月夜
空気さえ凍てつく月明かりの美しい夜、その部屋にただ一人、青年の域へ手が届きそうな少年がいた。彼は窓辺に背もたれ己が立てた片足を抱くようにしてうずくまっていた。
「うぅー寒い!」
成長期真っただ中のハリーだ。彼は皆が寝静まってからこっそり抜け出し夜空に輝く月を見るともなく見上げていた。
「はぁ〜何で星の名前を持つアイツをこぉ〜んな凍たそうな月に重ねるかなぁ〜俺も!この寒い最中に!!」
愚痴をこぼしては月を眺めていた。何故かどこか冷然とした月の光にシリウスの眼差しが重なる。少し寂しげな、それでいて凛としたシリウスに・・・。
会う度に必ず隣で眠るシリウス。月明かりにさらされた素肌・・・。
先日までの冬休み、招待を受けるまでもなくシリウスの元へと休みの前夜から訪ねた。
シリウスは少し驚いてそして夏と変わらない微笑を浮かべて迎えてくれた。
しかし行為へは誘えば応じてくれるが誘ってはくれなかった・・・。
勿論こっちはヤリタイ盛りで向こうは親と同じ歳。仕方が無いとはいっても・・・。
誘って欲しい!というよりもっと自分を求めて欲しい。必要として欲しい。
初めて触れた夜。何も知らない俺を導いたのはシリウス。最後までの行為へ誘ったのも・・・。
知識としてはあっても実際には何も知らなかった俺をゆっくり導いてくれた。
初めてだったあの時、気遣う余裕もないまま強引に行為をすすめ翌日起き上がれなくなったシリウスに気付いて慌てた。
今までシリウスはどれだけの経験をしてきたんだろう?
導く行為にどこか余裕が有ったように感じたのは気のせいだろうか?あの時は夢中だったからそんな事気にも留めなかったけど・・・。
過去にこだわっても仕方が無いのは判っているつもりだった。
というより一度も経験がないのも怖すぎるけど・・・。
あんな事とかこんな事とか・・いろいろ・・・・。
「うっ・・・くっそー。思い出したら、ますます眠れなくなるじゃないか!」
ブツブツと言いながら先程までの相手を思い出し、
「うぅ〜そろそろ相手替えるかなぁ〜」
シリウスを思い出して眠れない夜、いつも誰かを代わりにしていた。
とはいえシリウスを抱く時のように満たされる幸福感や満足感は得られない。
が、真っ盛りな自分には経験を積むという意味でも必要な存在だった。
ただし別れる時の煩わしさを除けばだが・・・相手が全て年上でも上手に別れてくれない相手も居る。割り切った付き合いのはずだったのに・・・。掛け持ちだってしないようにしている。病気や修羅場はいつ何時シリウスの耳に入るか判らないから・・・。
そんな苦労をしている為か最高級とも云える誘いにすらその気にならない時も有った。
シリウスには呆れるほど・・・なのに。
仕方が無いので薬を使うことある。
シリウスに会う度に自制が効かないのでは何時まで経っても自分を頼ってはくれない。全てを手に入れる事も出来ない。大人の余裕を少しでも早く身に付けなくては、心の底まで独占する事は難しいだろう。
どんなに困難だろうと、すべてをモノにする為ならどんな事だってする。
グズグズしていて誰かに持っていかれたらそれこそ目も当てられない。
今更死んだ親相手にどう頑張ったって敵わないが今を生きているそれこそルーピン先生と云う強敵がいるのだから!おまけに嫌いになれない相手なだけにタチの悪い強敵だった。
変身すればルーピン先生が狼でシリウスは犬!絶対にやばい!?
