@ 選定理由 |
題詞 |
国の掾久米朝臣廣繩(ひろのり)、天平二十年に、朝集使に附きて京に入り、其の事畢りて、天平感寶元年(749年)閏五月二十七日に本任に還り到る。 |
仍りて長官の舘に詩酒の宴を設けて樂飮す。 |
時に主人守大伴宿祢家持の作る歌一首短哥を并せたり |
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
34633 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_長歌_4116 |
_10/45 |
也末古衣野由支 |
やまこえのゆき |
山越え野行き |
|
山越えの「え」はや行のyeを使い、あ行の「衣(え(e))」は使わない。 |
よって違例となるが、その違例となる根拠を確認する。 |
奈良時代の発音の体系は、現代語と違っていて、 |
キ・ヒ・ミ・ケ・ヘ・メ・コ・ソ・ト・ノ・ヨ・ロとその濁音ギ・ビ・ゲ・ベ・ゴ・ゾ・ド及びエの発音に、二種類の区別があった。 |
岩波書店日本古典文学大系『万葉集四』の校注の覚え書四によれば、 |
「 この発音上の区別は、奈良時代末頃から混乱しはじめ、平安時代になるとその二つが合併して一つになってゆき、 |
平安時代の極初期にはコの甲類乙類の区別と、ア行の e とヤ行の ye との区別を残すだけになった。
」とある。 |
しかし大伴家持のこの歌からして、すでにア行の e とヤ行の ye との区別はすでに曖昧となり混乱しはじめていたのではなかろうか。 |
|
A 原因 |
違例の原因はア行の e とヤ行の ye との区別がすでに曖昧となり、混乱しはじめていたからではなかろうか。 |
B 現状の把握 それぞれ一例を示す。 |
A、衣の読み |
古事記・・・衣(え)なし。
漢字 |
読み |
例数 |
巻 |
見出し |
見出し |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
衣 |
きぬ |
7 |
古事記中卷 |
応神天皇 |
大山守命の反逆 |
服布衣褌 |
ぬののきぬはかまをけして |
布の衣褌を服して |
衣 |
けし |
6 |
古事記上卷 |
伊邪那岐命と
伊邪那美命 |
禊祓と神々の化生 |
次於投棄御衣所成~名 |
つぎになげうつるみけしに
なれるかみのなは |
次に投げ棄つる御衣に成れる神の名は |
衣 |
ころも |
4 |
古事記中卷 |
応神天皇 |
大山守命の反逆 |
衣中服鎧 |
ころものなかによろひをきて |
衣の中に鎧を服て |
衣 |
そ |
8 |
古事記下卷 |
安康天皇 |
市辺之忍歯王の難 |
■1衣中 |
すなはちみそのなかに |
即ちみ衣の中に |
衣服 |
きもの |
6 |
古事記中卷 |
応神天皇 |
秋山之下氷壮夫と
春山之霞壮夫 |
其衣服及弓矢 |
そのきものまたゆみや |
其の衣服及弓矢 |
■135…首の自を者の旧字体に換える。 ■1…即の旧字体。 |
|
日本書紀・・・三衣(さむえ)1例のみ。
漢字 |
読み |
例数 |
巻 |
見出し |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
衣 |
え |
1 |
日本書紀巻第二十 |
敏達天皇十四年三月(丁巳朔)丙戌 |
便奪尼等三衣 |
たちまちにあまらのさむえをうばひて |
便ちに尼等の三衣を奪ひて |
衣 |
き |
1 |
日本書紀巻第三十 |
持統天皇六年二月丁酉朔丁未 |
£m此意備ゥ衣物 |
このこころをしりて
もろもろのきものをそなふべし |
此の意を知りて
諸の衣物を備ふべし |
衣 |
きたる |
1 |
日本書紀巻第十六 |
武烈天皇八年春三月 |
衣以綾■2■3衆 |
あやしらきぬをきたるものおほし |
綾?を衣たる者衆し |
衣 |
きぬ |
22 |
日本書紀巻第二十九 |
天武天皇九年冬十月壬寅朔乙巳 |
沙彌及白衣 |
しやみおよびしろきぬには |
沙弥及び白衣には |
衣服 |
1 |
日本書紀巻第三 |
神武天皇即位前紀
戊午年九月甲子朔戊辰 |
■4弊衣服及簔笠 |
いやしききぬおよびみのかさをきせて |
弊しき衣服
及び蓑笠を著せて |
衣 |
きもの |
8 |
日本書紀巻第十九 |
欽明天皇五年十一月 |
給衣粮 |
きものかてをたまはむ |
衣粮を給はむ |
衣裳 |
9 |
日本書紀巻第十七 |
継体天皇九年夏四月 |
逼脱衣裳 |
きものをせめはぎて |
衣裳を逼め脱ぎて |
