SHORT STORYに戻る

ホームに戻る

 

銀の翼舞う 帝国遊撃隊シルヴァウィング

 

 

 1 銀の翼の乙女たち

 

 闇につつまれた時間。

 人も訪れぬような寂れた倉庫街を、一人の少女が走っていた。

 見た目からいってもまだ若い。銀河には色々な種族が存在するので、はっきりとした年齢は断定できないが、見た目通りの年齢だとすれば10代後半くらいだろうか。

 短く切りそろえた髪は青く、元気で溌剌とした印象も漂うが、クリッとした瞳にはまだ幼さが残る。だが、その身にまとう衣装は、少女が只者でないことを示す。白を基調としたスラッとした礼服にタイトスカート。羽織ったケープには、翼竜を意匠化した紋章が刻まれ、見るものが見れば、それが帝国の特殊部隊の紋章と気がつく。その翼竜の紋章の上に、今度はエリウスという花から銀の翼を広げたような印象を与えるブローチが飾られている。

 それは、この少女が帝国遊撃隊“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”に属すことの証。

 少女は、とある任務がゆえに、ここ惑星エウスプールの倉庫街を走っていた。

 その任務とは脱走犯の追跡。

 それというのも、つい先だって、犯惑星警察機構によって護送されていた凶悪犯が脱走したというのだ。

 実際この手合いの仕事は、犯惑星警察機構の管轄であるが、今回は状況が状況ということもあり、彼女も犯人追跡にかりだされた

 もっとも、彼女がかりだされた一番の理由は、犯人が脱走したというここエウスプールに、偶然休暇で来ていたことに起因する。

 そして、犯人が倉庫街あたりに逃走したという噂をききつけ、ここまで走ってきたというわけだ。

 犯人がどうしてここまで逃げてきたのかは不明だが、このように人気の少ない場所に逃げこんでくれたのは、ある意味で幸いといえた。

 少女は携帯型のセンサーセットを用意している。これさえあれば、周囲の熱源状態や動体反応なども検知できる。こういう小道具が効果を発揮するにはもってこいの場所という訳だ。人の多い場所では、おいそれと役には立たないのだから。

 しかし、現在のところ反応にひっかかるものはなかった。

 その時、携帯端末の方へ仲間からの連絡が入る。

「はい。こちらレスティ。どうしたの、シャロル?」

 レスティと名乗った少女は、小声で通信にはいった。

「お姉さま。わたくしも一応、倉庫街まで来る事ができました。レスティお姉さまはどんな状況ですか?」

 通信相手のシャロルの声は、まるで幼い子供のようにあどけない。ちなみにレスティのことを“お姉さま”と呼ぶが、別段姉妹という訳でもない。シャロルは年上の同性に対し、誰にでも“お姉さま”と呼ぶクセがあるだけだ。

「まだこれといった変化はないわ。それよりシャロル。ティセアの方には連絡ついたの?」

「それがまだなんです。ティセアお姉さまにも何度となく連絡をいれたのですが、全然繋がらなくて・・・・・・」

「まったくもう、あの子ったら。きっとあたしたちの苦労も知らず、今ごろケーキでも頬張ってんのよ」

「ティセアお姉さまならあり得ますね」

 シャロルも苦笑の声で同意する。

「あの子、自分があたしたちの隊長であること自覚してるのかしら。それ以前に、どうしてあんなのがあたしたちの隊長なのよ。信じられない・・・・・・」

「レスティお姉さまの気持ちもわかりますが、ティセアお姉さまにはティセアお姉さまなりの素晴らしさもある訳ですし。そんなことより、今は犯人追跡が先決ではありませんか?」

「そうね。あのバカ隊長に連絡が繋がらない以上、あたしたち二人で頑張るしかないわね」

 レスティは自分にも言い聞かせた。彼女までシャロルに心配をかけるようでは話にならない。

「とにかく何か異変があったら、また連絡して」

「了解・・・・・・って、あれ? レスティお姉さま、わたくしの近くで熱源反応です」

「え?」

 しかし、その時だ。レスティのセンサーにも熱源反応を示すランプが灯った。

「シャロル。こっちにも反応があった・・・・・・・何っ!?

 レスティは途中で驚いた。熱源の大きさがどんどんと高まってきたのだ。それはシャロルの方でも同様らしい。

 これはもう人間のはなつ熱量どころではない。

 それと同時に、倉庫街一面を震わせる、異様な振動音が響きはじめた。

「レスティお姉さま。これってもしかして」

「あなたの予想通りかも。だとしたらマズイわよ。このあたりからできるだけ離れて!」

「わかりました。お姉さまも急いでくださいね」

 その言葉を最後に通信を終え、レスティは倉庫街を離れるべく走った。

 その途中。

 倉庫街の中心地で巨大な破壊音が響き、凄まじいエンジンの噴射音と共に小型の宇宙船が飛び去ってゆく。

 レスティがいるあたりにもエンジン噴射による熱気が流れ、彼女は無事な建物の陰に転がりこんだ。

 しばらくして熱気がおさまると、レスティは建物から出て空を見上げる。飛び去った宇宙船は、もう彼方に消えつつあった。

 このことが何を意味するのか。

 それは、まんまと逃げられてしまったということ。おそらく脱走犯はあの宇宙船にいるのだろうから。

 レスティは、空を見上げたまま、舌打ちするしかなかった。

 

「何でそんなにパクパク食べれるのよ〜っ!!

 脱走犯をとりのがすこと1時間後。“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”の旗艦“エルスレッダ号”のブリッジでは、レスティの叫び声が響いていた。

 それに対し、ケーキを頬張っていた少女はキョトンとした顔をする。

「何でって、それは美味しいからだよ」

 少女は幸せそうに答えた。年の頃にして、レスティと同世代くらいだろうか。紫色の髪を長くのばし、まだ幼さの残る表情は、かなり可愛いといっても過言ではない美少女だ。

「いくら美味しいからって、任務をほっぽりだしてまでパクパク食べてるんじゃないわよ」

 レスティは言って、少女が食べているケーキをとりあげた。

「あ〜〜あ、レスティちゃん。それ私のマラコフトルテ〜」

「没収。大体ね、ティセアはケーキ食べすぎなのよ。何がマラカストルテよ」

「マラカスじゃなくて、マラコフ。人の楽しみを奪わないでよ〜」

 ティセアと呼ばれた少女は、ぷぅっと頬を膨らませた。

「あたしだって意地悪でこんなことしてるんじゃないわよ。あなたが任務の呼び出しに応じようとしないのが悪いんだからね」

「でも、今日って休暇でしょ。休暇をどう使おうと、私の自由じゃない」

「休暇って言っても、緊急の任務はいつ入るかわからないのよ。しっかりしてよね。第一、あなたはあたしたちの隊長でしょ? 何であたしがあなたにこんな説教しなきゃならないのよ」

