最後の言い訳。

例えば彼が普通の職種の人だとして。

つまりは芸能人・・・いや、V6じゃなかったとして。

だったら私はアナタのことを好きにならないと。

自分に言い聞かせてテーブルの上にペンを置いた。

隣の部屋に寝転がる彼をもう1度眺めてみた。

向こうを向いているから表情はわからない。

さっきまで隣にいたのに、今じゃこんなに遠い。

距離じゃない。

気持ちが遠い。

こういうのには鈍感で敏感なあの人は、きっと気づいているはずだ。

きっと眠っていない。

寝たふりしてるだけかもしれない。

でもそれは、あくまで私の希望。

本当は、何してるの?って今すぐ聞いてほしい。

どこにいくの?って、今すぐ引きとめてほしい。

でもそれじゃ決心が鈍ってしまうから、今日は来ないでほしい。

今日も・・・これからも・・・ずっと。

いっそのこと、忘れてほしい。

私は忘れない。

都合のいいように。

アナタだけ・・・忘れてほしい。

 

 

アナタといていろんなことがあったね。

いつも楽しかった。

アナタが私の理想の人だった。

容姿じゃない。

確かにアナタは誰もが認める男前なんだけど、容姿なんかじゃなくて。

性格が似ていた。

勘違いでも近いと思った。

確証なんて、どこにもないのに。

そんな気がしていた。

最初に言った言葉を、アナタはきっと忘れている。

「キミに合わせて話している」

と。

「キミがあんまりにも楽しそうに話すから、俺も楽しい」

って。

まだそれは、出会って間もないころ。

なんでもなかった言葉が、今では痛いくらいに突き刺さる。

ただ、それでもよかった。

アナタは私と一緒にいて居心地がいいと言ってくれた。

それだけでよかった。

それだけでよかったのに。

そんな一緒にいる時間もなくなっていった。

 

 

アナタは仕事がスキな人。

気づいていたのに、気づかないフリをしていたの。

全身全霊で楽しんでいるアナタの姿を見ていた。

真っ直ぐな目で見つめてみると、いやでも見えてきた。

アナタは出会った頃より変わった。

はるかに男前になって、はるかに自分の位置を確立していた。

言葉がでない。

すごいって。

それしか言えなかった。

ついていけないなんて思ってない。

ついていきたいとも思ってない。

ただ、支えになれたらいいって。

1人でいるほうが楽だと笑った彼。

でも実は寂しがりやなのに、強がりの演技は人一倍うまい。

迷惑かもしれないって思った。

だけど、その緊張感を、ほぐしてあげたかった。

もし思いっきりぶっ壊れた時に、アナタの側にいられるのが私であればいいって思っていた。

でもそれは私じゃ叶えられない。

今の自分には、何もない。

私じゃもったいなすぎるから。

だから、少しの間・・・いなくなるね。

真っ暗な時に出ていってしまったら、怖いから。

慣れないといけないけど、このくらいは許して。

だってアナタのせい。

アナタを待つ暗い部屋が、いつのまにか怖くなっていたから。

思い出したらナミダが出た。

寂しいナミダなんかじゃない。

会えた時はいつもうれしかったから。

どうしてアナタをスキになったのだろう?と、

そんなことを考えたことは1度もない。

どうしてアナタをスキになったかなんて、

簡単すぎて答えにならない。

だから泣いちゃいけない。

今までのことを否定する涙だって。

勘違いされちゃう。

気づかれてしまう。

今は・・気づかないフリをしていて。

 

 

ドアを開ける音が妙に鳴り響いた。

起こしてしまわないように。

もう1度アナタを見つめてみた。

相変わらず動くことはない。

安心して。

アナタは誰からも好かれると思うから。

根はとても優しいから。

きっと周りの人に恵まれているから、やっていけると思う。

だから、また1人になることを恐れないで。

だって、強がりは人一倍上手だから。

それが、本心だと思ってしまえばいいんだ。

心配しないで。

心配・・・してないよね。

私が寂しいよ。

ごめん。

ごめんね。

こんな弱い私で、ごめんね。

ホントはずっと一緒にいたい。

今一番怖いことはアナタを失い、アナタとの別れだと、つきさっき言ったばかりだった。

ホントにごめんね。

大事にしてくれてありがとう。

もっと私が強くて、アナタを楽しませて、和ませてあげられるような女になったら。

もう1度帰ってきてもいいかな?

それまで変わらないでいてなんて言わない。

もっと、私の好きなアナタになって。

その時、笑顔で迎えてほしいって思うだけ。

選ぶのはアナタ。

私じゃなくっていい。

私以外の誰かを見つけてくれていい。

ただ、可能性のある女性のうちの1人でいさせてください。

ドアを閉めると太陽がもうすぐ出てきそう。

貴方に顔向けする前に、少しだけ、ナミダを消させて。

もし彼が起きていたら、私の最後の言い訳を見てくれていたなら。

消せる時間は今しかないから。

今まで全部全部ありがとう。

残したメモだけが、私の気持ちを知っている。

 

 

今の貴方が、一番ダイスキです。