―世界的な権威、アメリカの『SPIE学会』でも毎年発表。
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すばる望遠鏡の"大気の揺らぎ"補正レンズ
ハワイ島マウナケア山頂にある国立天文科学台に2000年春に建設完成したすばる望遠鏡。可視光線から中間赤外線まで様々な天文観測を行う口径8.2メートルの世界最新鋭の望遠鏡です。ですが"風が吹くと空気の密度が増す"など天候や宇宙環境により大気に"揺らぎ"が生じ、解像力はこの大気のゆらぎによって決まってしまうのです。正確な観測データを得るにはその空気の揺らぎを実時間で補正することにより実現可能となります。波面補償光学装置は主鏡の直径によってきまる解像力(回折限界)を実現する装置で、その一部にWFSとよばれる測定ユニットの中に光の強度(強度分布)を計測するカバーチャーセンサーを組み込むのですが、このセンサーの心臓部に使用する直径100ナノメートル以下のセグメントで構成される放射線状に配列された特殊光学素子の製作をナルックスが担当しました。そしておそらく資料を読まれたのでしょう、その後フランスからも同じような依頼がありました。又、さらに現在、直径8ミリの188素子で構成される、新世界最高性能となる特殊マイクロレンズの依頼が国立天文台から来ています。これは現在解像力世界一と言われているハップル宇宙望遠鏡を遥ぐものです。
バーチャル3次元走査光学系素子
空前の大ブーム、ファミコン。3Dを体感できるヘッドマウント型バーチャル・グラス(メガネ)も今や必須アイテムです。人の目が見たものを3Dとして認識できるのは、右目と左目が互い違いに高速で交互に対象物をとらえ、その残像を脳が記憶しているからです。ファミコンの3Dグラスにも同様の仕組みがあり、LED(発光ダイオード)の信号を右目と左目が交互にとらえられる(信号が送られる)ようになっているのです。ただそれにはLEDの信号を左右同じ距離に均等にしかも高速に分配する必要があり、その為の光学系ユニットをナルックスが開発しました。皆さんのヘッドマウントの中にもあるはずですよ。
光集積回路(光チップ)
一つのプレートの上に幾つものパターンの光素子や楕円型レンズを配置した、レンズと光素子しかない制御構造(※言わば一般に言う制御板)で電気ではなく、光で全てを制御します。今から5年程前、ナルックスがこれを開発した当初は少し時代に先行し過ぎた感もあったのですが(※今でも数少ない技術ですが)、現在ではより高性能・集積化、世界最先端の光ディスク読み取り用光集積回路に発展しています。(●参考情報:先頃液晶世界最大手のシャープ社が発表した(※02年10月20日付け朝日新聞掲載)“下敷き並みの薄いノートパソコン”や“極薄の携帯電話”“名刺サイズの携帯テレビ”の開発に結びつく新技術というのもこれと類似した技術が核になっているのです。)
反射防止構造
これは"大阪府地域結集型研究事業"の一つです。レンズやモニター等透過性物質の表面反射を無くしてしまうという構造です。普通これらは見る角度によって反射光しか見えない場合や、撮影系ではゴーストが発生してしまうという場合があります。その為殆どの光学系には光学薄膜による反射防止構造をのせているのですが、これは光学薄膜無しに構造により同等以上の性能を創ったもので、どの角度から見ても明るく同じように見えます。表面はフラットでプラスチック肉厚内の底部全体が直径340ナノメートル、高さ360ナノメートルの円錐の突起構造で隙間無く構成された光学部品です。この構造により入射した光は目に対して90°の正反射光以外は全て構造に吸収され、画面をどの角度からでも一様に明るく見ることが可能となりました。近い将来殆どの携帯電話やパソコン等に採用されると思います。
"光の波長よりも小さな"サブ波長光学素子
