目がさめると、窓の外には雨の姿があった。

隣で眠っているに目をやってみる。

いつも彼女はニコニコしながら眠っている。

表情がクルクル変わって、眠ってんのに、忙しいヤツだなって。

でも今日は違う。

泣きそうな顔をしている。

そうか、きっと今日の天気はの気持ちなんだ。

なんて、よくわからないことを考える。

朝の頭ん中ってボーっとしてるからやだよねー・・・。

ベッドから降りて1つのびをする。

彼女は一向に起きる気配はない。

台所へ行くといつもと変わらない風景。

キッチンに向かうと紅茶に目がいく。

が好きなアールグレイ。

今日は一緒に飲もうって約束してたっけ。

少し早めの朝が始まる。

コポコポとコップに注がれた液体は、目がさめるようないい香り。

これで天気がよかったら完璧なのにな。

窓の外は相変わらず泣いていた。

今日は何をしようか?

雨の日に外なんて出れるわけがない。

部屋のそうじでもしようかな?

そうだ、一緒にテレビを見ようか。

なんかゲームあったっけ?

天気が悪くても、といれば、心は晴れる。

いろんなことを考えながら2つのカップを持って部屋に戻る。

しかし、思わず立ち止まる。

閉めてしまったドアの前。

・・・。

ええい、蹴っちゃえ。

かろうじて隙間があったのがせめてもの救い。

カタン。

最初に目に入ったのは、ベッドの上で座っている彼女の姿だった。

「目、覚めた?」

「ん。」

まだ眠そうな彼女の横に座る。

パジャマを着た袖で目をゴシゴシしてる姿が妙にかわいかった。

「ねぇ。」

でも、声だけはしっかり起きていた。

「どうした?」

「・・・怖い夢みた。」

その目は、うっすらと涙がうかんでいる。

こすっていたのは眠いからじゃない。

涙なことに気づく。

「どんな夢?」

泣き虫な彼女に、どうすることもできなくて見てみぬふりをした。

「いなくなっちゃう。」

「なにが?」

「博が・・・いなくなっちゃう。」

それはまるで、子供のような。

「怖かった。」

そう言って彼女は僕に抱きついてくる。

どんな夢を見たのか僕にはわからない。

それでも、は僕に抱きついてくる。

「紅茶・・・こぼれちゃうよ。」

そうやって笑っても、それどころじゃないようだった。

「大丈夫だよ。」

「うん。」

「ちゃんとここにいるから。」

念を押すように伝えた。

「わかってるんだけど・・・。」

のそばにいるよ。」

そうやって笑い合う瞬間がたまらなく愛しい。

彼女は、雨にいい思い出がないと言った。

「雨・・・きらいなんだ。」

「どうして?」

「悪い夢を見たあとの天気は、必ず雨がふるから。」

「今日も?」

「うん。それから、きっと悪いことが起きるの。」

「なにも起きないよ。」

「ほんとに?」

「そんな超能力者じゃないんだからさ、消えることなんてできないよ。」

「そうだけど。」

紅茶のカップを机に置くと妙に音が響いた。

抱きついていたの手をはずして僕の方から手を回してみる。

にとって、僕ってなに?」

そう言うと答えられないことを知っている。

「きっと、僕と思ってることと一緒だよね?」

「そうだね。」

答えられない彼女が意思のないやつって思われるかもしれないけど、それは違う。

不器用だから言葉にできないだけ。

僕だってできないよ。

でもさ、言葉にできないことってあるんだよ?

簡単に言うと大好きってこと。

だから、安心してね。

でも。

「そのかわり、約束してくれる?」

「なに?」

も、ちゃんと僕のそばにいてよね。」

「うん。」

照れながら答える彼女は、やっぱり僕の天使だった。