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酒井たかえニュース NO.15 →PDFファイル(5p280kb)
2006年6月30日発行
■「少年補導条例」を凍結しましょう!
奈良県警察が作成し、3月の県議会で可決された「奈良県少年補導に関する条例」(※以下「少年補導条例」とする)は、全国で初めて「補導」の根拠を定めた条例となりました。
「正当な理由がなく、学校を欠席、早退、若しくは遅刻する行為」を不良行為と明記するなど、解釈のしようによっては非常に危険で、警察による不当な権限行使が危惧されます。昨年2月の「立川ビラまき事件(自衛隊イラク派遣に反対するビラを自衛隊官舎の郵便受けに入れたことが住居不法侵入にあたるとして、東京都立川市の市民団体の市民3名が警視庁立川署に逮捕された事件)」にみられるように、警察権力が強まった象徴だと受け止めているのは、私・酒井だけではないと思います。この条例が通ったことで、右に倣えで他の自治体にも広がっていく可能性が大です。日本弁護士連合会の反対声明や、近畿弁護士連合会の反対決議など、様々な団体・個人が反対表明を続け、東京からもマスコミが多数詰め掛け、大きな問題として報道が過熱しています。
酒井が代表をしている「奈良市を見まもる会」も3月、奈良県議会議長宛に@の『「奈良県少年補導に関する条例(案)」についての要望書』を提出し、全県議会議員の方々に郵送でコピーをお送りしました。今井光子議員から暖かいお返事や、梶川虔二議員から情報提供のご協力を頂きました。
条例可決後は、県知事にAの『「奈良県少年補導に関する条例」についての公開質問書』を5月に提出しました。回答期限の日、青少年課よりお電話があり「知事はマスコミや様様な所で条例について発言しており書面での回答は行わない」等のご回答でした。
「奈良市を見まもる会」は今まで様々な公開質問書を出す活動をしてきましたが、知事からは必ずご回答を期日までに頂いてきました。書面でのご回答が頂けないというのは本当に驚きで、よほど今回の条例のことは知事は発言したくないとお思いかと思いました。
今回の条例については県内の各首長も様々なご意見をお持ちのはずで、ぜひ発言して条例凍結にお力をお貸し頂きたいと思い、Bの『「奈良県少年補導に関する条例」についての要請書 』を県内全39市町村長に郵送しました。奈良市長よりCのご回答を頂きました。きちんと市民にお返事頂けた奈良市長の誠意は感じますが、県の立場に遠慮されたのか、直接のご意見を避けられた形で残念でした。
「少年補導条例」が案として持ち上がった時、酒井は自分の過去を思わずにはいれませんでした。なぜなら酒井も中学生の頃、遅刻が多く「不登校」も多かったからです。幸い理解ある先生方や同級生に見守られ立ち直れました。現在それと同じ状態にある多くの生徒達が「不良行為」と見なされて補導されれば、きっと立ち直れなくなるのではと思います。酒井は心理カウンセラーの資格を取るための勉強中ですが、その中でも今回の条例には多くの問題を感じます。
改革派で知られる鳥取県の片山知事が2月、「人権侵害救済条例」を市民の反対を受けて凍結しました。一度成立した条例を凍結するというのは大変勇気のいる決断でしょうが、間違いだと気付いた時点で正す、その勇気はさすがとしか言いようがありません。
7月1日の「少年補導条例」施行までにぜひとも、奈良県知事にもこのような勇気ある決断を期待しています。市民が声を上げれば知事に届くはずです。皆さまもぜひ知事にご意見をお届け下さい。
奈良県庁の電話は 22−1101 です。
@ 2006年3月17日 奈良県議会議長 秋本登志嗣 様 「奈良市を見まもる会」代表 酒井孝江 奈良市学園緑ヶ丘2-8-15 〒631-0026 電話0742-44-9196/FAX 0742-47-5672 「奈良県少年補導に関する条例(案)」についての要望書 日々、奈良県の発展のためにご努力いただいておりますことに感謝いたします。 さて、奈良県警察が今月、定例県議会に提出した「奈良県少年補導に関する条例(案)」は、全国で初めて「補導」の根拠を定めた条例となります。しかし、これについて奈良弁護士会が憲法第13条後段に抵触する可能性を示唆し、また少年問題に携わる組織や機関、地域の人たち等様々な反対の意見が出てきています。 最近多様な研究で、暴力行為や問題行動を起こす少年の多くは、幼少期から親の暴力や虐待を受け続け自信や気力を失っていることが明らかになってきました。そして周りがそのことに気付いて問い質しても、少年は親をかばって口を閉ざすことも分かってきました。条例案では「粗暴な言動」「学校を遅刻」等の表面上で少年を判断していますが、それは少年の一面のみを見て全体を見ていない判断で、教育的・福祉的判断ではありません。「保護者に無断で外泊」や「同居者の金品を無断で持ち出す」等の家出らしきことは、虐待から逃れるための緊急避難的手段である場合もあり、それを保護者に連絡するなら少年の生命身体を危険にさらす恐れもあります。 条例には「正当な理由なく」と前提されていますが、職務質問、捜査等の発見活動の中で疑わしいと判断し、補導を執行するのは一個人の警察官の観念や観察であり、少年に対する自由の拘束として人権侵害になる場合も否定し得ません。これらの裂け難い少年にもたらす不利益を軽視する条例案は少年法制の理念に対応しないと考えます。 思うに、専門的知識を備えた心理カウンセラー的資格者や、日々多くの少年と関わる教育関係者が、少年の感情や境遇を傾聴しながら助言指導するのが望ましく、補導は警察官に委ねる必要性は余りありません。 私たち「奈良市を見まもる会」も上記のような点を問題だと考えますので、下記の通り条例案に反対します。 記 1、少年補導の警察官の関与は、権力が拡大エスカレートする危険性があり、警察権限が強化されることにつながると思われます。警察が提案したこの条例案は廃案にして下さい。 2、少年補導員は、県と市町村の教育委員会の意見を聞いて知事が委嘱して下さい。少年補導員には教育関係者と心理カウンセラー的資格者を入れて下さい。 3、補導方針は、教育関係者と心理カウンセラー的資格者の意見を聞きつつ、少年補導員が自ら決め、互選で代表を決めるようにして下さい。 |