「・・・・・・嫌ならしなきゃいいのに」

 ティセアはボソリとつぶやくが、それはレスティの耳にも入る。

「あなたって、まったく反省の色がないのね」

「反省も何も、私、何も悪いことしてないじゃない。普通に休暇を満喫するのがいけないことなの?」

「普通じゃない事態で、休暇を満喫してるのがいけないのよ。大体、ケーキと任務、どっちが大事だと思ってるの」

「そんなのケーキに決まってるじゃない」

 即答だった。ティセアの価値基準は、全て甘いお菓子が最優先なのである。

 レスティも訊ねてから愚問に感じた。ティセアとの長い付き合いで、彼女の性格など把握していた筈なのに。

 そこへシャロルが割って入った。

「まあまあ、お姉さまたち、もうそれくらいでよいじゃありませんか」

 とりあえず、なだめるように穏やかに言う。

 シャロルはティセアたちより一回り幼い少女だった。流れる白金の髪を両おさげにし、可愛らしさにおいてはティセアにも匹敵する。

「そうそう。シャロルちゃんの言うとおりよ。細かい事は気にせず、皆で仲良くケーキを食べましょ♪ 私、皆の分もお土産として買ってきてあげたんだから」

「こんな時に仲良くケーキだなんて・・・・・・」

 レスティは溜め息をつくが、ティセアはお構いなしにケーキの用意をしていく。

「ま、今回は私も不注意だったって反省します。だから、レスティちゃんも機嫌をなおしてケーキ食べよ。マラコフトルテはとっても美味しいんだから。ラム酒入りのビスケットとバニラの生クリームの相性って、とってもハッピ〜♪な気分になれるんだよ」

「・・・・・・もう。今度から本当に注意してよね」

 ケーキのお皿を返しながら、レスティは半ば説教を諦めていた。それでも釘をささずにいられないのは、彼女の真面目な性格たる所以だろう。

「はい。はい。注意しま〜す。けれど、残念だったよね。ある程度のところまでは近づいていたんでしょ?」

 ティセアが二人にケーキを配りながら訊ねる。

「倉庫街までは行けたんですが、あそこで宇宙船が出てくるなんて思いもしませんでした」

 シャロルが言い、レスティもうなずく。

「少なくともこの脱走は計画的に仕組まれていたという感じね」

「ふうん。なるほど。でも、私たちが取り逃してもすぐに捕まるわよ。汎惑星警察機構も動いていた訳でしょ。衛星軌道上に出る前にどうにかされちゃったんじゃないかな?」

 ティセアが楽観的な意見を述べた時、ブリッジ内に機械的な音声が響いた。

『残念ながら、そううまくはいかなかったようです』

 音声は、この船“エルスレッダ号”に搭載された人工知能コンピュータ、俗称セバスチャンの声だった。

「どういうこと?」

 ブリッジ内に響いたセバスチャンの声に対し、ティセアが訊ねかえす。

『とりあえずこれをご覧頂ければわかると思います』

 セバスチャンの言葉が終わると同時に、ブリッジのメインスクリーンに何か映像がうつしだされる。

 それはどうやら、惑星エウスプール製作のニュース番組のようで、若い女性キャスターがニュースを読み上げていた。

『・・・・・・銀河標準時、201848分、汎惑星警察機構の護送より脱走した、特A級犯罪者のジム・バーグルは、エウスプール・エルトア地区の倉庫街にて仲間と合流。その後、密かに準備されていたと思われる小型宇宙船をつかい、エウスプール衛星軌道上に脱出しました。これに対し汎惑星警察機構は、衛星軌道上でジム・バーグルの船に降伏を呼びかけるものの、それらへの返答には応じられず、かわってジム・バーグルの船に民間の人質20名が存在することを宣言されました。これによって、汎惑星警察機構側も動きを封じられ、同日2030分にジム・バーグルの船は人質を解放することなくFTL(超高速)ドライブに突入。エウスプール軌道圏内を完全に脱出するに至りました』

「何てことよっ!」

 レスティは拳を握った。

『尚、ジム・バーグルが人質とした民間の20名は、公表された名前がここ2日間で行方不明となったものと一致しており、その安否も気遣われるところです』

「さすが特A級の犯罪者。かなり用意周到って感じだね」

 シートに深くもたれかかって、ティセアは感心する。

 ニュースはまだ続く気配であったが、そこにセバスチャンの声が割って入る。

『皆様、惑星リムトラールよりFTL(超高速)通信が入っております』

「繋いでくれますか」

 嬉々とした声でシャロルが答えた。

『了解』

 その言葉と共に、今度はメインスクリーンに若い美少年の姿がうつし出される。

「みんな、揃っているみたいですね」

 スクリーンの少年は、見た目通りの上品な口調で言った。

 今でこそ正装はしていないものの、見る者が見れば、この少年が何者であるのかはすぐに気がつく。この少年こそ、銀河に最大級の版図をひろげるオズバ・スカナ帝国の第三皇子フィゼルト・デュ・ウォルザークであるからだ。

 そして、ティセアら“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”は、フィゼルト皇子直属の特別遊撃隊でもある。

「うん。揃ってるよ。フィーくん」

 皇子に対する敬称もへったくれもなく、ティセアは馴れ馴れしく答えた。それに対してフィゼルトも、別段怒る様子もなく、むしろ柔らかい笑顔で話しかける。

「それはよかった。実はみんなに、僕からの指令を伝えようと思ってね」

「・・・・・・それってやはり、逃亡したジム・バーグルのことでですか?」

 レスティの問いに、フィゼルトは小さくうなずいた。

「みんなはジム・バーグルが、民間の人質20名をつれて、惑星エウスプールを脱したのは知っているよね?」

「うん。今、ニュースでも見てたからね」

「そうか。ならば話は早い。実は僕からの指令というのは、みんなにジム・バーグルの船を追跡してもらい、人質を無事に救出して欲しいということなんだ」

「私はいいけど、汎惑星警察機構の人たちに任せなくていいのかな?」

「本来ならそれが一番なんだろうけど、ジム・バーグルが逃れていった場所というのが少し問題でね」

「どこか厄介な場所にでも逃げこんだのですか?」

 不安そうにシャロルが問う。

「帝国の保安情報庁が、FTLスキャンディテクターなどの航跡探知機で調べた結果、ジム・バーグルの船はカフティア星系に向かった可能性が強いらしい」

「カフティア星系って、噂に聞く無法惑星地帯のこと?」

 ティセアは記憶を探りながら訊ねると、フィゼルトもうなずいた。

 カフティア星系は帝国の領土を遥かに離れ、隣国トロンバース連邦の領土にあたる。しかし、連邦の領土内にあって、カフティアはもっとも危険な星系と呼ばれ、そこは巨大な海賊集団や一大犯罪組織が集結する無法地帯と化していた。

 勿論、そのような危険な星系を連邦側も放ってはおかなかった。今までにも何度か討伐軍が組織され、カフティア星系に派遣された。しかしその結果は、全て討伐軍の敗退によって幕を閉じる。カフティアに集結した犯罪集団は、既に討伐軍など凌駕する勢いにまで膨らんでいたのだ。

 かといって、事は他国の星系の問題。帝国軍がおいそれと武力介入する訳にもいかなかった。オズバ・スカナ帝国はここ半世紀の間、他国への武力侵攻を行わないことも明言している。

