
12747 |
万葉集巻第七 |
作者未詳 |
7_短歌_1176 |
_2/5 |
海上滷乃 |
うなかみがたの |
海上潟の |
16271 |
万葉集巻第九 |
|
9_目録_1809 |
362_24 |
見■239原處女墓謌一首 |
うなひをとめのつかをみるうたいちしゆ |
菟原処女の墓を見る歌一首 |
16795 |
万葉集巻第九 |
高橋虫麿歌集 |
9_長歌_1740 |
_15/93 |
海界乎 |
うなさかを |
海界を |
17305 |
万葉集巻第九 |
高橋虫麿歌集 |
9_長歌_1780 |
_21/23 |
海上之 |
うなかみの |
海上の |
17540 |
万葉集巻第九 |
田辺福麿歌集 |
9_長歌_1801 |
_6/31 |
■239名日處女乃 |
うなひをとめの |
菟原少女の |
17570 |
万葉集巻第九 |
田辺福麿歌集 |
9_短歌_1802 |
_4/5 |
■239會處女乃 |
うなひをとめの |
菟原少女の |
17676 |
万葉集巻第九 |
|
9_題詞_1809 |
|
見■239原處女墓謌一首 |
うなひをとめのつかをみるうたいちしゆ |
菟原処女の墓を見る歌一首 |
17679 |
万葉集巻第九 |
高橋虫麿歌集 |
9_長歌/○_1809 |
_2/73 |
■239名負處女之 |
うなひをとめの |
菟原少女の |
17693 |
万葉集巻第九 |
高橋虫麿歌集 |
9_長歌/○_1809 |
_16/73 |
宇奈比壯士乃 |
うなひをとこの |
菟原壮士の |
17725 |
万葉集巻第九 |
高橋虫麿歌集 |
9_長歌/○_1809 |
_48/73 |
■239原壯士伊 |
うなひをとこい |
菟原壮士い |
17753 |
万葉集巻第九 |
高橋虫麿歌集 |
9_短歌_1810 |
_2/5 |
宇奈比處女之 |
うなひをとめの |
菟原少女の |
20916 |
万葉集巻第十一 |
古謌集 |
11_旋頭歌_2367 |
_1/6 |
海原乃 |
うなはらの |
海原の |
23068 |
万葉集巻第十一 |
作者未詳 |
11_短歌_2779 |
_1/5 |
海原之 |
うなはらの |
海原の |
27332 |
万葉集巻第十四 |
作者未詳 |
14_短歌/◎_3348 |
_2/5 |
宇奈加美我多能 |
うなかみがたの |
海上潟の |
28202 |
万葉集巻第十四 |
作者未詳 |
14_短歌_3498 |
_1/5 |
宇奈波良乃 |
うなはらの |
海原の |
28771 |
万葉集巻第十五 |
作者未詳 |
15_短歌_3592 |
_1/5 |
海原尓 |
うなはらに |
海原に |
28899 |
万葉集巻第十五 |
柿本人麿 |
15_短歌_3611 |
_3/5 |
宇奈波良乎 |
うなはらを |
海原を |
28915 |
万葉集巻第十五 |
壬生宇太麿 |
15_短歌_3613 |
_1/5 |
海原乎 |
うなはらを |
海原を |
29212 |
万葉集巻第十五 |
作者未詳 |
15_短歌_3648 |
_1/5 |
宇奈波良能 |
うなはらの |
海原の |
29230 |
万葉集巻第十五 |
作者未詳 |
15_旋頭歌_3651 |
_4/6 |
宇奈波良能 |
うなはらの |
海原の |
29699 |
万葉集巻第十五 |
作者未詳 |
15_短歌_3718 |
_3/5 |
宇奈波良乎 |
うなはらを |
海原を |
35932 |
万葉集巻第十九 |
大伴家持 |
19_長歌_4211 |
_6/43 |
宇奈比壯子乃 |
うなひをとこの |
菟原壮士の |
37424 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_短歌_4334 |
_1/5 |
海原乎 |
うなはらを |
海原を |
37432 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_短歌_4335 |
_4/5 |
宇奈波良乃宇倍尓 |
うなはらのうへに |
海原の上に |
37655 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_長歌_4360 |
_40/55 |
海原見礼婆 |
うなはらみれば |
海原見れば |
37676 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_短歌_4362 |
_1/5 |
海原乃 |
うなはらの |
海原の |
