「なぁ。

「なに?」

「俺達さ、別れねーか?」

朝彼の電話で目が覚めた。

もともと朝の弱い彼からの電話。

なんだろう?と考える前に、きっとどこかに連れていってくれるんだ。

と、一瞬ですべてを期待した。

すべてが突然だった。

突然の別れだった。

やっと出てきた言葉はこれだった。

「そっか。」

電話を切った後考えると笑ってしまう。

「なんでよ?ばかやろう。」

そんな一言くらいぶちかましてやっても、バチなんてあたるわけなかったのに。

言えない自分に腹が立った。

「理由は聞かないの?」

そんなことを言われたきがする。

気がするというのは、もう完全に涙を流すことを通りすぎておかしくなってたからだ。

「聞いてほしいの?」

そんなことを言った気もする。

「・・・べつに。」

そんな言葉しか返ってこなかった。

「じゃぁな。」

「・・・うん。」

電話の切れた音が、すべてを壊していた。

なんだったんだろう?

これが夢であるならば。

今やっとわかったことだった。

これは夢じゃないということが。

部屋の中はなにも変わっていることもない。

ただ。

いつもより天気だった。

目覚ましを鳴らすのを忘れていた。

そのかわり、彼が目覚ましの電話を与えてくれた。

今まで考えたこともなかった電話で。

 

 

「お腹空いた。」

彼の電話が終わってから最初に言った言葉はこれだった。

ボーっとしてしまっていた。

なんだったんだろう?

やっぱり夢だったんじゃないか?

そう割り切ろうともした。

だけど、着信歴に残る彼の名前は、時間も一致する。

そんなもんだったのかな?私達。

テレビをつけると、運よくなのか、運悪くなのか、彼が写っていた。

笑ってる彼を見て、なんだかさっぱりした表情をしてることに気がついた。

重荷だったのかな?私は。

そう考えると泣きそうになる。

実際、朝から泣いていた。

納得いかなかったわけじゃない。

考えれば結構思い当たる節もなくはない。

考えていると、気がついた時には着替えをすませ、かばんを持った自分がいた。

身体が言ってる。

確かめに行きたいんだと。

いるかどうかもわからない、彼の家へと足を向けた。

 

 

案の定、彼はここにはいなかった。

仕事だろう。

こうやって、彼の家の前で待つことはなんどあったろうか?

それでも、彼はやさしく迎えてくれた。

でも今日はそうはいかないだろう。

わかってた。

でも、仕方ないでしょ。

今から理由が聞きたくなったんだから。

 

 

「・・・・・・・・・。」

「あ・・れ?」

「おーい、なにやってんだよ、こんなとこで。」

気がつくと真っ青だった空にうっすらと白い雲がかかっていた。

そして、そのキレイな空をバックに彼がいた。

「いい天気だったから。」

相変わらず自分ののー天気さに呆れてしまう。

彼の家の前で眠ってしまった後にはいい天気だからとのん気なことを言い出す始末。

そう言うと彼は吹き出して笑っていた。

なんだかそれが無償に悔しかった。

「入れば?」

「・・・うん。」

特にこれといって返す言葉もない。

 

 

「なにやってたの?」

「別に。」

一切電話に触れない彼に腹がたったと同時に、やっぱり夢だったんじゃないかと考える。

「あのさ。」

変に切り出された言葉が怖かった。

「今日、俺、に電話したよね?覚えてる?」

忘れてるわけないだろう。

だって、そのことを話しにきたんだから。

「理由ってなに?」

「あん時お前聞かなかったじゃねーか。」

「・・おかしかったの。」

「なにが?」

「いろいろと。」

「いろいろってなんだよ。」

「いろいろよ。突然あんなこと言われておかしくならない人の方が変よ。」

「そう。」

「重荷だった?私のこと。」

「なんで?」

「朝・・目が覚めたら画面にうつってるアンタ見た。それ見てて思ったの。」

「俺・・どんな顔してたわけ?」

「妙にさっぱりしてるように見えたわ。」

「気のせいだよ。」

「そうかしら?」

「・・・遊園地行かねーか?」

「なに突然。」

「最後の思い出にさ。」

さいてーだ。

 

 

それでもはしゃいでしまう自分に呆れてしまう。

彼とは決して気の合う仲間とは言えなかった。

それでもノリは一緒だった。

だから好きになった。

だから、こういうとこにきたらはしゃいでしまう。

好きだから仕方ないとおもう。

きっと、彼も同じ気持ちだと思っていた。

ほら、自分が楽しいと彼も楽しいって言うでしょ?

でもそれは、悪いほうにとらなきゃいけなかったんだ。

自分勝手の方に。

帰りたくなかったのに、急に帰りたくなったのは、全部彼のせい。

 

 

「じゃぁね。」

「泊まってかない?」

「ばかじゃないの?」

「最後の夜だってか?ばっかみたい、何考えてんのかわかんないわよっ。」

「・・・。」

「あのさー、なんなのよ。」

「・・くく・・ふはははは、はははははっ。」

ますますわけがわかんない。

イキナリ笑い出して、なんなのコイツ?さいてーじゃない?

「お前さー、今日何の日か知ってんの?」

「え?」

「ほら、考えてみって。」

笑ってる彼がすごいむかついた。

「どうせ別れる日とか言うんでしょ?私帰るから。」

そう言うと彼は私のうでをひっぱって引きとめる。

「・・・なによ。まだいい足りないわけ?」

「今日カレンダー見てきたか?」

さっきのように笑った表情はどこにもなくて真剣なまなざしでこっちを見てくる。

「・・・見て・・ないわよ。」

だって、それどころじゃなかったから。

「じゃぁヒントやるよ、昨日で3月終わったの。知ってる?」

「知ってるわよ、それくらい。」

「・・・じゃぁ、今何月か知ってるか?何日か知ってるか?」

「4月1日でしょ・・知ってるわよ・・そんな・・ことくらい。」

途中から笑い声に変わった私を抱きしめるように言ってくる。

「今ごろ気づいたわけ?俺知ってると思って、逆にだまされてんのかと思っちまったじゃねーか。」

「さいてーだよ、アンタは。」

「お前もさいてーだよ。ったく。もっと早く気づけよな。」

「いい機会じゃない。駆け引きするなってことでしょ?ばーか。」

「駆け引きのつもりじゃないよ。」

「じゃぁ別れる?」

・・・。

「お前鬼だな。」

「だってさ、そっちから言い出したことでしょ?」

「あのなー、俺がと別れる?そんな話聞いたことねーよ。ばかばかしい。」

「じゃぁほんとにしようか?」

「別れるわけねーだろ。」

「じゃぁ2度とこんなウソやだからね。」

「わかったよ。」

「ねぇ、好きって言ってくれる?」

「やだよ。」

「なんで?」

への愛は、好きだけじゃ足りないの。」

「じゃぁなんて言ってくれる?」

「愛してるよ。。」