「みんなも知っての通り、カフティア星系は無法の徒が集う危険地帯だ。また、僕ら帝国の領土でもない。汎惑星警察機構は国家間の犯罪捜査において、自由に行動できる裁量権を持っているとはいえ、その力にも限界がある。彼らがカフティアに乗り出すにはそれなりの準備もいるだろう。しかし、正直、そのような時間をかけている場合ではないと思う。人質の安否が気遣われるのは勿論のこと、時間をかければその分だけ、敵はカフティアの奥深くに入りこんでしまう」

「つまりは、犯人がカフティア星系の奥深くに入りこむまでに、なんとかすればいいのかな?」

「ああ。それが望ましい。そして、それができるのは君たち“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”だけだと思っている」

「お任せください! わたくし、お姉さま方と共に、必ずやフィゼルトさまのお役に立ってご覧にいれます」

 頬を赤く染め、うっとりと目を輝かせながらシャロルは答えた。

「今度は先程のような失態を繰り返さぬよう頑張ります」

 レスティにいたっては、生真面目に敬礼までする。

「シャロルさん、レスティさん。期待しているよ。・・・・・・そして、ティセアさん」

「ん? なぁに??」

 ティセアにいたっては、お構いなしにケーキを頬張っていた。頬のあたりに生クリームをつけて。

「・・・・・・ティセアさん。いつもこのような危険な任務を与えてしまってすみません。・・・・・・もし、今度・・・こちらに戻ってくることがあれば・・・・・・その、ぼ、僕と・・・・・・ケーキを食べにいきましょう」

 何故か真っ赤になりながら、フィゼルトは言った。それに対してティセアも。

「うん。いいよ〜。一緒に行こう、フィーくん♪」

 とてつもなく可愛らしい笑顔でうなずいたのだった。

 こうして、フィゼルト皇子との通信は終わった。

「ティセアお姉さまだけ、羨ましいです〜。フィゼルトさまにお誘い頂けるなんて・・・・・・」

 シャロルが、少しむっつりした顔で言う。

「まさかあれって、デートの誘いとかじゃないですよね?」

「フィーくんに限ってそんな事ないと思うよ〜。きっと、私を誘ったのも、いつも隊長の任務ご苦労さまってことだと思うよ」

「あは。そうですよね。わたくし、少し安心しました」

 気楽に笑うティセア。ホッと安堵したかのようなシャロル。

 そんな二人を見て、レスティは心の中で思う。

『・・・・・・皇子さまも不憫だわ。あんな鈍感娘に想いを寄せるんだから。でも、シャロルに至っても不憫よね』

 さすがにシャロルへの同情を禁じえなかった。

「さ、レスティちゃん。シャロルちゃん。今からカフティア星系に出発するよ〜!」

 ケーキを食べ終わったティセアが、元気よく宣言する。

 レスティもシャロルもうなずき、それぞれのシートに座った。

「セバスチャン。ジム・バーグルが逃亡に使った艦種は何かわかるかな?」

『確認した情報でいえば、彼らが逃亡に使った船はプロコフ社製の小型輸送貨物船です。船籍番号を調べたのですが、一度廃船としての処理を受けているようです』

「廃船処理された船かあ。でも、そんなのが動いてるってことは誰かが裏でその船を買い取ったのかなあ?」

『そういうことになりますね。あと、その船がFTL(超高速)ドライブに入った時のエネルギー量から計算しても、それほど高性能のFTL(超高速)ドライブを積んでいる訳でもないようです』

「それならば、“エルスレッダ号”なら充分追いつけるわね」

 レスティの言葉にセバスチャンも断言する。

『カフティア星系ならば、この船の方が1日は先回りできるはずです』

 “エルスレッダ号”に積まれたFTL(超高速)ドライブは、帝国でも最高峰の技術のものを搭載している。少なくともこの速度を上回るものとなると、古代の遺跡に眠る失われた技術を流用するしかない。

 しかし、そんな技術を解明した人間は、今のところ「表立って」は存在しない。

「それじゃあ、艦内の全システムのチェックを開始して。それで問題なければ管制に連絡。出港の手続きをとりましょう♪」

 ティセアの号令のもと、“エルスレッダ号”の出港準備はてきぱきと進められた。

「チェックリスト五百十二項目確認。全て以上はありませんです、お姉さま」

「管制からの出港許可も下りた。いつでも出られるわよ」

 シャロルとレスティがそれぞれの状況を説明する。

「よ〜〜〜し。それじゃあ“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”、悪者退治に出発で〜〜〜す!!

 ティセアが意気揚々と発進を宣言した。

 ・・・・・・それにしても悪者退治。今回の任務は人質の救出ではなかったのか?

 ふとよぎった疑問を、レスティもシャロルも、あのお気楽隊長に確認する気にはなれなかった。

 

 

 2 銀の翼が輝くとき

 

 “銀の翼小隊(シルヴァウィング)”は、オズバ・スカナ帝国第三皇子、フィゼルト・デュ・ウォルザーク直属の特別遊撃隊である。

 三人のうら若き乙女で構成されているものの、彼女らの実力は相当なものであり、その任務達成率の高さは、他の遊撃部隊と比較にならない。

 だが、そんな彼女らの正体を知るものは帝国内でもごく一握りの人間だけ。また、銀河を震撼させる無法者たちの間では、“死を運ぶ翼”ともおそれられている。

 ティセアたちが惑星エウスプールを発って2日。“エルスレッダ号”はFTL(超高速)ドライブの超空間を抜け、カフティア星系に到着した。艦内コンピュータ、セバスチャンの言葉が正しければ、ジム・バーグルたちの船より1日先回りしたことになる。

「とりあえず到着しましたね」

 シャロルの言葉にティセアはうなずいた。

「あとはジム・バーグルの船がやってくるのを待つだけだね〜。とりあえず、彼らの船がどこにジャンプ・アウトするかはわからないから、ハイパードライブ緊急探知機だけには気をつけておいてね」

「了解しました。ティセアお姉さま」

 恒星間移動には主に二つの方法が存在する。一つはスターゲイトという固定された人工的なステーションを介して超空間を渡る方法。もう一つはスターゲイトに頼らず、自由に超空間を行き来できるFTL(超高速)ドライブを使うこと。FTL(超高速)ドライブ用エンジンは、目標となる座標ポイントを一直線で繋ぎ、そこに超空間をつくる。性能によって超空間を渡る速度差が現れるものの、スターゲイトの存在しない辺境に赴く時などは重宝される。

 ハイパードライブ緊急探知機は、超空間から通常空間を抜けてくる船の波動を検知し、その出口を正確に示す。ジム・バーグルの船がスターゲイトのような固定された出口から出てくるならまだしも、FTL(超高速)ドライブの超空間から出てくる以上、こういった探知機は欠かせない。

「それはそうと作戦もたてておかないとね?」

「そうですね。今回の任務が人質救出な以上、慎重に事を運ばなければいけませんもの」

 レスティとシャロルは言う。しかし、ティセアの方は、少し何かを考えていた。

 そして。

「ねえ、二人とも。ジム・バーグルの船には本当に人質なんかが存在するのかな〜?」

 急にティセアがそんな疑問を口にした。

「本当に人質が存在するかですって? あなた何言ってるのよ。ニュースでも報じてたじゃない」

「それはそうなんだけど・・・・・・少し引っ掛かるの」

「どこが引っ掛かるのよ」

 首を傾げるレスティに、ティセアは自分の考えを述べ始めた。

「例えば20名って数。どうも不自然な数だと思わない? 人質になった人たちは、ここ数日で行方不明になったって話でしょ。つまりこれは誘拐されたって事なんだけど、普通、20名も誘拐するかしら。人質にするんだったら、その半分くらいの数字でもいいと思うの」