37851 |
万葉集巻第二十 |
|
20_左注_4384 |
|
助丁海上郡海上國造
他田日奉直得大理 |
すけのよほろうなかみのこほりのうなかみのく
にのみやつこをさだのひまつりのあたひとこたり |
助の丁海上の郡の海上の国の造
他田の日奉の直得大理のなり |
37998 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_短歌_4399 |
_1/5 |
宇奈波良尓 |
うなはらに |
海原に |
38128 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_長歌_4408 |
_57/77 |
海原乃 |
うなはらの |
海原の |
39045 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_短歌_4514 |
_1/5 |
阿乎宇奈波良 |
あをうなはら |
青海原 |
■239…冤の冖をくさかんむりに換える。 |
|
D 結果 |
古事記に |
通し番号 |
巻 |
見出し |
見出し |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
1141 |
古事記上卷 |
天照大神と須佐之男命 |
天の安の河の誓約 |
上菟上國造 |
かみつうなかみのくにのみやつこ |
上つ菟上の国の造 |
1142 |
古事記上卷 |
天照大神と須佐之男命 |
天の安の河の誓約 |
下菟上國造 |
しもつうなかみのくにのみやつこ |
下つ菟上の国の造 |
|
とあり、また萬葉集に |
通し番号 |
巻 |
巻_類_番号 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
37851 |
万葉集巻第二十 |
20_左注_4384 |
助丁海上郡海上國造
他田日奉直得大理 |
すけのよほろうなかみのこほりのうなかみのくにのみやつこ
をさだのひまつりのあたひとこたり |
助の丁海上の郡の海上の国の造
他田の日奉の直得大理のなり |
|
とあって、「海上の国の造」は「菟上の国の造」と同一と考えられる。 |
また「菟」の発音は「う(u)」であって、「うな(una)」という発音は無い。 |
よって、海上國造(うなかみのくにのみやつこ)の「な」は格助詞「な」となる。 |
しかも |
題詞…天平勝宝七歳乙未二月相替遣筑紫諸国防人等歌
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
37332 |
万葉集巻第二十 |
丈部人麿 |
20_短歌/◎_4328 |
_4/5 |
宇乃波良和多流 |
うのはらわたる |
海の原渡る |
左注…右一首助丁丈部造人麿/二月七日相模国防人部領使守従五位下藤原朝臣宿奈麿進歌数八首但拙劣歌五首者不取載之 |
という歌もある。 |
古事記の |
通し番号 |
巻 |
見出し |
見出し |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
21 |
古事記上卷并序 |
|
|
浮■1海水 |
うしほにうきしづみて |
海水に浮き沈みて |
1595 |
古事記上卷 |
大国主~ |
稲羽の素菟 |
浴此海塩 |
このうしほをあみ |
此の海塩を浴み |
1651 |
古事記上卷 |
大国主~ |
稲羽の素菟 |
誨■2浴海塩當風伏 |
うしほをあみかぜにあたりてふせれとをしへのりき |
『海塩を浴み風に当りて伏せれ』と誨へ告りき |
2938 |
古事記上卷 |
迩迩芸命 |
■3女の君 |
■1溺海塩 |
うしほにしづみおぼれたまひき |
海塩に沈み溺れたまひき |
2943 |
古事記上卷 |
迩迩芸命 |
■3女の君 |
其海水之キ夫多キ時名 |
そのうしほのつぶたつときのなを |
其の海水の粒立つ時の名を |
5893 |
古事記中卷 |
景行天皇 |
倭建命の薨去 |
又入其海塩而 |
またそのうしほにいりて |
又其の海塩入りて |
■1…汀の丁を冗に換える。 ■2…告の旧字体。 ■3…狂の王を爰に換える。 |
|
というのも傍証する。 |
よって「海原(うなはら)」の「な」は格助詞「の」と同じ、格助詞ということになる。 |
|
E 疑問 |
上古では「海」は「う(u)」と発音したことが解ったが、では海み(うみ)の「み」は何を意味しているのであろうか? |
古事記上卷并序に |
通し番号 |
巻 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