これも"大阪府地域結集型研究事業"の一つです。光の波長は800〜400ナノ・メートルですが、それよりも狭い200〜300ナノ・メートルピッチ(凹凸の溝の横幅※数ナノメートル精度で調整可)を備えたサブ波長格子を実現しています。格子の幅が光の波長よりも小さくなると電磁波光学の構造性複屈折原理でもある通り、その形状自体が屈折率になり特定の波長だけを取り出したり、光をTEモード(電場)とTMモード(磁場)に分けそれぞれをコントロールし(※光は電場と磁場の直行した方向に進みます)全く違った光学特性を得ることが出来る"偏光分離素子"の開発にもつながります。
ブレーズド型光回折格子
これは産学官共同開発です。従来の回折格子の凹凸パターン色とは異なるパターンを持つ回折格子です。通常はデジタルで言うI・O或いはON・OFFの信号波形の様な水平面で形成される凹凸面ですがこれは斜めのパターン(※昔地図の記号であった"工場"の屋根状です)を持った光格子です。これは加工技術が大変難しく、電子ビームのエネルギー量と照射時間とをエリア内(※格子の凹凸ピッチ/1〜2ミクロン幅)において何段階にもバリアブルな強弱の微調整をした照射技術が求められます(※フォトリソグラフィー技術をご参照下さい)。この格子の開発により従来とは種類の異なる回折具合を実現。アメリカの主要な展示会<フォトニクス・ウエスト>でも発表し、もう間もなく金型への転写も可能になります。
マルチステップ光学素子
この光回折格子の凹凸パターンは階段状になった傾斜面で、しかもその傾斜を構成するステップの高さの組み合わせが凹凸によって違うというものです。高さ6ミクロン、幅30ミクロンの三角形の斜面に幅5ミクロンのステップが6つあるわけですが、このステップ一つ一つの高さの組み合わせが各凹凸によって違うわけです。これもやはり加工が大変難しく、困難を極める工具製作とリニアモーター駆動のナノメートル分解能を有するスペシャルマシン(※数十ピコメートル分解能も可能です◎1ピコは1/1000ナノ)を用いたダイヤモンドターニングという3次元ナノ加工法で切削します。これはDVD・CD兼用機に内蔵され、DVD用とCD用の波長の違う2種類のレーザー光を、一つの光学素子で同じポイントに集光させるということができます。まさにナルックスの独壇場で、世界シェアの殆どを独占しています。
自由曲面レンズ公式
これも業界初。97年にSPIE学会で発表し、世界中の話題になった画期的な発明です。あらゆる曲面(R)を可能にする夢のレンズ設計公式です。XYZの3次元から成る公式で、非対称性、非球面、楕円面、トロイダル面、他どんな曲面でも殆ど自由自在になります。例えばこの式により、今まで複数枚・多数枚のレンズを組み合わせることでやっと得ていた光学特性を1枚だけのレンズで、しかも同等以上の性能を得ることも可能になり、例えば走査光学系に応用され、世界最小と言われているレーザービームプリンターユニットの開発等を実現しています。非常に応用範囲の広い発明です。
フォトリソグラフィー技術
大阪大学と共同で開発した、業界初の画期的な超微細加工技術です。半導体製造で用いられているフォトリソグラフィー(※原盤に描かれた回路パターンを露光機でシリコンウエハー上に焼き付けて転写させる技術)をプラスチック射出成形に応用、さらに発展させたものです。まず金型になる特殊金属の表面全体にレジスト(感光膜)を塗布し、その上にマスク(※薄ガラスの上に微細な特定間隔でクロム膜を施したもの)を重ねます。そしてその上からマスクアライナーという露光機で密着露光。するとクロム膜下のレジストは残り、クロム膜を施されていない部分下のレジストは感光しなくなってしまいます。つまりマスクと逆パターンのレジストが金属材料の上に残っている状態です。そしてその状態の上からRIBEエッチング装置(※エッチング/化学的に金属を反応させ、輪郭を残す加工法)で電子をビーム照射、するとレジストの残っていない部分の金属が化学反応によりなくなり、最後にレジストを除去すると材料金属の表面がマスクのパターン通りの凹凸になり、これが金型になるわけです。そしてその金型に樹脂を流し込み、金型通りの回折格子が完成します。この技術の開発により光の回折具合を決める回折格子ーンの加工を従来精度の約10倍という超微細な1〜5ナノ・メートルレベルで実現出来るようになったのです。