「なるほど。確かにティセアお姉さまの疑問も一理ありますね。一箇所にとどまっていた人間をまとめて誘拐したなら20名という数字も頷けますが、個々に誘拐したとなれば少し不自然な数字の思えます」

 シャロルも同意する。

「今回の向こうの計画って用意周到すぎる気がするの。廃船となった宇宙船の手配にしても、それをどうやって倉庫街に隠していたのかにせよ。でも、それらの準備を行っていたものが、実は人質として公表されてる20名だとしたら驚きじゃない」

 ティセアの指摘にレスティも感心したような顔をする。

「何か今日のティセアって珍しく冴えてるわね」

「ティセアお姉さまは、わたくしたちの隊長ですもの。やるときはやってくれますわ」

 頼もしげにシャロルは言うが、ティセアは照れ笑いを浮かべた。

「そんなに大層なものじゃないよ。何となく人質が人質じゃなければ、助ける必要もなく気楽に事が運ぶかな〜なんて考えてたら、そんな疑問にいきついたの」

「あ〜〜〜あ。ティセアの頭の中なんて所詮そんなものよね」

 やれやれといった感じでレスティは肩をすくめる。

「でも、どんな形であれ、こういう疑問が出てくるんですから大したものですよ」

 シャロルが弁護するように言うと、レスティも納得はした。

 それに、今までの付き合いでも言えることだが、ティセアはたまに鋭い発想をし、その発想があながち間違いでなかったことも多い。例えそれが偶然といえどもだ。

「とりあえず、ティセアお姉さまの疑問を解決するためにも、人質となった人々について調べておきますか?」

「うん。できればそうしておきたいかな。人質の身元とか含めて、その人たちの間で何か接点がないか調べておきたいし」

 ティセアは決断すると、とりあえずその作業を艦内コンピュータのセバスチャンに命じる。

 セバスチャンは早速、帝国の中央管理局にアクセスし、その中から帝国臣民のデータを検索。今回、人質とされたものの個人情報を次々とディスプレイしていった。

 ティセアたちは、それらをひとつひとつ確認していくものの、最終的にはこれといった手がかりになるようなものは掴めなかった。

「ダメね。人質となった人間って皆、バラつきありすぎるわ」

 レスティが小さく息をついた。

 現在は戸籍などを中心におおかまに調べた程度だが、どれも接点らしいものは感じられない。性別や年齢、仕事に関しても、それぞれでバラつきがありすぎる。もっとも幸いを言えば、その人質の中には子供が混じっていないということぐらい。

「どうします? もう少し絞って調べてみますか」

「そうだね。まだ時間はある訳だし、個人の過去の経歴なども詳しく調べていってみましょう」

 セバスチャンも検索を再開した。

 その間、ティセアはのんびりとコーヒーを準備し、お気に入りのお菓子もお皿に添えた。こういうことを隊長が準備するのもどうかと思えるが、ティセアが楽しんでやっている以上、何も問題はない。

 とりあえず全員分のコーヒーとお菓子を準備し終えたティセアは、シャロルやレスティに配っていく。

「はい。レスティちゃん、コーヒーだよ〜♪」

「ん。ありがとう」

 レスティだけ他の二人と比べて、愛用のコーヒーカップを使っている。しかも、そのコーヒーカップには可愛らしいペンギンのキャラクターがプリントされていた。

「レスティちゃんのコーヒーカップっていつ見ても可愛いよね」

「ティセアにもわかるんだ。この“ペペ”ちゃんの可愛さが」

 どこか嬉しそうにレスティは笑った。いつも真面目さが目立つ彼女も、こんな時は表情が柔らかくなり、目もうっとりしている。言いかえれば、ケーキをパクついている時のティセアと通じるというべきか・・・・・・。

「うんうん。よっくわかるよ。そういやレスティちゃんって、このキャラクターの大きなぬいぐるみも持ってたよね」

「うん☆ もってる、もってる。これのことでしょ」

 レスティは答え、自分の足元から大きなペンギンのぬいぐるみを持ち出した。それを見てティセアも顔を輝かせる。

「うにゃ〜〜。可愛いよ〜〜☆」

「えへ。いいでしょ。これって限定品で高かったのよ」

「そうなんだ〜。ねえ、レスティちゃん、少しお願いなんだけど」

「なになに?」

「この“ペペ”ちゃんのぬいぐるみ頂戴♪」

「あは。ティセアも“ペペ”ちゃん欲しいんだ。いいよ☆・・・・・・って、そんな訳ないでしょ!!

 レスティのチョップがティセアの額にヒットした。

「いちゃい。何もチョップすることないのに〜。それに仲間同士なんだし、少しばかり“ぺぺちゃん”くれたっていいじゃない」

「貸すならともなく、なんだってあげなきゃいけないのよ!」

「隊長命令」

「そんな命令きけるかっ! “ペペ”ちゃんはあたしだけのものなんだから、誰にもあげないもん」

 むぎゅ〜っとぬいぐるみを抱きしめながら、レスティは駄々っ子のように身体をじたばたさせた。

 シャロルは苦笑しながらも、二人のそんな様子を眺めている。

 と、その時だ。

 艦内に緊急の警報が鳴り響いたのは。さすがに全員、はっとなる。

「何かあったの?」

 ティセアが問うと、セバスチャンが答えた。

『本艦に接近する船が六隻ほどあります。艦種はいずれも〈スマッシャー〉級の中型艦ですが、所属は不明』

 サブスクリーンに周辺空間の立体図が示された。それを見ると“エルスレッダ号”を取り囲むように、赤い六つの輝点が存在した。

「こんな宙域で所属不明の艦船となると、やはり海賊の類でしょうか?」

 シャロルが不安を口にすると、レスティも“ぺぺ”ちゃんを抱いたまま頷いた。

「多分、間違いないでしょうね。〈スマッシャー〉級の船で、所属不明だなんて早々ある訳ないもの」

 〈スマッシャー〉級の艦船は、中型の船の中でもかなりの重武装を整えた船だ。本来は帝国航宙軍が有する艦船だが、所属不明となると、海賊たちに拿捕されて改造を受けた船である可能性も高い。

「どうする、ティセア?」

 レスティはとりあえず、隊長であるティセアに判断を仰いだ。今の段階なら、“エルスレッダ号”の速度で充分に離脱できる。

「迎撃しましょ」

 ティセアは迷い無く即断した。

「どのみちこの宙域には留まらないといけない訳だしね。降りかかる火の粉は払うべきだよ。とりあえず、私とレスティちゃんが“ロストフレーム”で出撃して、先制攻撃を仕掛けましょ」