衣服 |
3 |
日本書紀巻第十 |
応神天皇十三年秋九月中 |
爲衣服耳 |
きものとせらくのみ |
衣服とせらくのみ |
衣衿 |
1 |
日本書紀巻第二十五 |
大化二年三月(癸亥朔)甲申 |
衣衿足以朽完而已 |
きものはもてししをくたすに
たるばかり |
衣衿は以て完を朽すに
足るばかり |
衣 |
ころも |
10 |
日本書紀巻第二 |
神代下第九段本文 |
則攀牽衣帶 |
すなはちころもひもによぢかかり |
則ち衣帯に攀ぢ牽り |
衣服 |
1 |
日本書紀巻第二十九 |
天武天皇十三年閏四月壬午朔丙戌 |
並衣服■3 |
ならびにころもは |
並に衣服は |
衣 |
しき |
1 |
日本書紀巻第七 |
景行天皇四十年秋七月癸未朔戊戌 |
衣毛飮血 |
けをしきちをのみて |
毛を衣き血を飲みて |
衣 |
そ |
26 |
日本書紀巻第七 |
景行天皇四十年 |
徒葬衣冠 |
ただにみそかがふりををさめまつる |
徒にみ衣冠を葬めまつる |
衣服 |
1 |
日本書紀巻第二十五 |
白雉元年二月庚午朔戊寅 |
宴食衣服 |
とよのあかりおほみそ |
宴食おほみ衣服 |
明衣 |
1 |
日本書紀巻第七 |
景行天皇四十年 |
明衣空留而
屍骨無之 |
みそのみむなしくとどまりて
みかばねはなし |
み明衣のみ空しく留りて
み屍骨は無し |
衣■234 |
したひも |
1 |
日本書紀巻第五 |
崇神天皇十年九月(丙戌朔)壬子 |
其長大如衣■234 |
そのながさふとさしたひものごとし |
其の長さ大さ衣紐の如し |
衣裳 |
けし |
1 |
日本書紀巻第二十二 |
推古天皇二十一年十二月庚午朔 |
即脱衣裳 |
すなはちみけしをぬきたまひて |
即ちみ衣裳を脱きたまひて |
衣服 |
1 |
日本書紀巻第二十二 |
推古天皇二十一年
十二月(庚午朔)辛未 |
唯衣服疊置棺上 |
ただみけしをのみたたみて
ひつぎのうへにおけり |
唯み衣服のみ畳みて
棺の上に置けり |
明衣 |
1 |
日本書紀巻第二十二 |
推古天皇二十年二月辛亥朔庚午 |
明■5明衣之■6 |
みけものみけしのたぐひ |
明器・明衣の類 |
衣冠 |
よそひ |
1 |
日本書紀巻第二十六 |
斉明天皇六年秋七月庚子朔乙卯 |
捨俗衣冠 |
くにわざのよそひをすてて |
俗の衣冠を捨てて |
裝束衣帶 |
1 |
日本書紀巻第二十 |
敏達天皇元年六月 |
裝束衣帶 |
よそひして |
装束衣帯して |
雨衣 |
あまよそひ |
1 |
日本書紀巻第二十 |
敏達天皇十四年三月(丁巳朔)丙戌 |
被雨衣 |
あまよそひせり |
雨衣被り |
縫衣工 |
きぬぬひ |
1 |
日本書紀巻第十 |
応神天皇十四年春二月 |
貢縫衣工女 |
きぬぬひをみなをたてまつる |
衣縫ひ工女を貢る |
■2…紀の己を丸に換える。 ■234…仭のイを糸に換える。 ■3…者の旧字体。 ■4…著の旧字体。 ■5…器の旧字体。 ■6…類の旧字体。 |
|
萬葉集・・・衣(え)9例
漢字 |
読み |
例数 |
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
衣 |
え |
9 |
1553 |
万葉集巻第二 |
藤原鎌足 |
2_短歌/◎_95 |
_5/5 |
安見兒衣多利 |
やすみこえたり |
安見児得たり |
衣 |
そ |
22 |
4310 |
万葉集巻第三 |
山部赤人 |
3_短歌/◎_318 |
_3/5 |
眞白衣 |
ましろにそ |
真白にそ |
衣 |
き |
2 |
13760 |
万葉集巻第七 |
作者未詳 |
7_短歌_1361 |
_5/5 |
將衣日不知毛 |
きむひしらずも |
衣む日知らずも |
衣 |
きぬ |
42 |
18676 |
万葉集巻第十 |
作者未詳 |
10_短歌_1961 |
_1/5 |
吾衣 |
わがきぬを |
吾が衣を |
衣服 |
きぬ |
1 |
13318 |
万葉集巻第七 |
柿本人麿歌集 |
7_旋頭歌/○_1281 |
_3/6 |
織在衣服叙 |
おりたるきぬぞ |
織りたる衣服ぞ |
衣 |
けし |
1 |
19223 |
万葉集巻第十 |
作者未詳 |
10_短歌_2065 |
_4/5 |
公之御衣尓 |
きみがみけしに |
君が御衣に |
衣 |
ころも |
104 |
18430 |
万葉集巻第十 |
作者未詳 |
10_短歌/◎_1917 |
_2/5 |
衣甚 |
ころもはいたく |
衣は甚く |
