大人ってなんだろう? 年齢だけが先走って大人になっていく。 大人の恋愛なんて・・・俺にはできなかった。 もちろん、アイツにも。 「まーさゆき。」 「ん?」 台本を読んでいるときは、大体の声は聞こえないはずだった。 けど、彼女の声は響いて聞こえてくる。 「コーヒー入れるけど、飲む?」 「ああ。」 一緒に暮らし始めてもうどれくらいたっただろう? 俺にとっては当たり前の存在になっていた。 もちろん、付き合い始めてからも、その感想は変わっていない。 ずっと、空気のような存在だった。 隣にいることが当たり前の存在。 いなくなったら死んでしまいそうなくらい大切な。 お互い似たもの同士。 そして、お互い知らない存在。 すべてを知り合ったわけじゃない。 かといって、何も知らないわけじゃない。 2人で1つって考えじゃないけど、辛い時はいつもそばにいてくれた。 楽しい時は2人で笑う。 そんな存在。 どちらかというと子供のような恋愛。。 束縛なんてお互いしない。 気にはするけど、それ以上は踏み込まない。 ・・そこらへんは大人なのかな? だけど、それが時々辛いと思う。 どれだけ抱きしめても、すり抜けてしまうから。 不安になってしまうから。 そんなこと考えてるから子供って言われんのかな。 「はい。」 「ありがと。」 「なに読んでるの?」 「次の台本。」 「そっか。」 「結構長いんだ。」 「読み・・・付き合ってあげようか?」 覚えていたのはラブストーリー。 「じゃぁ・・お願いしてもいいか?」 以外の人とのラブストーリーを演じることに、彼女はどんな感想を持つのだろうか? 「ラブストーリーやるんだ。」 「・・・ああ。」 相手は誰? 何をするの? そんなことは一切聞かれなかった。 だけど、その変わりに。 「・・あ・・れ・・・?」 の目から1つの涙。 「ごめん。」 「どうして?」 「迷惑でしょ?なんか・・昌行の仕事批判してるみたいで。」 「そんなことないよ。」 「ただの・・やきもちなんだ。だから・・忘れてね。」 そう言っては涙を拭って自分のカップを持っていく。 きっと、俺達が大人だったら何も気にしないままなのかもしれない。 「ラブストーリーをやる。」 「そう。」 この2言ですんだこと。 うまくいけば「がんばって」の後押し。 けど、それは・・いやだった。 言わなくてもわかる、1つの真実の涙。 そんな彼女を見て愛しいと素直に思えた。 「。」 呼ぶと一瞬どきっとしたように降り返る。 「なに?」 ・・・何を言えばいいのだろうか? 何をいったらの機嫌が直るのか? わからないままの俺に彼女はちょっと笑って俺の座っていたソファーの後ろに戻ってくる。 「上。」 「上?」 後ろから聞こえたのはそんな言葉だった。 なんだ?と思って上を向くと、いたずらっ子のの顔。 「しっかりやるんだぞ。」 そう言うと唇と唇が触れ合っていた。 「わかってますよ。」 どうやら1つのキスでその代償になるらしい。 それでも、俺達は十分満足だった。 |