対戦物語

〜第1章〜
〜国家誕生〜
〜第5部〜
〜平原の内乱〜
神長子
中原領主
神娘
中原領主
神農
中原領主
神祭
神農妹
神稷
神農妹
治者
平原四天王
勇者
平原四天王
 平原領主神子が中流に討たれ平原は領主を失った。しかし、神子の兄である中 原領主、神長子がいち早くこれに目を付け平原を治めようとした。同時に神子の 長女、湖畔領主神娘も平原に目を付けたが、中流が神子を討ったのは湖畔領主神 娘であると噂を流したために、平原を取るここが出来なかった。神娘は今の状態 で平原を治めることは天下を敵に回すことは明白であると考え、神長子に平原の 統治を任せた。  思わぬ事態に大いに喜んだ神長子であったが、中原を出て平原に向かう途中、 病に倒れ、そのまま死んだ。  この時、平原は神子亡き後、平原四天王の勇者を筆頭に平原の統治に努めた。 勇者は神子の意志を継いで武による天下統一のための軍備と治安維持に努めた。 しかし、軍務を行う勇者には内務までは統括できず、平原四天王の治者に内務を 全て任せ、軍務と内務を二人で担った。  治者の内務によって平原領内は神子生前に劣らぬ治世が保たれ、軍務も勇者に よって以前と変わらぬ状態になった。  そこに、神長子の跡を継いだ神農が父の意志を継いで平原の統治に乗り出した。 治者は神農の統治を望んだが、神農一人に中原と平原は統治しきれない可能性が あると思い、神農の妹神祭に平原の統治をするように提案した。中原で神農は、 「未だに平原は神子叔父の勢力が健在。今、平原と事を構えても我らに大きな被 害が出る。もちろん平原にもな。今、天下の趨勢は神家に傾いている。神祭、お 前に平原が治められるか?ここは、平原と温厚に事を運んでいきたい。いらぬ動 乱は中原、平原だけでなく諸侯にも波紋を広げるであろう。湖畔の神娘叔母も混 乱に乗じて策を巡らしてくるだろう。いらぬ動揺は避けなければならない。」  神祭は、 「兄上、承知いたしました。平原は私にお任せください。ゆくゆくは中原と平原 の統合を果たしましょう。」  神農は、 「うむ、よろしく頼む。しかし、お前一人が平原を治めるのは困難であろう。平 原にとっては、神子叔父の親族であってもよそ者とする者もいよう。神稷も連れ て行け。」  神祭は、 「はい。」  神稷も 「姉上、共に平原を治めましょう。」  一方、平原では、治者と勇者が神祭を出迎える準備をしていた。 「治者、亡き殿の姪がここを治めるそうだ。殿の意志を継いでいち早く天下を統 一出来ることを期待したいな。」  治者は、 「うむ。そう願いたい。我ら四天王は天下の主の四天王だ。」  平原四天王を始め、平原の将は新たなる領主に大きな期待をした。  神祭は平原に到着し、大いにもてなされた。  神稷は、 「姉上、この分だと平原を治めるのはそう難しい事ではなさそうね。」  神祭は、 「そうね。今、平原を取り仕切っているのは、勇者と治者。彼等とうまくやって いけば難しい事ではないわ。」  神祭と神稷は明るい未来に胸躍らせた。もてなしの宴はいつまでも続いた。  その後、勇者、治者を交えて平原について論議が行われた。  神祭は、 「治者殿、平原の豊かさはあなたの功績によるところが大きい。あなたの力を持 ってすれば、この平原は安泰でしょう。しかし、更なる豊かさを求めるのでした ら、我兄、神農の農耕技術を受け入れて頂きたい。あなたも中原の技術力は存じ ているはず。この上ない飛躍になりましょう。」  治者は答えて、 「神祭殿、いえ、殿、我らに依存ございません。平原のために亡き神子様のため に尽くします。」  勇者も、 「平原に中原の技術力が加われば天下無敵。天下統一は時間の問題。これでこの 戦乱の世にも終止符が打たれましょう。」  神祭は、 「そうです。皆の力を合わせていきましょう。平原四天王諸氏は神子叔父に引き 続いて我らを支えて頂きたい。」  勇者、 「御意。」  かくして平原は円滑にまとまっていった。