なんかめちゃくちゃ泣きそう・・・。

時計の針は既に日にちを変えている。

まだ・・仕事終わってないのかな。

終わったらかけるからって言ってたのにな。

せっかく・・せっかく普段やらない料理だって・・がんばったのにな。

「あー・・・あ。」

ため息をついてドア越しに見える並んだ皿に目をやる。

さっきまでずっとイスに座ってまっていたのだけど、なんだかじっとしているのがいやでさっきからそわそわしている。

結局落ち着いたのはベッドの上。

自分の携帯電話とこの家にある子機を目の前に並べてみる。

当の自分はベッドの上に座り、後ろの壁にもたれかけてじっと2つの電話を眺めている。

メール音が何度かなった。

すべては友人からだった。

中には迷惑メールも交じっていた。

こんだけ寂しくてイライラしてる時にこんなメール。

こっちはその音にびびってんだよっ。と思わず叫びたくなったけど。

しっかりと冷静に対応して削除を押した。

差出人が今目の前に現れたらぶっとばしたい気分。

「寂しいよー。」

昨日は遅くまで准一と電話をしていた。

久しぶりの彼の声は・・元気そうな反面、辛そうで、寂しそうで、疲れていた。

・・明日って空いてへんの?俺寂しいわー。」

冗談半分の会話でふっと彼が言った言葉だった。

「空いてるよー。そっち行こうか?寂しい准くんに慰めの言葉をあげるよー。」

なんて笑って返した。

彼はうれしそうに答えた。

「楽しみやわ。」

と。

あれだけいっぱい話して、それはまだ24時間前の出来事なのに。

48時間くらい話せなかった日だってあったのに。

もっともっと話せない時間もあったのにな。

楽しい時間の後はいつも辛さが残ってた。

寂しい。

そんな気持ちが自分の中を支配した。

なんで出会っちゃったんだろうな。

あ・・ダメだダメだ。

こう言う時って悲観的なことしか浮かばないから。

あーヤダヤダ。

でも・・時々ふと思うんだよね。

なんでこの人に出会っちゃったんだろうって。

出会わなければもっと・・楽な生活だったのにな。

「俺・・のこと、ホンマに好きやから。」

この言葉を聞いて泣いた日。

恋愛って・・楽じゃないね。

けどさ。

辛いけど、辛いから楽しいことが倍になると思う。

そんな簡単なことを忘れていた。

そんな簡単なことを彼が教えてくれた。

出会えたことにありがとうって。

出会わせてくれた神様にありがとうって。

ちゃんと伝えなきゃいけないね。

そう思って目を閉じた。

 

 

「ただいま。」

電話しても誰もでない。

もう帰ってしもたんかな?

やっぱり昨日のアレは冗談でしかなかったんかな?

電気で明るいだけの静まりかえった部屋は、俺の心を一層駆り立てる。

目の前のテーブルには2人分の食事にラップがかかってた。

アイツの晩飯はどうしたんやろうか?

心臓の鼓動がはよなるんがわかる。

ふと少しだけ開いたドアに気づき手をかけた。

ベッドの上には愛しいアイツが眠ってる。

昨夜は遅まで話しとったもんな。

疲れるよな。

ドアを開けっぱなしにして近くにカバンをそっと置く。

彼女の食事をすかすかな冷凍庫にしまう。

そしてゆっくり、彼女を起こさないように2つの電話を手に取る。

子機は床の上。

携帯のディスプレイの着信2件は俺なんやろうなと思いながら電源を切って子機の隣に並べた。

ポケットの中の俺の携帯も電源を切って彼女の携帯の隣に置いておく。

俺はベッドの空いたスペースに体を収める。

何日ぶりに見たキミは、ちょっと寂しそうな寝顔。

泣いた後が残ってる。

きっと・・いや、俺のせいやろうな。

ごめんな。

なぁ・・俺・・に言いたいことがあんねん。

「一緒に・・暮らそっか。」

小さい声で言ってみたけど、反応はない。

ええねん。

それはな、あくまで俺の希望やから。

そう思って無防備なキミのおでこにキスをする。

「おやすみ。」

眠ってしまったキミに伝えた。

明日はどっちが先に目覚ますんやろか?

キミが先やったらええな。

そんで、びっくりした声あげて俺が起きるん。

そういう一瞬が今の俺にとって幸せの瞬間やねんやろうな。

そんなことを考えながら俺は目を閉じた。