衣服 |
1 |
13411 |
万葉集巻第七 |
柿本人麿歌集 |
7_短歌_1296 |
_2/5 |
斑衣服 |
まだらのころも |
斑の衣 |
衣 |
ごろも |
18 |
2818 |
万葉集巻第二 |
柿本人麿 |
2_長歌_199 |
_106/149 |
麻衣■4 |
あさごろもき |
麻衣着 |
■4…著の旧字体。 |
|
萬葉集・・・衣(え)9例の内訳 |
得(動詞)・・・6例
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
1553 |
万葉集巻第二 |
藤原鎌足 |
2_短歌/◎_95 |
_5/5 |
安見兒衣多利 |
やすみこえたり |
安見児得たり |
28593 |
万葉集巻第十四 |
作者未詳 |
14_短歌_3573 |
_4/5 |
衣我多伎可氣乎 |
えがたきかげを |
得がたき蘿を |
29387 |
万葉集巻第十五 |
作者未詳 |
15_短歌_3676 |
_3/5 |
衣弖之可母 |
えてしかも |
得てしかも |
29792 |
万葉集巻第十五 |
中臣宅守 |
15_短歌_3735 |
_2/5 |
麻許等安里衣牟也 |
まことありえむや |
実有り得むや |
34184 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_長歌_4094 |
_17/107 |
可蘇倍衣受 |
かそへえず |
数へ得ず |
34905 |
万葉集巻第十八 |
大伴池主 |
18_短歌_4133 |
_4/5 |
伊麻波衣天之可 |
いまはえてしか |
今は得てしか |
|
え(副詞)・・・2例
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
11215 |
万葉集巻第六 |
|
6_左注_983 |
|
月別名曰佐散良衣壯士也 |
つきのまたのなをささらえをとこといふ |
月の別の名を細らえ壮士と曰ふ |
34026 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_短歌_4078 |
_2/5 |
衣毛名豆氣多理 |
えもなづけたり |
えも(よくも)名づけたり |
|
越え・・・動詞越ゆの語尾
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
34633 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_長歌_4116 |
_10/45 |
也末古衣野由支 |
やまこえのゆき |
山越え野行き |
|
B、越ye |
古事記・・・一字一音の該当なし。 |
日本書紀・・・1例
通し番号 |
巻 |
見出し |
西暦 |
歌謡番号 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
30713 |
日本書紀巻第二十六 |
斉明天皇四年冬十月庚戌朔甲子 |
658年10月15日 |
N119 |
耶麻古曳底 |
やまこyeて |
山越yeて |
|
萬葉集・・・24例 |
古要(越ye)・・・8例
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
27904 |
万葉集巻第十四 |
作者未詳 |
14_短歌_3442 |
_3/5 |
古要我祢弖 |
こyeがねて |
越yeがねて |
28084 |
万葉集巻第十四 |
作者未詳 |
14_短歌_3477 |
_3/5 |
古要弖伊奈婆 |
こyeていなば |
越yeて去なば |
32671 |
万葉集巻第十七 |
大伴家持 |
17_長歌_3978 |
_14/65 |
夜麻古要奴由伎 |
やまこyeぬゆき |
山越ye野行き |
33146 |
万葉集巻第十七 |
大伴家持 |
17_長歌_4006 |
_42/53 |
古要敞奈利奈婆 |
こyeへなりなば |
越ye隔りなば |
33292 |
万葉集巻第十七 |
大伴家持 |
17_長歌_4011 |
_58/105 |
山登妣古要■ |
やまとびこyeて |
山飛び越yeて |
33457 |
万葉集巻第十七 |
大伴家持 |
17_短歌_4025 |
_2/5 |
多太古要久礼婆 |
ただこyeくれば |
直越ye来れば |
33792 |
万葉集巻第十八 |
田辺福麿 |
18_短歌_4052 |
_3/5 |
安須古要牟 |
