ボクの部屋。

隣ですやすや眠っているのはテンカのモリタゴウ。
いつも俺様でテレビの中で君臨し続けるモリタゴウ。
でもそれは、私生活とは全く別物で、私だけには幸せの笑顔をくれる。
・・・なんて、そう思ってたんだけどなー。
眉間に皺をよせて眠っている彼の頬をつついてみる。
「幸せってなんですか?森田さん。」
そんなことを告げてみる。
私生活でも常に俺様。
ほんとにマイペース。
そんなアナタの無防備なトコロ。
起きてるアナタには考えられない今の姿。
これが芸能人ってやつなんですか?
そうそうみれないよね、こんな姿。
「んー・・・っ。」
軽く伸びをした声が聞こえる。
起きちゃったかな?
いや、寝起きはいいほうじゃないから、たぶん寝てるハズ。まだ。
そういえば、この前ドラマやってた時この人の寝起きシーンあったよね。
周り破壊していくというか、斬新というか、いやいやありえねーよっていうさ。
でもその後のあの虚ろな目で「おはよ」って言葉を聞いた時に、
ビデオを標準で撮ったことに本気でガッツポーズをしたなんて、
アナタには絶対言えないこと。
「ん。」
寝言なんて珍しい彼。
なんかあったかなぁ?
今日はいつも以上に寝言というか言葉が多い。
起きてるのかなぁ?
のぞきこんでも、いつもより多く皺を寄せてるだけ。
辛い夢でも見てるのかな。
汗とかはかいてないみたいだけど。
「うー・・・うぁっ。」
「・・・剛くん?」
咄嗟に呼んでしまった。
だ・・だいじょうぶなのかな?
そういえば不安な時は抱きしめて欲しいなんて、
以前女友達が言っていたことをふと思い出した。
あくまでも女友達の意見。
こういう時ってやっぱり男性と女性の意見は違うもんなのかな?
と思ったんだけど、あんまり見せないこの表情に思わず手がでた。
まるでお母さんが夜に「大丈夫だよ」って抱きしめてくれるような感じ。
隣で眠る彼の肩から上くらいを、自分の胸に抱き寄せる。
かわいいなーって思う。
・・・かわいいなーって。

 

「お前のこと守っていきたい。」
決死の思いで言った言葉を、
「守られる女なんて嫌。」
って言い放った女が俺を抱きしめている。
もちろんその後に、「一緒にバカやっててほしい。」って、
逆に告白された時のあの照れた表情を、俺は今も忘れられずにいる。
守るとか守られるとか、そんな言葉しか思いつかなかったけど、
よくよく考えれば、儚いって言葉が人1倍似合わない女だったことに気付く。
天真爛漫で体力だけには自信がある、フットワークの軽いキミ
そのくせ、八方美人で、実はなかなか人に理解してもらえない、寂しがり屋のキミ。
ただ職業柄、最初に考える2人の未来は、守るという一言が大事な気がしてた。
現に、過去にも、俺の力不足で泣かしたことは何度もあった。
「一緒にバカやりたい。」
理想の関係だった。
楽しいことは共有したい。
こんなおもしろいものがあるってどっちかが言えば、賛同したいし、一緒にしたい。
その時が楽しければ、その時に満たされれば、
例え会えない時間が長くても、
寂しいと感じることが少しでも減る。
そして、会えない分、会った時の幸せは大きい。
そのことを、彼女も同じ思いでいてくれるなら、
もっともっといい。
きっと迷ったと思う。
いろんなことに苦しんだと思う。
それでも俺の手を取ってくれた。
今は付き合う前も後も、変わらないアナタが俺の隣にいる。
これって友達以上にみられてないって言われちゃうかもしれないけど、
ダンナになったら変わる男もいるように、
彼氏になったら変わる男だっている。
当然女にだっている。
なのに、どこもかわらないアナタ。
変わったことといえば、愛する相手が俺になったくらい。
抱きしめてもらっていた彼女の体を、しっかりと抱きしめる。
寝覚めいいなー。
つーか、朝からナニ?サービス?
目覚めたら抱きしめててくれるなんて最高じゃん?
朝弱いのお互いなのにさ。
だからこっちもサービス。
「おはよ。」
って、上目遣いで言ってやる。
以前やったドラマで死にそうになるくらい倒れたといったこのシーン。
そうゆーの好きなんだと、初めて知ったあの日。
でも逆に、そういう好きな気持ちを、俺に持ってくれたことはもっとうれしい。
言った後のあの真っ赤な顔から、「サービスですか?森田サン。」と動揺の声が聞える。
そうですよ。とは言えず、とりあえず笑ってアナタの胸にもっと抱きつく。
「ニヤニヤしてんじゃないのー。」
無意識の幸せって、訪れるとすっげぇうれしい。
知らないうちに幸せ感じてるなんて最高でしょ。
そんな気持ちを、簡単にくれるアナタ。
好きだって、思う。
大事にしたいって、思う。
今では守りたいのはキミではなくて、この2人の関係を守りたい。
ずっと一緒にいたい。
素直にいつも感じている。