A 2006年5月25日 奈良県知事 柿本善也 様 「奈良市を見まもる会」代表 酒井孝江 奈良市学園緑ヶ丘2-8-15 〒631-0026 電話0742-44-9196/FAX 0742-47-5672 「奈良県少年補導に関する条例」についての公開質問書 日々、奈良県の発展のためにご努力いただいておりますことに感謝いたします。 さて、「奈良県少年補導に関する条例」について私たちは、別紙のような反対の表明をしてきましたが、3月の県議会で可決されました。 この条例は、犯罪に関りのない行為(不登校・深夜外出など)まで補導の対象とし、子どもの人権を侵害し、憲法13条に違反する条例です。困難な状況にある子ども達を救い育てる福祉的な観点がなく、問題があります。 奈良県では少年犯罪が減少し、近畿で一番少ない県です。なぜ、全国で一番最初に少年補導条例を制定する必要があるのでしょうか。 鳥取県知事が市民の反対の声を聞き、「人権条例」を凍結されたのは勇気ある決断でした。 そこで下記の通りご質問いたします。お忙しいところを申し訳ありませんが、6月1日までにFAX等でご回答いただきますようお願いいたします。なお、ご回答は公開させていただきます。 記 1、警察が補導できる範囲が広がる点についてどうお考えですか。 2、この条例を凍結しませんか。 |
B 2006年6月1日 長 様 「奈良市を見まもる会」代表 酒井孝江 奈良市学園緑ヶ丘2-8-15 〒631-0026 電話0742-44-9196/FAX 0742-47-5672 「奈良県少年補導に関する条例」についての要請書 日々、公務に取り組まれご活躍の程、敬意を表します。 さて、「奈良県少年補導に関する条例」について私たちは、別紙『「奈良県少年補導に関する条例(案)」についての要望書』のような反対の表明をしてきましたが、3月の県議会で可決されました。 この条例は、憲法13条に違反する条例です。犯罪に関りのない行為(不登校・深夜外出など)まで補導の対象とし、子どもの人権を侵害し、困難な状況にある子ども達を救い育てる福祉的な観点がなく、問題があります。 そこで私たちは別紙『「奈良県少年補導に関する条例」についての公開質問書』を知事に提出しました。 同じ奈良県内で行政に取り組まれる貴殿には、青少年の成育にとって大きな支障となるこの条例の凍結を求めるご意見を表明して頂くよう要請いたします。お返事をFAXなどで頂ければ幸いです。 |
C 奈市教少 第225号 平成18年6月15日 奈良市を見まもる会 代表 酒井孝江 様 奈良市長 藤 原 昭 「奈良県少年補導に関する条例」についての要請書について(回答) 平成18年6月1日付けで要請のあったことについては、下記のとおりです。 記 「奈良県少年補導に関する条例」につきましては、3月の奈良県議会で可決、制定されたものであり、奈良市として凍結云々を要望する立場にはございません。 少年の健全育成・非行防止には、早期発見・早期対応が不可欠であり、この条例が適切に運用されることによって、少年の健全な育成を図っていただけるものと期待しております。 なお、補導員の委嘱に当たっては、少年問題に精通し、少年問題の解決に意欲的に取組んでいただける方を委嘱し、条例の内容や活動の際の心構え・対処方法等を十分に研修したうえで、補導活動を行っていただきたいと考えております。 |
★この条例で、例えばこんな行動も 補導されるおそれがあるかも?
・家計を助けるため、高校に通いながらアルバイトをしていたら、その帰りに補導され、学校に通報される。
・深夜コンビニに行って食べ物を買うついでに雑誌を読んでいたら、入ってきた少年補導員に補導される。
・アイドルの子の水着写真を載っている雑誌を持っていたら警察官に呼びとめられ、所持品検査をされ、その雑誌にたまたまヌード写真があって没収され、学校や親に通報される。
・生理痛や頭痛がひどいので、いつも鎮痛剤を持ち歩いていたら、所持品検査で有害薬物所持で取り上げられ、親に通報される。
・学校の授業が半日で終わったので、友達とゲームセンターに遊びに行ったら、補導され、学校に通報される。
・親とけんかして激しく口論していたら、近所の人に警察に通報される。
(ペンネーム「スピカ」様より投稿)
【ことば】
●憲法第13条〔個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重〕:
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
●少年補導:
少年の非行を防止しまたは少年の福祉をはかるために、非行少年・不良行為少年・要保護少年の発見活動を行い、発見した非行少年・不良行為少年・要保護少年について捜査や調査をして、その結果に基づき、関係諸機関に送致・通告あるいは警察限りの措置をすることや、少年に注意・助言し、家庭・学校・職場等に連絡して、指導上の注意・助言等を行うことの総称。 (日本評論社 末弘研究所編集 法律時報、昭和53年8月号より)