今まで元気であった子が突然、意識がなくなったり、手足がつっぱたりひきつれたりして、同時に唇の色が紫色になることがあります。多くの場合高熱の時にあらわれますが、ひきつけの後39℃以上の発熱に気づくこともあります。このように熱を伴ったけいれんを熱性けいれんといいます。

1、 通常38℃以上の発熱に伴って乳幼児期に生ずる発作性疾患で、明らかなけいれんの原因がないものをいいます。
通常けいれん時間は5分以内です。ひきつけの大部分は決して危険な物ではありません。
2、 発病率は7-8%といわれておりありふれた病気です。
熱性けいれんの患者の過半数は生涯を通じて1回しかけいれんを起こしません。
3、 再発率は25-50%(平均30%)で3回以上の再発は9%です。
再発の時期は1年以内が大多数(約70%)で2年以内では90%となります。
しかし1才未満は半数が再発します。
4、 てんかんに移行する人は5-7才までに2-3%、10才までに4.5%、25才までに7%です。
一般人口の頻度の4-6倍とされています。
現時点では神経学的異常、発達障害を認めなければその後に大きな神経学的異常を起こすことはほとんどありません。
5、

熱性けいれん患者の同胞における熱性けいれん発症の危険率は、両親とも熱性けいれんと言われた時は40-80%で片親のみの時は20-30%で両親とも言われていない時は20%と報告されています。

熱が急に高くなるときにおこります。一度ひきつけた子の1/3近くはまたおこしますから、今度ひきつけたときのために、次のことを知っていてください。

1996年熱性けいれんの指導ガイドラインではを中心に記載します。

ひきつけたとき
・あわてない、あわてない。
ひきつけは数分間で止まります。命にかかわることは、まずありません。

・何もするな。
口の中に指や箸を入れない(舌を噛むことはない)。
大声で呼んだり体をゆすったり抑えつけたりしないで下さい。


・楽な姿勢で。
体を横にねかせ、服をゆるめてください。
ピンなど危ない物は取りはずしてください。


・吐くと危ない。
頭を体より少し低くして顔を横向けて頭部をそり気味にしてください。
吐きそうなしぐさをしたら、体ごと横にして下さい。
吐いたものが口の周り、鼻の周りにあれば取り除いてのどに、つまらないようにしてください。。


・じっと見る。
時計を見て、何分続いているか確かめる。けいれんの様子をよく見て、あとで詳しく伝えられるように。
もとにもどるまでじっとそばにいて下さい。
くちから薬や飲み物を与えないでください。


緊急に受診してください。
何か重い病気が隠されていないかを判断します。
・けいれんが10分以上続くとき。
・短い間隔でけいれんを繰り返し意識障害が続くとき
・体の一部分のけいれん、または全身性であるが部位優位なけいれんのとき。
・初回発作、とくに1才未満の時。
発熱とけいれんの他に意識障害や麻痺を認めるとき。

ひきつけの予防
再発予防の座薬(ダイアップ座薬)があります。
しかし薬の良い面と悪い面があり、再発の可能性が高い人には使用するのが望ましいとされています。

再発の高い人とは

1、 けいれんの時間が15-20分以上の発作が過去に1回以上のとき。
2、 神経学的な異常あるいは発達遅延の有無、非定型発作や年齢、更に家族歴もふまえて考えます。
3、 短期間に発作が頻発するとき(半日で2回、半年で3回、1年で4回以上)

使用方法は37。5℃を越す発熱時に使用します。一回座薬を使ったら、8時間経過しても発熱が続けば2回目を使用します。3回目は状況判断となりますが使うなら1回目の座薬を使ってから24時間経過して発熱あれば使用します。

副作用
しばしば一過性に軽度のふらつき、興奮、眠気などがありますが、呼吸抑制などの重大な副作用はありません。

実施期間:通常2年間、もしくは4-5才までを目標とします。

解熱剤の使い方
解熱剤の予防効果は認められていません。
高熱による患児の苦痛を和らげるために必要な場合もありますが、乱用は慎むべきです。
ダイアップ座薬に解熱剤を併用するときは、解熱剤を経口にするかダイアップ座薬を使用して30分以上経ってから使用してください。
そうでないとダイアップ座薬の吸収が悪くなる可能性があります。

予防接種
すべての予防接種を行っても構いません。
ただ麻疹予防接種の時は、熱性けいれんを含めて家族の中にけいれんを起こした人があったり、また神経学的発達遅延のかたは、副反応がもっとも出やすい接種後5-12日に発熱を認めたらダイアップ座薬を使用してください。

単純型熱性けいれんは1ヶ月以上発作がないとき、複雑型の熱性けいれんは最終発作から3ヶ月以上経過してから、更に初回の熱性けいれんは他の病気との区別のため2−3ヶ月あけた方が良いとする意見があります。