「だっるー。」 目が覚めると体がボーっとしている。 頭がガンガンする。 答えは単純だった。 風邪をひいた。 今日は久々のオフだった。 計画はほとんど完璧。 普段できないことを１つでもやろうって思ってたのに。 なんで風邪ひいちゃうかなぁ？ あー・・昨日のロケ風強かったもんなー。 一緒に行った剛は元気かなぁ？ そう思って机の上の携帯に目をやる。 ・・・遠いな。 「よっ。」 そんな掛け声で重い体を起こした。 立ち上るとふらつく。 それでもなんとか携帯を奪ってまた布団にもぐりこむ。 ぴっ。 長いコール音の後目的の相手は出てきた。 「もしもし。」 つたない声で話しかけると、 「へっくしょんっ。」 という声・・が返ってきた。 「もじもじながのくん？なにー？」 明らかに同じ症状だった。 「風邪？」 「風邪。ながのくんはげんきそーだねー・・・へっくしっ。」 「俺も風邪ー。剛は元気かなーって思って。」 「元気じゃないよー。死ぬかも。バイバイ長野くん。」 「おいおい、しっかりしろよ。」 「今日さー、家誰もいないんだけど、誰か来てくんねーかなぁ。もーおれやだ。」 こういう時こそ一人で眠ってしまうのがいいのかもしれないけど、 逆にこういう時だから誰かにいてほしいと臨むのは人間だからだろうか。 「長野くん来てよ。」 「へっくしゅ・・・行けるかよ。」 「長野くんって今一人？俺今日一人だよ。」 それさっきも聞いたよ。 なに？そんなに一人が嫌なわけ？ いつもは一人でいたい人なんじゃなかったの？ 「ふーん、じゃぁお互い明日は元気に顔合わせれること願ってます。」 「お大事に。」 「お互い様。」 ぴっ。 ・・・一人ねー。 俺はともかくとしても、剛はちょっとかわいそうかな。 残り限界に近い体力を頼りにもう一人に電話してみた。 そして、それからの記憶はなかった。 風邪ひくとぜぇぜぇ言って眠れない人も多いようだが俺はもう疲れきっていた。 熟睡もいいとこだ。 「あ、目覚めた？」 辺りを見渡してみると視界にはの姿。 「・・・なにやってんの？」 「ちょっとぉ、わざわざ見舞いにきてるのにそれはないでしょ？」 「じゃ、どうしたの？」 「それもこっちの台詞。そっちこそどうしたのよ。」 あれ、こういうときなんて言うんだっけ？意識が朦朧としてきた。 「あ、そうだ、なんでいるの？」 「剛から電話あってね、「長野くん風邪引いてるみたいだから行ってやって。」やってって。」 なんだ・・考えることって一緒なわけか。 「なんか食べる？それともまた寝る？ほしいものとか・・あ、水飲む？」 気遣いはうれしいんだけど、そんないっぱい言われても・・・。 「水がほしい。」 「じゃ待っててね。」 そう言ってさっさと台所に行ってしまった。 体を起こすと、さっきは重かった体もすこしは軽かった。 そして目の前に白いタオルが落ちる。 手にとって台所のと見比べてみる。 「はい。」 「あ・・ありがと。」 なんだかなー。 頭がボーっとしてるから調子狂っちゃうよ。 「うま・・・。」 の持ってきた水を喉に通すと妙な冷たさが心地いい。 頭も冷えるといろんなことが浮かんでくる。 「ねぇ。」 「なに？」 「忙しかったんじゃなかったの？」 確か俺はオフの日一緒にどっか行かないかと誘ったはずだった。 けど、彼女は仕事と行ってつきあってはくれなかった。 「なんかがんばっちゃってさ、気がついたら昨日終わっちゃってたの。」 「そっか。」 「だから、今日は暇なわけ。どっか出かけちゃったかな？って思ったら剛から電話あってさ。」 「そうなんだ。」 「うん。合い鍵もらっててよかった。博が元気になるまで、今日はちゃんと看病するからね。」 「それは・・どうも。」 「なんか食べない？風邪ひいた時にはいっぱい食べないと。」 「お前作れんの？」 「できますー。失礼な。なに食べるの？」 「なんでもいいよ。」 「じゃぁおかゆ。」 病人にはおかゆってか。 「ラーメンは？」 「・・・博ホントに病人？」 「当たり前じゃん。」 「だったらおとなしくおかゆにしなさいって。」 「わかったわかった。」 静かなオフの日が騒がしくなったのはキミのせい。 だけど、この騒がしさがどことなく心地いい。 だから来てくれたに感謝。 ありがとね。