そして、神祭と治者の婚儀の話も持 ち上がり、翌年には神祭と治者の婚儀が行われることになった。  数日後、再び軍議が開かれた。  神祭は、 「我らは湖畔の神娘叔母と盟を結び、中原、平原、湖畔の3大国を一つにまとめ て天下の基盤を作る。その使者には、わず私自らが赴きます。留守を神稷を筆頭 に皆で盛り立てて下さい。」  勇者は、 「恐れながら、湖畔といえば中流で我殿を討った仇です。湖畔は真先に攻め取る べきではないでしょうか。」  神祭は、 「勇者、それはありませぬ。もし、湖畔が神子叔父を討ったのであれば、真先に 平原に軍を進めるはず。それをしないばかりか、中原に平原の処置を任せたので す。いかに神娘叔母が知略に長けていようと、このような行動は策を巡らせたと は言えません。まさに、湖畔が無実である証し。この件については真の抹殺者が いるはずです。その者とその領地を調べ上げるべきでしょう。勇者、その任はあ なたに任せます。」  勇者は、 「御意。さすれば中流を中心に下流、入江を探索してまいります。同時に我軍の 増強を図ります。いつでも進軍できるように諸事万端を整えておきます。出陣は 時を待たずしてできましょう。」  神祭は、勇者に、 「いや、軍の増強は必要ありません。平原は今でも十分な力を持っています。必 要以上の兵は財政を逼迫させるだけでなく、生産力の低下を引き起こします。現 状を維持して来るべき戦いに備えておくように。」  勇者は、 「恐れながら、そのような軍備では天下を一気に征圧することはできませぬ。亡 き殿の怒涛の進軍を行い、天下を我らの手に。」  神祭は、勇者を諌めて、 「勇者、そのような圧倒的な武力を持たなくても、諸侯を懐柔させ我らのもとに 参じさせればよい。神子叔父の武による統一は、その力を維持できなくなれば、 一気に崩壊する。負ければ全てを失うことになる。」  勇者は、反論して、 「否、軍を絶えず増強し力を維持すべし。殿のお言葉は天下を平定した後に行う ことでございます。」  治者が、前に進み出て、 「殿、我ら四天王を始め平原の人間は亡き神子様の意志を称え、その意志を受け 継ぐ者でございます。それを無視されると、領内の崩壊につながります。なにと ぞ、政策の急激な方向転換はお避け下さいますよう。」  神祭は、 「治者、領内に残る神子叔父殿の意志、確かに尊重すべき事ではあるが、その意 志の絶対性はあるのか。叔父の行った政策も一つの道ではあるが、中原、湖畔ら と結んで統合できれば誰も失うことなく天下を一つに導けよう。」  治者は、しばらく考えたが、 「殿、理想と現実では違いますぞ。それは戦って勝つよりも難しい道でしょう。 しかし、殿がそれを信じておられるならば、それもよいでしょう。しかし、その 前に平原の皆がそれに従いますでしょうか。」  勇者は、 「左様でございます。平原が平原であったのは神子の存在。それを無くした今は 神子の後継が必要なのでございます。」  神祭は、 「武による統一はなりません。」  治者は席を立って言った。 「神祭殿、あなたに従うものと神子の意志に従う者の2種の人間が現れましょう。 その2種の人間が争えば平原は大きく揺れ、その揺れは天下に広がり、今以上の 波乱を巻き起こします。私は、平原の安泰を願います。神祭殿か神子の意志か、 どちらに傾くにしても、諸侯にその内情を知られることは、隙を突かれて崩壊の 危険をはらんでおります。私は平原の内情を外に漏らさぬよう、そして、国力の 衰退を導かぬように致します。」  そして、軍議の場から去っていった。その去り際に、 「私は平原のために生きる。」 と言った。  その後、和睦による天下統一を掲げる神祭派と、武による天下統一を目指した 神子の意志を掲げる勇者に平原は別れていった。両者は譲ることなく、いつしか 内乱へと向かっていった。  しかし、その内情を一切外部に流れるのを防いだのは治者であった。

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