「OK。それじゃあ、少しばかり暴れようかしらね」

 レスティも賛成とばかり、シートを立ちあがる。

「シャロルちゃんは悪いけど、“エルスレッダ号”の方をよろしくね」

「はい、わかりましたわ。お姉さま方、気をつけて行ってきてください」

 ティセアたちは頷くと、ブリッジを抜け“ロストフレーム”がおさめられた格納庫に走った。

 “ロストフレーム”は“エルスレッダ号”に格納された高機動戦闘艇であり、“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”が最強の遊撃部隊であることの象徴でもある。それというのも“ロストフレーム”は、現在の銀河では解明しきれていない“失われた超技術”を一部流用しているからだ。失われた超技術に帝国の最新技術に加えた“ロストフレーム”は、並みの人間に乗りこなせる機体ではない。

 そう、ティセアたち三人を除いては。

 格納庫についたティセアとレスティは、それぞれの“ロストフレーム”へ機乗すべく準備をはじめた。

 “ロストフレーム”は翼を広げた天使を彷彿とさせる白銀の機体。彼女らそれぞれの機体で、一部のラインの色などは違うが、基本となる性能は全て同じだ。

「我が翼よ、今こそ力を呼び覚まし、その封印を解かん」

 ティセアたちはそれぞれの機体の前で、呪文の言葉を唱えるように囁いた。

 するとどうであろう。彼女たちの背中から、神々しいまでの銀の翼が生え広がった。

 それはティセアたちが普通の人間とは異なる証。

 彼女たちの正体。それは、今の銀河では滅び去ったと言われる、超文明を持った有翼種族“エギレス”の末裔なのだ。

 そして、“ロストフレーム”の超技術機能を再現できる者でもある。

 ティセアは、自分の“ロストフレーム”である“ライトセラフ”に描かれた銀翼の紋章に触れた。すると彼女の姿は“ロストフレーム”のコクピットに転送される。“ロストフレーム”は、“エギレス”としての能力を開放した彼女らが触れることによって、機乗するための封印(プロテクト)などが解かれる。

 コクピットの中は広く余裕があった。ティセアが目の前にあるタッチパネルに触れると、計器類に光が灯り、機体は起動を開始する。

「レスティちゃん、そっちの準備はいい?」

 ティセアがレスティの“ロストフレーム”、“ナイトフライヤー”に確認をいれる。

「大丈夫。いつでも発進できるわよ」

「それじゃあ、シャロルちゃん。ハッチを開けて」

「了解しましたわ」

 シャロルの声に合わせて、格納庫のハッチが開かれて行く。そこから広がるのは無限なる宇宙空間。

 ティセアたちは機体の最終確認を手早く済ますと、操縦桿を握った。

「“ライトセラフ”出ま〜〜す♪」

「“ナイトフライヤー”出撃する」

 こうして二機の“ロストフレーム”は、宇宙空間へと飛び出した。

「さあ、どういく。ティセア?」

「“エルスレッダ号”をとり囲むようにして〈スマッシャー〉級の船が六隻でしょ。私とレスティちゃんで三隻ずつ受け持つってのはどうかな」

「それが一番無難そうね」

「じゃあ、決まり〜。レスティちゃんは左方面をお願いね。私は右方面を相手するし」

「わかったわ」

 通信を終え、それぞれの機体は自分が受け持つ敵へと近づいた。

 ティセアは“ロストフレーム”に搭載された機能のひとつ、アクティブステルスをオンにした。この機能を使えば、“ロストフレーム”は、敵船の光学レーダーにしばらくのあいだうつらない。その間に最大速度で敵船に接近する。

 コクピットのレーダーを確認すると、周辺宙域を示す立体図に目指す敵船の輝点が表示された。

 そこへシャロルからの連絡が入る。

「ティセアお姉さま。例の〈スマッシャー〉級の船より連絡がありました。命が惜しければおとなしく降伏しろだそうです。間違い無く海賊の類ですわね」

「おっけ〜。そうとわかれば、思いきり仕掛けられるよ♪」

 ティセアは再び立体図に目を向ける。敵船を示す輝点にはかなり近づきつつある。

「では、パァ〜っと花火を咲かせるよ☆」

 “ライトセラフ”の武装の有効射程範囲内に入るなり、ティセアは敵船の一隻に対しミサイルを全弾発射させた。

 敵船は、突如現れた“ライトセラフ”のミサイル群を回避するに至らず、いきなり撃沈する。

「残りニ隻☆」

 敵船の一隻が沈むのを確認しつつ、全速力で次の獲物に突っ込む。〈スマッシャー〉級の船は重武装を備えた船だが、小回りはきかず、近接戦闘においてはその攻撃力も充分に発揮できない。

 迷わず懐まで突っ込んでいけば、何ら恐れることはないのだ。ましてや、今回はティセアたちの先手必勝。海賊たちにとっては不意をうたれた形ともいえる。

 普段はのんびり屋のティセアだが、こと“ロストフレーム”を扱った戦闘においては神業的な反射神経と大胆な判断力を備える。そういう部分こそ、彼女が“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”の隊長たりうる一つの理由なのだ。

 “ライトセラフ”は、あっという間に二隻目の背後まで回りこんだ。そして、敵に反撃の暇も与えず、〈スマッシャー〉級のエンジン部分に収束したレーザーを撃ちこむ。

 これでティセアが受け持つ敵は残り一隻。勢いに任せて再び突っ込んでゆく。

 だが、さすがに最後の敵は応戦の構えをみせてきた。〈スマッシャー〉級の船に搭載された、小型戦闘艇が現れたからだ。

「残念だけど、いまさらもう遅いんだよね」

 レーダーにうつる戦闘艇は二十機近い。しかし“ライトセラフ”は、もう敵の懐にもぐりつつある。

 敵の小型戦闘艇からの攻撃が始まった。ティセアは真っ直ぐ突っ切りながらも、敵の攻撃をことごとく回避してゆく。戦闘艇への反撃は試みず、一気に〈スマッシャー〉級へ迫るつもりだ。

 振りきられた敵の戦闘艇は、慌てて追いすがってくるが、その時には“ライトセラフ”も〈スマッシャー〉級の懐へ完全にもぐりこんでいた。背後からの攻撃も敵船の陰を利用して、うまくやりすごす。そもそも普通の小型戦闘艇と“ロストフレーム”とでは、運動性能においても差がありすぎる。

 そして、その運動性能についてゆけるのも、有翼種族たる彼女らの特別な感覚がものを言う。

「はい。これでおしまいだよっ♪」

 ティセアは〈スマッシャー〉級の弱点に向けて、再びレーザーを撃ちこんだ。これで全艦撃破となる。

「レスティちゃん、こっちの方はあらかた終わったよ。そっちはどう?」

「こっちも大体は片付いたわ」

「あは。お見事」

 ティセアは満足そうに笑うと、今度はシャロルから連絡が入った。

「お姉さま方、ご苦労さまです。一応、生き残りの海賊たちが降伏すると言ってきていますが、どうしましょうか?」

「行き場を失って困っているのだったら回収してあげよ」

「放っておいて、あとで厄介事を持ちこまれるよりマシね。空きのペイロードでも開放して、そこにでも押しこんどけばいいわ」

 レスティも同意し、その後は降伏した海賊の収容作業が始まった。

 その時にわかったことだが、この海賊たちは後々にジム・バーグルと合流する、迎えの部隊だったという。彼らはジャンプ・アウトするジム・バーグルの船を迎えに行く途中で、ティセアたちの“エルスレッダ号”に遭遇。行きがけの駄賃として襲おうとしたのが運のツキだった。

 これはまったくの偶然であるが、ティセアたちにとっては予想外のラッキーといえた。あとあとジム・バーグルやこの海賊たちを同時に相手していたとなると、事態は面倒になっていただろうから・・・・・・。

 あと、この海賊たちからは、ジム・バーグルの船がジャンプ・アウトしてくる正確な地点も聞き出せた。

 ここまでの情報が揃えば、その地点まで移動し、そこでジム・バーグルたちが現れるのを待ち伏せればいい。

 そして、やはり一番の問題は、人質をどう救出するかに絞られた。

 

 

 3 逆転は出たとこ勝負?

