「い・の・は・ら・さんっ♪」

ふふふと笑った感じで俺に近づいてくる声。

今日はちょっと空きがとれそうだったから・・って事実なんだけど適当に理由つけて、

電話してたらなんか会いたくなって来てしまった彼女ん家。

1人暮らしってこういう時便利。

「ねーねーねー。」

はいはいかまってほしいのね。って思ってるのは俺だけ。

何その手。何もってんの。

「測らせて♪」

「・・・・・・語尾に♪ついてる。」

・・・いやすぎ。

彼女の手にあるのはただの定規・・・なんだけど。

「一回でいいからやってみたかった・・いや、測ってみたかったの。」

これ彼女が昨日の夜酔った時に「いのっちの目はかりたーい」なんて突如言い出した言葉。

はははと笑って流したらコイツ寝ちゃったし忘れてるだろとか思ってたのに。

「あ、メジャーの方がよかった?」

どんだけでかいねんっ。

「なんでそんな知りたい?」

なんて聞いてみるとイキナリ真剣な顔つきになって、

「井ノ原サンの全て・・・知りたいの。」

・・・あのさ・・普通にせまってくれるならものすごいオトコとしてうれしい言葉よそれ。

でもさ・・定規もってせまられてもあんまうれしかねーよ。

「・・・そらどうも。」

「ねーねーねー。ネタにもなると思うんだぁ。コンサのMCとかで。」

「は?」

「剛くんとかにそんな細い目で見えてんの?とか言われたら2ミリもありゃ十分見えるっ!って」

「1センチはあるよっ。」

2ミリ・・そらネタにもなるわな。

「えーっそんなあるの?」

ってまじまじと見つめてきやがる。

やめろ。ちょっとドキドキする。

おい・・おれ親父じゃねーか。

「お前知らないねーだろ二重にしたら結構でかいんだぜ?」

って、得意げに二重にしてみる。

「あ、ホントだ。ライブん時スクリーンで見たら笑えるだけだったのに、近くで見ると男前。」

観点違うよおい。

しかも笑えるだけってなんだよ、失礼なヤツだな。

「でもやっぱ細い方が井ノ原サンって感じがするのよねー。」

「あ・・そ?」

って、ふっと戻すと、

「ああいいねーその笑顔。」

親父かよお前。

「なんかなごむってーか。落ち着くってかなじめるってーか。そのままの方がいいよ。」

「あー・・ども。」

イキナリ誉められるとちょっと緊張する。

きまずいなぁ。

なんて思ってたのも、やっぱりオレだけなわけで。

「だからこそ、その目を測ってみたいっ。」

って輝かしい目でこっちを見てやがる。

つーか別にいいんだけどさー。

あんまりにも楽しそうにやってるもんだから、

「バカにしてない?」

って思わず口走った。

やべぇ、機嫌損ねるかもとか思ったんだけど、

「ぜーんぜん。してないから測らして。」

おーい。

「おんまえ・・・おれがはいどうぞと言うとでも思ってたのか?」

なんて、ちょっと意味ありげに不敵な笑みを浮かべてやった。

これでちょっとはびびるかと思ったら、

「はい。」

って、きっぱり答えやがった。

なんか負けすぎてない?ヘタレになりすぎてない?

お兄さん普通に涙目になりそうよ。

「なんかね、雑誌とか見てたらしみじみ思うわけ。特に岡田くんとかおっきいじゃない?」

なんてイキナリ真剣な顔してが話し出す。

表情豊かだよなー、ホント。

「並ぶとさー、すっごい差がわかるのね。そしたらなんか気になっちゃって気になっちゃって。」

「いじめだな。ある意味での。」

「なんでそういうかなー、実験だよ、実験。」

「今絶対どうやったらオレがイエスと答えるか必死だろ。」

「うん。」

ちょっとはためらえって。

「あーもうわかったよ。」

言葉はなくてやった!ってガッツポーズするキミ。

あとで絶対覚悟しとけよ。

ただじゃすまねーかんな。

って、オレの目の前、ほんとに目の前で楽しそうにしてる彼女を見て、思った。