あすこyeむ |
明日越yeむ |
37929 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_短歌_4395 |
_2/5 |
見キキ古要許之 |
みつつこyeこし |
見つつ越ye来し |
■…低のイ無し。 |
|
故要(越ye)・・・7例
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
28327 |
万葉集巻第十四 |
作者未詳 |
14_短歌_3523 |
_1/5 |
佐可故要弖 |
さかこyeて |
坂越yeて |
29785 |
万葉集巻第十五 |
中臣宅守 |
15_短歌_3734 |
_2/5 |
世伎毛故要伎奴 |
せきもこyeきぬ |
関も越ye来ぬ |
29908 |
万葉集巻第十五 |
中臣宅守 |
15_短歌_3757 |
_2/5 |
世伎夜麻故要弖 |
せきやまこyeて |
関山越yeて |
29936 |
万葉集巻第十五 |
中臣宅守 |
15_短歌_3762 |
_3/5 |
故要弖伎弖 |
こyeてきて |
越yeて来て |
37980 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_長歌_4398 |
_28/45 |
山乎故要須疑 |
やまをこyeすぎ |
山を越ye過ぎ |
38379 |
万葉集巻第二十 |
上総国郡司妻 |
20_短歌_4440 |
_2/5 |
夜敞也麻故要弖 |
やへやまこyeて |
八重山越yeて |
38773 |
万葉集巻第二十 |
藤原執弓 |
20_短歌_4482 |
_1/5 |
保里延故要 |
ほりyeこye |
堀江越ye |
|
古延(越ye)・・・5例
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
28755 |
万葉集巻第十五 |
秦間満 |
15_短歌/◎_3589 |
_4/5 |
古延弖曾安我久流 |
こyeてそあがくる |
越yeてそあが来る |
29725 |
万葉集巻第十五 |
狭野弟上娘子 |
15_短歌/◎_3723 |
_2/5 |
夜麻治古延牟等 |
やまぢこyeむと |
山路越yeむと |
31824 |
万葉集巻第十七 |
山部赤人 |
17_短歌/◎_3915 |
_2/5 |
山谷古延■ |
やまたにこyeて |
山谷越yeて |
32253 |
万葉集巻第十七 |
大伴家持 |
17_長歌_3962 |
_6/57 |
山坂古延弖 |
やまさかこyeて |
山坂越yeて |
38060 |
万葉集巻第二十 |
他田部子磐前 |
20_短歌/◎_4407 |
_3/5 |
古延志太尓 |
こyeしだに |
越yeしだに |
■…低のイ無し。 |
|
故延(越ye)・・・2例
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
28763 |
万葉集巻第十五 |
作者未詳 |
15_短歌/◎_3590 |
_5/5 |
故延弖曾安我久流 |
こyeてそあがくる |
越yeてそあが来る |
29721 |
万葉集巻第十五 |
作者未詳 |
15_短歌_3722 |
_5/5 |
伊キ可故延伊加武 |
いつかこyeいかむ |
何時か越ye行かむ |
|
久江(越ye)・・・2例 |
天平勝宝七歳乙未二月相替遣筑紫諸国防人等歌
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
37744 |
万葉集巻第二十 |
倭文部可良麿 |
20_長歌_4372 |
_4/15 |
阿例波久江由久 |
あれはくyeゆく |
あれは越ye行く |
37748 |
万葉集巻第二十 |
倭文部可良麿 |
20_長歌_4372 |
_8/15 |
久江弖和波由久 |
くyeてわはゆく |
越yeてわは行く |
右一首倭文部可良麿/二月十四日常陸国部領防人使大目正七位上息長眞人国嶋進歌数十七首但拙劣歌者不取載之 |
D 結果 |
|
|
訓読 |
ひらがな |
原文 |
例数 |
越ye |
こye |
古要 |
8 |
故要 |
7 |
古延 |
5 |
故延 |
2 |
くye |
久江 |
2 |
計 |
24 |
|
|
上表により |
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