 

 “エルスレッダ号”が、ジム・バーグルの船のジャンプ・アウト地点に移動し、早くも1日が過ぎ去った。

 宇宙空間で待機している以上、昼夜の感覚というものはないが、今日という日にはジム・バーグルもやってくる筈だ。

 しかし、問題なことに、まだ人質救出に際する良案は出ていなかった。

 現在、ティセアは自室で休みつつ、お気に入りのケーキを頬張っていた。色々と考えても良案が出ない以上、ケーキでも食べて気分転換をするしかない。

 あと、セバスチャンに頼んだ、人質の経歴調査に関しても、これといって思うような結果はでていない。

 期待をかけすぎるのもどうかと思うが、すべてがすべて、スムーズにはいかないという良い見本なのかもしれない。

 シャロルがティセアの部屋を訪ねてきたのは、そんな時だった。

「ティセアお姉さま。少しよろしいですか?」

 やってきたシャロルは、手に何やらか資料を抱えていた。ティセアは笑顔で頷き、彼女を部屋に入れた。

「とりあえず、何か飲む?」

「では、コーヒーでも」

「なら丁度良かったかも。今、リューデスハイマーを飲んでたところだし」

「リューデスハイマー・・・・・・ですか?」

 多分、コーヒーの名前か何かだろうが、聞きなれないものだった。

「チョコレートと生クリーム入りのコーヒーだよ。こっちのケーキ、アプフェルシュトゥルーデルも一緒に食べると美味しいよ」

「ティセアお姉さまって、相変わらずこういうことに関しては詳しいのですね」

 シャロルは嫌味でもなく、心底感心したように言った。

「私にとっての幸せだからね。自然と覚えちゃうものなんだよ。さ、よければ召し上がれ」

「では、少し頂きます。・・・・・・あ、このケーキ、美味しい」

 口に入れた途端、生地がふんわりと溶け、甘酸っぱい香りが広がった。

「変わった味がするでしょ。それって紙のように薄い生地に、薄切りのリンゴやレーズンを巻きこむように焼いてあるの。香りつけにはシナモンとラム酒を少々加えて、温かくても冷たくても美味しいんだよ」

 ティセアは嬉しそうに説明した。自分で食べるのも好きだが、人に勧めるのも大好きなのだ。

「それはそうと急に部屋に来たりして、どうかしたの?」

「あっ、実は例の人質のことなのですが、わたくしなりに調べてみて、少し気になることが出てきたんです」

「何か新事実でも出てきたとか」

「ええ。そんな感じです。結論だけ先に申し上げれば、人質には接点があるかもしれないのです」

「えっ? ホント」

 ティセアは身を乗り出した驚いた。

「はい。・・・・・・とりあえずこれを見て頂けますか」

 シャロルがそう言って見せたものは、二人の男の経歴表だった。

「これがどうか・・・・・・あれ??」

 ティセアは首を傾げた。二つの経歴表、そこに書かれたものはそれぞれ違うはずなのに、写っている男の顔はうりふたつだった。

 名前も生年月日も過去の経歴すらも違うのに、顔の写真だけそっくり。強いて言えば、多少は年齢に違いがあるかもしれないが、そのようなものは、ほんの些細な違いでしかない。

「これは片一方が帝国のものですが、もう一方はラゾリア王国から取り寄せたものなんです」

「へえ」

 ラゾリア王国は、帝国や連邦からも離れた宙域に存在する、歴史の深い国家だ。芸術や文化でも価値のあるものを多く生み出し、ラゾリアの王立学院に至ってはこの銀河でも最高峰と謳われるほどの教育機関である。

「ティセアお姉さま。とりあえず、ラゾリア王国から取り寄せた資料の方を詳しく見てもらいたいのですが、その男性には犯罪者としての前科があるんです」

「あ、ほんとだ。・・・・・・麻薬の所持、および売買ね」

「その男性はその罪状で一度刑務所に服役したんです。ですが出所後、その消息はラゾリアから不明になったようでして」

 ティセアはシャロルの言葉の意味を少し考え、答えを出した。

「・・・・・・もしかして、ラゾリアを脱して、帝国に亡命したとでも言うの?」

 ラゾリアは厳格な国だけに、一度犯罪を犯したものが社会復帰をするには困難と聞いた事が有る。

「はい。わたくしはそうじゃないかと思うんです。帝国に来てからは、過去の記録を抹消した上で、何らかの形で別の人間になりすましていたのではないでしょうか。こっちの帝国経歴の男性に」

 そう言ってシャロルは、帝国側の経歴表を指さす。

「う〜〜ん。確かに興味深い意見ではあるけど、他人の空似ってことはないかなあ」

「この人の例だけなら、わたしくもそう考えたでしょう。でも、他の人質にも同じようなケースが7名ほどあったんですの」

 シャロルは残りの資料も全部、机に広げた。それらは全て、名前や経歴こそ違うのに、どこか顔だちの似たようなものの集まりだった。しかも、全て何らかの犯罪に手を染め、後は行方不明のものばかり。

 さすがにティセアも言葉に詰まった。先程の男性も含め、全部で8名のケースとなると、ただの偶然では片付かない。

「残りの人質12名に関しても、きっと何らかの繋がりがどこかであるんだと思います。中にはプロコフ社が今の会社になる前の母体であった、旧企業に従事していた人間も混じっているみたいですし・・・・・・」

 プロコフ社は、今でこそ多数の企業が集まってできた複合企業(コングロマリット)だが、昔はそれぞれの業種で独立していた企業たちだ。星間貿易で名を馳せているプロコフ社であるが、船の製造、電子開発、土地開発とその事業は多岐にわたる。

「それじゃあ、宇宙船の手配に関してもそういうルートを辿っていけば、決して無理じゃないわけだ」

 今回、ジム・バーグルが逃亡につかったのは、廃船処理をうけたとはいえプロコフ社製の輸送貨物だ。プロコフ社と多少なりとも縁をもつものがいれば、特別なルートで手に入る可能性もある。

 シャロルは大きく頷いた。

「全ては想像の域を出ませんが、ティセアお姉さまの懸念は当たっているのかもしれません。人質なんて本当は存在しないという」

「となると、今回人質として行方不明になっている人間は全員、ジム・バーグルとグルってことよね」

「予想があたっていればそうなります。この一件も、ひとつひとつ細かく調べていけば、いずれは人質たちの繋がりも明らかになるかもしれません。ですが、そうなる前にジム・バーグルたちは全員での逃亡を決めこんだのでしょう」