・・・何だか考えれば考えるだけ不甲斐ない自分に思考が下降傾向だ。
ハリーは数回頭を振るとスックと立ち上がり
「アノ双子に新しい薬を貰ってさっさと寝るに限るなこんな夜は!」
伸びをして歩き始めた。
アノ双子には最初の頃からシリウスとの関係がばれていた。ロンからの休暇を共に過ごさないかという招待を断っただけなのに・・・。
侮りがたし双子!?情報源も幅広く、お互いの相手も時々交換しては採点しているとか!?
まぁお陰で色々な事も教えて貰えるし妖しげなモノまで手に入る。
今夜は前に勧められた薬でゆっくり休む事にしよう。
きっとこんな夜ならシリウスと夢の中では会えるかもしれない・・・。
『・・シリウス・・・・会いたい・・触れたい・・・・感じたいよ・・』
〜シリウス〜
独り窓辺へもたれ水割りを片手に月を見上げた。
何故か昼の月とは違い寒々とした夜の月はハリーを思い起こさせる。今頃彼は眠りの中だろうか?
先日久しぶりに会った彼は一気に大人へと変貌していた。思わず見惚れてしまった。彼の側に居るだけで心臓が慌てて・・・いい年をして何だかくすぐったい感じがする。
彼の休みが終わるのがとても辛かった。ずっと一緒に居たかった。離れたくなかった。追われる身の己がとても厭わしい。
それにしてもやはり私にとって彼はジェームズとは違うのだろう。ジェームズの時には周りに誰が居ても気に入らず色々な事をやった。
今から考えると、とてもタチの悪いものばかりだ。スネイプなどは典型的だった。敵いもしないのにすぐにジェームズに食って掛かる様はとても私を不快にさせていた。
だから嫌がらせも半端ではなかった・・・良く生きていたものだ。
しかしハリーには・・・。
やはり名付け親という立場が私に余裕を与えているのだろうか?
ジェームズとは違い確かに存在する縁・・絆。
ただの友人という立場とは違う特別な関係。
出来れば名付け親という事以外に家族そして恋人という関係も付足せるだろうか・・・。今の所はただの家族?それとも年上の恋人かな?きっとどちらかでしかないだろう。
何時まで飽きずにいてくれるかは判らないけれど・・・。
ハリーはきっと人気が有るだろう。ジェームズがそうであったように。
そのうち私のような年上には見向きもしなくなるのかもしれない、いや、それが普通なのであって今が異常なのだ。
どうしても何処か吹っ切れていない臆病な私はすぐに後ろ向きな考えに陥ってしまう。
ハリーが側に居る時にはそんな不安も起こらないのに・・・。ずっと私を求めてくれるハリー、不安なんて感じる暇すらない。照れはするけど・・・。
あの時、初めてハリーと触れ合った夜、恨まれようと憎まれようと構わないとまで思ったのに・・・。ハリーが側に居ないと不安でたまらない。
開き直る事すら出来ない私は少しでもその日が来るのを遅らせようと必死に足掻いて、ハリーの友人たちにまで良く思われようと良い大人を演じてみたりして・・・。
自分でも己の行動に苦笑を浮かべずにはいられない。
リーマスにはこっそりとスネイプにはハッキリと判る嫌がらせを山ほどしていたというのに・・・。あの頃の思い切りの良さは若さのなせる技なのかもしれない。
ジェームズに近づく者で私が認めたのは唯一ハリーの母でもあるリリーだけだった。
今にして思えば幼稚な独占欲だ。
一時は同時に二人に対して恋慕しているのかと不節操な自分を嘆いたが、今の私になら判る。
ただの憧れ・・・そして理想だったのだと。
人形遊びのように自分だけのイメージを二人に当て嵌めていた。私の理想とする二人。本人達にすればただの迷惑だったろうに。私には無い物を持っていた二人。
ジェームズは私がこうありたいと思っていた自分の理想像を、リリーには私が抱いていた理想の女性像いや母親像かもしれない・・・を、そして二人は誰からも愛され祝福されていた。
所詮私は勉強は出来ても周りが見えない自分勝手で頑固な性格だ。私が懸命になればなるほど周りから親しい者達が離れていった。誰かが云っていた、私の思いは重いのだと・・・。
しかし二人は初めて出会った時から変わらず、否、より親密な付き合いをしてくれた。私の思いに対し二人はより大きな思いで返してくれていた。いや包み込んでくれていたのかもしれない。
自分勝手な思いを押しつけていたのに・・・。
ただこんな風に混乱したのにはジェームズに責任の一端があると思う。
ジェームズがアンナ悪戯をしなければ私だってもっと早くに気付いたはずだ!