レーザーアブレーション技術
これも業界初の画期的な加工方法です。大阪大学レーザー核融合研究センターとの共同開発による、金型を用いない直接加工法で、光学素子と光源等装置を組み合わせた状態でレンズ等光学素子を加工、補正できるという最大の特徴を持ちます。(※しかも非接触方式のため従来困難であった加工中の波面計測も容易に行えます)レーザーアブレーションとはレーザー光を照射した時に生じる物質表面の蒸散現象(※物質がレーザーを吸収、分子結合切断、そしてアブレーションが起こります)を意味し、この現象を利用して光学素子の超微細・直接加工を行うのです。アブレーションの際の物質の飛び出しと周辺部デブリス(飛散物)の調整・除去が最も難しく、その為ArF(アルゴンフロライド)という物質の分子結合を直接断ち切る事の出来る光子エネルギーを持った短波レーザーを採用し、又PMMA(アクリル樹脂)の他石英とプラスチックを融合させたハイブリット母材も考えられます。従来光学素子は単体での製造が前提になっており光源等と組み合わせた後での修正は考えられていませんでした。しかしこのような光学素子は光源や他の素子と組み合わせて使用されるはずで光学系全体の精度は素子単体+その組み合わで決定します。特に微小な素子は焦点距離が短い為、素子と光源の相対的位置関係は非常に厳しい精度で組み立てる必要があり、装置コストの低減を阻む原因にもなっていたのです。
又、この技術は一般家庭への光ファイバーの普及にも好影響を与えます。従来の単一モード光ファイバー(SMF)の接続には高い精度のコネクターを使用し、ファイバー側面を研磨して接続するという込み入った手順が必要でありコストのかかる状態になっていました。特にLD等の光源とSMFとの接続にはレンズレスで接続する為の特殊な形状のウエッジ等が必要であり相互にサブミクロン以下の位置精度で組み合わせる必要があり、コストを下げるのが至難の技。さらにファイバー中に偏光子やフィルター等のバルク光学素子を入れようとすると従来の接続方法が使えない為自由に挿入できません。そこでレーザーアブレーション技術でファイバー端面にレンズを直接成形して、そこから出てくる光の波面を計測してレンズの形状を修正すれば、安価なプラスチックコネクターでSMF接続が出来ます。社内ではこの装置一式をキットととして低価格化し、東急ハンズやロフト、百貨店等で一般向けに全国販売しようという計画もあります。大阪大学研究レポートの表紙も飾った期待の新技術です。
CAE(computer aided engineering system)を用いた『プラスチック射出成形の光学的複屈折の予測』
これも世界初です。マサチューセッツ大並びに大阪産業大と産学官共同開発に取り組み、業界の大きな課題であった謎を一昨年(2000年)ナルックスが解明しました。複屈折というのは材料内における二つの直行方向の屈折率の差異のことで、金型の中の溶けた樹脂が固まる際、肉厚の薄い周辺部から固まり始め中央部の樹脂がそれに引っ張られてしまい、発生した残留応力が残ったまま固まる為に起こる屈折率の異常です。この発生原理を3D・CAE解析(※樹脂の分子レベルの流動性や温度、構造解析)により解明に成功。対処法を発見しました。01年1月アメリカのSPIE学会で発表して世界中の学者やジャーナリストの方々から拍手喝采を浴びたのがこの技術です。これの解明によりレーザビームプリンタやCCDカメラレンズ等の集光性が高まり、飛躍的な高性能化・コンパクト化を創製します。
CAEを用いた『吸水によるプラスチックの光学的特性変動の予想』
