「ねぇねぇ。」 キッチンのイスを反対向けて座る俺は、ソファにもたれてるに声をかけた。 「・・・。」 「聞いてる?」 「・・・聞いてるよ。何?」 最近はまったという本を読んでるを振り向かせるのは至難の技。 「ウサギって寂しいと死んじゃうって知ってる?」 「・・・あれってホントなのかなぁ?」 あ、ちょっと食いついた? 「・・・さぁ。」 「なんだ、知らないのか。」 ・・俺ってバカ? しばらく後姿をじっと見てたんだけど、なんかつまんねー。 かたん。 イスの動く音がでかいでかい。 ・・ったくよー。 「ねぇ。」 「・・・。」 「ねぇーっ。」 「なに?」 一回で反応しろよな。 「なんか飲みたいもんある?」 「・・・今はいいや。」 「そ。」 そっけねーなー。 俺はコポコポをコップに紅茶をそそぐ。 そして、8分目くらいになったら、の後ろ姿をもう1度眺める。 ちぇっ。 世の中に本なんてなかったらいいのに。 ・・本に嫉妬してどうするおれ。 コクコク・・・。 なんか・・・まず・・・っ・・・。 「ねー。」 「なーにー?」 あ、慣れてきたのかな?やっと1回で反応してくれたよ。 「紅茶入れてよ。」 「今自分で入れてたじゃない。」 ・・見てたの? んだよ、そっけねーっ。 あーっ。 むかつくっ。 たいくつっ。 人がせっかく休みだってのに。 ただでさえ会えないのにぃーっ。 一緒にいる時くらいさー・・もっとなんかねーのかちくしょーっ。 ウサギは寂しいと死んじゃうんだよっ。 俺はもうくたばる寸前だっつーの。 けっ。 俺は頭ん中で考えるのがウザくなって隣の部屋に移動。 そして、最近買ったお気に入りのじゅんたんに思いっきりダイブした。 ぼすっ。 ・・・いってぇ・・鼻打った。 くすくす。 「・・なに笑ってんだよ?」 お前はいつ俺を見てんだ? 俺が見た時は見てないくせに。 一方通行の恋ほど辛いもんはない。 くすくす。 それでも笑い続けるに腹が立つ。 俺はこんだけ苦しんでんのに。 ぱたん。 不て寝のように彼女に背を向けて眠っていると本を閉じる音が聞こえた。 だけど俺は振り向かない。 振り向いてたまるかってんだ。 お前なんか嫌いだっ。 「とうっ。」 「ぐえっ。」 言葉と共には俺にダイブしてきた。 当然、俺としては予期せぬ出来事だったわけで・・苦し・・・。 「・・大丈夫?」 心配するくらいなら最初からするなーっ。 「剛ちゃんってクールなフリして意外に焼もち焼き?」 ちゃんって付けるなぁ、ちゃんって。 「んなことねーよ。」 「うそつけー、好きなくせに。」 なんて寝っころがってた俺を抱き枕にするように抱き着いてくる。 なんでお前はそんなに自身過剰なんだよ。 なんでそんなに愛されてるって自信があるんだよーっ。 浮気でもしてやろうか。 ・・相手いねーけど。 「剛ちゃーん。」 だからちゃんづけすんなって。 「なに。」 「・・剛ちゃんっ。」 だーかーらーっ。 「んだよっ。」 「ごーぉー。」 「・・・。」 「好き。」 「・・・ああ?」 「好き好きっ。」 「・・なんか・・気持ち悪。」 「・・なによそれ。」 「イキナリなんだよ。」 「だってイキナリ言いたくなったんだもん。」 「気持ちわりーよ。なんかもっとないの?かっこいい言い方とか。」 あれ・・なんか言ってること違う。 「どういうこと?」 そうじゃなくて・・えっと・・・。 「あのさー、なんでこんな後ろから抱きつかれた状態で言われなきゃならんわけ?」 そうだこれだ。 シュチュエーションってやつだ。 「・・いいじゃん。うれしいでしょ?」 ・・なんかムカツク。 「だってさー、剛くんの眼見て言えないもん。」 「・・・なんでだよ。」 普通こうもっと向き合ってさー、愛を囁き合うのが恋人同士ってやつじゃねーの? ・・うわさむっ。 囁き・・柄じゃねー・・・。 「好きすぎて緊張しちゃうから。」 なんだそりゃ? ・・・わけわかんねー。 「一方通行だと思ったら大間違いなんだぞ。剛くんに負けないくらい好きなんだから。」 なんでバレてんだよ。 俺の気持ち。 「・・ああそうかよ。」 「強がっちゃって。」 「強がってねーよ。そっちこそ強がっちゃってさ。俺がお前を好きじゃなかったらどうすんだよ。」 「そんななことないよ。愛されてるって自信あるから。だって剛くん素直だもん。」 誉めるかけなすかどっちかにしろよ。 「それはどうも。」 「ウサギさんは寂しいと死んじゃうんでしょ?」 「・・たぶんな。」 「殺さないでね。」 「お前はウサギかよ。」 「剛くんもウサギ。寂しくさせない。側にいる。だから、側にいて。」 ・・・今日の・・なんか変だぞ? 「・・・当たり前・・だろ。」 そんなこと・・言わなくてもわかってるんじゃないの? 「そっか。」 表情は見えないけど、きっと俺の一番好きな顔してる。 キミがいれば、俺は寂しくない。 寂しいウサギにはならないよ。 だからさ。 |