絵画の美と私                      

                                   2000.5.4 松村睦夫

1、フェルメールの振り返り

2、ゴッフォの自画像(真の恐ろしさ)と動きについて

このあいだ東京に行ったとき駅の改札口付近にゴッフォ展の広告に自画像が載っていた、それを見た時に、“なんと恐ろしい絵だ!”と感じました、描き方がその様であるからではありません、その自画像が私に向かって「お前は真剣に生きているか」と問いかけてくるように感じたのです「真面目に生きているか」なら怖くはないのですが、“真に生き人生を生きぬいているのか”と、その自画像は私に問いかけてくるのです。

古今東西たくさんの自画像が有り、見たりしているのですが、たとえば有名で私の好きなデユーラの自画像は上手で思わず引き寄せられますが、ゴッフォの自画像は、私を突き放し自己の生きている人生の本質を厳しく問うゴッフォの眼からは逃げ切れないのです。

きっとそれはゴッフォが厳しい状況の苦しい人生を激しく生きぬいたとこらからきているのだ。

また一枚のパンフレットを中の絵を見ると点でなく単線をつづって描いている、ここに変化の動きを飛躍的に高めたゴッフォのすばらしさがあり、子供の頃から私が好きだった秘密があるように思いました、その上になんと近代的で人間的な優しさがどの絵にも有ることです、いったい奇人・狂人ゴッフォとはどのような人間だったのでしょうか。

3、レンブラントの眼

レンブラントの絵の特徴はなんと言っても、まるでスポットライトを当てたように絵の中央部だけが光っていることだ。批評家は、これは光の明暗を絵画に持ちこんだとか、周りの余計なものを取り去り集中させた等言っています。

生物学では、人間の眼は普通見えるものは同じように見えるようだが、本当は人間の眼は見ている全体の中で中央部がはっきりとそして明るく視えるが、ほとんどの人は気がつかない、一部の人、特別な人間だけがそれを感覚的に捉えられるそうだ。

レンブラントは単に技術的でなく、特別な眼を持っていて同時に技術との統一を図ったと考えます、しかしなんとまあ微妙なわずかな光の差を逃さない眼とは!

私など見えていても、美人かそうでないかの判断も分からない輩にはとても分からない世界だ。

4、ダビンチはモナリザの微笑の謎を知っていたか?

 絵画ではダビンチのモナリダの微笑はあまりにも有名で、またその微笑の謎は永遠の謎として絵画ファンにとっては興味の的になっています。

私は二つの問いを出し謎ときに参加しようと思う。

@     本人ダビンチは微笑の謎を知っていたか?

モナリザの微笑は偶然的に描かれたのではなく、本人画家ダビンチは微笑の秘密を知っていたし、知らなかったらあのような微笑は描けなかったのだ。

ダビンチは画家ではない、科学者であり医学者であり軍事家・建築家その他 本当の意味でマルチ人間なのだ、それも近代的科学者なのだ。

科学者の態度は“全てのものに対しあらゆる先入観を持たない”この姿勢を貫いたこと

そのものが何か?を知るには、発生史をたどらなければ必然性は明らかに出来ないことを知っていたから、人間の表面を描くにしろダビンチは解剖などをして内部からいかにして発生して今日のこうゆう姿になったかを追究した。

彼の人間観察は鋭いだけでなく、事物を正しく理解し認識するには別々に目の前にあるものだけでなく、その前身の全体な萌芽をたどり発達の過程をつぶさに把握することでした。     

笑いではなく(笑いは類人猿もする)が人間だけがする微笑(ほほえみ)の発生はどこから生まれ育んだかを追究したのでしょう。

微笑は動物にはないが、それは動物から発生した。多くの進化した動物は口を使って威嚇するがこの威嚇が微笑の発生の源だ。

動物の威嚇が、人間の微笑まで発達するには、文化が従ってどれほどの変動の歴史が有ったことか、犬歯を剥き出しにし相手に対抗するだけの動物的威嚇から、敵意がなくコミニューケ−ションをとろうとしての威嚇を乗り微笑までの道のりを彼はしっていたに違いない。

A     なぜ単なる微笑がこんなに美の極値のように言われるのか?

微笑は人間の進化のそのものであり、また文化発展の歴史を刻み込んでいますし、元はと言えば動物の威嚇です、威嚇がその反対の微笑に自己転化するには、そこには運動・変化・発展の原動力がなくてはならず、当然のごとく威嚇と微笑という対立物の統一が

有ってこそ成るのです、従ってこの具体化には画家ダビンチがいかに近代的哲学の矛盾を理解し、キャンバスの中の微笑を描くさいに微笑の内に威嚇を入れ、それを表面に出さず描ききるという困難な作業に携わっていたか描けども描けどもそれが出来ず苦悩していたとおもわれます。

天才は、一瞬の微笑を間に同化させ延長し、時空を超える術を使えるのです。