「なぁ。」 声をかけても知らんぷりをしているに、ちょっとイライラする。 「まだ怒ってんのか?」 笑顔で迎えてくれていた彼女は、俺と話しているうちに表情がなくなっていった。 そして、メシを食い終えた後に、笑顔が消えた。 「ーっ。」 悪気なんてなにもない。 大好きなのは君だけ。 それも全部わかってる。 俺の中では。 けど、にはちゃんと伝わらないね。 「はぁー。」 何も返してこないに、わかりやすいため息を1つ。 「なによ。せっかく会えたのに。」 その声は、どう考えても涙声。 なんだよ、俺がなにしたっていうんだよ? 「せっかく会えたのにさ、そっけないよ。」 それは、照れくさかったから。 最近ずっと仕事仕事で、会う時間さえもなかった。 もう2週間くらいだろうか? 電話もなかなかできなくて。 もちろん、なかったわけじゃない。 でも、電話と会って話すのは違うわけで・・・。 寂しいのはだけじゃないんだぜ? 俺だってつらいわけよ。 でも、そんなこと、言わなくたって十分わかってくれてるんだろうな。 そう思っていたのは、俺だけだったのかもしれない。 見透かされたかのように続いた言葉が、 「快彦は、私なんかと会えなくたって寂しくなんてないんでしょ?」 あそー。 そんなこと言っちゃうんだ。 へー。 そー。 ・・・。 「んなことねぇよ。」 「だって、今日うち来てからほとんどしゃべんないじゃない。」 「そんなこと・・・」 「ご飯だってさ、すごいすごいがんばって作ったのに、うまいともまずいとも言わないし。」 いいんじゃない。 それしか言わなかった。 本当は、すごくうれしかったのに。 「別にまだ何も言ってないのに、次はいつまで会えないとか、そんなことばっかり。」 ・・・それは・・・。 悩む俺を無視したように、彼女は俺に泣き顔を見せた。 「・・・好きなのに。」 大事なことは相手の目を見て言う。 ずっと彼女はそうだった。 「好きだから好かれたいって思うだけなのに。」 俺だって一緒だよ。 のこと好きだよ。 「大きな見返りなんていらないけど、こんなに近くにいるのに・・・寂しいよ。」 最後の言葉は目をそらした。 正確には袖で目を隠した。 涙を流す彼女は、俺以上に悩んでいる。 辛かった・・ん・・だろう・・な。 言葉で片付けるのは簡単だった。 けど、そんなんじゃの涙は止まらない。 「緊張してたから。」 あれ? 何いってんだ?おれ。 「どきどきしてんだ。だから・・・。」 わかって。 こんな俺の気持ち。 ボロボロになったっていいや。 君の前ではかっこいい男でいたかったけど・・いいや。 かっこわるい男でもかまわない。 泣かれたくないんだ。 好きな女に、泣かれたくないんだ。 腕を伸ばすと、君の肩はすっぽり入る。 抵抗しないんだね。 思いっきり吹っ飛ばされると思ってたのに。 「どの言葉選んでいいかわかんなかった。・・すげー・・怖かった。」 「なんでよー。」 「どれが言っちゃいけなくて、それを言ったらいいのか、わかんなかった。」 嫌われたくなかったから。 「快彦ってバカ。」 「なっ。」 そんな彼女は俺の胸にあった頭を上げていった。 「何言われたって、うれしいよ。快彦は、ウソつかないから。」 ・・・そうなの? そんなもんなわけ? 「そういうとこ、好きになったんだから。」 「・・・そ・・っか。」 拒絶されるのが嫌なのはお互い様。 俺のほうが先に壊してた。 でも、すぐに元に戻すよ。 俺達なら、すぐに戻れるよな。 「俺も。」 「え?」 「ウソつかないとこ。好きになったから。」 そう言うと笑顔を返してくれる。 そんな瞬間がたまらなく愛しい。 「大好きだ。」 |