34633 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_長歌_4116 |
_10/45 |
也末古衣野由支 |
やまこえのゆき |
山越え野行き |
|
の「古衣(越え)」は違例とした。 |
E 現代語の「越える」と日本書紀・萬葉集の「越ゆ」の活用比較 |
まず先にや行の比較
|
発音 |
現代語 |
ya |
i |
yu |
e |
yo |
古事記
日本書紀
萬葉集 |
ya |
yi(?) |
yu |
ye |
yo |
|
|
未然形 |
連用形 |
終止形 |
連体形 |
仮定形 |
命令形 |
現代語 |
越える |
越え |
越え |
越える |
越える |
越えれ |
越えろ |
|
未然形 |
連用形 |
終止形 |
連体形 |
已然形 |
命令形 |
日本書紀
萬葉集 |
越ゆ |
越ye |
越ye |
越ゆ |
越ゆる |
越ゆれ |
越よ |
|
越ye・・・上記の日本書紀1例 ・萬葉集24例参照 |
越ゆ・・・萬葉集1例
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
37185 |
万葉集巻第二十 |
大伴家持 |
20_短歌/◎_4305 |
_4/5 |
奈伎弖故由奈理 |
なきてこゆなり |
鳴きて越ゆなり |
|
越ゆる・・・萬葉集3例
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
27669 |
万葉集巻第十四 |
作者未詳 |
14_短歌_3402 |
_3/5 |
古由流日波 |
こゆるひは |
越ゆる日は |
29448 |
万葉集巻第十五 |
作者未詳 |
15_短歌_3687 |
_2/5 |
山等妣古由留 |
やまとびこゆる |
山飛び越ゆる |
29893 |
万葉集巻第十五 |
中臣宅守 |
15_短歌_3754 |
_2/5 |
世伎等婢古由流 |
せきとびこゆる |
関飛び越ゆる |
|
越ゆれ・・・日本書紀1例
通し番号 |
巻 |
見出し |
西暦 |
歌謡番号 |
校異 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
13021 |
日本書紀巻第十一 |
仁徳天皇四十年春二月 |
壬子352年2月 |
N61 |
■…磨(釋紀)。 |
赴駄利古喩例■ |
ふたりこゆれば |
二人越ゆれば |
■…磨の石を”公の筆順2無し”に換える。 |
越よ・・・萬葉集1例 |
天平勝宝七歳乙未二月相替遣筑紫諸国防人等歌
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
38029 |
万葉集巻第二十 |
小長谷部笠麿 |
20_短歌_4403 |
_5/5 |
古与弖伎怒加牟 |
こよてきぬかむ |
越よて来ぬかむ |
右一首小長谷部笠麿/二月廿二日信濃国防人部領使上道得病不来進歌数十二首但拙劣歌者不取載之 |
F 移(い( i ))の発音は y i か? |
日本書紀・萬葉集に「移」は「や(ya)」と発音している。
通し番号 |
巻 |
見出し |
西暦 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
10781 |
日本書紀巻第九 |
神功皇后摂政四十六年
春三月乙亥朔 |
丙寅246年3月1日 |
如此乃還 |
かくいひてすなはちかへりぬ |
如此いひて乃ち還りぬ」といふ |
10782 |
爰斯摩宿禰 |
ここにしまのすくね |
爰に斯摩の宿祢 |
10783 |
即以{人爾波移
與卓淳人過古二人 |
すなはちしたがへるひとにはやと
とくじゆんのひとわことふたりをもて |
即ち{へる人尓波移と
卓淳の人過古と二人を以て |
10784 |
遣于百濟國 |
くだらのくににつかはして |
百済の国に遣はして |
10785 |
慰勞其王 |
そのこきしをねぎらへしむ |
其の王を慰労へしむ |
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通し番号 |
巻 |
見出し |
西暦 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
18804 |
日本書紀巻第十七 |
継体天皇七年夏六月 |
癸巳513年6月 |
七年 |
ななとせの |
七年の |
18805 |
夏六月 |
なつみなづきに |
夏六月に |
