「ねぇ。」

「なぁに?」

「・・・あのさ。」

「うん。」

「いつまでこうなわけ?」

「えー?だめ?」

「いや・・・だめじゃないんだけど・・・さぁ・・・。」

決して誤解してほしくないのはオレ今日仕事だったのね。

誕生日なのに仕事だったのね。

おかげでいろいろ祝ってもらえたんだけど、暇じゃないわけよ。

で、コイツも暇じゃないわけよ。

一応学生だし、まぁテスト終わったから暇とか言ってるくせに、

部活とかバイトとかなんか高校の友達と遊ぶーとか、

それじゃ俺と遊ぶ暇なんかねーじゃんとか思いっきり突っ込みたいんだけど、

なんか俺もいろいろロケに借り出されたりで暇がないわけね。

お互い会えないのはいつものことなんだけど、

俺は俺とて仕事で忙しく充実してるし、

アイツはアイツとてなんしか忙しくしてるわけよ。

でだから、何が言いたかったかってのは俺も会いたかったのね。

ほらだって、めったと口に出さないけど、コイツのこと好きだし。

そういやこの前電話したけど声だけだし。

やっぱ、顔とか見たいし。

知らン間にパーマとかあててるし。

後ろから見たら別人だし。

とかそういう変化が見たいわけなのよ。

今日は誕生日で、めずらしくコイツも暇になったとか言ってさ。

つーかウソでも剛くんのためにあけたとか言ってくれたらかわいいのに。

別にいいけど。

じゃぁご飯でも作ってあげようかなんて言うからうちに来たわけで、

うち帰ったらなんか・・・いるし。

「おかえり。」とか言われてめちゃくちゃドキドキしたのに。

とまぁここまで愚痴を並べたわけだけど、今の状況はコイツが後ろから抱き付いてんの。

「なんかあったの?」

「なんかこういう夢見たの。」

「へー。」

「ねぇ。痩せたねー。もっと健康生活してね。びっくりするから。」

「俺もお前抱きしめてお前は太ったなーとか言いたいんだけど。」

「言わせない。だからこのまんまがいい。」

「なんかさ・・・5分くらいこのままじゃない?」

「なんか落ち着くのー。」

「俺は落ち着かないんだけど。」

「私背中が好きなのよ。」

「知ってる。」

「だから、抱きしめられなくて寂しかったの。」

「今日さー、誕生日なんだけど。」

「おめでとう。」

「・・・スキなようにはさしてくんねーの?」

「何したい?」

「とりあえず俺逆向きたい。」

「緊張するから却下。」

「こら。」

「ごめん。」

つって久々に振りかえると、

「お前身長縮んだ?」

妙に小さく見えてちょっとびっくりした。

「いやいやおかしいからそれ。」

「そう・・だよな。」

つってから久々の抱きごこち。

「抱きごこちいいなー。」

「それ前も聞いたー。」

「前も言ったもん。」

ぎゅーってしてるだけなんだけど、妙になんか落ち着くわけで。

「なぁ。」

「なに?」

「・・・たまに思うんだけど、途中で止めないで聞くだけ聞いてくんない?」

「なによそれ。」

「なんか途中で否定されるかもって思ったから先に言っとく。」

「・・・わかった。」

「あんな。」

「はい。」

「いや・・かしこまる必要ねーから。」

「えへへ。なに?」

「俺さ、好きとかそういう言葉って滅多といわないよな。」

「うん。否定しないけど。」

「絶対肯定すると思った。」

「事実だもん。」

「でさ。思ったのが、抱きしめられてる時すっごい愛を感じるのね。」

「うん。」

「で感じるんだけど、俺じゃなくてもいいんじゃねーのって思うわけ。」

「は?」

「いやそのなんつーか。女って好きって言ってよーとか言うもんかなって思ってたの。」

「ほー。」

「でもお前言わないじゃん?」

「・・・そうだねー。」

「つまりは、好きになりたいタイプなんだってことに気づいたわけ。」

「だから誰でもいいってか?」

「かなーとか思ったの。」

沈黙。

黙るな。

辛いから沈黙って。

いやまて。

俺今なに口走った?

これは別れようとか言ってるようなもんじゃねーか。

ちがーう。

断じてそれはちがーう。

そうじゃなくて。

怖くなって。

「・・・あのさー。」

抱きしめていた腕が少しだけ強くなったのがわかった。

「・・うん。」

「たぶんね。剛くんじゃなくてもいいと思う。」

「え?」

待って、否定して今のところは。

おれ、誕生日別れる日とか普通に嫌だし。

「剛くんもそうだと思うの。」

「あー?」

「今まで付き合ってきた人とかいるわけで、もしかしたらなんかの拍子で別れることになって、

 次は違う人と恋をするかもしれないじゃない?」

そう・・だけど・・・なんだよ・・・それ。

そんな展開期待してないし。

「剛くんじゃなくてもいいかもしれないけど、剛くんじゃないとダメなの。」

「・・・よくわかんねー。・・・別れたいの?」

「それはありえない。」

「なんかさー、わけわかんねーな。」

「私の恋愛定義は、剛くんに好きーってすごく伝えたいのね。

 で、それが剛くんに安心感みたいなのにつながったらうれしいし、

 別に剛くんが好きって言ってくれなくたって、否定しないことが答えなのかなって思うし。」

言ったあと、悩んだ様子で、

「あーわけわかんねー。」

ってぼやいたけど、そんなもんなのかな。