175 |
古事記上卷并序 |
以和銅四年九月十八日 |
わどうのよとせのながづきのとをあまりやかをもちて |
和銅の四年の九月の十八日を以ちて |
176 |
古事記上卷并序 |
詔臣安萬侶 |
やつこやすまろにのりたまひて |
臣安万侶に詔ひて |
177 |
古事記上卷并序 |
撰■1稗田阿礼所誦之■171語舊辞以 |
ひえだのあれがよめるみことのりのふることをえらびしるして |
稗田の阿礼が誦める勅語の旧辞を撰び録して |
178 |
古事記上卷并序 |
■113上■2 |
たてまつれ |
献上れとのりたまへり |
179 |
古事記上卷并序 |
■3隨詔■215 |
つつしみてみことのりのまにまに |
謹みて詔旨の随に |
180 |
古事記上卷并序 |
子細採■381 |
こまやかにとりひろひぬ |
子細に採り拾ひぬ |
181 |
古事記上卷并序 |
然 |
しかれども |
然れども |
182 |
古事記上卷并序 |
上古之時 |
いにしへのときは |
上古の時は |
183 |
古事記上卷并序 |
言意並朴 |
ことばもこころもみなすなほなるに |
言も意も並朴なるに |
184 |
古事記上卷并序 |
敷文搆句 |
ふみをかきくだりをたつること |
文を敷き句を構ること |
185 |
古事記上卷并序 |
於字■4■5 |
もじにおきてはすなはちかたし |
字に於ては即ち難し |
■113…顧の戸の筆順1〜3を”禾の木を由に換えて由の筆順1を削った漢字”に換え、さらに顧の隹を用に頁を犬に換える。…獻(国立)。■215…毎の毋を日に換える。
■381…蹠の足をてへんに換え、さらに廿を”共のハ無し”に換える。■1…録の旧字体。■2…者の旧字体。■3…謹の旧字体。■4…即の旧字体。■5…難の旧字体。 |
|
とあり、稗田の阿礼から聞き取りを行い文字にしたとある。であれば、漢字という色メガネを外し、ひらがな文から「うみ(umi)」という単語を採り拾いて、 |
「うみ(umi)」という発音を子細に探れば、漢字が伝来する以前、上古の時に「うみ(umi)」の「み」は何を意味していたのか解るかもしれない。 |
F 古事記のひらがな文から発音「うみ(umi)」を含む単語を抽出 それぞれ一例を示す。 |
意味 |
うみを含む |
字数 |
通し番号 |
巻 |
見出し |
見出し |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
生 |
うみませる |
83 |
2783 |
古事記上卷 |
迩迩芸命 |
天孫の誕生 |
生子 |
うみませるこ |
生みませる子 |
生 |
うみき |
22 |
357 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と
伊邪那美命 |
二神の結婚 |
次生淡嶋 |
つぎにあはしまをうみき |
次に淡嶋を生みき |
生 |
うみ |
16 |
317 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と
伊邪那美命 |
二神の結婚 |
以爲生成國土 |
くにをうみなさむとおもふ |
国土を生み成さむと以為ふ |
生 |
うみしに |
2 |
545 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と
伊邪那美命 |
神々の生成 |
因生此子 |
このこをうみしによりて |
此の子を生みしに因りて |
生 |
うみし |
1 |
7733 |
古事記下卷 |
仁徳天皇 |
雁の卵の瑞祥 |
以歌問鴈生卵之■1 |
うたをもちてかりのこうみしさまを
とひたまひき |
歌以ちて雁の卵生みし状を
問ひたまひき |
生 |
うみの |
1 |
919 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と
伊邪那美命 |
三貴子の分治 |
於生終■189三貴子 |
うみのはてにみはしらの
たふときこをえつ |
生みの終に三はしらの
貴き子を得つ |
生 |
うみましし |
1 |
9517 |
古事記下卷 |
継体天皇 |
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生御子 |
うみまししみこ |
生みましし御子 |
産 |
うみき |
1 |
3053 |
古事記上卷 |
迩迩芸命 |
木花之佐久夜毘売 |
火■135其殿而■2也 |
ひをそのとのにつけてうみき |
火を其の殿に著けて産みき |
産 |
