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奈良時代の発音の体系は、現代語と違っていました。 キ・ヒ・ミ・ケ・ヘ・メ・コ・ソ・ト・ノ・ヨ・ロとその濁音ギ・ビ・ゲ・ベ・ゴ・ゾ・ド及びエの発音に、二種類の区別がありました。 古事記ではさらにモにも二種類の区別がありました。 その区別は片仮名平仮名では示せないので、一方を甲類、他方を乙類と呼ぶのが慣例です。 岩波書店日本古典文学大系『万葉集四』の校注の覚え書四によれば、 「 この発音上の区別は、奈良時代末頃から混乱しはじめ、平安時代になるとその二つが合併して一つになって行き、平安時代の極初期にはコの甲類乙類の区別と、ア行の e とヤ行の ye との区別を残すだけになった。 」とあります。 ページの中で、混同を防ぐため古事記歌謡の番号の頭には「K」を日本書紀歌謡の番号の頭には「N」を付けました。
■違例 佐婆(さば)の海中(わたなか)にして、忽に逆風に遭ひ漲浪(ちやうらう)に漂流す。經宿して後に、幸に順風を得て、豊前國の下毛(しもつみけ)郡の分間(わくま)の浦 (うら)に到著す。是(ここ)に追ひて艱難を怛(いた)み、悽惆(せいちう)して作る
鴨じもの 浮寝をすれば 蜷の腸 か黒き髪に 露ぞ置きにける 作者未詳(遣新羅使) 巻15 3649 大意 鴨のように浮寝をしていると、黒い髪に露がしっとりと置いた。 「か黒き髪に」の「ろ」は甲類「ろ」の発音である。よって原文の呂は乙類「ろ」で違例。 甲類「ろ」
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