「なーにやってんの?」

「へっ?」

「へっ?じゃねーよ。」

「なんでもなーい。」

俺達が会ったって特に何するわけでもない。

むちゃくちゃしゃべるわけでもなければ、全く話さないわけでもない。

彼女は雑誌を読んで、俺は台本を読む。

お互い好きなことをやる。

それでも、一緒にいる時間が心地いい。

「あのさ。」

「なに?」

ここはの部屋の中。

正直言って、なんにもない剛の部屋とは対照的に、なんだかごちゃごちゃしている部屋。

「・・・どしたの?」

少しの間、俺はじっとを見つめていた。

「・・あ・・の・・。」

だんだん彼女の顔が赤くなっていくのがわかる。

「いや・・・やっぱいい。」

これ以上見てたらなんだかおもしろくて笑ってしまいそうで目を台本に戻した。

「なによー、気になるでしょー?」

「なんでもねーよ。」

俺の気持ちに気づかないお前が悪い。

「・・変なの。」

・・ムカツク。

人がせっかく素直になってやろうってのに。

・・遠まわしにしようって思ってるあたり、俺も素直じゃねーか。

まいっか。

そのうち気づくだろ。

「寒い。」

「そうかなぁ?」

「知ってるだろ?俺は極度の寒がりなーの。」

「そ・・っか。」

「そう。」

別に困らす気はなかったんだけど。

「んー。」

ぶっちゃけた話、エアコンはこの部屋にはない。

ストーブ?

へっ、そんなの付けてみようものならば、明日はこの家は灰になってるよ。

周りのもんが燃えちまう。

そうじゃないんだよ。

直球で言うのが照れくさいだけ。

だってさ、男から言うのってかっこわりぃじゃん。

こういうのはさ、女の方から言って来てなんぼのもんじゃねーの?

そんなもんだろ。

「湯たんぽ。」

「ああ?」

全く、頭の働かないヤツだなぁ、は。

「カイロよりもおっきいよ?あ、私ねぇ、レンジでできるやつ買ってきたんだ。」

そう言って俺の言葉も聞かずには部屋を出て行った。

・・・俺が直球で言わないと、あいつは気がつかない。

鈍感なのは俺達、どうやらいい勝負らしい。

「あったかい?」

の持ってきたレンジでできるやつとやらはなかなかの優れもの。

「これどこで売ってんの?」

「気に入った?」

目輝かせて言うんじゃねぇよ。

「ん、まぁ。」

「じゃぁそれあげる。この前いっぱい買い込んだんだー。」

はは、寒がりはお互い様だかんな。

「これねー何回も使えるんだよー。」

なんて、楽しそうに話す彼女を見ていたら、別にいいかなって気もしたんだけど、今日はちょっとだけ。

ちょっとだけ素直になる日。

「あったまった?」

「まだ。」

「えー?剛ほんとに寒がりだねー。どうしよう?他に・・・」

指折で数えてるあたりがまだ気がついていないみたいで。

なんだかつらくなるよ、俺も。

っ。」

「はいっ。」

勢いある言葉には、勢いある言葉を返すべし。

こんな言葉が似合うようなやりとりだった。

「まだ気がつかない?」

かっこ悪くてもいいや。

だってコイツ気づかねんだもん。

「えー?」

・・・お前ホントに俺のこと好きなのか?

逆に不安になるだろ。

「・・・わかんない。寒いんでしょ?」

だから。

「ここ。」

俺は自分の横に空いたスペースをパンパンとたたく。

「そこ?」

「来いよ。」

そう言ってを自分の横に座らせる。

「なに?」

この鈍感女っ。

「こうやってな。」

俺の手を彼女の肩にまわして自分の方に引き寄せる。

「こうやってんのが、一番あったけーだろ?」

身体も心もさ。