「ジム・バーグルにしても特A級の犯罪者だしね。それなりの組織が後ろ盾、ないしは手を貸している可能性もありそうだね」

「ええ。そういう組織と合流をもてば、しばらくは身を潜めることも可能でしょうし」

 銀河における犯罪組織はあまりにも巨大すぎ、その繋がりも至る所で結ばれている。正直、それらの全てを撲滅することは、物理的に無理と言っても過言ではない。

 その時だ。ティセアの部屋にブリッジからの緊急の呼び出しが入った。

「もしかして、もう来ちゃったとか?」

「可能性はありますわ。行きましょう、お姉さま」

 二人はブリッジへと走った。ブリッジへはレスティが先に来ている。

「二人とも来たわね。どうやら向こうの船、そろそろ出て来るかもしれないわよ」

『重力震確認。あと約2分ほどで、予定ポイントにジャンプ・アウトしてくる船があります』

 セバスチャンが状況を説明する。

「あと2分だなんて早すぎない。こっちはまだ心の準備できてないんだから〜」

 ティセアが唇を噛んだ。その間にもシャロルは、先程のティセアとの話をレスティに伝える。

 そうこうするうちに早くも2分。外部視界モニターが虹色に染まった。船がジャンプ・アウトしてくる時に見られる発光現象だ。

 そして、そこから現れた船は、間違い無くプロコフ社製の輸送貨物だった。

「ジム・バーグルの船に間違いないようです。どうしましょう、お姉さま」

 さすがのシャロルも動揺は隠しきれない様子だ。

「でも、ここで取り逃したら後が厄介だわ」

「レスティちゃんの言うとおりだね。ここはハッタリでも何でもいいから、交渉しかけるわよ。とりあえず向こうの船に連絡を繋いで降伏勧告しましょう。応じない場合は攻撃するって言って」

「わかりましたわ」

 ティセアの決断からしばらくしてからのこと。ジム・バーグルの船より映像つきで返答があった。

 そして、スクリーンには、いかにも人相の悪い大男が映し出される。

「あなたがジム・バーグル?」

 ティセアは臆することなく、いつもののんびりとした口調で訊ねた。

「いかにもそうだが、お嬢ちゃんたちは何者だ。いきなり物騒な連絡をいれてきやがってよ」

「ふふ。私たちの正体を知れば、おじさんもビックリしちゃうよ。何を隠そう、私たちこそ“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”なんだから」

 胸を張って答えるティセアに対し、ジム・バーグルは一瞬呆気にとられる。だが、次の瞬間にはお腹を抱えて笑い出された。

「こ、こら〜っ、笑うな!」

 レスティが怒鳴るが、ジム・バーグルの笑いはなかなか止まらなかった。

「す、すまねぇな。まさかお嬢ちゃんたちみたいな連中が“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”だとは、ある意味でビックリだぜ」

「納得してもらえたら結構。とにかく、そういうわけだから降伏しちゃいなさい。おじさんたちを迎えにくる筈だった連中も、私たちがやっつけちゃいましたから」

「けっ、バカも休み休みにいいな、お嬢ちゃんよ。オレを迎えにくる連中はそれなりの船を率いてんだ。あんたらが本物の“銀の翼小隊(シルヴァウィング)”だとしても、早々負けやしねぇよ」

「信じていただけないのならば、その時の戦闘記録を送りますが」

 シャロルが淡々とした口調で告げ、昨日の戦闘記録の映像と、現在“エルスレッダ号”に収容している海賊のリストアップ・データを送りつけた。

 ジム・バーグルはそれを見て、さすがに言葉を失う。しかし、すぐに不敵な笑みを浮かべた。

「こいつは驚いた。確かに嘘じゃねぇみたいだな。だが、だからどうしたっていうんだ。お嬢ちゃんたちも知ってるだろ? オレの船には20名の人質がいるんだぜ。オレに手をだしたら、人質たちもタダじゃあ済まないぜ」

 下卑た笑いを浮かべ、やはり切り札となる台詞をはいてくる。直情派のレスティは拳を握り何かを言い返そうとするが、ティセアはそれを制して、先に口を開いた。

「やりたければ勝手にどうぞ」

「何ぃっ?」

 ジム・バーグルは露骨に眉をひそめた。

「おじさんの所に人質なんてものは存在しないんだし、そんなものは切り札にもならないわよ」

 ティセアは、ハッタリを述べた。そして、そのまま勢いに任せ言葉を続ける。

「私たちはちゃ〜んと調べているんだから。おじさんの船にいる人質は、皆おじさんとグルなんだってことくらい」

 シャロルの持っていた資料も見せつけ、バンバンとそれを叩く。こういうハッタリは威勢のよさと度胸とがものを言う。そして、とどめには自分の心意気がどれほどのものか有無を言わさず見せつけること。

 だから、ティセアは迷いなく言った。

「おじさん、降伏の意思もないみたいだし、この場で裁きを与えちゃいます」

 言葉が終わると同時に“エルスレッダ号”の武装システムを開放し、いきなり攻撃を仕掛ける。

 これにはジム・バーグルどころか、レスティやシャロルも顔が蒼ざめた。

「・・・・・・もう、あんた何やってんのよ。向こうに乗ってるのが本物の人質だったらどうするのよ?」

 さすがにレスティが小声で怒鳴る。それに対し、ティセアは目をキョトンとさせて悪びれもせずに言った。

「何って攻撃だよ〜。どうせ向こうにいる人質なんて偽者に決まってるんだから気にすることないわ」

「可能性があるだけで、完全にそう決まった訳じゃないでしょ!」

「大丈夫。私の女の勘を信じてよっ♪」

 ティセアは可愛らしく、ウィンクしてみせた。

 もはやこれは、出たとこ勝負。一種の賭けみたいなものであった。

 こういう状況であれこれ考えるのはティセアの流儀ではない。一度、行動を仕掛けたらとことんまで突っ切る。それが、ティセアのやりかたなのだ。

 その頃にはジム・バーグルの船も混乱の只中であった。そして、しばらくして・・・・・・。

「・・・・・・あのお、お姉さま方。向こうの船から降伏を受け入れるという連絡がきていますが」

 シャロルがポツリとつぶやいた。

「あれ、もう降伏しちゃうんだ? 特A級犯罪者っていっても、大した度胸はなかったみたいだね」

「そういう問題でもないでしょうに」

 レスティが、がっくりとうなだれながらぼやいた。

「でも、降伏を受け入れると言ってる人、ジム・バーグルではないのですけど・・・・・・」

 シャロルは、先程までジム・バーグルが映っていたスクリーンを指さした。だが、今そのスクリーンに映っているのは、ジム・バーグルではなく貧相な身なりの男であった。

「頼む。降伏するから命ばかりは助けてくれ〜〜」

 男は両手をあわせ、しきりに降伏すると訴える。

「おじさん、だあれ?」

「あんたらの言葉でいえば、人質になっていた男だ。だが、あんたらの言うようにワシらは本物の人質じゃない。あんたらの調べた通りだ」

「じゃあ、人質20名ってのは、やっぱりジム・バーグルとグルだったってこと?」

 レスティの問いに男はぶんぶんと首を振って頷く。

「ああ、そうだ。だが、もうジム・バーグルに従うのは止めだ。ほれ、こっちを見てくれ」

 男が言うと、今度はジム・バーグルが映し出される。ただしその姿は、何人もの男に押さえつけられ、身動きがとれないでいる状態だった。

 つまるところ、ジム・バーグルは仲間たちに裏切られたのである。

「このとおりじゃ。ワシらも罪を悔いておる。どうか寛大なる処置を」

 都合がいいといえばそれまでだが、ティセアは満足げに微笑んだ。

「ある程度は口添えしてあげるよ。私の攻撃が、あなたたちの心に眠っていた正義に灯をともしたんだろうしね☆」

 それは絶対に違うと思ったレスティだが、もはや呆れて言葉も出なかった。ついでを言えば、ここで何かを突っ込んでも、また言い合いになるだけだろうし、それでは格好もつかない。