18806 |
百濟 |
くだら |
百済 |
18807 |
遣姐彌文貴將軍
洲利即爾將軍 |
さみもむくwiしやうぐん
つりそにしやうぐんをまだして |
姐弥文貴将軍・
洲利即尓将軍を遣して |
18808 |
副穗積臣押山 |
ほづみのおみおしやまにそへて |
穂積の臣押山に副へて |
18809 |
百濟本記云 |
くだらほんきにいはく |
百済本記に云はく |
18810 |
委意斯移麻岐彌 |
wiおしやまきみ |
委意斯移麻岐弥といふ |
18811 |
貢五經博士段楊爾 |
ごきやうはかせだんやうにをたてまつる |
五経博士段楊尓を貢る |
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通し番号 |
巻 |
見出し |
西暦 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
21696 |
日本書紀巻第十九 |
欽明天皇十四年
八月辛卯朔丁酉 |
553年8月7日 |
百濟 |
くだら |
百済 |
21697 |
遣上部奈率科野新羅
下部固コ■休帶山等 |
しやうほうなそちしなのしらき
かほうことくもんきうたいせんらをまだして |
上部奈率科野新羅・
下部固徳?休帯山等を遣して |
21698 |
上表曰 |
ふみたてまつりてまうさく |
表上りて曰さく |
21699 |
去年臣等同議 |
いにしとしやつこらはかりことをひとつにして |
「去にし年臣等議りことを同つにして |
21700 |
遣内臣コ率次酒
任那大夫等 |
うちのおみとくそちししゆ
みまなのまへつきみらをまだして |
内の臣徳率次酒・
任那の大夫等を遣して |
21701 |
奏海表ゥ彌移居之事 |
わたのほかのもろもろのみやけのことをまうさしむ |
海の表の諸の屯倉の事を奏さしむ |
21702 |
伏待恩詔 |
ふしてうつくしびのみことのりをまつこと |
伏して恩の詔を待つこと |
21703 |
如春草之仰甘雨也 |
はるくさのあまきあめをあふぐがごとし |
春草の甘き雨を仰ぐが如し |
■…汁の十を文に換える。 |
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萬葉集 |
雑謌/跪承芳音嘉懽交深乃知龍門之恩復厚蓬身之上恋望殊念常心百倍謹和白雲之什以奏野鄙之謌房前謹状
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
8768 |
万葉集巻第五 |
藤原房前 |
5_書簡_短歌_812 |
_5/5 |
キ地尓意加米移母 |
つちにおかめやも |
地に置かめやも |
謹通尊門記室/十一月八日附還使大監 |
又、萬葉集に「移」を「い(i)」と発音し
通し番号 |
巻 |
作者 |
巻_類_番号 |
句番 |
原文 |
ひらがな文 |
訓読文 |
27373 |
万葉集巻第十四 |
作者未詳 |
14_短歌_3353 |
_5/5 |
移乎佐伎太多尼 |
いをさきだたね |
眠を先立たね |
33755 |
万葉集巻第十八 |
遊行女婦土師 |
18_短歌_4047 |
_5/5 |
移比キ支尓勢牟 |
いひつぎにせむ |
言ひ継ぎにせむ |
34457 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_長歌_4106 |
_32/51 |
奈介可須移母我 |
なげかすいもが |
嘆かす妹が |
34469 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_長歌_4106 |
_44/51 |
移キ我利安比弖 |
いつがりあひて |
いつがり合ひて |
34566 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_短歌_4112 |
_4/5 |
移夜時自久尓 |
いやときじくに |
いや時じくに |
34584 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_長歌_4113 |
_13/29 |
移夫勢美等 |
いぶせみと |
いぶせみと |
34591 |
万葉集巻第十八 |
大伴家持 |
18_長歌_4113 |
_20/29 |
移弖見流其等尓 |
いでみるごとに |
い出見る毎に |
