春されば まづ咲く宿の 梅の花

                                                                      2016年2月7日
                                                         奈良県立馬見丘公園(奈良県広陵町)


雜謌/

梅花謌卅二首並序/

天平二年正月十三日に、帥
(そち)の老(おきな)の宅(いへ)に萃(あつ)まりて、宴會を申(ひら)きき。

時に、初春の令月
(れいげつ)にして、氣淑(よ)く風和(やはら)ぎ、梅は鏡前(きよぜん)の粉を披(ひら)き、蘭(らん)は珮後(はいご)の香(かう)(くん)ず。

加之
(しかのみにあらず)、曙(あけぼの)の嶺に雲移り、松は羅(うすもの)を掛けて盖(きぬがさ)を傾け、夕の岫(くき)に霧結び、鳥は穀(うすもの)に封(こ)めらえて林に迷(まと)ふ。

庭には新蝶
(しんてふ)舞ひ、空には故鴈(こがん)歸る。

ここに天を盖
(きぬがさ)とし、地を座(しきゐ)とし、膝を促(ちかづ)け觴(さかづき)を飛ばす。

(こと)を一室の裏(うら)に忘れ、衿(ころものくび)を煙霞(えんか)の外に開く。

淡然
(たんぜん)に自(みづか)ら放(ほしきまま)にし、快然(かいぜん)に自(みづか)ら足る。

若し翰苑
(かんえん)あらぬときには、何を以ちてか情(こころ)をのべむ。

請ふ落梅の篇を紀
(しる)さむ。

(いにしへ)と今とそれ何そ異ならむ。

園の梅を賦して聊
(いささ)かに短詠を成す宜(べ)



春されば まづ咲く宿の 梅の花
はるされば まづさくやどの うめのはな

独り見つつや 春日暮さむ
ひとりみつつや はるひくらさむ

                      山上憶良
                      巻5 818

■原文
波流佐礼婆  麻豆佐久耶登能  烏梅能波奈  比等利美都都夜  波流比久良佐武
はるされば  まづさくやどの  うめのはな  ひとりみつつや  はるひくらさむ
 筑前守山上大夫


■大意
 春になると最初に咲くこの家の梅の花を、ただ一人で見ながら春の長い日を暮らすことであろうか。



HOME