大人世紀

「剛くんってさー年上が好きなんでしょ?」

今日は朝から仕事で終わったのが夕方。

どうやら彼女のバイトも丁度終わったらしく部屋にご招待。

「・・・は?」

イヤ好きだけど、ぶっちゃけだから何?

「こーれ。」

と言ってまだいかにも新品のカバーのついた本を差し出す。

指定されたページを見るとオレ。

「んなもん買うなよー。」

見覚えのあるその写真はオトセンUの本。

そういや発売日売切だったとかで嘆いてたな。

「だってほしかったんだもん。やっと今日届いたのー。」

ちょっとすねたっぽいの手から本を奪ってみる。

あーそういやこんなインタビューやったなー。

ぱらぱらページめくっていくと気づいたの視線。

「これが何?」

「だーかーらー年上の方が甘えれていいんでしょ?」

・・・。

「そーだけど。」

ぶっちぎりの全肯定。

あー、オマエ年下なんだよな。

すっかり忘れてた。

何も考えず平然と答えたその言葉に、いかにも傷ついたって目で、

「もういい。」

ってそっぽむかれた。

で急に立ち上がったもんだから、

「どこ行くんだよ?」

てっきり帰るのかと思ったら、

「ココア。」

っつって台所。

「ココアこの前お前ので最後だったけど?」

「えー!」

一通り驚いたら鞄に直行。

「買いに行く?」

聞いたら、

「甘いな。」

って言って見た事ないパッケージ。

「どうせ買い足ししてないだろーなって思って買って来た。新製品らしいよ。いる?」

ココアはあんま飲まないんだけど、今日はなんか気が変わったから、

「いる。」

って答えた。

しっかりつーか、ちゃっかりしてんなぁ。

女ってわかんねー。

って視線を本に戻したんだけど、の足が動かない。

「どした?」

「んーん。」

って、切なそうな目でみるからちょっと辛い。

わかる。の思ってることはわかる。

否定してほしいんだろ?

で、オマエがオレの恋人なこと、肯定してほしいんだろ?

でもなんつっていいか。

一応どっちも事実だし、が年下なのもわかってるけどスキだし。

いろいろ考えてたらアイツも一緒みたいでしばらく見つめ合ったまま。

先に沈黙を切ったのはだった。

「年下でごめんね。」

って、ぎりぎりの笑顔。

いつも思う。

表情が豊かすぎるキミはこういう時も上手。

本人気づいてないんだろーなー。

今ありえないくらい泣きそうな寂しそうな悲しそうな。

そういう悲観的な言葉が似合いすぎてしょうがない、そんな顔してる。

「ココア入れてくる。」

なんかどうしていいかわからなくて黙ったまんま彼女を見送った。

こっち来いよっつって抱きしめてやればきっと安心するんだろーななんて思う。

けど、そんなことできない。

軽々しくやっちゃいけない。

計算してやっちゃいけない。

あの表情をもっと受け入れてやれるだけの力が、俺にはない。

不器用だよなーってしみじみ痛感する。

アイツもこのまま帰ってしまえばいいのに。

そしたら追いかけてとか・・・でも、そういう駆け引き苦手なやつだから。

絶対そういうとこウソつかないと思うってオレは信じた。

だからお前と付き合ってるし、年下だけど一緒にいて楽な存在。

正直自分でもびっくりしてる。

年下なのにいいのかなって、正直すげぇ戸惑ってる。

そこまで考えさせられるような女性。

「ココアできたー。」

なんて、ほわほわしたようなあったかい表情のキミ。

さっきまで泣きそうだったのに。

「おいしそうでしょー?」

「そうだな。」

ってコップに手をかけるとますます幸せそうな顔で飲むもんだから、思わず笑ってしまう。

「なによー。」

なんて今度はむくれがお。

ほんっとおもしれーやつ。

「そんなにニコニコしててつかれない?」

自然とこんな言葉が出た。

「別にー。だって幸せだもん、今。」

「なんだよ、さっきまで泣きそうな顔してたくせに。」

「あれはっ・・・」

オレは一瞬で彼女を墜落させたらしい。

「・・・だって・・・」

「いいじゃん、年下でも。」

「・・・へ?」

きっと思ってたことと違うこと言ったんだろうな、俺今。

「まぬけがおー。」

っつってほっぺたをつついてみる。

抵抗しないのな。

なんか、ぬいぐるみみてー。

「年上の方が楽っちゃ楽だし、ほらワガママだろ?オレ。」

んーって考えこむような顔。

「剛くんワガママかなぁ?」

いや、突っ込むとこそこじゃねーし。

そこはそうだねーってさらっと流すとこなの。

「ワガママなの。でもそれ受けとめてくれんだろ?は。」

「え?」

「だって、付き合ってるってことはそれ承知ってことだろ?だったらいいじゃん。」

「あー・・・そっか。」

なんて、簡単に納得しちゃったよ。

単純すぎだな、お前。

「それに、お前年上がタイプとか言ってたじゃん。丁度オレ年上だしー。」

うんうん、って頷く表情がちょっと涙目で、なんかびっくりした。

「そうだよね、そうだよね。えへへ。うれしいなぁ。」

「・・・何泣いてんの。涙腺ほんと弱いなー。」

その姿見てたら、なんか必死で考えて否定して考えて否定してとかで、不安だったかなぁ?

なんて思えてきて。

そしたら自然と手が伸びた。

アナタは簡単にオレを受け入れた。

オレがアナタを受け入れるのは簡単じゃないけど、今はトナリにいてほしい。

そういえば最近ぎゅって抱きしめてなかったなって気づいた。

小さなところから積み重なってたのかな。

久しぶりにぎゅってしたらココアのせいか妙にあったかい。

「ごーくんだぁ。」

なんてわけわかんねーこと言い出すから何事かと思ったけど、これって甘えてくれてんのかな?

オレ一応甘えたい願望があるって言ったんだけど?

「はいはい。」

っつって抱きしめた腕でちょっと背中叩いてやる。

・・・年下っつーか・・・ガキ・・・いや・・子供みてー。

こーれはちょっと早まったかも。

でも、腕の中で笑ってるキミを見て、これは間違いじゃなくて、夢じゃなくて。

今のオレにはキミだけ。

がいれば、幸せになれるよなーって改めて思った。