そう、思春期だったあの頃・・・。
「シリウス最近どうしたんだい?考え込んでいる事が多いようだけど・・・それに僕を見ている?それともリリー?」
突然、教室でボーっと空を眺めていた私にジェームズは顔を覗かせた。
とっさの事で固まってしまった私は、まさかジェームズに気付かれているとは夢にも思っていなかったのだ。
そう、私の視界は何時も気が付くとジェームズを捕らえていた。もしくはリリーを。二人は行動を共にしている事が多かったから・・・。
同性に異性のような思いを寄せられる。人によっては嫌悪しか起こらない思慕。
私は今の関係を壊したくはなかった。だから自分のジェームズに対する不確かな感情を他人事のように置き換えて尋ねた。
「チョッと相談なんだけど・・・同性から・・そのぉ〜言い寄られたらどうしてる?」
どうする?ではなくどうしている?と聞いた私にジェームズは少し目を見張りそして口元にタチの悪い笑みを浮かべた。
その表情で私は確信した。やはり経験があるらしい。同性からの告白に!そして嫌悪感はないようだった。
「君らしくもない。もしかして同性は未経験?僕で良ければご指導いたしましょうか」
その戯けていった科白に又も私は固まってしまった。告白だけでなく・・・食ったのか!?
ジェームズは心の中で突っ込んでいる私には気付かず(当然なのだが)、そのまま引きずって人気のない薄暗い所へ連れ込んだ。
固まったままの私はジェームズにされるがまま服を脱がされていった。
「初心者にはいきなり突っ込まないようにするんだよ。少しずつ解して慣らすんだ、ほら!こうやって」
と彼は私の首筋に唇を這わしながら何の反応もしていない私に触れた。
「ちょっ・・ちょっとジェームズ?何処触ってるんだよ!?」
私は突然の展開に慌てて抵抗した。誰が犯り方なんか聞いた!?
しかし彼は
「まぁまぁまずは経験あるのみだよ!勿論私にはリリーがいるから最後までは出来ないけどね。不自由もしていないし。安心して気持ちよくなってなよ」
と無邪気にとんでもない事を云いながら、首筋から少しずつ唇を胸元の果実へと移し、前を刺激する手は休めず少しずつ大胆に強弱をつけだした。
胸元へと触れていた唇も触れるだけでなく舌を這わし時折丸く円を描き、頂へと歯をあてがった。
「んっ・・・あっ!」
男でもそんな所が感じるとは思わなかった。声の漏れた私に気をよくしたのかジェームズは手で触れていた所へ突然頭を持っていき、そのまま少し反応の示していたモノを熱い咥内へと含んだ。
「!っやっっっっぁぁぁーっ」
行為自体は初めてではなかったがジェームズがしているのだと思うと過剰に身体が反応をした。最初は雰囲気も何もあったものではなかった・・・。しかし時間がたつにつれ、抗っていた事も忘れ行為に夢中になっていった。
「っっふ・・・んっ!」
咥内へと含みながらも手は休まず彼方此方へと悪戯を繰り返していた。耳へ首筋へ胸元へそして背骨を下って・・・。
「ひっっ!」
ジェームズの咥内から私のモノを伝って後ろへと流れていた滑りに助けられ、彼の長い指が私の中へと進入しようとしていた。勿論そんな所を触れられるのは初めてだった。
初めは抵抗を示していたソコは少しずつほころんでいき、とうとう内部へと進入を許した。
「っふっ・・・んっ・・」
あまりの不快感に強ばる身体を宥めるようにジェームズは含んでいた私を強く吸い上げた。
私は前への刺激に後ろへと進入していた指の存在を忘れていった。
