対戦物語

〜第1章〜
〜国家誕生〜
〜第2部〜
〜想いここに〜
猛者智者勇者
 神子軍は大将勇者、副将猛者の率いる軍で北海と北原を併合した。  9年、勇者と猛者は北原はら二手に別れて進軍した。勇者は東山、猛者は北地 をそれぞれ攻略した。東山地方を攻略するに当たって勇者は一つの心に決めたこ とがあった。  東山の地、その向こうには大きな草原が広がり、さらにその先には本拠地であ る平原地方がある。 「平原か。しばらくぶりだな。あいつは元気にしているだろうか。輜重部隊を退 いて軍師として本拠に留まっているからな。まぁ、俺達がこうして各地に進軍し て勝利しているのはあいつの知略のおかげだから。その知略の切れの良さが元気 な証しだな。」  勇者は東山に向かう兵の先頭で一人つぶやいていた。 「よし、東山を従えた後はそのまま平原に進んであいつに会いに行こう。」  そう考えて軍をさらに進めようとした時、 「勇者殿!!」  後ろから慌てて駆けつける男がいた。彼の名は籠称。北原の地の男である。 「東山軍勢は我が兵力の倍以上を有しており、その精強さは我が軍に劣らずでご ざいます。まともに戦っては勝ち目がございません。まず、敵の輜重隊を叩いて 戦力を削るようにとの軍師殿の仰せでございます。」 「そうか。解った。全軍、輜重隊を叩け。」  東山領に入り真先に勇者は輜重隊に攻撃を仕掛けた。輜重隊は守りを固めて防 戦した。勇者はさらに輜重隊を攻撃したが、そこを背後から東山軍に襲われた。 「な、なに!?しまった!!挟まれたか。」  勇者は苦戦を強いられ、東山軍の猛攻を受けた。と、そこへ東山軍の背後を急 襲する部隊が駆けつけた。北原の籠称が手勢を率いて援軍に駆けつけたのである。 「勇者殿、助太刀いたす!!」  再び形成を逆転した勇者は、そのまま東山軍を撃ち破った。そして、東山領を 得た。 「籠称殿、ありがとう。おかげで助かった。そして、東山領も得る事ができた。」 「いえ、この義は軍師殿の助言でございます。勇者殿が輜重隊にのみ目を向ける ようであれば必ず背後を本体に急襲されましょう。そうなったら私がその本体の 背後を突くようにと。」 「なるほど。智者の策か。あいつめ、俺を囮に使うとは。可愛い顔して鬼だな。」 と、勇者は苦笑いした。と、そこへ、 「勇者、変な言いがかりはよしてよ。あなたが輜重隊以外にもちゃんと気を配っ ていればこんな事にはならなかったのよ。」 「な、ち、智者、お前なんでここに。」 「東山の向こうは平原。平原の近くまで来たんだから私に会いに行こうと思って たんじゃない?。」  智者はにこにこしながら答えた。勇者は大きく動揺してたじろいだ。智者は、 「勇者、私に、お前に何かあった時は守ってやる。なんてよく言えたものね。私 があなたを守ってあげないとだめね。」 と勇者の鼻を指で指しながら言った。 「な、なんだと。そんなか弱い腕で俺を守るだと。守ってやるのはこういうたく ましい腕だ。」 「ふふふ。ちゃんと守ってあげるわよ。この頭でね。もし、私を守りたければ腕 だけじゃ足りないわよ。愛もなくっちゃだめね。」  智者はくすくす笑いながら勇者を見つめた。 「い、いいぞ。そうしてやるよ。そのかわり、愛がないと俺も守ってやらんから な。」  勇者は大きく動揺して言い返すと、智者は、 「さぁ、どうしよっかな。」 と笑って答えた。

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