 シャロルもただ笑いながら、ティセアたちの様子を見ていた。

 何にせよ、これでひとつの収まりはついたのである。

 

 

エピローグ

 

「あは〜。任務達成後のケーキは格別に美味しいな〜♪」

 惑星エウスプールに戻ったティセアたちは、ジム・バーグルたちを汎惑星警察機構の手に委ねた後、久しぶりの休暇を満喫していた。

 今は三人とも、ティセアお気に入りのカフェで一休みをしている。

「ケーキなんていつ食べても変わらないじゃない」

 コーヒーに口を運びらがら、レスティが突っ込んだ。そんな彼女も今日はどこか幸せそうな顔である。

「レスティちゃん。そんな考えじゃ人生つまらないよ。任務を達成して、何の憂いもなく食べるケーキはとっても幸せだと思わない?」

「よくはわからないけど、安上がりな幸せだとは思うわね」

「レスティちゃんとは違うからね。でも、今日もいっぱい、ぬいぐるみ買ってたよね? それだけ買ったらお金も大変でしょ」

 ティセアがレスティの足元を見ると、そこには沢山の大きな袋が並んでいた。どうやら中身は全て、ぬいぐるみらしい。

「お金がかかっても欲しいものは欲しいの。それがあたしの楽しみなんだから」

「でも、それだけあったらいらないものも出てくるんじゃない?」

「いらないものなんてひとつもないわよ。皆、あたしの可愛いお友達なんだから。それと“ペペ”ちゃんを欲しいって言っても、絶対あげないからね」

 先手をとってレスティは釘をさした。

「隊長命令でも?」

「だから、どうしてこういう話で隊長命令が出てくるのよっ」

「・・・・・・だって、“ペペ”ちゃん欲しいもの」

 全く答えになっていない。

「あなたが尊敬できる隊長ならまだしも、全然そうでもないのに威張らないでよね」

「わ〜、レスティちゃん。ひどいよ。私、ちゃんと頑張ってるのに〜。今回の任務だって、私の勇気ある決断が悪の心を改心させて、正義に目覚めさせたのよ。充分、尊敬できるじゃない」

「普通、そんなものは自分で言わないの。それにあれは、あなたの暴走に対して連中が恐れをなしただけじゃない。勝手に美談にしないで」

 段々と声が大きくなるレスティに対し、周りの客の目も集中する。

 そんな時、いつものようにシャロルが割って入った。

「まあまあ、お姉さま方。もうよろしいではありませんか。こんな所で騒いでいては、他のお客さまも驚いてしまいますわ」

 こうおっとりと言われれば、良識のあるレスティとしては黙らざるを得ない。

「あは。そうだね、ケーキは美味しく食べるもので、言い争って食べるものじゃないものね」

 ティセアはどこかズレていたが、これといった問題はないのであえて指摘しない。

「それはそうとお姉さま方。これからはどうするのですか?」

「私としては、一度、フィーくんに会いに戻ろうかと思うけど」

「わ〜。それは大賛成です!!」

 急に目を輝かせ、シャロルも深く同意する。

「あたしも構わないわよ。フィゼルト殿下には任務達成の報告も直にしたいし」

 レスティも頷いた。

「なら、決っまり〜♪ 私もフィーくんにデートを誘われてるし、早く戻ろう」

 ティセアがそう言った瞬間、シャロルが持っていたフォークをケーキごと床に落とした。

「あ、勿体無い」

 ポツリといったティセアの台詞など、もはやシャロルの耳には入らなかった。

 シャロルはロボットのようなぎこちない動きで、ティセアに向き直る。

「ティ、ティセアお姉さま。い、今、デートとか言いませんでした?」

 地獄の底から響いてくるような声だった。レスティは本能的な恐怖を感じて、少し退く。

 ティセアに至っては、何も感じなかったのか、ただキョトンとするだけ。

「うん。言ったけどどうかしたの」

「・・・・・・お姉さま、以前、デートじゃないとか言ってましたよね?」

「あは。そういえばそんなことも言ったね。でも、あとあと考えてみて思ったの。やっぱりあれはデートの誘いだったのかな〜なんて」

 無邪気に笑うティセア。当人には何の悪気もないのだろうが、シャロルの頭の中で何かがキレた。

「うわ〜〜〜んっ!!!!! ティセアお姉さまの嘘つき〜〜〜〜〜っ!! もうお姉さまのことなんて信用しません。大っ嫌いですわっ」

 シャロルはいきなり癇癪を起こしたように泣き出し、テーブルの上をメチャメチャにした。

 さすがにこれには店内も騒然となる。

 そして、レスティも悲鳴をあげた。

「きゃ〜〜〜〜〜〜。あたしのぬいぐるみぃ〜〜〜」

 テーブルからこぼれたコーヒーが、レスティの荷物に直撃する。

「・・・・・・わ、私のケーキも床でグチャグチャだよぉ〜」

 ティセアも床にへたりこんで、無惨に潰れたケーキを前に涙した。

 “銀の翼小隊(シルヴァウィング)”。例えその名はおそれられようとも、それらを構成する彼女らは、まだうら若い乙女たちなのである・・・・・・・。

 

 

〈了〉

 

あとがき

 「Taiyaki Tea Time」初のSF作品です。

 とはいえ、SFといってもサイエンスフィクションというよりは、スペースファンタジーという感じで捉えていただけると嬉しいです。SFっぽい設定を使ったファンタジーってことで。

 とりあえずこの話、深いテーマはあまりもたさずに、ノリ的なものをメインに書いてみました。もう半分以上は趣味です。

 ただ、色々と詰めこもうとした結果、短編という割には長くなっちゃったような気もします。

 それに、正直、まだまだ書き足りないんですよね。主人公の三人娘に関しても、性格面だけでいえば、こんなものでは済みませんから。彼女等の性格や活躍をいかそうと思うと、もっと大きな舞台を与えてあげないといけません。

 そんな訳で、このお話も次は長編シリーズでスタートさせたいと思います。

 銀河は広いのですから、もっと大きな事件と冒険があるはずです。

 というわけですので、今回のお話はキャラクターたちの顔見世がメインだったということで(笑)

 この短編を読んで、ティセアたちが好きになったという方、応援してくれると嬉しいです。

 私もまだまだ頑張っていきます。

 

 

SHORT STORYに戻る

ホームに戻る