気付くと指の数は増やされ、そして、
「っはっ・・・あっ・ん・・・」
今まで不快感しか感じていなかった後ろから何かが全身を駆け巡った。
女性相手では感じた事のない程の快感だった。
私もそれなりには経験を積んでいたし知識としては持っていた。しかし体感したのは初めてだったので衝撃は大きかった。
「ああ、ココがシリウスの良いところだね!たいていの男はこの辺りが良いんだ。相手の子にもこうやって少しずつ慣らしてあげるんだよ?一気に突っ込んだりして怖がらせたり傷つけないようにね」
ジェームズは含んでいたソレを指に代え、私の体中を啄み小さな紅い花を咲かせていった。そんな小さな刺激にも過剰に反応をしていた私だが徐々にそれでは物足りなくなっていった。
「う・・・んっ・・ジェームズぅ・・」
知らず私はジェームズにしがみつき、むずがるように舌っ足らずな声で先を求めた。
そんな私に彼は苦笑して
「だめだったらシリウス。私にはリリーがいるんだよ。彼女には私の子供を生んでもらわないといけないから。だからそれまでは・・・ね」
ジェームズは呼吸の上がった私を抱きしめたまま、後ろへ進入していた指を抜きゴソゴソしているかと思ったら何か堅くて冷たいモノをあてがった。
「うっ・・・んっ」
冷たさと異物感に身を竦ませた私はジェームズにしがみついたまま、首を無理にひねり後ろを見た 。
とんでもないモノが中へ押し込まれているのを見てしまった。
それはゴム(それもゼリー付きを!何処から出てきた・涙)を被せられたジェームズの杖だった。
「ほらコレも良い感じだろ?この位の太さなら気持ち良いだけだし、ずっと深い所まで気持ちよくなれるよ。このまま最後までイクといい」
ジェームズはゆっくり深く突いては速く浅くと縦横無尽に緩急をつけて杖を蠢かした。
「んっ・・い・・嫌ぁ〜・・・ダ・・メェ・・・」
とうとう私はコントロールできない自分の感覚に泣き出してしまった。こんなみっともなく、そして恥ずかしい思いは初めてだった。
「我慢しないでイッていいよ。男なら当然の事なんだから」
涼やかなジェームズの声が聞こえる中、前に添えられていた指が涙を流しているソコへ爪を立て、後ろを刺激していた杖をより深く突き立てその刺激で私は・・・。
「いっ・・・・嫌ぁぁぁー・・・」
『君が本気なら僕は・・・いや、待っていて今は無理だけど君を必ず私だけのモノにしてあげるから・・必ず・・・・』
ジェームズの微かな苦悩と闇を含んだ声が聞こえたような気がした。
今思い出してもすごい事をしたと思う。
ジェームズが何を言っていたのか気にもなるが、確かあの時も目が覚めたのは今夜のように綺麗な月夜だった。
勿論、私にはそれ以来、男をドウコウすることは有ってもドウコウされたいとは思わなかった。
ハリーに求められ、触れられるまでは・・・。
シリウスは己の微かに震える身体をギュッと抱きしめた。
『・・・ハリー・・今何を思っている?・・・会いたい・・よ。私を抱きしめて・・・』
『ハリー・・・』
『シリウス・・・』
二人の思いは夜空に輝く孤高の月だけが聞いていた・・・。
そして煌々と輝く月をも覆い全てが闇に閉ざされた時
『約束を果たす時が来るよシリウス、必ず君を私だけの・・・もうすぐ・・だ・よ・・』
どこかで闇が蠢いていた・・・。
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