Strawberry Hill

 
  ストロベリー・ヒルに近い地域、即ち、リッチモンド、トイックナム・テディントン、さらにハム・ハウスがあるテームズの右岸からなる地域が、ディケンズの小説に、どのように引用されているかは、中西敏一著「チャールズ・ディケンズの英国」[3]に詳しい。
 例えば、テームズの対岸(右岸)には、ハム・ハウス(Ham House)があるが、ここは、ディケンズの小説ニコラス・ニクルビー[9]では、このハムハウス付近で決闘が行われる。この該当部分をちょっと引用すると、
 After a pause, and a brief conference between the seconds, they at length turned to the right, and taking a track across a little meadow, passed Ham House and came into some fields beyond. In one of these they stopped.(Chapter 50)
とある。現在は、ハム・ハウスの東側には住宅が建ち並び、野原もかなり整備されている。しかし、広い平坦な草地もあり、'a little meadow'を頭に描くことができる。テームズ河畔には、まだ野趣が残っている。左図のような処が決闘の場面になったのだろうか。私は、ニコラス・ニクルビーの影響で、ぜひここに来たかったのである。


 我々は、ストロベリー・ヒルから北へ、テームズの上流方向に歩いて、テディントンに行き、テディントン・ロック(Teddington Lock)でテームズを対岸に渡った。ジョギングの人や愛犬と散歩中の人々と挨拶した。とても爽快な散歩であった。 
 我々は、ハム・ハウスの近くのパブ、Royal Oakで、ハム・オムレツとビールを注文した。ふっくらしたオムレツは、とてもおいかった。パブでは、地元の常連が集い、たのしそうだった。仲の良いオバアサンのカップルは、静かに食事と会話を楽しんでいた。

 この地域が、ディケンズの短編 Sketches of Young Couples[10]に、
There was a great water-party made up to Twickenham and dine, and afterwards dance in an empty villa by the river-side, hired expressively for the purpose.
と記されている。また、テームズ河の中州に、Eel-pie Islandがある。相原幸一著:テムズ河、その歴史と文化[19]によると、「チューダー時代には、この島は美味なウナギのパイを食べさせるというので評判だった。」また、「1960年代には、(この島の)ホテルで、ローリング・ストーンズなどを含むロック・グループが演奏していた」という。B&Bの御主人の話では、ここの住民も、今じゃ年を取ってね。ということであった。つまり、今は静かな雰囲気だというのであろう。住宅も高価なそうである。御主人は、我々が本当に、イール・パイ・アイランドに行ったかどうか、興味を持って居られたようだ。残念ながら、島に行く暇がなかった。我々は、テームズ河の東側の堤を散歩して、この島の写真も撮った。
大水が出たら、この島は、浸水するのではないかと思った。
 ビクトリヤ時代には、このあたりのテームズ河に、沢山魚がいたそうである。ディケンズが主宰した週刊誌、ハウスホールド・ワーズ(Household Words)に、ディケンズがW.H.Willsと共作の、A Popular Delusionという記事[11]を読んでみると、
 Nor are river fish less abundant. Mr. Yarrell says, that two persons once calculated from actual obsevation, that from sixteen to eighteen hundred of the delicate ingredients for Twickenham pies passed a given point on the Thames in one minute of time; ...
と書かれている。また、ディケンズによる新聞記事(The Examiner, 27 October 1849)にみえる Demoralisation and Total Abstinence[12]には、
 ..., therefore Jones, the decent and industrious mechanic, going to Hampton Court for a summer day with his wife and family, is not to have his pint of beer and his glass of gin and water - a proposition which we make bold to say is simply ridiculous.
とある。
 我々は、インターネットによっても、この地域について、色々な情報を知ることが出来る。例えば、春にテームズ河で行われるレガッタ、各学校活動の紹介、パブの様子、この地域の各地で行われる演劇の予定、地元の教会活動、代議士の情報など多彩である。



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