 

「いつ起きたの?」
眉間に皺寄せてるかと思えば、突然笑い出すし。
一体なんなんですかね?
「さっき。」
でしょうね。
「めずらしいじゃん、お前の方が早く起きるなんて。」
言われてみれば、朝でこぴんで起こされたりとか、
2人で危うく遅刻しそうになった時も、アナタのマネージャーにまとめて起こされてセーフ、とか、
私の方が早いじゃんって浮かれてたら、
「何浮かれてんの?目笑ってる。」
って、いつのまにか起きてるアナタ。
どうやってもいつも主導権はアナタにあると思う。
「何の夢見てたの?」
「は?夢?」
笑ってた顔がちょっと怪訝な顔をする。
「うん。眉間に皺、すごいよってたよ。」
「・・・マジ?」
右手をするりとはずして、右手で眉間を触っている彼。
あんまりにも素直なリアクションに、思わずいじめたくなってしまう。
「あんまり眉間に皺よせてたら、顔つき変わるよ。」
「・・・マジ?」
朝は言葉数が少ない彼。
とはいえ、その姿は無防備で、かわいくて仕方がない。
自分だけに見せてくれてるであろうその表情。
大好きで仕方がない。
「お腹すかない?今日早起きだし、ゆっくりご飯食べよーよ。」
基本的に私は朝派、彼は夜派。
てゆーか、夜食べたら太るっての。
朝はどんだけ食べても太らないんだよ。
と、1度本気で力説した覚えもあったけど、
「太らねーからいいじゃん。」
って一言、女を敵に回す発言をしたこの男。
「いらねー。もちょっとこのまんま。」
普段こんなことしないからなー。
でも今日の予定は・・・あー・・・お昼食べれるかわかんないかも。
「だめ。譲れない。」
「おめぇさ。」
「なに?」
「メシ食うために早起きしたわけ?」
明らかに不満そうなその言葉。
でも今の私はすっかり朝食モード。
「そーですね。ほら、起きて。」
「ヤだよ。昨日寝てねぇじゃん。お互い。」
・・・この男、ありえない。
すがすがしい朝を一喝するようなコメントに、頬が熱くなるのがわかった。
「な。」
なにが、な。なんですかね。
「尚更譲れません。」
「えー。」
不満だらけですね。
「じゃさ。」
「なによ。」
腕を全部外して視線をしっかり合わせると、唇をつきだしてきた。
うわ、かわいいっというより、絶対寝ぼけてるこの人。
「めずらし。」
一言告げて唇を落とした。
「ん。寝覚めいい。」
なんて、あのドラマのような虚ろな目で言うもんだから、さすがに腰砕かれた。
うわぁうわぁうわぁ、この人ありえないよ。ありえないよ。人じゃねーよ。
かっこいいてゆうかこれ。
「さー起きるべ。」
なんて彼は淡々とベッドを降りていく。
「何?ご飯食べるんでしょ?早く来いよ。」
「あ、うん。」
生返事の私に、
「あ、今のツボだったんだろ?」
なんて、悪魔の尻尾でも生えたような、やらしい目。
1つ深呼吸。
よし。
「そんなことないですー。」
「怪し。まぁいっか。俺シリアルね。」
「食べるんだ。」
「たまにはね。」
なんて、笑顔で返してくるテンカのモリタゴウ。
私達の朝は、まだ始まったばっかり。