八ヶ岳・南沢大滝

1998年1月24日

     メンバー: 岡本 浩一 ・ 内炭 孝夫  (奈良山岳会)

  マイナス15℃の世界で

 24・25日の週末を利用して長野県の八ヶ岳へアイスクライミングに行きました。

行った場所は南沢大滝と言って約50Mの垂直の滝が完全凍結しているのです。当日は寒気団の影響で気温はマイナス15℃を越えていました。そして、突風が吹き荒れ体感温度はマイナス30℃ぐらいになっていたでしょう。僕はこの氷壁を右手にアイスバイル・左手にピッケル、そして両足のアイゼンの二本爪に全神経を集中して駆け上がっていました。終了点間近になって一気に駆け上がった反動で意識朦朧となってしまいました。どうにか気力で終了点に到着したときには、両手の指が凍り付き、体全身の震えが止まらず言葉もろくに発することもできませんでした。その状態を見かねて隣のルートを登っていたパーティの50前後の男性が自分の予備のインナー手袋を差し出してくれたのでした。そして、僕のパートナーは風雪の中、自分のジャケットを広げ彼の体温で僕の両手を包んでくれました。おかげで震えも止まり両手もロープが握れるまでに回復して無事下降することもできました。指の第一関節は凍傷になり、未だしびれている状況ですが、あの心の暖かみは忘れることは出来ません。極寒の中では自分のことが精一杯な状況なのに他人を思いやれる心の暖かさに触れることが出来ました。せめて、下界で生活や仕事をしているときは、自分のことばかりでなく、他人を思いやる気持ちをいつも大切にしたいものです。