うみたまひし |
1 |
27 |
古事記上卷并序 |
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識孕土■2嶋之時 |
くにをはらみ
しまをうみたまひしときをしり |
土を孕み
嶋を産みたまひし時を識り |
産 |
うみまさ |
1 |
3372 |
古事記上卷 |
火遠理命 |
鵜葺草不合命 |
尓將方■2之時 |
ここにまさにうみまさむとするときに |
尓に方に産みまさむとする時に |
産 |
うみましし |
1 |
3395 |
古事記上卷 |
火遠理命 |
鵜葺草不合命 |
名其所■2之御子 |
そのうみまししみこをなづけて |
其の産みましし御子を名づけて |
子孫 |
うみのこ |
2 |
893 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と
伊邪那美命 |
禊祓と神々の化生 |
宇キ志日金析命之
子孫也 |
うつしひがなさくのみことの
うみのこなり |
宇都志日金拆の命の子孫なり |
海 |
うみに |
12 |
484 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と
伊邪那美命 |
神々の生成 |
■3河海持別而 |
かはうみによりてもちわけて |
河海に因りて持ち別けて |
海 |
うみ |
11 |
955 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と
伊邪那美命 |
須佐之男命の涕泣 |
河海■4 |
かはうみは |
河海は |
海 |
うみつ |
2 |
3392 |
古事記上卷 |
火遠理命 |
鵜葺草不合命 |
白妾恒通海道欲徃來
然伺見吾形是甚恠之 |
あれつねはうみつぢをとほりて
かよはむとおもひき
しかれどもあがかたちを
かきまみたまひし
これいとはづかしとまをしたまひて |
「妾れ恒は海つ道を通りて
往来はむと欲ひき
然れども吾が形を伺見たまひし
是れ甚恠づかし」と白したまひて |
海 |
うみとは |
1 |
3526 |
古事記中卷 |
神武天皇 |
東征 |
謂血沼海也 |
ちぬのうみとはいふなり |
血沼の海とは謂ふなり |
海 |
うみの |
1 |
5638 |
古事記中卷 |
景行天皇 |
小碓命の東征 |
入海中 |
うみのなかにいらむ |
海の中に入らむ |
海 |
うみのみ |
1 |
6091 |
古事記中卷 |
仲哀天皇 |
神功皇后の新羅征討 |
唯有大海 |
ただおほうみのみあり |
唯大海のみ有り |
海 |
うみは |
1 |
120 |
古事記上卷并序 |
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智海浩汗 |
さとりのうみはひろくはるかにして |
智の海は浩く汗かにして |
海 |
うみを |
1 |
5628 |
古事記中卷 |
景行天皇 |
小碓命の東征 |
渡走水海之時 |
はしりみづのうみをわたりたまひしとき |
走水の海を渡りたまひし時 |
濟 |
うみの |
1 |
4226 |
古事記中卷 |
孝霊天皇 |
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角鹿濟直之■5也 |
つぬがのうみのあたひのおやなり |
角鹿海の直の祖なり |
■491…呷の筆順4無し。 ■189…得の彳をさんずいに換える。 ■135…首の自を者の旧字体に換える。 ■54…恰の合を衣に換える。
■1…状の旧字体。 ■2…産の旧字体。 ■4…者の旧字体。 ■5…祖の旧字体。
■3…漢字辞典オンライン https://kanji.jitenon.jp/ で「因」を検索。 https://kanji.jitenon.jp/kanjiy/13601.html の漢字に同じ。 |
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G 抽出結果から解った事 |
古事記ではうみ(umi)という発音には、海(うみ)と生み(うみ)の二種類の意味しかなかった。 |
二つの言葉には共通点がある。海は命が生まれ出る所という事である。 |
その事からうみ(umi)という発音は「生み」という意味であり、「生み」が名詞化して海(うみ)となった事が容易に想像できる。 |
よって、「海み」の「み」は生むの連用形「生み」の語尾ということになる。 |
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