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亦、日本書紀 欽明天皇二年秋七月の条は「移」を「ye」と発音している。 |
阿賢移那斯 = 延那斯 |
通し番号 |
巻 |
見出し |
西暦 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
20386 |
日本書紀巻第十九 |
欽明天皇二年秋七月 |
541年7月 |
使于安羅 |
あらにつかひして |
安羅に使して |
20387 |
召到新羅任那執事 |
しらきにいたれるみまなのつかさをめして |
新羅に到れる任那の執事を召して |
20388 |
謨建任那 |
みまなをたてむことをはからしむ |
任那を建てむことを謨らしむ |
20389 |
別以安羅日本府
河内直通計新羅 |
ことにあらのやまとのみこともちの
かふちのあたひのはかりことを
しらきにかよはすをもて |
別に安羅の日本の府の
河内の直の計りことを
新羅に通すを以て |
20390 |
深責罵之 |
ふかくせめのる |
深く責め罵る |
20391 |
百濟本記云 |
くだらほんきにいはく |
百済本記に云はく |
20392 |
加不至費直 |
かふちのあたひ |
加不至の費の直 |
20393 |
阿賢移那斯 |
あけyeなし |
阿賢移那斯 |
20394 |
佐魯麻キ等 |
さろまつら |
佐魯麻都等といふ |
20395 |
未詳也 |
いまだつばひらかならず |
未だ詳らかならず |
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通し番号 |
巻 |
見出し |
西暦 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
21433 |
日本書紀巻第十九 |
欽明天皇十年
夏六月乙酉朔辛卯 |
549年6月7日 |
十年 |
ととせの |
十年の |
21434 |
夏六月 |
なつみなづきの |
夏六月の |
21435 |
乙酉朔辛卯 |
きのとのとりのついたちかのとのうのひに |
乙の酉の朔辛の卯のひに |
21436 |
將コ久貴 |
しやうとくこんくwi |
将徳久貴 |
21437 |
固コ馬次文等 |
ことくましもむら |
固徳馬次文等 |
21438 |
請罷歸 |
まかりかへらむとまうす |
罷り帰らむと請す |
21439 |
因詔曰 |
よりてみことのりしてのたまはく |
因りて詔して曰はく |
21440 |
延那斯 |
yeなし |
「延那斯 |
21441 |
麻キ |
まつ |
麻都 |
21442 |
陰私遣使高麗? |
ひそかにつかひをこまにつかはせるは |
陰私かに使を高麗に遣はせるは |
21443 |
朕當遣問?實 |
われまさにいつはりまことをとひにつかはすべし |
朕当に虚実を問ひに遣はすべし |
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通し番号 |
巻 |
見出し |
西暦 |
原文 |
ひらかな文 |
訓読文 |
21487 |
日本書紀巻第十九 |
欽明天皇十一年夏四月庚辰朔 |
550年4月1日 |
百濟王聖明 |
くだらのこきしせいめい |
百済の王聖明 |
21488 |
謂王人曰 |
みつかひにかたりていはく |
王人に謂りて曰はく |
21489 |
任那之事 |
みまなのことは |
「任那の事は |
21490 |
奉■堅守 |
みことのりをうけたまはりてかたくまもる |
勅を奉りて堅く守る |
21491 |
延那斯 |
yeなし |
延那斯 |
21492 |
麻キ之事 |
まつがことは |
麻都が事は |
21493 |
問與不問 |
とひたまはむともとひたまはじとも |
問ひたまはむとも問ひたまはじとも |
21494 |
唯從■之 |
ただみことのりのままならむ |
唯勅の従ならむ」といふ |
■…勅の旧字体。 |
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上表の 移(ya) → 移( i ) → 移(ye) は、下表 |
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発音 |
現代語 |
ya |
i |
yu |
e |
yo |
古事記
日本書紀
萬葉集 |
ya |
yi(?) |
yu |
ye |
yo |
|
により、萬葉集の 「移( i )」は「移( yi )」かもしれない。 |