複屈折の次に解明したのがこれです。プラスチックは水分を吸収すると特性に変化が表れるのですが、ナルックスではこのメカニズムも近年解明することに成功しました。時間と共に変化する物質内の含水率と撹拌状態(水分の散らばり)。それらに伴う焦点位置の3次元移動を解明し、完璧にデータ化。02年1月のSPIE学会で詳細を発表して、これもまた拍手喝采を浴びました。このデータをコンピュータ演算することで使用環境毎(室内外等の湿度差他)によるレンズの最適形状が割り出せ、さらに微妙な設計が実現。装置により安定した高精度な作動をもたらせます。又これら2つの事例以外にもCAE解析により金型内の樹脂の動きや周辺部の様々な不可思議現象を可視・データ化することができるようになり、金型設計の最適化、開発期間の短縮、製品性能の向上、問題解決の方向性の策定、他多大なメリットが生まれています。
高効率格子における電磁波の振舞い
最近マクセルの電磁波方程式を解き、回折格子等の様々な形状の媒質を通過する電磁場を可視化することを可能にしました。今はまだ詳しくは言えないのですが・・。03年7月の米国SPIE学会で詳細を発表します。又、これに付随してPCの数百倍の処理能力を持つスパコンも導入予定です。
他にも
◎マイクロコーナーキューブアレイ(※1辺10ミクロンの正方体の集合構造で世界最小と言われています)◎PBS/偏光ビームスプリッター(※ガラス素材へのナノ・パターン・インプリント)◎液晶のエネルギー拡大光学素子(※LD効率を高めてより明るく。従来の35〜70%の省エネ化:開発中)◎電子ビーム描画による3次元微小構造作成プログラム ◎光学薄膜から光学的微細構造への置き換え技術 ◎回折光学設計ソフトウェア ◎医療用3次元ディスプレイ光学部品 ◎次世代DVD・CD・MDの読み取り書き込み超高速化用光学部品 ◎次世代携帯電話用光学部品 ◎潜水艦"深海"の撮影系レンズ ◎つくば万博の巨大スクリーン用投影系レンズ ◎高エネルギー加速器研究機構(KEK)のJapaneses Hadoron Project(JHP)の超伝導加速空洞実験におけるリニアック用粒子加速器用部品、他数多く数え切れない程の技術開発を行っています。
フォトニクス結晶
今最も注目されているのがこれです。フォトニクス結晶とは内部に周期的な屈折率分布を持つ結晶であり、光子エネルギーに対し、バンド構造が形成されるフォトニックバンドギャップを有するという大変大きな特徴を持っています。このフォトニックバンドギャップの中では、光は状態をとることが出来ません。その為真空場で生じる通常の現象とは全く異なる現象が起き、例えば結晶における周期性の一部を乱すような欠損を導入することで、微小な領域において光を直角に曲げることができる導波路や零しきい値レーザー、さらには運動している光子を極微小欠損で捕獲かつ放出する、など従来にない新しい光の制御が可能となり、さらに超小型の光回路(光チップ)や新しいデバイス(例:屈折率を3次元に自在に分配できる、水晶以上の性能を持った波長変換素子等)が実現できます。現在、電磁波の振舞い計算などにより、設計面から実用化に向けた準備をしております。
22世紀の超スーパーテクノロジー開発の一例を・・。
"目"と同じ機能を持ったレンズ/瞳、瞳孔、水晶体の収縮等の焦点動作や瞬き他全てを代行できるレンズです。ニューラルという脳からの信号を透明ワイヤを通じ、レンズ内の光チップ(光集積回路)が情報処理・制御、なんとレンズ自らがXYZの3次元方向に自在に伸び縮みして対物焦点します。視力の極めて悪い方でもこれさえあればくっきりとした快適な景色を取り戻せるという夢のレンズです。透明ワイヤの開発も含め"いずれ成功させたい"と社長の北川清一郎も語っています。

◎この他にもまだまだ、想像が追いつかない、信じられないような未来テクノロジーを幾つも開発中です。


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